まだ執筆意欲自体はバリバリありますが、更新はこの先徐々に、少し遅い時間になるかもです。
『続いて第6試合だ! スパーキングキリングボーイ! ヒーロー科、上鳴電気! 対するは、A組最長身のパワーファイター! ヒーロー科、栄陽院永久!』
実況のプレゼント・マイクの紹介を受け、次の試合の出場者である2人は壇上に上がる。
向かい合って立つ2人。上鳴も決して小柄と言うわけではないが、身長190㎝を超え、30㎝近い身長差がある永久とこうして並び立つと、その差が如実に表れる。見た目から判断すれば、明らかにフィジカルで不利なのは明らかだった。
加えて、永久の『個性』は単純な増強型であるというのは、第1、第2種目で知れ渡っている。体格差から来る不利は、周囲はもちろん上鳴自身がよくわかっていた。
しかし、戦いは体格で決まるものではない。
決して油断できる相手ではないが、油断さえしなければ戦いようはある。
『上鳴の電撃は第1種目のロボはもちろん、第2種目でも轟チームで猛威を振るったのは記憶に新しいな! 何か壁になるものがなきゃ、近づいたが最後、問答無用で痺れさせてくる! 対する栄陽院は純粋な増強型! 『個性』じゃちと相性が悪いかもしれねえが、それでも圧倒的なパワーと、特にこいつには何してくるかわからねえおっかなさがあるからこっちも注目だぜ!』
生身の人間に決まれば、それがたとえ格上だろうとショックで数秒は動きを止めるだけの威力がある上鳴の電撃。リスクもあるため乱発はできないが、永久のように、遠距離攻撃の手段を持たないパワー型にとってはかなり相性が悪い相手なのだ。
フィジカルと『個性』、それぞれの有利・不利が交錯しているという、ある意味で理想的な対戦カード。相手の手を読み、どのような戦略で攻めるかという点にも注目されることだろう。
(0Ptのロボを生身でっつーんだから、下手したら破壊力は緑谷レベルなんだよなー、栄陽院……最悪、一発まともに当てられたら終わり、って考えたほうがいいか。電撃が当たる距離に近づいてきた瞬間に、あるいは攻撃を避けてから放電して、そのまま気絶してくれればラッキー。無理なら……痺れてる間に場外に出すくらいしかねーかな……)
(……という感じで考えてるだろうから、迂闊に近づくのは危険なんだよなあ。遠距離で攻撃する手段がないのはマジだし……緑谷の『テキサススマッシュ』みたく拳圧を飛ばせないことも無いが、隙もモーションもデカいからよけられそうだ。それにいくら体を強化しても、電撃食らえば数秒間は硬直しちゃうから……動けなくなるのは流石にまず、い…………まてよ?)
ふと何かに気づいた様子で、顎に手を当てて素早く頭を回転させる永久。
『ちなみに栄陽院、第1種目で見せたパッションと第2種目での大音量『くっ殺』で大注目! ミッドナイトも期待する未来の18禁ヒーロー候補だぜ!』
『人の生徒に妙な前評判をつけようとするな』
『さっき馴染みのADから入った情報によると、第1、第2種目で立て続けに男子垂涎のセクシーショットを披露した栄陽院だが、そのおかげでネット配信の視聴率爆上がりしてるそうだ! ヘイ業界関係者! アイツは数字持ってんぞ、拝んどけ!』
『前々から言おうとは思ってたんだがお前は今日、今、教育関係者である立場であることをもっと自覚しろエセDJ』
『こいつはシヴィ―――!! っと、ミッドナイトから合図だ、両者位置について準備はできたようだな! それじゃあ、1回戦第6試合、上鳴VS栄陽院……開始だァ!』
今まさに、戦いの幕が切って落とされたその瞬間、
「――ふっ!!」
―――ズドガァアァアン!!
