インターバルを挟んでの2回戦第1試合。緑谷VS飯田。
試合時間ものの1分たらずで終わってしまったこの闘いは、凄まじいスピード同士がぶつかる超高速戦闘だったと同時に、相手がどう出るかを2手3手先まで読み合う頭脳戦でもあったと思う。
試合開始直後に速攻で斬りこむ、という予想が多かった飯田だが、予想に反して飯田は、高速移動で緑谷を翻弄しようとステージ上を縦横無尽に走り回り、すぐには攻撃しようとしなかった。根競べのように、じっと緑谷が隙を見せる瞬間を待ち続けた。
恐らく、緑谷の反応速度を警戒してだろう。
第2種目の動画で見た、飯田の必殺技らしきそれを……緑谷はほぼ直感でとはいえ、初見で対応して回避してみせた。
ならば、超加速技があるとすでに知られている以上、馬鹿正直に使っても防がれる可能性が高い……と、そう思ったんだろう。
しかし、死角に回り込みつつ立ち向かっていった飯田にとって、そして多くの観客にとっても予想外だったことが起こった。
それは……飯田だけでなく、緑谷までもが、蹴り技を主体にして戦っていたことだ。
足は腕の3倍のパワーがあるというのは、一般的にもよく言われていることだ。個人差があり、また『個性』の存在により、決して一律には言えることではないが。
当然、緑谷の身体能力で足を使った攻撃を繰り出せば、相応の威力が叩き出せるであろうことは想像に難くない。
現に、第2種目の時に緑谷は『セントルイススマッシュ』という蹴り技を放ち、その爆風でB組塩崎が放ったツルによる拘束を防ぐ……どころか、迫ってきていたツルを切り裂いていた。
が、同時にそれは諸刃の剣でもある。なぜなら、傍目から見ても……緑谷は、足を使って戦うことに慣れていない。腕、ないし拳で放つ攻撃に比べて、どう見てもキレが悪かった。
そしてそれは、直接ステージで戦っていた飯田ならば、より強く感じたことだろう。
(戦闘において、それもぶっつけ本番で慣れていない技を使うことがどれだけ危険か、それを緑谷君が理解していないはずもない……俺を試金石にしている? それも恐らくないだろう……やはり、何かの罠? それは定かではないが……それでも、これが隙であることには変わりない。狙うにしても迂闊だぞ、緑谷君……足技というのは、常に重心と軸足の踏ん張りを意識しなければ、バランスが崩れる瞬間が必ず来る。そしてそれは、いかに君の力が強くても対応できるものではない!)
食らえばただでは済まないが、隙も大きく、何より足を使った格闘になれている飯田であれば、それによって生じる致命的な隙……そのタイミングというものに対して敏感に反応することは決して難しいことじゃない。
罠であることを警戒しつつも、しばらくの間、足技の応酬で戦い続けた飯田は、数合の後に訪れたそのタイミング……蹴りの直後、緑谷がバランスを保ち損ねてふらついた一瞬の隙に勝負をかけて急加速、『レシプロバースト』で突っ込んだ。
……しかし、やはりそれは罠だった。
勝負は……ほんの一瞬だった。
「トルクオーバー……『レシプロバースト』ッ!!」
「――ここだ! 『オクラホマスマッシュ』!!」
超加速からの最高速度で突っ込んできた飯田を、緑谷は、第一種目の『障害物競走』の最後――どう考えても不可能なほどの急カーブで最高速度のままスタジアムに帰ってきた――で見せた、超高速回転攻撃を繰り出し、突っ込んできた飯田を、そのままの勢いで場外に弾き出した。まるでベーゴマみたいに。
