TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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最初に一言。

常闇君、そして彼のファンの皆様…………本当にごめんなさい。


第31話 TS少女とトーナメント④ 永久VS常闇

Side.瀬呂範太

 

 はい、と言うわけで前回に引き続きなぜか実況の瀬呂くんですよ、っと。

 

 大方の予想通り、開始早々、常闇は『黒影(ダークシャドウ)』をけしかけて先手必勝とばかりに猛攻を加えさせる。

 伸縮自在の影のモンスターは、地を這うような動きで迫ったり、かと思えば大きく弧を描いて空中から襲い掛かったり、縦横無尽に動いて栄陽院を襲う。

 

 しかしクロスレンジで強いのは栄陽院も同じ……いかに予測不能な動きでも、栄陽院は見てからそれに反応して攻撃を叩き落す。

 

 正面から来れば拳、側面から来れば裏拳や肘、背面から来れば後ろ回し蹴り、下から来るならローキック……多彩な動きに惑わされない安定した迎撃だ。

 

 それでもこっちから攻撃に移ることはできていないあたり、『黒影』はやはり攻守に優れた強個性だってことになるんだろうかな……

 

 それに今思えば、この組み合わせって『戦闘訓練』の時にも見たやつだ。

 お互いの手の内、戦い方を多少なり知ってるから、ってのもありそうだな。一度戦った者同士、それぞれの力はより一層研究して、警戒してるだろうし。

 

 だが、さっきちらっと話題にも上がってた通り、『黒影』は栄陽院を相手にするにはいささか火力不足なところがあるようだ。さっきから何発かは栄陽院のガードをすり抜けてヒットしてるはずなんだが、さして堪えてないように見える。

 

「……くっ!?」

 

 今も、細身の体を生かして素早く身をひるがえし、栄陽院の迎撃をすり抜けて爪を振るう。

 栄陽院は上体を反らしてかわそうとするがかわしきれず、チッ、とそれが栄陽院の胸元をかすめる。おいおい、何ラッキースケベみたいなのやってんだよコラ。

 

 その直後に、物理法則上ちょっと無理がありそうな動きで急旋回、足を払おうと低空で突っ込んでいったが、素早く反応して足をずらして浮かした栄陽院の股下ギリギリをずざざー……っと通り抜けるだけにとどまった。

 

 その後数合打ち合った後、一瞬のスキをついて黒影が体当たり……というか、頭から突っ込んだから頭突きか? それが栄陽院にクリーンヒットした気がしたんだが、やはり鍛えてるからか痛打にはなってない様子だ。

 

 直撃してもほとんどダメージがないとなると、気絶や行動不能で勝ちを狙うのは厳しいか……当たった場所が胸部装甲のど真ん中でクッションになってたことを差し引いても……って、ちょっと待て?

 

「……ねえ、何かさっきから……」

 

「うん、だよね。やけに永久ちゃんの……」

 

 視界の端で、ごにょごにょと女子たちが話し始めているのが見えた。小声だからほとんど聞こえないが……ぶっちゃけ、話しているであろうことはわかる。俺も同じこと思ってるからな多分。

 

 ……うん、何か……気のせいじゃなければなんだが……うん……

 

 ……何かさっきから、ハプニングというか、ラッキースケベ的な攻撃がヒットする回数多くね?

 胸にかすったり、股下くぐったり、胸に直撃したり……やってんのは黒影だけどさ。

 

 いやでも、あの常闇のことだし……ちょっと中学二年生が長引いてるけど、それもあってかえって真面目で誠実なあいつのことだし、わざとじゃないだろう。

 これが上鳴ならかなり疑わしくて、峰田なら弁明の余地なくアウトだったろうが、常闇だしな。

 

 それでも何というか……それに気づき始めている面々の目が、どことなく『じとぉっ』とした感じになり始めてるのは……仕方のないことなのかもしれねえ。

 

 ミッドナイト先生も気づいてるようで微妙な目つきになっとる。

 実況のマイク先生と相澤先生も同様だろうが、あれは……意図して触れないようにしてんのか? 普通に試合内容の実況だけに集中してるようだ。

 

 自覚はあるんだろう、よく見ないとわからねえが、常闇もちょっと気まずそうだ。

 

「……ふう、流石に隙がないな……それと、たびたびその、すまん栄陽院。わざとではない」

 