永久がいきなり繰り出した強烈な踏み込み……震脚で、コンクリート製のステージにびっしりとひびが入り、地震かと思うような揺れが一帯を襲った。
「う、ぉぉおぉ!? んな無茶苦茶なぐふっ!?」
余りにも予想外な永久の初撃に、ダメージこそないものの、大きく動揺し、物理的にもふらついてしまう上鳴。開始直後で割と近い位置に立っていたため、振動の大きさでバランスが崩れそうになったが、持ち前の運動神経でどうにか転ばないように姿勢を保った。
が、その瞬間、上鳴は下腹部に衝撃を感じると同時に、『捕まった』という感触を覚えた。
上鳴がふらついた瞬間の隙に、まるでレスリングのタックルのように、低空で永久が突っ込んできて、上鳴に体当たりを食らわせ、そのまま抱き着いて……抱え上げたのだ。
「お、おおぉぉおお!?」
自分の身に降りかかった急展開に、思わず変な声を出して驚く上鳴。
『んだコリャァア!? 栄陽院、開幕でいきなりステージ破壊しやがったばかりか、そのままぶちかまして上鳴をホールドォ!! 急展開について行けずに上鳴、なすすべなく捕まっちまったぞ!』
『確かに『何してくるかわからない』な。こんな手で来るとは思ってなかったがために反応が遅れ、結果として完全に初手を取られてペースを握られたか』
『いやそりゃこんなことしてくるなんて予想しろって方が無理だろォ!? まあ轟とか、ステージごと凍らせてきたやべーのはいたけどよ!? つか上鳴、大ピンチなのはそうだが……それはそれとして、よく見るとお前ちょっとうらやましくもある状況になってんじゃね!?』
(それは……俺も思ったッッッ!)
上鳴、心の声で歓喜。
今現在、抱えあげられて身動きが取れない上鳴だが……抱えられているということは、当然永久と密着しているということで。
そして、腹部のあたりに手を回されているため、必然的に……その腹のあたりに、永久の胸部装甲が押し付けられている。それも、逃がさないためなのではあろうが……変形するほど強く押し付けられている。
会場にいる者達の中には、それに気づいて『うらやましいぞ!』『上鳴コノヤロー!』などとヤジを飛ばしてくる者もいたが、上鳴の頭は、状況を喜びつつも冷静だ。
感触は素晴らしいので思わず舞い上がりそうではあるが、今この状況が、ピンチであると同時に……千載一遇のチャンスであるということをはっきりと認識していた。
『さぁ果たしてこのまま場外に運ばれるのか、それとも鯖折りか!? しかしこの状況、実は栄陽院にとっても非常にヤベーんじゃねーかって今になって俺もわかったぜ!? さぁどうなる!?』
と、実況で早々に触れられてしまった上鳴は、永久が手を放す前に勝負に出る。
「ありがとよ、栄陽院……自分からわざわざ近づいてきてくれて! サービスの分もまとめてきっちりお礼するぜ……無差別放電・130万ボルト!!」
その瞬間、上鳴を中心にすさまじい電撃が迸り……はじけるような音を響かせ、火花と光をまき散らしながら、ステージ上の空気を激しく震わせる。
当然ながら、密着している永久はそれをモロに食らって感電していた。
捕まったと思ったところからの反撃。形勢逆転かと、会場内がさらに沸き上がる。
『決まったァ――! 上鳴の必殺技、情け無用の無差別放電! 騎馬戦で多くの騎馬を行動不能にせしめた大技が、なんとゼロ距離で炸裂! コレは流石にやばくねえか栄陽院!?』
爆音と電光の中心で、上鳴を抱き抱える永久は……
…………倒れない。
そして、放さない。
ニヤリ、とその口元に笑みが浮かぶ。
「……いや、こちらこそありがとよ上鳴。たらふく弁当食べた後で、血が胃に行って眠くなってたところでさあ……ちょうどいい気つけになって、目が覚めたわ」
「……そりゃ、どういたしまして……」
対照的にひきつる上鳴の笑み。
『おいおいおいおいおい!? マジかよ栄陽院!? 今の上鳴の渾身の大放電にも全く動じず仁王立ちだぜェ!? 上鳴、変わらず拘束状態継続中だー! 電撃が効かなかったのか!?』
実況しながらも困惑するプレゼント・マイクに、横でジッと見ていた相澤が口をはさむ。
『いや、筋肉の……体の微妙な強張り具合から見て、効かなかったわけじゃなさそうだ。あれだけの電撃を食らえば、いくら強化してたって動けなくなる。が……』
『が?』
『動けなくなっても構わない、と考えていたとしたら?』
その言葉に、マイクに加え、未だホールドされている上鳴もまた、永久がとった行動の意味に、そして狙いに気づいた。気づいてなお、『マジかよ』と顔にかかれてはいるが。
