以前の会話シーンというか、回想シーンではもう出てる人ですが……どうぞ。
『……無差別放電、130万ボルト!!』
『ぐっ……まだだ! 皆、動けるね!?』
『大丈夫やけど……デク君バックパック! 黒い煙出とるよ!』
『なぬっ!? ベイビー改良の余地ありですか!』
『だめだ、浅かった……くそ、気取られて距離を取られたか! 上鳴は……こっちもだめか』
『ウェ……ウェイ』
『トルクオーバー……レシプロバー、ス、トッ!?』
『デラウェアスマッシュ……ショットガン!!』
『飯田さん!? っ、また緑谷さんですか……』
『すまん……流石に届かない、奪れなかった』
『敵の殺気を見抜く慧眼……見事だ緑谷』
『すまん、エンジンが今ので……暫くろくに動けん……!』
「あ~……緑谷やっぱかっけー……」
只今、昼休憩。
第2種目『騎馬戦』が終わり、午後からあるレクリエーションと第3種目を前に、昼食を兼ねたしばしの休息の時間だ……ってマイク先生が言ってた。
私は今、誰もいない1-Aの教室で、1人で昼食を取っている。
何で皆と一緒に食べないのかって? 理由は2つある。
1つは、持ってきている弁当の量だ。
普段の弁当がすでにイベントサイズな私だが、今日はその3倍近い量を持ってきている。エネルギーが大量に必要になるであろうことを見越してだ。
それを食べようとすると、広げるだけでもスペースを食うので、盛大に他の人の邪魔になる。ブルーシート1つ分くらいの広さを私の食事スペースとして占有してしまうだろう……加えて、目立ってしまって見られまくるのが目に見えているので、食べにくい。落ち着いてさっさと食べたい。
なお、他のみんなと一緒に食堂で食べるという選択肢はない。
食堂で私が満足いく量の食事を食べようとすると、ランチラッシュのタスクが9割方そっちにとられることになるだろうから、大迷惑だ。
昼時の立ち食いそば屋(修羅場)で、仕事の合間にささっと食事を済ませようとするサラリーマン達に交じって、ユー○ューバーが『全部注文してみた』とかやってたらどうする? キレるだろ?
そしてもう1つの理由だが……この動画を見るためである。
既にいくつかの動画サイトには、さっきの騎馬戦の様子が映像でアップされている。そこには当然……轟チームを始めとした、1000万Ptを狙って襲って来た敵達を相手に激闘を繰り広げる緑谷達の雄姿も収められていた。
私達のチームはさっきの試合、開始後数分は激戦区から離れて様子を見て、拳藤チームが襲ってきて以降の後半になってから暴れていた。そしてその間、緑谷チームの方には一切近づいていない。
ぶっちゃけ、騎馬戦の会場は、激戦区が2つに分かれて展開されていた、と言ってもいいような状態になっていたのだ。緑谷・轟両チームが激突したエリアと、心操・爆豪両チームが激突……してはいないけど、B組の大群を相手に大暴れしてたエリアの2つに。
最初から最後までそんな感じだったので、私達は緑谷たちのエリアの戦いを、全くと言っていいほど見れていなかった。
特に後半は、轟が緑谷達を逃がさないように、周囲を氷の壁で覆っちゃってたからな。
ゆえに、その壁と距離、そしてB組との死闘に阻まれて見ることができなかった向こう側の戦いを、個性の使い方なんかを含めて観察し、この後の最終種目の戦略を練る助けにするためと……あとぶっちゃけ緑谷がカッコよく戦ってるところをゆっくり見たかったので動画を見ている。
てかホントに緑谷やばいんだけど。かっこよすぎ。強くなりすぎ。