突っ込んできた飯田の速度すら利用したその一撃により、放物線を描いて飯田は放り出され……しかし諦めず、ふくらはぎのエンジンの噴射の勢いを利用してステージに戻ろうとする。
が、そこに緑谷が追撃というか、トドメの一撃を放つ。
「『セントルイススマッシュ』!!」
「なっ、跳ん……ぐああぁぁ!?」
なんと、緑谷が同時に場外にまで跳躍して、飯田に蹴りを入れて地面に叩き落としたのだ。
そして、自分はその反動を利用してステージにギリギリ舞い戻ってみせた。
鮮やかな空中でのトドメの一撃に観客は沸き立ち、マイク先生はノリノリで緑谷の勝利をアナウンスした。
場外に転がった飯田は少しの間、今のわずかな間に起こったことがいまいち飲み込めていないようだったが、やがて、すっきりしたような笑みと共に起き上がった。
「負けたよ、緑谷君……完敗だ。まさか、あの速さにまで対応されるとは思わなかった」
「こっちも賭けだったけどね。スピードで負けている飯田君を捕らえようと思ったら、飯田君が明確に『チャンスだ』って認識して突っ込んできてくれたところを狙うしかないと思って。体勢を崩したのは本当だったんだけど、腕と腰の回転で無理やり勢いを出したんだ。あたた……」
「おいおい、無茶するな君は……負けておいてなんだが、大丈夫かい? しかし、やはり罠だったわけだな……それでもかいくぐれると思って勝負に出たんだが、俺も未熟だったということか。いや、いい勝負だったよ緑谷君、ありがとう!」
「こちらこそ、ありがとう!」
最後は、正々堂々勝負した後のスポーツマンっぽい感じで、握手と共にすがすがしく終わった。
次、第2試合。芦戸VS轟だが……これはまあ、相手が悪かったとしか。
いくら芦戸の酸が強力でも、轟はそれごと全部凍らせる勢いで冷気を放出し……さっきの瀬呂戦ほどじゃないものの、一気に広範囲を氷結させた。
ステージの大部分がアイススケートリンクみたいになっとる……戦闘訓練の時を思い出す、えげつないレベルの範囲攻撃だ。
1回戦の瀬呂の時のを見てたから、芦戸は足を止めないように走って、完全に凍らされて止められないようにしてたものの、走っていく先にも氷があるから徐々に足が凍っていき、それでも酸で溶かして動き回っていた。
しかし、凍ってる上に酸なんて使えば当然滑りやすくなってしまう。芦戸の運動神経でも流石に一瞬、足を取られて滑ってしまい……その瞬間、ピンポイントで轟が強烈な冷気を放って凍らせたことで、芦戸は行動不能に。
『くやしー!』と表情も仕草もにぎやかに芦戸が悔しがる一方で、相変わらずの仏頂面のまま、轟が2回戦を勝ち上がった。
そしてこの瞬間、次の戦い……準決勝の対戦カードは、緑谷と轟に決まった。
……さ、次、私が出番だな。相手は常闇か。
轟の対戦カードの後の試合だと、ステージの氷解かして整備する時間がいるから、割とゆっくり試合見てられるのは助かる。
控室行く途中の通路で、なんかオールマイトと、顔から物理的に炎を出して燃えてる中年男性が話してたのをちらっと見ながら……しかし何か雰囲気アレだったのでスルーして部屋に向かった。
遠目からだけど、あの体格に炎って……轟の親父さんのNo.2ヒーロー『エンデヴァー』か? 息子の応援にでも来たのかな……?
しかし、にっこり笑ってるオールマイトと、シリアス目な雰囲気のエンデヴァーの温度差が激しかったな……聞き間違いじゃなければ、オールマイト『お茶しよ?』とか言ってた気が……緑谷をランチタイムに誘ってることといい、なんか女子っぽい軽いノリ多くね?
☆☆☆
Side.瀬呂範太
え、何でいきなり俺?