「うん? ……あーあーあー、そういうことね。いーっていーって、クロスレンジで戦ったりすればこういうこともあるだろ。いちいち気にするもんじゃないよ」

 

 対する栄陽院はこんな感じだけどなー。まあ、いつものことと言えばそうなんだが。

 

 毎度のことながら、栄陽院は見た目がハイレベルな割に、無防備と言うか不用心と言うか……時に男っぽいとすら言えるほどに、自分の容姿に無頓着で、異性からの目に対して警戒心がない。

 これが他の女子なら、白い目で見られたり悲鳴が上がっても文句は言えないだろうに……

 

 コレのせいでたびたび目の保養ができてたりする場面もあったりする。マジで栄陽院、下着見られたくらいじゃ――わざと覗いたりするのはアウトだが、不可抗力で見えてしまったとか戦闘中に服が破れたとかの場合は特に――『別に減るもんじゃないし』って気にしないんだよな……。

 

 今日なんて、障害物競走の後、全国ネットでそうなってただろうに……けろっとしてんだもの。

 女子からは『もっと警戒心持って!』とかたびたび注意されている光景もよく見る。

 

 しかし……こういう時はその豪快さに救われるな。常闇も、反省はしつつも気に病むことなく、勝負に戻れそうだ。

 

 小さく一礼して、常闇は再び『黒影』をけしかけて攻撃させる。

 ちょっとやそっと攻撃を当てただけじゃ痛打にはならないのはわかったようで、その狙いは変わっていた。

 

 さっき尾白が言ってたように、バランスを崩すためだろうか。下半身狙いに切り替えたようだ。

 

 ……さっきの話の後で『下半身』とかいうと邪な想像がでてきちまいそうだが、断じて違う。

 足元を薙ぐような動きで攻撃を繰り返し、転ばせて隙を作り出そうとしている。

 

 栄陽院はそれを見極め、的確なタイミングでステップを踏んだりして回避してるが……何度目かの回避の瞬間、突如として『黒影』が登り龍のように急上昇。それに驚いて栄陽院がのけぞって……上手い! これでとっさの動きでバランスが崩れ……

 

 

 ――ずぼぉっ!!

 

 

 早く登り過ぎたのか、『黒影』が栄陽院のジャージの上の裾から中に突っ込んで服の中に潜り……あろうことか、その豊かな胸元から外に飛び出してきた。

 

「うわ!?」

 

『……アリ?』

 

「………………」

 

 ……って、おいィィィ!? 流石にまずいだろそれは!? 何お前裏山……じゃなくて、何完全にセクハラにしか見えねえ攻撃しちまってんだよ常闇! つか黒影!

 

 常闇……ああ、いかにも『やばい!』って感じの顔になってる。

 ポーカーフェイスだけどそこそこ長い付き合いの俺達にはわかる。めっちゃ冷汗かいてる。

 

 スタジアムの中の観客が向ける目が、大分白眼視の割合が多くなった気がした。

 しかし、そんな中でも気にしない奴が1人。

 

「ラッキー! 捕まえた……って、なっ!? つ、つかみにくッ!?」

 

 服の内側から胸元を侵されているこの状況を『ラッキー』とのたまった、相変わらず女子としてどっかずれている栄陽院は、超クロスレンジに頭から突っ込んできた『黒影』を捕縛しようとしたらしいが、形から何から変幻自在の『黒影』を上手く捕らえられない。ウナギが上手くつかめなくてぬるぬる滑るみたいになってる……滑るのか? アイツの表面。

 

 ……ぬるぬる……服の中で、栄陽院の胸元でぬるぬる……いかん考えるな。

 

「……ふっ、我が半身『黒影』……懐に飛び込んだとて容易くは捕まらん。戻れ、我がもとへ!」

 

『アイヨッ!』

 

 おっと常闇、一番の当事者の栄陽院が全く気にしてない流れを上手く使って『黒影』を回収!

 いやあ、上手くやったなー……まあ、後で謝罪は必要だろうが……って、ん?

