TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第26話 TS少女と騎馬戦(後編)

『緑谷チームVS轟チーム、両者一歩も引かねえ戦い! 轟が作った氷のリングの中を縦横無尽に動き回る! まさに高火力対高機動の戦い……一瞬たりとも油断できねえハイスピードバトルだ息つく暇もねえ―――っとぉ!? 一対一の戦いに注目してる間に、そのリングの外もとんでもねえことになってるじゃねーか!? 何が……ってまた栄陽院かよ、何だありゃあ!?』

 

『爆豪も飛び回ってるが……周りを取り囲んでるのはB組の連中だな。まあ、やろうとしてたであろうことは想像がつくが……にしても、本当にありゃ何だ。この種目騎馬戦だろうが……どっからどう見ても騎馬じゃねーのが1コ混じってんぞ』

 

 実況の2人が驚き(と、若干の呆れ)と共に目を向ける先では……言葉通り、A組が主体になっている2騎の騎馬が猛威を振るっていた。

 

 1つ目は、爆豪の騎馬……というか爆豪個人というか。

 

 持ち前の『爆破』で騎馬を離れて飛び回りながら、先程から散々自分を煽ってくれた物間の騎馬に集中攻撃をかけ、そのついでとばかりに周囲にいるB組の他の騎馬にも攻撃している。

 

 攻撃後は瀬呂がテープで回収して騎馬に乗せ、その合間合間の攻防を、芦戸と切島がフォローしている。

 

 そしてもう1つは……栄陽院永久の騎馬である。騎手は心操なので、チーム名は『心操チーム』だが、この闘いを見ても、中核となっているのはだれかと聞けば、ほぼ全員が永久だと答えるだろう。それほどまでに……その姿は異常だった。

 何を隠そう、イレイザーヘッドが言った『どう見ても騎馬じゃねーの』とは、彼女達のチームのことだからだ。

 

 通常、騎馬戦における『騎馬』とは、前に1人、後ろに2人の人間が腕を交差させるようにつかんで組み、足を置いて立てる形にして……そこに騎手が乗って競うものだ。4人の人間が、三角錐のような形で立体的に組み上げるものだと言うことができる。

 

 だが、今の永久達のチームは……先程まではそうだったにも関わらず、今は全く違う形になっている。

 

『いやマジで何あれ!? 騎馬じゃねーじゃん! 新手のクリーチャーか何かみたいになってんじゃん! 俺ああいうの前にアニメで見たことあんだけど、タイ○ントとかオ○ガモンみたくなってんじゃねーか!! いいのかミッドナイト、ルール的に!?』

 

「認めます! テクニカルなので!」

 

『認めちまったー! あっちで飛んでる爆豪といい、騎馬戦とは一体何だったのか!』

 

「バケモンかよっ……どんなパワーしてんだあの女子!?」

 

「滅茶苦茶だ……絶対騎馬戦じゃねえこれ!」

 

「あーもう、物間が失礼なこと言って怒らせるからぁ!?」

 

「あははははあ――、責任転嫁はよくないんじゃないかなあ皆!? 僕はただおっとちょっとくらい喋る時間をくれても『BOMB!!』うわっと……っ、本気でまずいかそろそろ……!」

 

 B組の騎馬各騎が悲鳴に近い掛け声を上げて見る先に、永久は立っていた。

 永久の騎馬がというか、『永久が』立っていた。

 

 今現在、2本の足で地面に立っているのは永久だけなのだ。

 その右腕には鉄哲が足でしがみつくようにして、永久も鉄哲の足をつかんで『装備』している。

 左腕には同じようにして尾白が、しかしこちらは尻尾をうまく使って巻き付いて『装備』。

 そして、肩車する形で心操が頭上に『装備』あるいは『騎乗』していた。

 

 明らかに、『騎馬』の影も形もない。両腕と肩車でそれぞれ男子を1人ずつ装備した栄陽院永久がそこに立っているだけだ。

 

 そんな、遊園地で子供たちに抱き着かれまくっているお父さんのような状態で、まともに動けるはずがないと普通は思うだろうが……その『抱き着かせて』いるのは、フルパワー時の緑谷を除けばA組随一の膂力を持つ永久である。

 

 ――ドン!!

