TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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1つ連絡を。

活動報告にて、ちょっとばかり連絡を載っけさせてもらいましたので、お時間ある時にでもご一読ください。

そして、末尾にちょっとしたアンケートをやってますのでご協力くださればありがたいです。
(そのアンケートに関する説明も活動報告に載ってます)

それでは、第20話、どうぞ。


第20話 TS少女と続・トレーニングジム

 朝っぱらからひと騒動あったけど、それはそれとして今日も楽しくトレーニングだ。

 

 朝食は1日の活力源。目いっぱい動けるように、ガッツリ食べて頑張りましょう。

 今日の朝食はパンをメインにした洋風ブレックファーストにしてみました。

 

 バターを塗ったものとチーズを載っけたものを半々ずつ用意したトーストに、ハムエッグとベーコンポテト、ウインナーソーセージとスクランブルエッグ。葉物野菜のサラダはレタスとほうれん草がメインのものをそれぞれ用意した。甘くてとろ~りなコーンポタージュにクルトンを浮かべ、デザートはバナナinヨーグルトでフィニッシュ。なお、飲み物は牛乳とオレンジジュース。

 

 肉や卵料理がやたら多いと思ったかもしれないが、わざとだ。タンパク質に加え、パンやジャガイモで炭水化物もガッツリ取ってもらって、エネルギー源にすると同時に体を作る材料にする。

 特に前者は、今の緑谷には特に必要な栄養素だろうからな。

 

 さ、熱いうちに召し上がれ。

 

 

 

 予想通り、緑谷は朝食をガッツリ……恐らくは、本人もびっくりするくらいたくさん食べた。

 

 これは、昨日のマッサージに加えて、睡眠(休養)を十分とったことで体が一気に活性化している証拠だ。昨日の夕食で摂ったエネルギーをほぼ使い果たし、もっとエネルギーを欲した体が、それを空腹感に変えて緑谷の体に伝えていたからだ。

 

 朝のあの一件のせいで、食卓に着いてからも少しの間気まずそうにしていた緑谷だったが、スクランブルエッグを一口口に入れた時点で火がついて、そこからはひたすら料理を口の中に運んでいっていた。

 美味しい料理を一口食べたことで空腹を自覚したか、はたまた栄養を察知した体が全力で『食え!』って信号を脳から発したか……何にせよ、緑谷は自分の体に必要な栄養をどんどん噛み砕いて飲み込んで、胃袋に収めていた。

 

 それを見ながら、いっぱい食べる男の子ってなんかいいなあ……なんて思う私。

 

 たっぷり作った朝食を、私7、緑谷3くらいの比率で全て胃袋に収めた後、私達は昨日と同じように、地下通路を通ってトレーニングジムへ行き、昨日と同じハイテクアスレチックルームで、体育祭に向けての特訓を始める。

 

 無論、昨日と同じように服はトレーニング用のウェイトスーツだが……今日はそれに加えて、いくつも新しい機能を使ってさらに鍛える。

 『ハイテク』トレーニングルームの本領発揮だ。今日からの訓練で、さらに上のステージへ向けて歩みを進めることにしよう。

 

 緑谷も……私もね。

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.緑谷出久

 

 朝から眠気が吹っ飛ぶほどのToLoveるに遭遇してしまったのには正直焦ったけど、それはそれとして今日も頑張らないと! 栄陽院さんが言うには、むしろ今日からが特訓本番らしいし。

 

 それを裏付けるように、と言えばいいのか、今日は朝から驚くことが多かった。

 

 ToLoveるもそうだが、それ以上に……頭が働くようになってきて気づいたんだけど、僕の体が……なんか、今までと変わってた。

 

 見た目が何か劇的に変わったとかじゃない。いつも鏡の前で見る、普通の僕のままだ。

 

 けど、微妙に体が……少し丸くなったかな? っていう気がする。いや、太ったっていう意味じゃなくて……筋肉そのものがふんわり丸みを帯びたというか、ソフトになったというか。硬くて筋張ってるばかりじゃなく、しなやかさが備わった……とでも言うのかな……?

