TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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今回ちょっとだけシリアス風味、かも?


第25話 TS少女と騎馬戦(前編)

「実質……1000万の争奪戦です!」

 

「はっはっはー! いっただくよー緑谷君!」

 

 大方の予想通りと言えばいいのか、大体の騎馬は、1000万Ptを有する緑谷に殺到し、緑谷はそれを、麗日の『無重力』と、サポート課・発目のサポートアイテムの数々、そして常闇の『黒影』を駆使して防いでいく。

 もちろん、、緑谷自身が何もしていないわけではないが……飛び道具や射程距離のある武器に乏しいと言わざるを得ない緑谷では、さらに不安定な騎馬の上でできることは限られる。

 

(麗日さんに軽くしてもらってる以上、あまり勢いをつけて攻撃すると反動でこっちが飛ぶ……けど、僕の場合はPtさえ死守すれば奪る必要はない……むしろ、常闇君と一緒に防御に徹していればいい! それなら……ここ数日の訓練でたっぷりやった!)

 

 サポートアイテムの噴射で空を飛ぶ緑谷。その着地際を狙って、耳郎のイヤホンジャックが飛んでくるが、素早く動いた『黒影』がそれを弾く。

 

 が、反対方向から大量の茨のようなものが伸びてくる。

 

「っ……B組の! 発目さん、ちょっと飛ぶ!」

 

「了解です、私のベイビー……マジックハンドをどうぞ!」

 

 発目が伸ばした、その名の通りのマジックハンド……ロボットアームのようなそれに手をついて、緑谷はあえてその茨の前に身を晒し、

 

「セントルイス……スマッシュ!!」

 

 横一線に振りぬいた蹴りの威力で、茨を薙ぎ払って断ち切ってしまった。

 

『おぉーい!? マジかよ緑谷、B組塩崎の茨を蹴りで斬っちまったぞ!? この競技でも魅せるなーおいアイツはよ!』

 

『斬った、というよりは、力づくでちぎった、という感じの断面だが……どちらにせよ、あの不安定な体勢でそれだけの威力を出せるコントロールは評価だな』

 

 その緑谷を、空中から発目がマジックハンドで回収し、再び騎馬に乗せる。

 直後、はっとして振り向いた緑谷は、左腕を突き出すようにして構え……『デコピン』の要領で指を弾く。

 

「デラウェア……スマッシュ!!」

 

 弾いたところから空気の弾丸が飛び、迫ってきていた黒いボールのようなものを叩き落した。

 

「っ……峰田君のか!」

 

「あー惜しいッ! もうちょっとで当たるところだったのによ!」

 

 障子の背中に、閉じた触腕の中に格納されているらしい峰田が悔しそうに叫んでいるのが、緑谷の所からもわずかに見えた。

 

「危なかったな……今の食らってたら、動けなかった」

 

「デク君すごいね! ほとんど後ろからの攻撃だったのによくわかったやん!」

 

「あぁ、うん……視野を広く持つのは大事だって、色々あって思い知ってるから」

 

 

『じゃあ緑谷、今日のトレーニングもいつも通りアスレチックな。ただし、時々私がコレで撃つから、常に警戒しつつ、よけるなり受け止めるなりして当たらないように』

 

『え? 撃つって……え!? 何それ、拳銃!?』

 

『訓練用の模造銃だよ、弾も実弾じゃなくゴム弾入り』

 

『いや十分危険だよねそれ!? 当たると痛いでしょ!?』

 

『そりゃあんた、痛くなきゃ覚えないって。あ、コレに慣れたら次はレーザー銃使うから』

 

『レーザーァ!?』

 

『つっても攻撃力のあるビームが出てくるわけじゃなく、ほら、リモコンとかと同じ赤外線みたいなのを飛ばす奴だよ。こっちは当たっても痛くもなんともないし、というか気づかない。ただし、当たったかどうかはこっちで記録して点数で管理できる。防御不可能扱いだから、これに関しては絶対に銃口を向けられない、射線から逃れる訓練だね。被弾が一定回数超えたら罰ゲーム』

 

『ば、罰ゲームって……ちなみにどんな?』

 

『そうだね……その時のお楽しみってことで』

 

 

 

「ゴム弾は散々被弾したけどそのおかげで視野を広く持つ訓練はできた。レーザー銃は、どうにか避けまくって結局罰ゲームは回避したけど、もしアウトだったら何させられてたのか……」

 

「デク君?」

 

「え、ああいや、何でもないよ、大丈夫」

 

「戦場を見渡す天の目を持っていたか……流石だ緑谷」

 

『俺ノ出番減ルジャネーカヨー』

 