 

 地面を力強く蹴って急加速し、逃げようとしていたB組の騎馬の1つに急接近する永久。

 

「来たああぁ!?」

 

「くっ……角取! 角でけん制を……」

 

「OK、任せて下サーイ!」

 

 B組、角取ポニーの放った、遠隔操作できる角が飛んできて、男子3人乗せているとは思えない速度で迫りくるが、それを見た永久は……右腕に力を籠め、

 

「鉄哲、行くよ!」

 

「おう、任せろや!」

 

「よぉし……250%……アイアンクローォォオオオ!!」

 

 装備した鉄哲を一気に振りぬいて、さらに鉄哲がその勢いに乗せて拳を横殴りに放ち、ガギィン! という轟音と共に角取の角を大きく弾き飛ばした。

 そのまま勢いを止めずに突撃する永久は、射程圏内に迫ったところで、今度は左を動かす。

 

「尾白、出番!」

 

「よし来た……ッ!」

 

 今度は突き出された左腕に、尾白が尻尾だけで掴まり、その分の長さを一気に跳んで伸びて、まだ遠くだと油断していたB組の騎馬に一気に接近し、ハチマキを奪い取る。まるで投げ縄だ。

 『しまった!?』と狼狽している騎手らを後目に、永久が腕を引き戻し、尾白も尻尾を縮めるようにして、もといた永久の左腕に帰還、肩から二の腕のあたりに乗るようにして再び『装備』された。

 

 回収した直後、再びドン! と地を蹴ってその場を離れる永久。ダイナミックかつスピーディに動き、B組に捕捉させず、標的を決めれば超攻撃的に動いてハチマキを奪取……これを繰り返し、暴れまわっていた。

 

『おいおいおいおいやべーなあのチーム! 見た目滅茶苦茶だけど強えーぞ!? 見た目だけじゃなくやってることも滅茶苦茶だけど!』

 

『相変わらずしれっととんでもねえことやりやがる……だが、悔しいことに理には適ってるな』

 

『ホワッツ? どういうことだそりゃ?』

 

『少し前まで峰田のチームがそうしてたように、機動力や防御力といった条件を高水準で用意できるなら、変則的な騎馬を作ることは悪い選択肢じゃない。騎馬ってのは、足になる3人が足並み揃えて動くのがかなり難しい分、機動力がどうしても下がる。それを、騎手になってる連中を抱えて1人で動けるならそれはそれでアリってことだ。それに、決してアレは栄陽院が全部1人でやってるわけじゃないしな』

 

『ってーと?』

 

『尾白の機動力や鉄哲の防御力もきっちり使ってるし……気づいてるか? 栄陽院が腕を思い切り伸ばして攻撃する時、肩にいる心操が思い切り逆方向に体を倒してバランスを取ってる。重心がぶれずに前後左右にダイナミックに動けてる要因の一つになってんだ。おまけに同じ方向を向く必要がなくなった分、全員が全方位を常に警戒してるから、協調性なしのワンマンプレイになってるわけでもない。きちんと1つの騎馬としてチームプレイできてるってことだ』

 

『なるほどな……それにアレ、狙ってるかはわからねーけど、視覚的な効果もあるんじゃねーか? 何度も言うけど、見た目かなり滅茶苦茶だが、その分おっかなくてB組の連中びびっちまってるし』

 

『それもあるかもな。表面上知ってはいたが、大の男3人を抱えてあそこまでダイナミックに動く栄陽院のパワーや、それが突っ込んでくるっていう光景は、相対してる連中にはプレッシャー大きいだろうさ…………直前までの会話もあるしな(ぼそっ)』

 

 その永久は、また別な騎馬に突っ込むと見せかけて、急に方向転換して明後日の方向に走っていく。行く先に軟化させた地面のトラップを用意していたB組の骨抜が『えっ!?』と驚いた顔になっていた。

 

 永久が走る先には……

 

「っ……円場! 防御!」

 