 

 最初に言った通り、よく見るとわかる程度にしか違わないんだけどね。

 

 しかし、中身はもう明らかな程に違ってて……体の柔らかさに加え、なんか動きがすごく軽快になった気がする。関節はより大きく、よりスムーズに動くようになって、今までちょっと張ってた部分もすっかり柔らかくなって……気のせいか、呼吸もより大きく、深くできるようになった気がする。筋肉だけじゃなく、内臓まで改善した……のか?

 

 そしてその変化に伴ってか、すごくお腹がすいていた。

 いや、それに気づいたのは朝食を食べ始めてからなんだけど……直感的にわかる。この体の変化に使われた分のエネルギーを、補充しろって僕の体が言ってるんだと。

 

 いや、ひょっとしたらそれだけじゃなく……より高性能になったがゆえに、より多くの栄養を僕の体は欲しがるようになっているのかもしれない。

 アスリートは筋肉の比率が多い分、基礎代謝……何もしなくても消費するエネルギーも多いって聞く。上質な肉体は、それだけ多くのエネルギーを必要とするってことだ。

 

 それを踏まえて、さらに体の変化に多くのエネルギーを使ったであろうことを鑑みれば、今日の僕のこの食欲も納得ってものか。

 10人分くらいありそうな朝食(パンは4斤分だしベーコンは塊を丸々一つ使ってたし卵は30個くらい使ってたしコーンポタージュは大鍋にたっぷりetc)を、結構な比率で僕も食べちゃったからなあ……昨日に続いて感動的な満腹感だった。

 

 そうして少しの間時間を潰し、大体腹もこなれたところで、僕らは再びジムに移動してトレーニングを開始した。

 今日もまたやることは同じ。ウェイトスーツを着てハイテクアスレチックだ。

 

 ただ、昨日とは何もかもが違う。

 

 まず、体が違う。

 栄陽院さんの言う通りに、どうやら僕の体からは、10ヶ月の『目指せ合格アメリカンドリームプラン』の中でたまっていた疲労がきれいに取り除かれたようだった。

 それに加えて……いや、その結果としてなのかもしれないが、よりスペック高く成長した僕の体は、昨日までに増していい動きができるようになっていた。

 

 腕も足も驚くほどしなやかで軽やかに、そして思い通りに動く。力強く踏み出せる。動いても中々疲れない、息も切れない。疲れてもすぐそれが抜けて回復も早い。

 動くたびに『もっとこう動いた方がいい気がする』と体が、感触が教えてくれる。その通りに動きを工夫すると、もっと動きやすくなる。本当に……すごい。

 

 けど……

 

(これは逆に……危険だ)

 

 容易く自覚できるほどのスペック差。栄陽院さんに言わせれば、このスペックは『もともと器は出来上がっていたからこその変化』であり、僕がきちんと真っ当な努力をしていた場合の肉体に追いついた、あるいは近づいた、というのが最も的確な言い方らしい。

 

 そもそも、栄陽院さんいわく、これでもまだ『改善できたのはごく一部』らしい。

 凝り固まってしまった部分を『ほぐす』『リセットする』のは昨日できた。けど、あくまでそこまでだ。

 これから時間をかけて、鍛錬の中で体を作り直して、磨き上げていくんだって。最高効率で稼働する、最善の肉体を作り出すには、まだまだかかるって。

 

 それにしたって、ここまで一気に強化されてしまうと……いや、嬉しいし頼もしいのはそうなんだけど……気を、意思を強く持たないと、調子に乗ってしまいそうだ。

 今までの自分とは違うんだという、いわば『かりそめの万能感』。力を過信し、浮かれて考えなしのバカな行動をとってしまうと、その先には手痛いしっぺ返しが待っている。

 