 

 何だアレ……? 戻ってきた黒影に、何か……

 

「……む? 『黒影』、何だそれは?」

 

『ン? アー……戻ッテ来ル時ニ、何カ引ッカカッチマッタミタイダナ』

 

 『黒影』の口のあたりに、よく見えないが……布切れみたいなものが引っかかっていた。

 ふと見ると、栄陽院の方も『ん?』って感じで、体をぽんぽんとさわっている。

 

 おいおい、もしかしてシャツか何か引っかかって破いちまったのか? せっかくいい感じでごまかせそうだったのに……

 

 いやでも、障害物競走の時の様子から察するに、栄陽院ってジャージの下にシャツとかは着てなかった気が……マテ、何か嫌な予感がしてきた。

 

 そこに思い至らない常闇は、『全く……』という感じで不用心に『黒影』の口からそれを受け取り……その直後、はらりとその『布』が広がって、その形状が舞台の上で明らかになった。

 

 それは……女性の服の下で、大きく実った2つの果実を優しく包んで守るための神秘の防具……

 

 

 

 ……ブラジャーという名の下着だった。

 

 

 

 余りにも痛い沈黙。

 そしてその直後にスタジアムの野郎連中が上げる大歓声。気持ちはわかる。

 

 やっちまったなー……どうすんだコレ……

 うわぁ、常闇、気まずさと罪悪感でだろうな……ぷるぷる震えちまってる……。さすがにこの事態には、栄陽院も胸元抑えてちょっと恥ずかしそうにしてるし……

 

 つかコレ、全国生放送なんだが……実況からぱったり声が聞こえなくなってるのが逆に怖ェ。相澤先生キレそうになってねえよな……?

 

「栄陽院……」

 

「う、うん?」

 

「すまない……いや、謝ってすむことではないのはわかっている。後でいかようにでも詫びはするゆえ……今しばし、この戦いを続けさせてはもらえないだろうか……!?」

 

 それでも、この雄英体育祭という大舞台をふいにしたくない常闇は、恥を承知で栄陽院に頼み込んでいた。

 これが普通の女子なら、罵詈雑言を叩きつけられたうえで言語道断と突っぱねられても、最悪この場で泣きだされてもおかしくないが……

 

「あー……うん、まあ、しゃーないか。ガチバトルなんだし、こういうこともあるだろ」

 

 うっそだろおい。今のを『こういうこともある』で済ますの?

 栄陽院、懐深すぎねえ? 聖人君子かよ。

 

「あ、でも一応それは返してくれると……」

 

「もちろんだ」

 

 そう言って、今しがた奪ってしまったそれを手渡しで返す常闇。

 栄陽院はそれをジャージのポケットにしまった。まあ、流石に今ここでつけ直す=生着替えを披露するわけにはいかないからな……

 

 そして、深く、深ぁく頭を下げる。その後、少し離れ……戦闘態勢に戻った。

 

 主審のミッドナイト先生も、実況と解説の2人も何も言わない。どうやらそれでいいらしい。

 

『あー……っと! 2回戦第3試合、開幕から大小のハプニングが続出でこっちもハラハラドキドキの連続だぜ! いや、うん、ホントに、マジで……どうなっちまうのか全く予想がつかねえなおい! リスナー諸君、何が起こっても見逃さないように目ん玉皿にしてよく見とけ!』

 

『ただし時と場合に応じて目を閉じる優しさがあるということを皆さん頭の片隅にでも置いておいていただきたい。今ステージの上で戦っているのは、まだ高校生になったばかりの少女です。未来ある彼女に皆さんのほんの少しの大人の余裕と優しさをどうか向けてあげていただきたいと、彼女の担任として密かにですが期待させていただきます』

 

 相澤先生の意味ありげな丁寧語やべェ、なんか怖ェ。

 いや、わかるけども。栄陽院、第一種目からあんな感じだったから、何かが起こっちまうんじゃねえかって危惧する気持ちはわかるけども。

 

 ……ただ、野郎連中の大半はそれを半ば期待しちまってる奴も多いんだろうなあ……俺も含めて。

 ……悪ィかよ、俺だって男だよ。可愛い女の子のあられもない姿は好きだよ。

 

 ただ、俺らの横で鼻息荒くしてスマホを構え、録画機能をいつでも使えるようにスタンバイしている峰田ほどアレじゃねーとは思うが…………あ、耳郎に没収されとる。あ、イヤホンジャックからの心音コンボで強制的に黙らされた。

 

「しかしあれだな……流石にこうなっちまうと、恥ずかしいのもあるけど、何よりあんまり激しく動けなくなっちゃったな」

 

「? そうなのか?」

 

「ああ。アレがないとこすれてちょっと痛いし、何より揺れるから痛いわ動きづらいわでさあ……格闘戦には割と必須アイテムなんだよ、アレ」

 

 うおおぉ……何でもない顔ですげえ生々しいこと話してる……! 逆にエロい……!