特訓の成果ばっちり出てるなー……常闇の『黒影』に頼り過ぎず、常に自分でも周囲を……特に正面の轟の騎馬の動きそのものを警戒して、厄介な攻撃を即座に察知して回避、あるいは初動を潰してことごとく防衛に成功している。
サポート科の女の子のアイテムに加えて、麗日の個性+拳の反動を利用した空中移動『ニューハンプシャー』で機動力を高く保ち、立体的に動いて的を絞らせない。
轟の氷や八百万の『創造』による攻撃は、回避が難しい場合は常闇の『黒影』で迎撃、それでも難しければ、デコピンで空気の弾丸を飛ばす『デラウェアスマッシュ』で迎撃して防御していた。
特に、終盤に飯田が、奥の手と思しき超加速技を使ってきた際のシーンは驚いた。それを直前で察知……あるいはずっと警戒してたのかもしれないが、発動直前を狙って『デラウェア』を散弾銃のように飯田の顔面を集中的に狙って放っていた。
威力は限りなく弱く、狙いもつけづらい代わりに、数が多い空気弾が顔にぶつかったために目をつぶってしまった飯田は、加速に任せて真っ直ぐ進むしかなくなり……発射と同時に横に思い切り飛んだ緑谷に、悠々とその奇襲を回避されてしまった。飯田の足はエンストを起こした様子で、クールタイムが足りなかったのか、同じ加速技は結局競技中は二度と使ってこなかった。
最後の最後に轟がかなり大きな氷塊を出して……恐らくは、『悪質な崩し狙いの攻撃』にならない程度を見極めて攻撃していたが、騎馬を跳躍させると同時に緑谷が放った『テキサス』……拳を振りぬいた衝撃波で止められていた。その反動と、最後だからと全力でのエアソール(麗日が履いてる噴射靴)を噴かした勢いで、緑谷のチームは轟が作っていた壁の向こうに消えた。
氷塊を砕き、押し返して余りある威力の衝撃波が轟達の騎馬に届く直前、轟が左腕から熱……というか、炎を出してたように見えたのが少し気になった。
使えるの自体は知ってたが……戦闘中に使ったのを見たのは初めてかもしれない。
恐らく、自分の方に跳ね返ってきた氷のつぶてを防御するためにとっさにつかったんだと思うが……その直後から、轟はしばらく呆然として動かなくなり……再起動より前に、制限時間が来た。
結局そのままタイムアップとなり、完全防衛に成功した緑谷チームは1位で第2種目を通過。まあ、1000万持ってたんだから当たり前だが。
2位が爆豪チーム、3位が轟チーム、そして4位が私達、心操チームだ。
全体通して暴れまくってたこの4組が、5位以下を大きく突き放して勝ち進んだ。
……最終種目の出場メンバー、ほぼほぼ1-Aで埋まったな……他はB組の鉄哲、普通科の心操、サポート科の発目って子が入ってるだけだ。
誇らしくはあるが……テレビ的にこれっていいものか……いや、尋常な勝負の結果としてこうなったんだ、何も言うまい。
ああ、尋常な勝負と言えば……騎馬戦の後、物間の奴がやってきて……意外にもきちんと謝ってくれた。挑発と本音半々だったけど、命のかかった戦いをバカにして悪かったって、頭下げて。
本音が半分混じってるあたり、性格はやはりアレなようだが、きちんと根っこのところにスジは通ってるっぽいな。後々まで禍根を残すのはやめにしとこう。
まあ、その後あっさり切り替えてまた煽ってきて、拳藤に当身食らって気絶させられてたけど。総合的にはやっぱしよくわからん奴だったな……。
物間やB組の連中のことはまあこの辺にして……あー、やっぱり緑谷かっこいい。
かっこいい緑谷を見ながら食べる昼飯が美味い……なんて考えてたその時、
「メシの時間にメスの顔してるわねー、永久」
「ほぎゃぁあ!?」
突如、耳元でそんなことを囁くように言われて飛び上がってしまった。な、何!? 誰!?