 オールマイトに『ワン・フォー・オール』を譲渡され、初めて迂闊にそれを使って自爆してしまったあの時のように。何もわかっていないまま力を振るうことの危険さを忘れてはいけない。

 今回のは、なまじ力の使い方をわかっている分、あの時より危険かもな……

 

 もちろん、頭ではきちんと分かっている。それほど劇的に変わったわけじゃないのは。まだまだここからなのは。

 傍から見れば『少し動きがよくなったかな?』っていう程度の差だし、僕自身、たった1日で大きく変わったからこそ、それによる驚き込みで『劇的』だと認識している部分もあるだろう。

 

 何より、僕自身の絶対値的なレベルはそこまでとは言えない。今までが低かった分一気に上がったようなものだ。

 

 ゲームで例えれば、今までレベル1だった僕が、一気に10とか20になったから『すごい、めっちゃ強くなった!』って、あくまで比較で思ってるようなもん。

 調子に乗ってると、レベル30の敵を相手にあっさりやられるし、今までずっと努力を続けて来たかっちゃんや轟君なんかは、40とか50とかそのへんにいるんだろうと思うし。

 

 オールマイト? ……999とか? いやもっとかな。

 

 けど逆に、これは本来は『たった1日』で起こるような変化じゃないのは確かだし、ここまで体を改良しようとしたら……それこそ、数週間、もしかしたら数か月単位での肉体改造が必要だろう。

 栄陽院さんの『個性』による力が大きいとはいえ、自分の中にこれだけの可能性が眠っていたんだということを考えると……どう受け止めればいいのやら、って感じだな。

 

 過信せず、調子に乗らず……しかし現状をきちんと正確に把握して、か。案外難しい課題だ……

 

 けど、頼もしい僕のトレーナー(同級生だけど)は、きちんとそのあたりもわかっていて……僕がこの力を確実に制御し、使いこなせるようになれるように、きちんとメニューを考えてくれていた。本当、頭が上がらない。

 

 で、ここからがまた別な『昨日とは違う』点なんだけど……アスレチックを5周くらいして、この体のスペックを大体理解できたあたりになって、彼女はここが『ハイテクアスレチック』と呼ばれる所以を僕に見せてくれた。

 

 その結果として、今僕は……今の強化された身体能力でどうにかこなせるレベルのハードトレーニングに身を置いている。

 単純なことだ。調子に乗る暇がないくらいトレーニングさせて、迂闊なことをする前にきちんと実力を把握させる。彼女の方針はたったそれだけのものだった。

 

「なるほどね、確かにこれは、ハイテク……っていうよりはただ単に、豪華と言うか大掛かりと言うか!」

 

「それは否めないけど、いいトレーニングになるだろ? 肉体的な負荷はもちろん、集中力とかそのへん切らさないようにする訓練にもなるし」

 

「それは、確かに……っ!」

 

 言いながらも僕は、昨日と同じ平均台を駆け足で渡っている。

 

 その走っていく先の道が、突如として、ウィィン……という機械音とともに傾いていき、傾斜のある道に変わった。即座に僕はそれを認識して足の動かし方を変え、上り坂と化した平均台を落ちないようにバランスを取って走り抜ける。

 

 それを抜けると今度は雲梯があるが、こちらも途中まで進んだところで、今度は下り坂っぽく傾斜がついて、勝手が違うものになってしまう。

 すぐさま頭を切り替えて、パニックにならないように対応……平坦な時と同じようにやると、勢いがつきすぎて腕の負担が増える。ペースを落としてでも、負担を最小限に……

 

 かと思えばその途中でさらに変化して今度は上り坂調に……やっばい、こっちは勢いはあって困ることはないけど、体を持ちあげて進む形になるから純粋に腕にくる……

 

 それでもどうにか雲梯を越えて、また更に違う障害物を……と言う形でアスレチックを渡っていく。そしてその障害物たちは、もうわかってると思うが……ランダムで様々に形を変え、一定の形を保たない。走っている僕に『慣れる』『覚える』ということを許さず、その場その場で的確に体の動かし方を判断して対応することを求められる。