「おうっ! へへ……空気の壁だ、ざまあみろ! そのまま……おわぁ!? 物間あぶっ……」

 

 騎馬の生徒達の個性と、自分の『コピー』の個性を駆使して爆豪の猛攻をしのいでいる物間チームがいた。円場の空気凝固の個性で爆豪の突進を防いだはいいが、その瞬間真後ろから襲い掛かってきた永久を見つけて顔が青くなる。

 

 とっさに物間は自分がコピーして『空気凝固』を使って壁を作るが、それを見抜いていた永久はまたしても直前で急カーブして横にすり抜け、同時に尾白の尻尾を伸ばす。

 

 物間はさらに切島の『硬化』で防御しようとするが、跳躍した尾白はそのすぐ横をすり抜けていってしまい、防御する側が空振りをするという珍しい事態に―――

 

 ―――なったのは一瞬で、直後に永久がそれを引き戻したことで、一瞬にして後ろに回り込んだ形になっている尾白が、後ろから物間のハチマキを奪取する。

 

「物間!? ハチマキ取られ……」

 

 ――ボゴォン!!

 

「……っしゃぁあ! 瀬呂ォ、戻せ!」

 

「応よっ!」

 

 尾白に続いて、空気の壁を力ずくで突破してきた爆豪にもハチマキを1つ奪われ、防戦一方どころか完全に攻め崩されている。爆豪は瀬呂のテープで一瞬で騎馬に戻り、尾白は永久の騎馬(?)に戻った直後に脚力に物を言わせて永久が距離を取った。

 そのまま永久は離れていき、別な騎馬を攻め立てる。爆豪は引き続き自分達を狙ってくるようだ……最後に物間の首に残った、爆豪のハチマキを狙って。

 

「あっちからもこっちからも乱暴なことだよ……そんなんじゃ人気でないだろうね? もうちょっとヒーローとしての……」

 

「物間ァ!? 後ろ!」

 

「!?」

 

「口より手ェ動かしたらどうなんだ物間ァァアアァア!!」

 

 離れていったと思っていた永久がまた帰って来ていて、今度はより遠くから……なんと、左腕に尾白を掴まらせ、さらにその尾白が鉄哲をつかむ形でよりリーチを伸ばして攻撃を仕掛けてきていた。反対側には心操が掴まり、必死で体を傾けて重さのバランスを取っている。

 とっさに物間は切島の『硬化』で構えるが、鉄哲は腕をクロスさせてがっちり固めていた。永久の腕力に遠心力をプラスした鋼の塊である鉄哲は、いわば鎖付き鉄球に等しい凶器だ。いくら物間が防御力を上げていても、衝突には耐えきれない……と思われたが、鉄哲は後少しの所で届かず、直撃はしなかった。

 

 身構えていた物間は虚を突かれ、その隙に鉄哲は曲げていた手を伸ばして首元のハチマキを狙う。

 だが、間一髪で円場の『空気凝固』が間に合い、鉄哲の手を弾く。

 

 その直後に永久は、潔く鉄哲と尾白を引き戻す。どうにか凌いだことに、物間とその騎馬のメンバーは安堵した。してしまった。

 

 その一瞬の隙に……背後に迫っていた爆豪達の騎馬に気づかずに。

 

 はっとして振り向いた時にはもう遅い。

 瀬呂がテープを伸ばして物間達の騎馬の横の地面に張り付け、芦戸が弱めの酸で正面の地面を溶かして濡らしていた。そして、瀬呂がテープを巻き取る勢いで急加速した騎馬が迫り……すれ違う一瞬で物間の首から爆豪がハチマキを奪い取った。

 

『爆豪、執念の猛追がついに結実ゥ! 容赦のない攻撃で、B組物間からハチマキ全部剥ぎ取りやがったぜおっかねェ――! 絶対怒らせちゃいけないタイプだなおい! 年中怒ってるけどな!』

 

『上手いこと言ったつもりかお前。というか年中って、あいつまだ入学して間もないだろが』

 

 そんな茶化すような実況には耳を貸さず、爆豪は永久に向けて怒鳴る。

 