「あのーすいません、今黒い方が言ってたことの言い回しというか意味がちょっとよくわからなかったんですが、どなたか解説を……」

 

「ごめんしてる暇なさそうだ発目さん、次が来る!」

 

「そうですか、ではまたの機会にということで!」

 

 発目はそう言ってその場は納得したが、説明するとなると色々な意味で難しいのでできればそのまま忘れてほしいと願う緑谷だった。

 

 一方、それまで動きのなかった場所にも、戦いの波が及ぼうとしていた。

 

「……おいでなすったか」

 

「やっとかよ、作戦とはいえ待ちくたびれたぜ!」

 

 永久が中核となって結成された『心操チーム』(騎手が心操のためそういう呼ばれ方になる)に迫るのは、B組の女子ばかりで構成された騎馬だった。騎手になっているのは、サイドテールの活動的そうな雰囲気の女子だ。

 

「鉄哲! 悪いけどこれも勝負だ……恨みっこなしだよ!」

 

「おうよ、もちろんだぜ拳藤! かかってこいやぁ!」

 

「というか、鉄哲は何であんなチームにいるノコ?」

 

「色々あったんだよ! ともかく遠慮は無用って奴だぜ!」

 

「あんま挑発しねーでくれ、一番危険なの騎手の俺なんだから……」

 

 若干腰が引けている心操だが、果たしてその言葉は鉄哲に届いているのやら。

 

 B組の委員長、拳藤が率いるチームは、心操チームの騎馬に近づくと、シンプルに正面から襲い掛かってくる。突如として目の前で手を巨大化させて掴みかかってきた。

 

 しかしそれは、尾白が伸ばした尻尾に阻まれて止まる。その間に、だぁん! と轟音を立てて勢いよく地面を蹴り、騎馬ごと永久が後ろに飛び退った。

 心操はもちろん、鉄哲、尾白もそれに体重を預けるようにして一緒に飛ぶ。

 

「っ……ちょっとアレ、ほとんど一人で飛んでない!? どんだけパワーあるのよ!?」

 

「いや、そういう君の腕力も結構なもんだったけどね、ちょっと尻尾痺れたし……A組もB組も、今年はパワフルな女子が多いなあ……自信無くすよ」

 

「ちょっとそこの男子、あんまりデリカシーないこと言わないでくれる?」

 

「そうノコ! 拳藤はパワーも度胸も色々あって男子より頼りになるせいで、姉御肌扱いされてるけど、こう見えて心は乙女だからそういうのちょっと気にしてるノコ痛い!」

 

「いらんこと言わなくていい!」

 

「心は乙女ねえ……私にはわからん世界だ」

 

「いや、貴方女でしょ……」

 

「そうだけど、あいにくそういうのとは無縁の神経持ってるみたいでさあ……何か昔、『お前はサバンナかジャングルででも生まれ育ったのか』って言われたくらいだし」

 

「意味も何もかんもわからん!? どんな状況で何したらそんな比喩表現されるわけ!?」

 

「何だっけなあ……忘れた」

 

「第一種目の時も見ててちらっと思ったけど、女捨ててる……?」

 

「むしろ割と最初から構成成分少ないというか、持ってない……かも」

 

「何ちゅう会話だ……」

 

「何だよさっきから、いいじゃねえかジャングルとかサバンナとか強そうで、お前すげえな栄陽院! 拳藤も、パワフルとか姉御肌って褒められてんだろ? 何が不満なんだよ?」

 

「鉄哲! あんたもホントデリカシーってもんが……そんなんだから脳みそまで金属とか言われるんでしょ!」

 

「脳みそまで金属だぁ!? いいじゃねえか強そうで!」

 

「そういうとこノコ……」

 

「皮肉すら通じないとは……」

 

「おい、いつまで続くんだこの漫才……っておわ!?」

 

 その途中、突如として先程と同様に跳躍する永久。しかも今度はより勢いよく、横に。

 何事かと驚く心操だが、背後に迫っていたものを見て驚愕する。

 

「う……腕!?」

 

「ちっ……ばれてたか。ごめん皆、しくった!」

 

「ドンマイ切奈、次がある!」

 

 B組の1人、取陰切奈が切り離して放った腕が、心操のすぐ後ろに回り込んでいた。騎馬を支えている彼女本体の方には、よくよく見れば腕が半ばほどから……ない。

 

「何だあれ!? 手を切り離して飛ばせる『個性』!?」

 

「いや違う、取陰は……おい、アブねえぞ!!」

 

 鉄哲の声に、今度は尾白が尻尾を振るって、横合いから飛んできた何かをはじき返す。

 