 

 ある時は道に傾斜がつく。ある時は道が蛇行する。ある時は雲梯のバーの幅が変わり、ある時は……そんな感じで、思考を停止させることのできない絶妙な『変化』を繰り返すアスレチックを相手に、僕はぶっ続けで走って戦っていた。

 

(昨日と変わらず、どこをどう進むかで、体のどこをどう使うかが……しかも今日はさらに、同じアスレチックを通るたびにそれが変わる! 気が抜けないし慣れられない……けど、まさに今の僕に必要な経験だっ!)

 

 体育祭までの期間は決して長くはない。その限られた期間に、パワーアップした体を万全に使いこなせるようにならなくちゃ!

 

 決意を新たにしながらも、僕はふと、平坦な道を走るわずかな間を利用して、ちらりと横を見る。

 僕と同じように、このアスレチックを……僕よりも早いペースで走っている栄陽院さんを。

 

 同じようにウェイトスーツを着ているのに加え、彼女は顔に見慣れないマスクをつけている。口の部分が機械調であるのに加え、目を保護するゴーグルがついた、ガスマスクみたいな見た目。

 

 あれは、呼吸を制限したり、目に届く光を不安定にしたりすることで、低酸素環境や暗所を再現できるものらしい。よりレベルの高いトレーニングができるわけだ。

 もっと動けるようになったら、僕にも同じものを貸してくれるって言ってた。

 

 加えて、彼女が着ているスーツは、僕が着ているものより負荷が大きく設定されている。消費する体力も大きいし、細かく重心とかを調整しないといけないそうだ。

 

 それらを装備した栄陽院さんだが、彼女はなんと今『準備運動』中だ。

 すなわち、ウォーミングアップとしてこのアスレチックを使っている。マスクまでつけて。

 

 それはつまり、彼女はこの運動よりもさらに大きな負荷の訓練を予定してるってことだろう。

 やはり、まだまだ先にいるんだなあ……と、思ってしまった。わかってたことではあるけどね。

 

 

 

 午前中の半分ほど、休憩と水分補給を繰り返しつつ『ハイテクアスレチック』を使用して体の動かし方を学んだ僕は、休憩をはさみつつ次の訓練内容に移った。

 

 そこで今度は僕は、『アスレチック』以外のトレーニングも体験することになる。アスレチック用の部屋ではなく、ゲームセンターみたいに、色々な機材――筋トレ器具っぽいのからわけのわからないものまで――が並んでいる。そのうちの1つの前に、僕は連れてこられた。

 

 その見た目は……一言で言えば、『箱』というか、殺風景な小部屋というか……そのまんま、縦横が10mほど、高さ3mほどの直方体の部屋だ。壁や天井は、金属のようなプラスチックのような、よくわからない不思議な素材で覆われている。

 入り口の扉を閉めると、まさに『箱』って感じで密室になるその小部屋の、真ん中より少し奥に行ったくらいの位置に、サンドバッグが1つ設置されていた。

 

「さてそれじゃ、ここまでやってたのが『体の動かし方』をつかむトレーニングなのに対して、今からやるのはもう1歩先、『狙った力を出す』訓練に移る」

 

「狙った……力」

 

「そ。読んで字のごとく、どのくらいの威力で攻撃その他をするかの訓練だね。緑谷、ゲームセンターとかにある、パンチングマシンって知ってる? あるいは、やったことある?」

 

「知ってるけどやったことはない……かな。こう、そのまんま……パンチの威力を点数にして記録を競うゲーム、だよね?」

 

「そう。この部屋はまさにそんな感じのトレーニング施設だよ。このサンドバッグを殴ると……」

 

 言いながらおもむろに栄陽院さんは、部屋の真ん中にあったサンドバックの前に歩いていき……腕を振りかぶって、ずどん、と結構な威力で殴った。

 その直後、サンドバッグの真上に、ホログラムで『489』という数字が浮かび上がる。

 