とっさの判断で、持ってた弁当(巨大サンドイッチ)を落とすことは阻止したけど、誰もいなかったはずの教室で突如聞こえた声に、私の心臓は破裂寸前だ。
一体誰だと思って振り向くと、そこには……最近見てないけど、よく見知っている顔が。
やり手のキャリアウーマンのようにびしっと着こなしたビジネススーツ。小脇に挟んでいるバインダーと、胸ポケットのボールペンがOL感をさらに増幅させている。
体つきは、俗っぽく言って『ボンキュッボン』である。スーツの上からでもわかるくらいに自己主張が激しく、女性として魅力的な体。身長は女性としては高めの、170代前半ってとこ。
『キレイ』と『かわいい』が程よく同居している顔には、黒ぶちのメガネが、やや地味だがよく似合っている。肌のハリはみずみずしく、総合してどこからどう見ても20代くらいにしか見えない。なんなら女子大生でも行けるであろうくらいには若々しい。
が、私はこの人の実年齢が、それプラス15歳くらいであることを知っている。
何せ……私を生んで育てた人なのだから。
「か……母さん!? 何でここに!?」
「何でって……娘の運動会を親が見に来るのは別に何も変じゃないでしょ?」
「いや、運動会じゃないし体育祭だし……っていうか、他の普通の高校のそれならともかく、雄英の体育祭に限ってはそれは違うでしょ」
前にも話になったが、『雄英体育祭』は日本において、かつてのオリンピックに代わる一大イベントだ。当然、それを観戦する座席チケットはもれなくプラチナチケット。
いかに生徒の保護者や知人であっても、コネで手に入れるなんてことはできないし、チケットがなければ当然観戦もできない。TVやPCの前で中継を見るのみだ。
だというのに、そんなルールをこの目の前にいる女性は……私の母・
というかここは一般に開放されていない教室で、それこそチケット持ってても部外者は入れないはずなのに……
「部外者じゃないもの。ほら」
そう言って母さんは、私より若干小ぶりだが形のいい胸をえっへん、と張るようにした。
その立派なモノの上に乗っかるように、部外者が学校内に入る時に必要な(これがないと通称『雄英バリアー』に弾かれる)ゲスト用の通行パスが首からかけられている……
……ん? 違うコレ、ゲスト用じゃないぞ……体育祭協力者のプロヒーロー用!? 警備に雇った人達とかに配られる奴……何で!?
「何ってそりゃお仕事のためよ。永久、あなた私が何て呼ばれてたか忘れたの?」
「……ああ、そっか。母さんまだプロヒーローの資格持ってたんだっけ。でも、ほぼほぼ引退状態で、それ系の仕事とかはほとんどしてなかったはずじゃないの?」
「だったんだけどね、今回ちょっと声かかっちゃったのよ。今年の雄英、開幕早々に新入生が
「戦闘が得意じゃない母さんを呼び出したのはそのためか……ひょっとしてヒーロースーツじゃなくてそんなカッコしてるのも、裏方として動くため?」
「そうよ。ファンの子やマスコミに注目されるのは嫌いじゃないけど、お仕事に差し障っちゃいけないしね。午前の部が終わってひと段落したから、ちょっとあなたに声かけに来てみたの。そしたらふふふふ……かわいいことしてるじゃない? お母さんびっくりしちゃったわよ?」
「う゛……」
どうやらさっき、ニヤニヤしながら緑谷の動画を見てたのをばっちり見られてたようだ。
この母にこの手の隠し事が不可能に近いのは身に染みて知ってる……コイバナに対しての葉隠や芦戸の嗅覚なんて目じゃないレベルの洞察力だから。しらばっくれても無駄だろう。
まあ別にいいか……里帰りした時には気づかれるくらいの覚悟は元々あったし。
「緑谷出久……第一、第二種目共に大活躍してた子ね。その子が、あなたの見込んだ『ご主人様』かしら?」
「……そうだよ。一目見てビビッと来て、その後何度か戦ってる姿を見て……まあ、決めた感じ。あるんだなあ、ああいう、その……本能で『この人だ!』って思うのとか。漫画の中だけだと思ってた」