「痛っ、ちょっと刺さった? ……何だ!? 角?」

 

「Oh……Sorry、でも勝負なので、許しーて下され候」

 

「角取か!」

 

「何か微妙に日本語変なの来た!? あの子もB組か?」

 

「みたいだな……遠距離攻撃とは、ちと相性が悪いなこりゃ」

 

 角を飛ばして攻撃に援護に使用できる『個性』を持つ、B組の女子。彼女を有する騎馬が新たに参戦してきたのを確認し、警戒心を跳ね上げる永久達。

 

「轟や緑谷にかかずらってたと思ったんだが……そろってこっちに狙いを変えたか?」

 

「1000万が予想以上に動くもんで狙いにくくてよ……おまけに氷野郎まで参戦してくるから、無駄に時間食うより二手に分かれようってことになったんだ。とか思ってたらあっちはあんなことになっちまうし……」

 

 そう言われて尾白がちらりと向こうを見ると、ちょうど緑谷と轟が激しい攻防を繰り広げている所だった。

 周囲には、障子達のそれを含めたいくつかの騎馬が氷漬けになって足止めされている。轟の騎馬を狙おうとして返り討ちにされたのだろう。あれではもう動けない。

 

 氷漬けにして足を止めようとする轟だが、緑谷チームは軽快な動きでそれをかわす。

 麗日の『無重力』と発目のサポートアイテムの合わせ技なのは明らかだが、よく見ると、緑谷が適宜『ニューハンプシャースマッシュ』を打って、拳の反動で動いている。バックパックのガスは有限、少しでも節約するつもりなのだろう。

 

 迫ってくる氷は緑谷の空気弾と常闇の『黒影』が迎撃し、常に移動して的を絞らせない。上手く立ち回っているな、と感心した。

 

(しかしこうなると、こいつらはもうあっちには行ってくれないだろう……あっちで点取り合戦をしている緑谷と轟、どっちが勝つにせよ、残る枠の争いは……こっちに限られた。つまり……)

 

「あっちで戦ってる2チームに邪魔が入らない以上、主戦場はこっちに移ったってことか」

 

「その通り。あっちの1000万争い、轟のチームが1000万を奪えば、緑谷のチームは0Ptで脱落だ。仮に緑谷チームが守り切っても、恐らく試合終了間際、こっちに手を伸ばしてくることはない。ポイントからして轟も最終種目に進んじまうだろうが、それでも残り2チームの枠がある。だったらそこに滑り込めばいいだけだ……お前らの騎馬は、あいつらより断然やりやすいしな!」

 

 その途端、永久の足元にどばっと白くねばついた液体が降りかかる。

 即座に固まって硬くなったそれは、永久を拘束して動け無くしてしまった。

 

「栄陽院、足が!」

 

「よし、凡戸ナイス!」

 

「悪いね、貰うよ!」

 

 そこに、再び突っ込んでくる拳藤の騎馬だが、

 

「こんなもんで……私が止まるか!」

 

 バキィ、と轟音を響かせて、力ずくで拘束を引きちぎる永久。そのまま横に移動して拳藤の攻撃をかわし、同時に迫ってきていた別の騎馬を尾白の尻尾がけん制する。

 

「うっそぉ!? 凡戸の拘束を……アレめっちゃ硬くなるのに、力ずくで!?」

 

「なんて力だよ……ホントに女子か!?」

 

「あっぶな……どうにかなったか、サンキュー尾白」

 

「どういたしまして。それより気づいたか栄陽院、この戦い、てっきり残りの2~3枠をかけた乱戦になると思ってたんだが……」

 

「ああ……やっぱりな。そうじゃない、これは……袋叩きだ」

 

 周囲を取り囲むように立つ、いくつものB組の騎馬を見回して言う永久。

 

「なんだ、原始人みたいに野蛮な戦い方な割に、物分かりはいいんだね、そこの君」

 

 と、バカにしたような口調の言葉が背後から投げかけられ、尾白がその声がした方に視線を向けると……そこには、何本ものハチマキを首にかけた、金髪の見慣れない男子がいた。

 恐らくはB組の者だろう。そして、見せびらかすように手にもってくるくると回しているそれは……爆豪のハチマキだ。

 

「なるほどね、最初からクラス対抗のつもりだったってわけか……」

 

「卑怯なんて言わないでくれよ? 君達がただバカみたいに前しか見ずに突っ走ってる間に、より効率的に戦える方法を頭を使って考えただけさ。拳藤、こっちはもう終わったよ、あと1枠か2枠、誰でもいいが、そいつを討ち取れば確保できるだろう?」

 