「そーいうこと。私が一番怖かったのは、あんたに攻撃が届く前に、あるいは攻撃をよけられてから放電で痺れさせられることだった。そうしたら、動けない間に場外に運び出されちゃうと思ったから……まあ、この通り私、デカくて重いから大変だろうけどね、それも」
「女の子が、デカいとか重いとか言うもんじゃねーよ……」
「自分で言ってる分にはいいじゃんか。で、それならどうするかと思って考え付いた案は2つ。1つ目は、痺れさせる前に殴り飛ばす。でもこれはかわされるのがやっぱり怖かった。あんた結構すばしっこいから。そしてもう1つ……動けなくなっても構わない状況に持ってくこと」
「だからって、抱き着いて放電食らうの確定な状況に持ってくか!?」
「一旦こうしちまえば、私が動けなかろうと、放しさえしなければあんたも逃げられないからね! そんじゃそろそろ……こっちも決めさせてもらいますかね、っと」
言いながら、永久は上鳴の体を抱えたまま素早く半回転させ、背中側から抱き着いている形に。
当然今度は上鳴の背中から腰のあたりにたわわに実った感触があるが……上鳴は今の状況に、少しの幸福感と……限りなく大きな不安感しか感じられていない。
後ろから抱き抱えられて拘束されている。この状況からもし自分が攻撃されるとしたら、どういう形になるか。それを考えて……結論が出てしまっていた。
「あの、ちょっと栄陽院!? 栄陽院さん!? 栄陽院様ァ!? そこまでしなくても、アレだほら、もうちょっと優しく……お願いします命ばかりは」
そんな悲鳴にも近い上鳴の懇願をさらりと聞き流し、永久は『せーの……』と小声でつぶやきながら――それが余計に恐怖を煽る――少しだけ前かがみになって構え……そして次の瞬間、
「そォい!」
――ズゴォン!!
思いっきり体を後ろに反らせて……その勢いで、上鳴を後頭部から地面に叩きつけた。
『決まったァ―――見るからに強ォォ烈なバックドロ――ップ!! 脳天から落下のクリーンヒットで上鳴、まさに天国から地獄! おいコレ生きてんだろうな!?』
「……気絶してるだけね、大丈夫。上鳴君、戦闘不能! 栄陽院さんの勝ちで2回戦進出よ!」
駆け寄って状態を確認した主審・ミッドナイトの言葉に、マイクも何気にほっとしつつ、すぐさま実況の仕事を再開する。
「栄陽院、驚異のパワーとタフネス、そして豪快なプロレス技で上鳴を撃破ァ! 全くホントに何するかわかんねーなコイツはよ! ここまで来たら次も大暴れに期待しようじゃねーか、ひとまず健闘をたたえてクラップユアハンズ!! 拍手頼むぜ!」
大歓声と拍手が鳴り響く中、永久は無事に上鳴がハンソーロボに運ばれていくのを見届けると、自身も一礼してステージを後にした。
☆☆☆
Side.緑谷出久
「む、無茶苦茶だな……」
「前々から思ってたんだけど、栄陽院って脳筋っぷりがオールマイトに近くね? 頭を使うことも結構あるけど、大抵それも結局は力技で解決してくし……」
「思い返せば、体育祭も結構そんな感じだよな……緑谷とはまた別な意味でオールマイトっぽい」
飯田君に瀬呂君、峰田君の順に、今しがた栄陽院さんが見せたパワーファイターっぷりを好きなように評している中、僕は……舞台を降りて出入り口に消えていく彼女を、不思議な気持ちで見送っていた。
この日のために一緒に修行してきた彼女の活躍は、もちろん嬉しい。しかし、その一方で……何だか、よくわからない気持ちが湧き出てくる時が……ちょくちょくある。
「…………」
「……? デク君、どうしたん? 何か怖い顔して」
「あ、麗日さん。いや、何でもない……やっぱその、栄陽院さん、強いなって思って。パワーもそうだけど、動かないようにしてたとはいえ、上鳴君の電撃くらって微動だにしないって……」
「確かに……打たれ強さも一級品やね」
「うん。並のフィジカルじゃ……ううん、個性による『攻撃』であっても、半端な威力じゃ痛打にはならないと思う。隙だらけの所に直撃でもすれば別だけど、彼女、勘も鋭いから。栄陽院さんに攻撃がまともに通る前に、カウンターで強烈なのを食らって吹き飛ばされる」
「今の上鳴くんみたいに、やね」
トーナメントの構成上、僕と栄陽院さんが戦うとすれば、それは決勝だ。
いや、もちろんそうなるとは限らないんだけどね……トーナメントの途中では、僕は轟君や飯田君とも当たるし、彼女もかっちゃんや常闇君といった強敵がいる。もちろん、麗日さんだって……って、そう言えばそろそろ……
「んしょ、っと……それじゃデク君、私そろそろ準備せなあかんし、行くね?」
「そっか……頑張ってね、麗日さん。かっちゃん、その……強いから」
「あはははは、知っとるよ。それでも……私も同じやから。デク君と」
「?」
「開会式の前、控室でゆーとったやん? 『本気で獲りにいく』って」