「やだわこの子ったら、中々運命的で素敵な出会い方してる! まーかくいう私も、観察してる間にビビッと来た1人ではあるんだけどねえ、この子。我が娘ながらいいのに目つけたわ」
「……横から取らないでよ?」
「そこまで飢えちゃいないっての。もー私も若くはありませんからねー」
「ならいいんだけどさ……ついでに、母さんから見て緑谷の評価はどんな感じ?」
「詳細なとこは『お仕事』のうちだから話せません。けど、概ね高評価……特に、将来性に大いに期待できる、とは言っておくわ。聞いた話だと、入学当初全然だったのが急成長したらしいじゃない……あなたの仕業でしょ? 上手く育てたわね、永久……流石私の娘」
「ノウハウは思いっきり叩き込まれてるからね。いずれ出会う大切な
「そ、『幾瀬』の使命にして、宿命……ま、今は私達『栄陽院』だけどね。さて、そろそろ私行くから。午後の部も頑張ってねー、娘だからって『評価』の手は緩めないから、そのつもりで!」
「わかってるって……『育てる』時の母さんは妥協絶対しないからね。そっちもお仕事しっかりね……トレーナーヒーロー『アナライジュ』」
後ろ手に手を振って、私服警官みたいに会場に潜んで『仕事』を行っている女ヒーローは、仕事の続きをするために教室から出ていって……それとほぼ入れ違いくらいのタイミングで、八百万が入ってきた。
? どうしたんだろ……え? 連絡事項? 私を探してた?
ああごめん、携帯で動画見てたから通信切っててさ……何?
……レクリエーション? ……チア? は? なぜ!?
☆☆☆
そして数十分後。
『どーしたA組!?』
チア衣装に着替えて会場に集合した私達A組女子を前にした、マイク先生の一言である。
「峰田さん、上鳴さん、騙しましたわね!?」
……どうやらあの2人が主犯のようだ。
八百万に『女子は午後のレクリエーションをチアコスで応援しなきゃダメ』という大ウソを吹き込んで、見事にA組女子の衣装をチアにすることに成功したと……何でこういう時だけあいつらは抜群の頭の回転と弁舌能力を発揮するんだか。
つか峰田、障害物競走の時最後の方、割と性欲から脱却してまともな感じになってたと思うんだが……元に戻っちゃったのか?
「騎馬戦のチーム決める時にはもう戻ってたと思うわ。視線に欲望が乗ってたから」
「短い間だったな、そりゃ」
劇場版のジャ○アンと同じで、一時的なアレだったようだ。さらば、キレイな峰田。
でもまあ、最初こそ全員表情死んでたものの……皆割と、呆れ気味ながらも何だかんだで『やってやるか』って乗り気のようだ。
特に葉隠。こういうの元々好きだもんな。
……私もいっちょやってやるかな。腹ごなしの運動にもなるし。前世のことは忘れて踊るか。
……と、その前に、最終種目についての発表があった。
最終種目は、トーナメント戦。騎馬戦を勝ち抜いた上位4チーム16人で行われる、一対一のガチバトルだそうだ。
抽選の結果、組み合わせは以下の通りに決まった。
第1試合 緑谷VS心操
第2試合 飯田VS尾白
第3試合 発目VS芦戸
第4試合 瀬呂VS轟
第5試合 常闇VS八百万
第6試合 上鳴VS栄陽院
第7試合 切島VS鉄哲
第8試合 麗日VS爆豪
……なるほど、初戦は上鳴か。
他にも、色々と波乱がありそうな組み合わせだな……この闘い、どう転ぶやら。
この世界のデクとくっつけるなら誰?
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永久(オリ主ルート)
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麗日(原作メインヒロインルート)
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その他
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ハーレム(英雄色を好むルート)