「物間……あんた何度も言うけど、必要以上に他人を挑発するのやめな。戦略上必要なものならともかく、こっちも気分良くはないんだから?」

 

「挑発? ははは、何言ってるんだい、本当のことしか言ってないだろ? 眼前の敵を倒すことしか考えてない、まるで獣……おいおい鉄哲、睨まないでくれよ、クラスメイトだろ?」

 

「俺はなあ……最初からこの作戦反対だったんだよ……A組の奴らは確かにいけすかねえのが多いけど、それでもあいつら、正面から逃げも隠れもしねえで戦ってんだ……」

 

 ギリギリ、と奥歯を噛みしめて唸る鉄哲。

 それをバカにするわけではないようだが、物間自身も自分の考えや行ったことを撤回するつもりはないようだった。他の騎馬の者達も含め、ただ、黙って聞いている。

 

「A組だけじゃねえ、サポート科や、普通科の奴だってそうしてる! だから俺達だけ、狡い真似して正々堂々やらねえなんて嫌だったんだよ……作戦だってわかってても、全力で来る相手にこっちも全力でぶつかりたかったんだよ! そのせいで俺がお前らに迷惑かけたのは知ってるし、あまつさえこのチームでも(・・・・・・・)迷惑かけちまってる! でもな……でもなぁ……」

 

「ストップ鉄哲、それ以上言わなくていい」

 

 絞り出すような声を、永久は制して止める。

 

 見渡せば、B組の騎馬の中には、気まずそうな顔をしている者も何人かいた。鉄哲の気持ちがわかる、あるいは自分もまた、作戦に賛同せずに全力でやりたい、やるべきだと思っていた者達だろう。

 障害物競走の順位を思い返せば、B組は上位と下位にかなり分かれて到着していたように見えた。恐らく、物間の策略に乗っていた者達が下位に集中し、上位にちらほらいた者達は、それを良しとせずに全力で戦った者達なのだろう。そう、尾白達はあたりをつけた。

 

 その『上位にいた者達』の1人である鉄哲をなだめて、永久は語る。

 

「あんたホントいい奴だよね……私や心操がバカやった時も許してくれただけでなく、この競技が始まる前にさ……同じ騎馬として協力はするけど、B組の奴らを裏切るようなこともしたくない、って、クラスメイトの個性も話さなかったし、今物間が言ってたB組の『作戦』も、自分が反対の立場だったってのに何も話さなかったもんね。『教えられない、すまねえ!』って私達に律儀に頭まで下げて……こっちが恐縮しちゃったわ。ホント漢って奴だよ、あんた……」

 

「鉄哲……あんた……」

 

「そういうあんただから、急造で組んだチームであっても、私達も全力で信頼して頑張ろう! って気になれたんだっけね……そこでも、それでも苦悩させちゃってたのはむしろこっちが申し訳ないと思うよ。代わりと言っちゃなんだけど……ここから先は、徹頭徹尾あんた好みの戦い方になるから、せめてそっちでストレス発散してくれ。相手がB組クラスメイト達で悪いけどね」

 

「……ああ……ありがとよ。ってことは……やるのか?」

 

「ああ。尾白、心操……覚悟決めなよ。ここから本番だ」

 

「っ……了解!」

 

「マジでやるのか……いや、俺は一番楽な立場だけどさ?」

 

「……皆、警戒しな! 何かくるよ!」

 

「あーはいはい、今までは本気じゃなかったアピールね。そういうの逆に安っぽく見えるからやめたほうがいいよ? まあ、もしかしたらホントに本気じゃなかったのかもしれないけど、それはそれで、この体育祭の大舞台でそれはどうかと思うなあ……勝負事に真剣に取り組む姿勢がなってないんじゃいないの?」

 

「策略めぐらしたあんたが言っていいセリフじゃないでしょ……」

 

「いいのさ、僕のは勝つために必要だと判断した最善手だから―――」

 

 

『物真似野郎ォォォオオ!!』

 

 

 爆発音と共に、咆哮のごとき大声が近づいてくるのに、そこに居た全員が気づいた。

 

「あー……もう抜け出してきたのか。拳藤、僕はこれで失礼するよ、あの獣から逃げなきゃいけないからね……あーやだやだ、あんな風に凶暴な上にしつこい奴に付きまとわれるなんて災難だ」

 

「一から十まで自業自得だろ。ここにいると爆豪もこっちに来る可能性高いからはよいけ」

 