「くそがァ! 何のつもりだデカ女ァ!? 気ィ引いて隙作って……恩でも売ったつもりか!」

 

「そんな暇じゃないよ、マジで取る気で鉄哲と尾白飛ばしたっちゅーの! まあでもいいよ別に……あんたがそれ取ったんならさ……」

 

 ニコッと笑い、

 

「後であんたから奪い取るから、首洗って待ってな!」

 

「……っ……上等だコラァ!!」

 

 それぞれ獰猛に笑い、別な獲物を狙って離れていく爆豪チームと栄陽院チーム……ではなく、心操チーム。わかってはいたが、栄陽院の存在感が完全に騎手の心操を食っている。

 

「……すでに僕らは眼中になしか。その余裕と油断、後で後悔させてやるよ」

 

 

 

「ハイ戻ってきましたよっと! 待たせたねえっとB組の……拳藤だっけ?」

 

「いや別に待ってないけど……まあいいや」

 

 物間を完膚なきまでに叩きのめした(爆豪が)後、続いて永久達が選んだ獲物は拳藤だった。異形と化した永久達の騎馬(?)を前に、拳藤チームの者達は、先程までよりも若干腰が引けているのは仕方ないだろう。

 だが、戦意を失っているわけではないようで、ぱんぱん、と頬を軽くたたいて気合を入れ、真正面から睨み合う。

 

「よっし、覚悟決めた! それと栄陽院……さっきのは本当にうちの物間がアホなこと言った。謝るよ……ごめん」

 

「別にいいって……何も間違ったことは言ってないんだから。ただ……私らの意地の問題」

 

「それでもだよ……でも、この競技の間は戦わなきゃいけない。私達B組だって、ヒーローになりたくてここにいるんだからね!」

 

「その意気やよし! いざ尋常に……」

 

「「勝負!」」

 

 騎手の実力で言えば、心操は現時点では拳藤の『大拳』には遠く及ばない。しかし、そもそも騎手が戦うという前提で動いていない永久は、右に左に自ら動き、ダイナミックに尾白と鉄哲を動かして拳藤を翻弄する。

 

 それでも、堅実に攻めと守りを繰り返す拳藤からハチマキを奪うのは簡単ではなく……その間に、他の騎馬が集結を始めていた。

 

「っ……栄陽院、他のB組のが集まってきた!」

 

「時間かけすぎたか! 袋叩き再来ってか……」

 

「悪いね栄陽院。別に作戦だったわけじゃないけど……これも勝負だから!」

 

「いーって別に! むしろちょっとワクワクしてる私!」

 

「ワクワクって……どゆこと? 何、あんたバトルジャンキーの気でもあんの?」

 

「そうじゃないけど、いっぺんリアル無双乱舞ってのやってみたいと思ってたんだよね!」

 

「あんたさっきからちょいちょい発想が物騒だよね!」

 

 なお、その場合の武器は自分達になるのだろうかと尾白と鉄哲が密かに戦慄していたが……その瞬間、

 

「後ろがお留守だよ、普通科の兄ちゃん?」

 

「……っ!?」

 

 突然、心操の後ろから声が聞こえ、ばっと勢いよく振り向いた。

 しかし、そこには誰もおらず、あったのは……

 

「口だけ……!?」

 

「あ゛っ……取陰かぁ!?」

 

「え、何それ怖っ!? あ、さっきのバラバラ人間の『個性』!? そんなこともできんの!?」

 

 手のみならず、体のパーツを全て自在に切り離して動かせる『トカゲの尻尾切り』を持つ取陰切奈の『個性』によって、口だけが切り離されて心操の注意を引いていた。

 そして、そのわずかに生まれた隙を見逃さず、見覚えのある白い液体がどばっと飛来する。

 

 が、一瞬早くそれに気づいた永久は、あえて足を振り上げてそれを、まるでサッカーボールを蹴るように受け止める。必然、足にべっとりとボンドが付着するが……

 

「2度、同じ技を……食らうかっ!」

 

 ――びゅん、べちょぉっ!!