 

「こんな感じで数値にした威力が出る。これで、狙った威力を素早く出せるようになるのが目標。私達みたいな増強系個性の人間にとって、これは戦闘に限らず、ヒーロー活動の全てにおいて重要視される基本的な能力と言えるの。敵を殴って制圧する時に、強すぎれば不必要な重傷を負わせ、最悪は殺してしまう。逆に弱すぎれば制圧し損なって逃走を許したり、被害を拡大させてしまう。他にも、建造物の被害を拡大させないためとか、自分の体の負担を考えてとか、重要視される理由は多い。必要な時に、必要な力を、必要な速さで発揮する。それが基本にして極意」

 

 そう言って今度は、サンドバッグを素早く10回殴った。

 殴るたびに数値が表示され、下から更新されるようにホログラムが立て続けに表示されるんだけど……それがすごくて、1回目が104、2回目が203、3回目が300ジャスト、402、506……という感じで、ほぼ100ずつ刻みで成功させてみせた。しかも、そのパンチ10発を打つのにかかった時間は、ほんの5秒ちょっとだ。

 

 1発あたり約0.5秒。そのわずかな時間で、狙ったパンチ力を出すために、必要なだけの力を腕に、拳に込めて正確にヒットさせていたってことになる。

 

 驚いている僕の目の前で、さらに続ける栄陽院さん。

 

「で、この部屋にはもう1つ特徴があって……」

 

 言いながら今度は、だん、とその場で強く足踏みをした。

 

 すると、なんとさっきサンドバッグを殴った時と同じように、彼女が踏みつけた床に『550』という数字がホログラムで表示された。

 今度は壁を殴る。同じように数字が表示された。

 天井。同じように以下略。

 

「この部屋はどこをどう殴っても、こういう風に威力を測定して数値化してくれるようになってる。ま、ある程度以上の威力でないと出ないけどね……歩いたり、ちょっと跳ねたりしたくらいじゃ。これを利用して、踏み込みの強さとかを数値化して、どの程度の力を込めて地面を蹴れば、どのくらい速く動けるか、どのくらいの勢いが出るかっていうのも測れる」

 

「それも、力の調整のため、ってこと?」

 

「そう。強力な増強系の使い手になると、踏み込みの威力で道路のアスファルトが砕けたりとか、割とあるからね。それに緑谷の場合もそうでしょ? 地面もそうだけど……入試の時とか、反動で足バッキバキになってたし。そうならないように、自分にも地面にも被害なく出せる最大限を知っておくことや、もっと言えば、そうならないような踏み出し方を練習するのにも使える」

 

「そうならない、ような……?」

 

「強く、素早く踏み出したり跳躍したりするためには、ただ闇雲に足に力を込めればいいわけじゃないってこと。例えば、緑谷が大好きなオールマイト……先生だけど、動画とか見てて、目にも留まらない速さで移動したり、ジャンプでビルとか飛び越えたりしてるでしょ? その時……全くじゃないにしても、毎度毎度地面とか踏み砕いてる?」

 

 そう言われてはっとした。

 

 確かにそうだ。僕はオールマイトの戦闘シーンその他の動画は、数えきれないほど見て来たけど……その中では、よっぽど規模の大きい戦いとかでもない限り、オールマイトはどんなに早く動いても、どんなに高く跳んでも、地面を……守るべき町を壊したりすることはなかった。

 

 それこそ、僕が初めて彼に出会ったあの日に見せた、天候を変えるほどのパンチですら、爆風は引き起こしても道路その他への被害は皆無だった。あれら、力そのもののセーブはもちろん、その力をきちんと周囲に被害がいかないように使っていたからなんだろう。

 

 100の速さで動くためには、相応の……100の力を足に込める必要がある。けどそれをそのまま闇雲に振るえば、地面や自分にも100の反動……ダメージがいく。

 そうならないように、技術を駆使して、100の力を使って100の速度を出しながらも、地面や自分への反動を5とか10に抑える。

 