「つれないなあ……まあいいか。それにしてもA組の連中って、考えなしに暴れる奴が多くて困るよ。本気じゃないプレイでここで包囲網に捕まった4位の君もそうだし、やたら突っかかってくるあっちの爆発君も……あっちでバカスカやってる2位と1位もそうだね。ちょっと視野が狭いって言うか、考えが足りてないとしか言えないな。僕らB組より一足先に『(ヴィラン)』を相手にした分先に行ってるとか言われてたけど、何かかえって損しちゃってるんじゃないかい?」

 

 

 

「…………何だって?」

 

 

 

 その瞬間、ぴくっ、と反応した者が2人。

 永久と、尾白。他ならぬ、A組の2人。

 

 様子が変わったことに気づいたのは、近くにいた拳藤ら数人だけ。その場を離れかけていた物間達はそれに気づかず……それゆえに、置き土産気味に言ってしまう。

 

「だってそうだろ? 僕らは堅実に、1つずつ、順序良く学んでいったからこそこうして協力して結果を出せているんじゃないか。つまり、一足飛びにカリキュラムをこなしてもいいことないし、いばれることじゃないんだよ。そうするとあっちの彼なんか、ヘドロ事件と合わせて2回もそんな感じになっちゃってるんだ。そんな考えたらずでよく誰も死ななかったよねえ……運だけはよかったってことかな、折角の実践を教訓に生かすこともできず、ただただご苦労様だなあ」

 

「っ……おい物間、いい加減に……」

 

「……1つ、アドバイスしといてやるよ、B組物間」

 

 やけに静かな、しかし妙な威圧感を含んだ声が、あたりに響いた。

 

「挑発するにせよ……言葉は選べ」

 

「……? どういう意味だい?」

 

「お気楽なもんだよねえ……あの事件をそんな風に、面白おかしく話して挑発のネタにする余裕があるって時点でさ……うん、その通りだ。あんまりこういうこと言いたかないけど、この時点であんたらB組と私らA組は違うよ」

 

 静かに淡々と話す永久。

 だが、明らかにさっきまでと空気が違っていることに、徐々に気づく者が増えていった。

 

「ホントに、マジに、ガチでさ……命かかってたんだよあの事件は。どこかで誰かが、何か1つでもミスってたらさ……誰かいなくなってたんだよ。A組20人じゃなくなってたんだよ。それを皆わかってる。だから、私達は反省や教訓としてあの事件を振り返ることはあっても……それ自体を面白おかしく茶化してからかうなんてことは、誰もしない」

 

「そうだね……先生達が必死で戦ってくれて、何度も俺達の鼻先を死がかすめて、プロヒーロー達が戦っている世界というものを実感したあの事件を、俺達は決して、笑うことはあっても、嗤うことはない……皆が必死になって、全力で戦って勝ち取って、迎えることができた、1年A組20人、この今を……絶対にバカにしてネタにするようなことはない」

 

「つーかさっきから聞いてりゃ、(ヴィラン)事件に遭遇したこと自体をネタにとって、よくもまー言ってくれるもんだわ……。周りが言ってるのかも知んないけどさ、なに、私達が『会敵』したのをステータスか何かとでも思ってんの? あの必死の数十分が、参加したことに意義がある記念受験みたいな扱いで本気で考えてるの? そんなんで威張るなってこと? 調子に乗るなってこと? 威張ってないし調子に乗ってないし、そんな気にもならないよ。あんたらが勝手に言って騒いでるだけじゃん、私ら何も言ってないじゃん」

 

 永久と尾白の、つらつらと紡がれる言葉。

 戦いの場においてはいささか長すぎる独白。しかし、不思議と誰も邪魔をする気になれない。

 

「長々話したけどさ、言いたいことは単純なんだよ。所詮は部外者だったあんたらB組が、あの時のあたしらの心情を理解するなんて難しいだろうけどさ、それにしたってねえ……こんな『敵』に対して言うようなこと、同学年のヒーロー科の奴に言うことになるとは思わなかったけどさあ……」

 

 

 

 ――人の命を、それがかかった戦いを、何だと思ってんだ?

 

 

 

「……物間……後ででいい、ちゃんと頭下げて謝んな。あんた……言っちゃいけないこと言った。やっちゃいけない怒らせ方したよ」

 

「みたいだね……けど残念ながら、一度言ったことは飲み込めない。対応は後で考えてどうにでもするから、この場は……」

 

「安心していいよ、怒ってないから別に…………ただ……

 

 

 

 

 ……火が点いただけだ」

 

 

 

 




なんか物間出したらこんな感じになっちゃいました。
変に真面目になって変な風に見えてないかだけ心配です。コレジャナイ感出てたらすいません。

この世界のデクとくっつけるなら誰?

  • 永久(オリ主ルート)
  • 麗日(原作メインヒロインルート)
  • その他
  • ハーレム(英雄色を好むルート)

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