 

「もがぁ―――!?」

 

「つ、角取ぃー!?」

 

 ボンドが乾く前に渾身の回し蹴りを放ち、その勢いで付着したボンドの一部を飛ばして、斜め前方にいた……今まさに角を飛ばそうとしていた角取ポニーの顔面に激突させる。またたく間に硬化したボンドは、彼女の頭の角を飛ばせないように固定してしまった。

 

 そして、狙ったわけではないだろうが……形状が粘液で色が白いため、見た目的にも色々と危ない状態になっていた。

 とっさにマイクは実況でそれに触れるのをやめ、カメラも一瞬だけ映してすぐにアングルを変えた。

 

「オーマイガー! 顔が、髪が、角がー!」

 

「うわああああ、大惨事だー!」

 

「A組……血も涙もねえ……」

 

「大げさな……呼吸できなくなったわけでもないんだから、大したことないでしょうにッ!」

 

 残るボンドが硬化した足を地面に叩きつけて砕く永久。

 彼女の辞書に、恐らく『髪は女の命』という言葉はないのだろう。ゆえに、洗えば落ちるじゃん、という発想しか出てこない。ボンドを落とすには特殊な洗剤が必要かもしれないが、落ちるなら問題ないというのが彼女の認識だ。

 

 だがその時、また別な刺客が迫ってきていた。

 角取の攻撃阻止とボンドの処理に使った一瞬の時間の隙に、地を這って近づいてきていた何本もの茨が襲い掛かり、彼女を縛り上げた。

 

「今度は何っ……蔦!? ってか、茨!? 痛い!」

 

 その元をたどると、髪の毛が茨になっている女子が――どこかで見たような、と永久は既視感に襲われた――それを伸ばして永久を拘束していた。

 

「これも主が与えたもうた試練……争いごとの末に勝利をつかむのは空しいですが、英雄に至らんがための道なれば……! お覚悟ください、A組の方」

 

「何かまた言動が独特な奴来た!? さっきの角女子といいB組こんなんばっかか!」

 

「うるせえな、A組にも似たようなのいんだろが!? カラスみたいな黒いのとか、あの爆発とか!」

 

「常闇はアレちょっと10年後とかに後悔するかもしれない部分だから触れないであげて!? あと爆豪はナチュラルボーンあんな感じだから手遅れ」

 

 遠くから『何つったコラァ!?』という怒号が聞こえた気がした中、しゅるしゅると茨の拘束は進む。永久は移動しながら力任せに引きちぎろうとするが、茨は彼女の動きに合わせて、あえて引っ張らずに伸びて追ってきた。

 

「あなたの力を相手に引っ張り合いをしても勝てそうにはありません……ならば、巻き付かせて動きそのものを封じることを優先させていただきます!」

 

「こんのっ、頭使ってくれる……なら、鉄哲、剣になれ!」

 

「おう!」

 

 鉄哲が腕を伸ばして体を硬質化させ、それを振りかぶる永久。

 しかしそれを剣として振り下ろして茨を断ち切らんとする直前……ふと何か思いついた表情になった永久は、

 

(あ、そうだこのシチュエーション、折角だから茨斬る前に……)

 

 とっさに頭の中に思いついた、あるセリフを言ってみることにした。

 茨で拘束され、否が応でもボディラインが現れつつある永久に、男女入り乱れたB組の騎馬が隙を突こうと殺到するその中心で……永久はわざと大仰に体をひねって体の線を余計に出し、苦しそうに表情まで作った上で……

 

 

 

「くっ、殺せ!」

 

 

 

「「「ブフォッ!?」」」

 

 あまりにも有名なセリフを、あまりにもピッタリなシチュエーションで発した永久の爆弾発言に、驚いてそこにいた男性陣ほぼ全員が噴き出した。

 

『あ――っとぉここで状況を利用した栄陽院の精神攻撃が炸裂ゥー! 何て場面で何てもんぶち込んでくんだよ相変わらずやべーな! B組男性陣、突然の往年の名台詞を、臨場感バッチリで生で聞いちまったァ!! 前屈みになってる奴が続出してんのは映さないでやってくれマスコミ諸君!』