 改めてオールマイトのすごさを実感すると同時に、この技能の重要さを思い知った。

 強い力をそのまま振るうだけじゃなく、狙った相手にだけ、狙ったように使う。それができなければ、敵のみならず、自分や周囲に無駄な被害が及ぶだけなんだ。

 

「この特訓の重要性は理解できたみたいだね。じゃ、始めようか。ここからは……ちょいちょい私も緑谷と一緒に訓練させてもらうからね?」

 

「栄陽院さんも?」

 

「うん、人を相手にした、格闘の中での動きでそれを使えるようにするのも課題だから……緑谷にとっても、私にとってもね。ただサンドバッグを殴ったり蹴ったり、床を踏み込んだりするのや、アスレチックで飛んだり跳ねたりするのとはまた動きが違うでしょ? 加えて、相手の動きや四肢に込められた力を察知して、こっちも必要な力を素早く籠める練習にもなる。緑谷の『フルカウル』と私の『エネルギーチャージ』はよく似てるから、お互いにためになる時間になると思う。実は私も……戦闘の中でエネルギーを素早く運用するの、そこまで器用じゃないし」

 

「え!? でも、戦闘訓練でもUSJでも、アレだけ見事に動けてたのに……」

 

「いや……アレよく見るとわかるんだけど、派手に殴ったり物を壊したり、その威力から来る威圧やら何やらでごまかしてる部分多いけど、動き自体は単純だし直線的なのが多いんだよ……多分、オールマイト先生は気づいてたと思うよ? もっと柔軟で複雑な動きの中でも、的確にエネルギーの運用ができるようになりたいとは常々思ってたんだ。それで、緑谷に目を付けた」

 

「僕?」

 

「そう。正直に言えば、緑谷の面倒を見始めた時から、こうなれることを待ってたというか、狙ってた。前にちらっと言ったよね、緑谷が成長することで、私にもリターンがあるって。その1つがコレ。緑谷との組手とかの中で、私ももっと強くなる予定だから……これからよろしくな?」

 

「うん! よろしく、栄陽院さん!」

 

 『体の動かし方』と『力のコントロール』。今まで僕が、感覚でしかやれていなかったことを、こういう場所で、整った設備で学ぶことができるという恵まれた環境。

 そしてそれを指導してくれる、優秀なコーチの存在。

 

 最初に彼女に『個性を扱うコツを教えて欲しい』と頼んだ時には、正直、ここまでよくしてもらえるというか、徹底的に面倒を見てもらえるとは思ってなかった僕は、彼女に出会うことができたこの幸運を噛みしめていた。

 今の僕に足りていない要素を的確に見抜き、それを補うのに効果的な訓練を提示し、そのためのメニューをその設備ごと提供してくれるんだもんな……本当、頭が上がらないや。

 

 ここまでしてくれる彼女に報いるためにも、絶対に力の制御をものにしてみせる、と、心に決めた。

 

 そして何より……ここに来て、僕から彼女に対しても役に立てるようになってきたっていうのが嬉しい。世話になりっぱなしだった分、その恩を少しでも返せると思うと、本当に。

 

 体育祭まで……残り2週間弱。

 その間毎日ここを使えるわけじゃないけど……少なくとも、今日明日の『お泊り』の間は使えるし、その後も、時間があれば来ていいって言ってくれた。

 

 僕達2人でどこまで行けるか、なんだか楽しみになってきたよ!

 

 

 

 




Q.アンケート、19話であんだけのことやっといて、他の娘が介入してくる余地あんの?

A.実は、なくはないです。主人公の性格でまだ明らかになってない部分や、『個性』で未出の部分が絡んでくるので、まだ詳しくは言えないですが……ありえなくはないです。

この世界のデクとくっつけるなら誰?

  • 永久(オリ主ルート)
  • 麗日(原作メインヒロインルート)
  • その他
  • ハーレム(英雄色を好むルート)
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