 

「確かに……つけていない状態で激しく動くのは疲れますからね。この闘い、栄陽院さんは半ば、激しい動きを封じられてしまったようなものかもしれませんわ」

 

「けろ、すると、意図してはいないにせよ常闇ちゃん有利かしら?」

 

「でも、ヤオモモもコスチュームはブラ付けないタイプだよね?」

 

「そうそう、思いッきり前開いてるし」

 

「私のアレは、その分布でしっかり固定できるようにデザインと素材を厳選していますから平気なのです。ただ、今現在、栄陽院さんの唯一の砦となっている雄英のジャージは、動きやすい分そういった機能は望むべくもありませんし……」

 

「地味に不利になっとるんやね、永久ちゃん……」

 

 こっちはこっちで女子の会話生々しい……あんまりそういう意図とか別にねーんだろうけど、揺れるとか痛いとか唯一の砦とか……!

 

 なお、この話題だからか知らないが、耳郎が1度も会話に参加しないようにしていた。

 理由は……知らん。

 

「まんまと激しい動きができないように制限されたってわけね。やりおる」

 

「む……先程の繰り返しになるが、わざとでは……」

 

「わかってるって。動きは極力大人しく抑えて、その上でお前も『黒影』も無力化できるように上手くやって見せ―――」

 

 と、言い終わるより先に、すさまじい勢いで地面を蹴って栄陽院が飛び出した。

 

 突然のことに慌てる常闇だが、それに構わず栄陽院は……『黒影』の横をすり抜けて直接常闇に襲い掛かっていった!? まずい! 常闇は『黒影』は強力だが、常闇本人の戦闘能力は決して高くない……『黒影』を無視して狙われるとヤベェ!

 

 突然のことに驚く俺らの目の前で、長い脚を鞭みたいにしならせてハイキック……うおぉ、常闇間一髪かわした! あぶねー!

 

 今の当たってたら即KOもありえたんじゃねえか……ゴウッ、ってすごい音立てて空気を切り裂いてたぞ?

 

 栄陽院、そのまま蹴り主体で縦横無尽に動く動く! 時にはさらに近づいて拳や肘で……

 

 あっ、後ろから『黒影』が常闇を守るために戻ってきた。奇襲もかねて背後から……うおぉお!? 栄陽院の奴、バク転からのハンドスプリングでよけながら距離を取ったぁ!?

 

 つーか何だよアレ!? 激しく動けないとか言っといて、滅茶苦茶アクロバティックじゃねーか! 不意打ちのためのブラフだったのか!

 

「……言葉1つに至るまで戦のうち、ということか」

 

「そういうこと。卑怯などとは言うまいね?」

 

「まさか……わかっているとも、勝負の世界に、それも敵相手の試練の場だ……何が起こってもおかしくないだろうと……な!」

 

 常闇の『黒影』が反撃! しかし栄陽院、軽々とコレを迎撃……うぉお!? 今度は飛び後ろ回し蹴り!? 一発でも食らったら即座にKOってレベルの攻撃が、台風みたいに何度も何度も……常闇は『黒影』の援護と、小柄な体を生かして上手く、すばしっこく立ち回る……!

 近くにまで接近される事態への対策も一応考えてはいたってことか、さすがだぜ常闇!

 

 けど栄陽院の舞うような格闘技の数々もすげえ……今更だが、背が高くて手足が長いからすごい迫力だし、まるで刃のような鋭さで拳足が振るわれるのってそれだけで迫力が……うわ! 今拳の風圧でステージ上の土埃全部吹き飛ばさなかったか!?

 

 まあ、接近戦になってるのは距離を取る暇がないからかもしれないが、それでも拳が、蹴りが飛び交うまともな戦いに……

 

 

 ビッ! ← 『黒影』の攻撃で栄陽院のジャージの胸から腹にかけて切れ込みが入る

 

 

 互いの技と技が交差しぶつかり合うまともな戦いに……

 

 

 ばりっ! ← 常闇のくちばしがかすってジャージの胸元が大きく裂けて谷間が見える

 

 

 まともな戦いに……

 

 

 びりりりりぃ! ← ジャージのズボンが『黒影』に引っかかって大きく縦に裂ける

 

 

 ま、まともな……

 

 

 ばりりりりぃ! ← 常闇のくちばしと『黒影』の爪に引っかかってジャージの下半分が……

 

 

 いやちょっと待てっておいいいい!