こういう視点変更って、大抵緑谷とか三人称の視点で進むんじゃ……あっはいまじめにやります。メタネタはここまでにします。
……あんまり実況上手くないのは許せよ? こういうの慣れてねーんだから。
あー、そんなわけで次は、常闇と栄陽院の試合だ。
どっちも1-Aの中でも実力派で知られてるが、常闇はスピードとトリッキーな動きで、栄陽院はパワーとタフネスで戦うスタイルっていう違いがあり、それがこの試合運びにどう関わってくるか、俺はもちろん皆注目している。
轟みたいに大規模な範囲攻撃を持っているわけでもない2人の戦いは、主に接近戦になるだろう……常闇の『黒影』を伸ばして戦うのが『接近戦』にカテゴライズされるかは微妙だが。
ちょいと耳を傾けてみれば、あちこちで予想が飛び交っている。
「俺はやっぱ栄陽院だと思うな……常闇の黒影も強いけど、真っ向勝負にはパワー不足じゃね?」
「上鳴ちゃん、1回戦で当たってるだけあって流石によくわかってるわね」
「悪かったな、一撃でノックダウンされてよ……でも実際、0Ptのロボをドロップキックでひっくり返すパワーだぜ? 真正面から殴り合うんなら、それこそ緑谷級のパワーが要るだろ。八百万も大砲で同じようなことしてたけど……つまり一撃が大砲レベルってことで……」
「エネルギーを特に多く込めた一撃だったんだとしても、そういうのがあるってだけで脅威だね。しかも、緑谷君と違ってその後で行動不能になったりはしないわけだし……」
「でも、殴り合うだけが勝負じゃないでしょ? どんな攻撃も当たらなきゃ意味ないんだから……その点常闇の『個性』は、素早い上に中距離で距離取って戦えるから、隙をつきやすいかも」
上鳴は栄陽院が勝つと予想してるらしいが、反対に常闇を推すのは耳郎だ。
どっちの言い分も一理あるから正しく聞こえるな……と思ってたら、さらに峰田が参戦。
「でもよー、場外に出すにしろ何にしろ、結局パワーがないと無理だぜ? 俺、障害物競走でアイツと組んで間近で見てたからわかるけど、あいつパワーはもちろんテクニックも反射神経もあるから、ちょっとやそっと隙突いたくらいじゃ、すぐ体勢立て直されてむしろ反撃されるぞ」
「恵まれた体格から来るフィジカルの差も大きいな……けど、身長が大きいって、武術の上ではバランスが崩れやすいっていう欠点もあるから、動きの端々で重心が動くタイミングを狙って、柔道みたいに崩せば……ダウンまでは持っていけるかもしれない」
かと思えば尾白。なるほど、武術経験者の意見はためになるな……
結局、常闇と栄陽院はなまじタイプが違いすぎるせいで、『これだ』っていう結論は出ないまま、試合開始の時を迎えることになった。
前の試合だった芦戸も戻ってきて、他の女子たちと一緒に座って観戦の姿勢だ。
その向こう側には、麗日と並んで座ってる緑谷が……あー、ブツブツモードになってやがる。クラスの連中の話に触発されたかな、ありゃ当分帰ってこねー……隣で麗日が引いてんぞ。
……轟は……いねーな。控室かどこかか?
なんか今日、特にトーナメント始まってからは妙に苛立ってる感じがしたし……それで俺も……やべ、あの時の感触思いだして寒くなってきちまったかも。
とか言ってるうちに、常闇と栄陽院がステージに上がってきた。
……さっきの上鳴の時より身長差あるな……常闇、たしか150㎝台だっけか?
『待たせたなリスナー! 氷も解けて準備万端、2回戦第3試合、もう間もなく開始だぜ! 対戦カードは、己の足元に闇の獣を従えしシャドーファイター、常闇踏影! 対するは、パワフル&ダイナミックな女子力(物理)の戦乙女、栄陽院永久!』
色々とツッコミどころ(つーか若干の悪意)がある紹介。
……視界の端、何人か他のクラスの男子達が胸を抑えたり、頭を抱えているのが見えた。常闇の紹介文が、己の中の中学二年生に効いちまってるのかもしれねえ。
もっとも、当の常闇は高校一年生になってもその只中に……いや、今はよそう、考えるの。
「さあ、準決勝に歩みを進めるのはどっちだ!? レディー……ファイッ!!」
って考えてるうちにゴングが鳴った!
やめだやめ、今は考えるのやめ! 今は折角の試合を存分に見て研究して、同時に楽しませてもらおうじゃねーの! もう俺は負けちまって出番ねーからな、気楽なもんだ!
……この時の俺は、そんな風に軽く考えていた。
常闇と栄陽院の試合を、上級者同士の手に汗握る戦いになるのだろうと、それを見て俺もより一層強くなれるよう研究しようと、そう思っていた。
だからまさか、あんなことになるなんて……考えもしてなかったんだ……!
Q.何でいきなり瀬呂?
A.次の話、緑谷視点や三人称でやるよりも、表現とか内容の都合上よさそうだと思って、まだまだ内気な緑谷ではなく、公式でガヤ担当って言われてる彼に出てきてもらいました。それが正解だったかどうかは……次回の更新で。
この世界のデクとくっつけるなら誰?
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永久(オリ主ルート)
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