 

 マイクの実況の通り、B組の騎馬は不自然な形に歪んでいる者が多く発生していた。

 主に前傾姿勢の者が多くいたり、意味ありげにポケットに深く手を入れていたりする者が続出。

 

 その隙に永久は鉄哲ソードを振り下ろして茨を断ち切り、移動しながらも追撃を警戒するが、

 

「い、いけませんそのようなことを言っては! いかな厳しい状況でも命を諦めずに戦い続けることこそ……ああしかしそもそもそのような責め苦を与えてしまったのは私……おお、お許しください、何と私は罪深いことを……」

 

 『そういう文化』に疎い塩崎は、そのままの意味で受け取っていた。

 

 それを好機と受け取った永久達は、動きの悪くなったB組の騎馬(男性陣が入っているもの中心)に攻撃を仕掛けてハチマキをはぎ取っていく。B組は抵抗するが、全国ネットで『反応してしまった』様を流されないために必死でズボンの前をかばっている結果、ろくに抵抗できていない。

 

「しかし……純粋なんだなあの女子。このネタを知らないとは」

 

「そういうあんたはきっちり反応した口か、尾白さんよ」

 

「……否定はしないけど、お前もだろ心操」

 

「まあな。でも……」

 

「おい、殺せなんてそんなこと言うもんじゃねーぞ栄陽院! これは単なる模擬戦みてーなイベントだし、何より失敗しようが辛いことがあろうが、生きてりゃ何とかなるしやりなおせるだろ!」

 

「「ここにもいたか」」

 

 漢・鉄哲。彼もまたそういう文化を知らなかったようだ。

 そしてそこに、さらなる混沌をもたらす者が迫りくる。

 

 

「上等だコラァ、そんなに死にたきゃ今すぐ殺ッたらァ――!!」

 

 

「と思ってたらガチで殺しに来る奴来た―――!?」

 

 飛来する爆豪。ついでとばかりにその直線上にいたB組の騎馬からハチマキを強奪した上で、満を持して永久達のチームに襲い掛かってきた。

 それを迎え撃とうと構えるが、反対側からは『あーもう!』と声が聞こえた!

 

「無理もないとはいえ男連中が戦えなくなるとは……栄陽院、恐ろしいことを。ええいなら私達がやるしかない! 行くよ皆!」

 

 飛んでくる爆豪を鉄哲の盾で迎撃しつつ、今度は背後から迫りくる拳藤のチームを迎撃しようとした永久達だが……そこにさらに3組目の刺客が迫っていた。

 

「隙だらけだよ、A組の女クリーチャーさん」

 

 そんな声が聞こえた次の瞬間、B組、骨抜の『個性』……を、コピーした物間の仕業により、永久達の足元が柔らかくなって沈みこんでしまう。そこを狙って物間チーム、そして拳藤チームも迫る。爆豪は一旦瀬呂に回収されたところだった。

 

 踏ん張りがきかなければ、永久の脚力も生かせない。尾白の尻尾で脱出するにも、間に合わない。

 

 状況を見て永久は……これしかないと、素早く決断を下す。

 小声で、このチームの最終兵器の発動を決定した。

 

「心操……出番だ」

 

「了解……おい、お前ら卑怯だぞ! こんな手を使って……さっきの下卑た挑発といい、それでもヒーロー志望かよ!?」

 

「あはははっ、何を甘っちょろいことを――」

 

「っ、それは悪かったけど、コレは勝負――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「―――え?」」

 

 拳藤と、物間。2人が気が付いた時には……全てのハチマキは失われ、永久達のチームの姿は、眼前から忽然と消え失せていた。

 

 そして、

 

 

『タイムア―――ップ!!』

 

 

 実況のプレゼント・マイクが、無慈悲な宣告を響かせた。

 

 

 

 

この世界のデクとくっつけるなら誰?

  • 永久(オリ主ルート)
  • 麗日(原作メインヒロインルート)
  • その他
  • ハーレム(英雄色を好むルート)
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