 

 破れすぎだろ! さっきから栄陽院のジャージ破れすぎだろ! どれもこれもきわどい感じで!

 

 胸元は谷間が見えるくらいに開けちまってるし、下の方にもかなり危ない切れ込み入っちまって……つか、ジャージの下半分がないせいで下乳が! 下乳が……!

 ズボンの方は……何だアレは、横の縫い目でもほつれたのか? 左足、横から足が太ももまで丸見えで、チャイナドレスみたいになってんじゃねーか!

 

 いつの間にか布面積3分の1くらい失われて……

 

「……っ……! コレ動きにくい!」

 

 ――びりっ!!

 

 あぁっ!? ただでさえ露出増えてんのにさらに自分でズボン破いちまった!? ひらひらになってた裾の部分捨てて……

 

 確かに動きづらそうだったけど、今ので生足が丸見えに……最初の状態から肌色の面積大分増えちまってるよ!

 そしてそれに比例して沸きあがる大歓声! 男として気持ちはわかるけどクラスメイトとして、ヒーローの卵としては複雑!

 

 クラスの女子たちも『コレは流石にまずいんじゃ……』ってあたふたし始めてるし……峰田と上鳴は食い入るように見つめてるし……

 

 他のクラスの連中に、一般の観客たちも、目のやりどころに困ってる奴もいれば、ガン見してる奴もいる。むしろ後者の方が多いかもしれねえ……無理もねえが。

 

 後やべえのが、さっきブラフで栄陽院が言ってたことの『一部』が事実だったことだ……。

 

 どういう意味かって? 揺れるんだよ! 胸が!

 

 下着で抑えてないからだろうな……ダイナミックな動きに合わせて、上下左右にばるんばるん揺れるんだよ! 千切れるんじゃねえかってくらいに! 体力テストの時以上にもう暴れる暴れる!

 

『おいおいおいおいコレ流石にやべえんじゃねーか!? 1-A栄陽院、体力以上に被服面積が急激に削られちまってんぞ!? うちの学校のジャージ、授業で個性使うこともあるから相当頑丈なはずだってのにどうなってんだよ!?』

 

『……破れ方を見るに、繊維が硬くなって脆くなってたように見えるな。前の試合の上鳴の電熱が繊維質へのダメージになってたのか? あー……本当にまずいと判断した場合は流石に主審から介入があるからな、常闇、栄陽院、お前らもそれには従うように』

 

 ……クラスの女子達の責めるような視線が『いや違うって!? わざとじゃないって、狙ってないって!』と必死に自己弁護する上鳴に集中する。

 いや、そりゃまあわかるけど……実際にこういうことが起こっちまってる以上……まあ、多少そう言う目で見られるくらいは仕方ねえと思う。

 

 隣で峰田がすげえいい笑顔で、サムズアップして悪友のファインプレーをたたえてるから余計に視線が冷たいな……。

 

 ともあれ、マイク先生と相澤先生のそんな言葉が実況に乗ったことで、会場中の視線が一旦ステージ上の2人を離れてミッドナイト先生に注がれる。

 こっちはこっちできわどい衣装だが……そんな先生は少し考えた後に、鞭をピシャアン! と振るって、

 

「試合は続行します! ヒーローたるもの、卑劣なヴィランの攻撃によって衣服を削られた状態で戦うことを強要される状況もないとは言えないわ、その時になって『恥ずかしいから戦えない』なんて言葉は通用しない。もちろんテレビ放送もされている関係上、イレイザーの言うように本当にヤバいと思ったら止めるけど、尋常な戦いの中でこうなった以上は起こり得る事象と判断します!」

 

 ミッドナイト先生の判断(英断?)に、またもスタジアムを包む大歓声(男のもののみ?)。

 

 とことんガチだな雄英……実践主義というか、リアル思考というか……こんな所でも生徒に試練を与え続ける姿勢か。

 

 まあ、当の栄陽院はあんまり堪えてないようだけど……いや、流石にちょっと顔赤いか?