「あ…………うん、頑張って!」
ぐっ、とサムズアップして、駆け足で観戦席から出ていった麗日さん。
少し笑顔が引きつってたのは……流石に仕方ないだろう。相手はあのかっちゃんだ。
それでも、彼女はあきらめないで挑戦する、って宣言したんだ……僕はそれを信じて、応援してあげようと思う。
え、かっちゃんの応援はしないのかって? えーっと……応援するまでもなさそうというか、応援なんかしたら逆に怒られそうというか……
とか考えてたら、ほとんど麗日さんとすれ違いみたいなタイミングで、さっきの試合終わってすぐの栄陽院さんが戻ってきた。
「お……間に合ったか、まだやってるな、第7試合」
「お! お疲れー永久ちゃん。そーだよ、今、切島、絶賛殴り合い中」
「けろ、さっき永久ちゃんが派手にステージを壊したから、セメントス先生念入りに修理してたわ」
「それで少し試合開始がずれ込んだんですの。でも、それにしても戻りがお早いですわね、栄陽院さん……リカバリーガールの診察はお受けに?」
「電撃で多少火傷してすすけたくらいだったからすぐ治ったよ。私の場合、体力は『エネルギー』で大量にストックがあるから、リカバリーガールの治癒強化と相性がいいから、すぐ治る。しかし……殴り合いとは思えない硬質な音が聞こえるな。やり合ってるのがあの2人だから納得だけど」
「似たような『個性』どうしだから、余計長引いちゃってんの。そういや永久、あの相手の鉄哲って奴と騎馬戦で一緒だったよね? ホラ、尾白と一緒にコアラみたいに腕にしがみついてたし」
「コアラって……いや、確かにしがみついてたけどさ……」
そんな軽い会話を交わしながら、栄陽院さんは観客席の一番前、手すりがあるところまで行き、切島君と、B組の鉄哲君の試合を見始めた。
見始めて少ししたところで、ダブルノックアウトで引き分けに終わった。決着は2人が回復してから、何か簡単な勝負方法でつけるらしい。
……それはそうと、途中で脱線しちゃったけど……今、耳郎さんの話で、鉄哲君や尾白君が騎馬戦で彼女と一緒だったって聞いた時にも、ほんのわずかだけど、なんだか変な気分になった。
コレ、何なんだろう……?
……いや、まあそれは今はいいことにしよう。
それよりも……次の試合だ。
☆☆☆
途中から観戦できた切島VS鉄哲の試合の後、1回戦最後の試合である、第8試合……麗日VS爆豪の試合になった。
正直、このトーナメントで一番不安というか、見るのが怖い対戦カードだった。
予想通り、と言えばいいのか……懸命に挑む麗日に対して、爆豪は何度も爆破で吹き飛ばす。
それが、あきらめず麗日が突っ込み続けるせいで延々繰り返される痛々しい試合で、観客席からはブーイングまで飛んでいた。
もっともそれも、相澤先生の静かな一喝のせいですぐに収まって、空気が引き締まったけど。
爆豪は、嗜虐心から麗日をいたぶって遊んでいるわけじゃない。力を認めてるからこそ、本気で戦ってるんだって。
最終盤、麗日が今までの爆豪の爆破でできた瓦礫を大量に上空に浮かして放った『流星群』で勝負に出たものの、爆豪はそれを一掃するほどの威力の爆破で正面から粉砕。
その直後、乾坤一擲の策が破られた精神的な疲弊もあってか、キャパオーバーで麗日は気絶。爆豪の2回戦進出となった。
……ま、勝負だからな。どっちかが勝てば、どっちかが負ける。
その繰り返しで、最終的には1人を除いて皆が負ける。それがトーナメントだ。こういうもんだ。
そしてその後さらに、切島と鉄哲の決着もついた。
腕相撲で切島が勝利。2回戦進出を決めた。
そんなわけで、少しのインターバルを挟んで、2回戦が始まる……私も早めに準備しよう。
Q.これ、バックドロップじゃなくてジャーマンスープレックスじゃね?
A.この2つの違い調べてみてそうかもとは思ったんですけど、原作でオールマイトも、持ちあげて叩きつけるのを『バックドロップ』って表現されてましたし(USJの時)、いいかなってそのままにしました。あと名前長いし。
この世界のデクとくっつけるなら誰?
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永久(オリ主ルート)
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麗日(原作メインヒロインルート)
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その他
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ハーレム(英雄色を好むルート)