 

 あと、今の言い方だと常闇が『卑劣なヴィラン』と同じ扱いされちまってるんだが……いや、その後に尋常の勝負の結果つってるし、言葉の綾だろうけどさ。

 

 その常闇は……

 

 

 ―――ガンガンガンガンガンガン!!

 

 

 なんかステージにめっちゃ頭を打ち付けとるぅ!?

 何してんだ常闇!? そんなお前キツツキみたいな……いや打ち付けてんのはくちばしじゃなく額だけど。てか、めっちゃ血ぃでてんぞ!

 

「重ね重ね、すまない、栄陽院……いや、もうどう詫びたところで許されるようなことではないのはわかっている。後でいかなる罰も受けよう……それでもせめて……この血に免じて、この闘いを最後まで続けさせてくれまいかっ……!」

 

「わ、わかったから常闇! わかったから、自傷行為やめて、ホント怖い。気にしてないから私、ちゃんとわかってるから、勝負の中でのことだって。な? ホラ立てよ、じゃないとあんた、その出血で立てなくなりそうで怖い」

 

「感謝、する……!」

 

『1-A常闇、バトルとは関係ねえ傷が心身に増えていく! そしてここに至ってもなお『気にしてない』って聖人君子かよ栄陽院! わざとじゃなきゃ何でもアリにしそうで先生逆に心配だぜ!?』

 

『ミッドナイト先生の判断もある。もうこうなったら俺からは何も言わんが、お前ら放送事故だけは起こすなよ。セメントス、念のためにスタンバイ頼む』

 

 実況から再度の注意が入った後、2人は改めて構えて相対する。

 ……片方の装束がセクシー系の映画でもなかなかないほどに際どい……まともに試合見れっかなここから……ていうか、ホントにこれ以上何も起こらないで終わるのか……?

 

「行け、『黒影』!」

 

『イイ声デ鳴ケヨォ!』

 

「黙って行け!」

 

 三たび『黒影』が襲い掛かる。

 しかし、栄陽院の反応が鈍い……!? そのままよけきれずに足元から絡みつかれて……

 

 左足に巻き付いて、股の間をかすめて、腹に巻き付いて、服の中に入って、胸の谷間を通って、首と肩を締め上げながらそのまま縛り上げて宙づりにしたァ―――!?

 

「ふあっ……ん……あンッ!?」

 

「戻ってこい『黒影』――――ッ!!」

 

『何ダヨ、折角拘束シタノニ』

 

 やっべえ、今の絵面と栄陽院の声はさすがにやべえ……!

 相澤先生、セメントス先生にゴーサイン出しかけてた……舞台袖でスタンバイしてたセメントス先生が強制終了して2人の姿を隠すとこだった……

 

 解放されたものの、息が荒くて汗かいてる栄陽院の色気がヤバい。視界の中に前かがみになってる男子がだいぶいる……下手したら年齢制限かかりそうなバトルだ……

 

 あと、攻撃仕掛けた常闇の方も何気にヤバい。精神状態が。

 コレ終わったら切腹とかしねえだろうな。何か覚悟決めた目になってんぞ。

 

 さすがに今のは恥ずかしかったのか、栄陽院も屈み込んで胸の辺り押さえてもぞもぞしてるし…あ、ミッドナイト先生が試合続行するかどうか確認に行った。

 …あ、離れた。マジか、続けんの?

 

「ていうか、生放送されてんだよな……苦情くるんじゃね?」

 

「来るだろ間違いなく……主に小さい子が見てる家から」

 

「コレ動画サイトとかで配信できんのか……? ここからの展開にもよるけど、下手したら視聴に年齢制限かかるぞ」

 

「それ以前にオイラはこのバトルそのものがある種の企画モノに見えて来たぜ……へへへ……」

 

「ヤバいってほんと。永久が別な意味で有名になっちゃうよ……」

 

「うん……っていうか、さっきから永久ちゃんの動き、がくっと悪くなってない? 今も常闇君の『黒影』に簡単に捕まっちゃったし……」

 

「……おそらく、先程はブラフで『激しく動けない』と言っていたのが、本当に動けなくなったからでしょう。今のあの服の状態で激しく動きなどすれば、間違いなく、その……」

 

「あかん、あかんよ! ブラも着けてへんのに……そんなの『ポロリもあるよ』になってまうやん!」

 

 今の女子たちの考察を受けて、その場にいた俺達にも納得がいった。

 確かにそうだ。あの服で今まで通りに動いたりすれば、間違いなく……こぼれる……! 何がとは言わないが!

 

「栄陽院――! 負けるなァ――! 失敗を恐れるな、全て(の服)を捨ててでも勝利に向けて突き進め、お前の全力を世界に見せてやれ、Plus Ultraだァ――!!」

 

 そしてこんな時でもブレない峰田。魂胆をもう隠す気もねえな……いっそ清々しい。

 女子たちからの視線は大変なことになってるが。果たして明日の朝日は拝めるんだろうか。

 

 しかしその瞬間、ステージから信じられない言葉が聞こえて来た。

 

 

「そうだな峰田……失敗を恐れてちゃ、何もできないよな……!

 

 

『ウソだろ!?』

 

 

 耳を疑うセリフに、峰田を含む1-A男女全員の声が揃った。

 待て待て待て待て!? 何する気だ栄陽院!? おま、まさか本当にっていうか、本気で……

 

 『だめだよ永久!』『もっと自分を大事になさってください!』『これ以上服がなくなるのはヤバいよ! 私じゃないんだから!』『時には失敗を恐れることも必要よ』『あかん、あかんよ永久ちゃん!』『死ね峰田!』A組女子勢が必死で止め、耳郎がイヤホンジャックで本日何度目かになる制裁を峰田に叩き込む前でしかし……とうとう事態は動く。

 

 またしても『黒影』がせまり、栄陽院の足元から巻き付いて拘束していく……しかし次の瞬間、最大限に身体能力を強化したと思しき栄陽院が、目にもとまらぬ速さで前に飛び出した。『黒影』による拘束を、力に任せて強引に振り切って。

 

 しかし、逃がしてたまるかと『黒影』の手が突き出された。

 その爪がジャージの背中に引っかかり……ばりっ、という、不吉すぎる音と共に……

 

 

 

 栄陽院のジャージの上が、完全に破れて宙に舞った……

 

 

 

 誰もが思った。

 

 『終わった……!(社会的に)』と

 

 ジャージの下にかろうじて隠されていた花園が、禁断の2つの果実が、今露わにな…………

 

 …………ってない!?

 

『あ゛――放送事故っ……っってねえ!? アレ、あいつ……何だありゃ? 下にもう一枚着て……いや、巻いてんのか? ああ、アレってそうか! さっき自分で破ったズボンの裾か!』

 

『こうなった時に備えて巻いておいたらしいな……まあ、面積はアレだが、事故が起こらなくて何よりだ……いや本当にな。心から』

 

 マイク先生の言った通り、栄陽院の胸には……さっき栄陽院が『動きにくい!』と言って自分で捨てていたズボンの裾の部分の布が、サラシみたいに巻き付けられて肝心な部分を隠していた。相当がっちり結ばれているのか、激しく動いてもほどける様子は……ない!

 

 いつの間にあんなもの……あ、さっきのエロ攻撃……もとい、拘束攻撃直後でうずくまってた時か!

 結び目も前側にあるみたいだし…間違い無さそうだ。あ、あの極限状況でなお勝つために策を打ってたってのか……どんだけだよ!?

 

 相澤先生の言った通り、隠せてる面積は大したことないが、0と1とは大きな違いだ! これで最悪の事態は免れた!

 

『そしてェ栄陽院、個性の『黒影』を振り切って常闇本人目掛けて猛突進ッ……こ、この動きはァ――! ドロップキックだァ――!!』

 

 その速さ、その勢いのままに跳躍した栄陽院は、矢のように空を飛び、離れたところに立っていた常闇目掛けて、0Ptのロボットヴィランを粉砕した必殺のドロップキックを叩き込む!

 

 避けることができず、常闇の鳩尾に直撃。

 

 幸い、あの時みたいなデタラメな威力は込められていなかったようだが……それでも勢いは相当なもんで、常闇は『黒影』もろとも一気に場外まではじき出され、スタジアムの壁に激突して墜落……そのまま気絶したらしく、動かなくなった。

 

 ……その間際、『これが……報いか……』って聞こえた気がした。

 

「常闇君、場外! 勝者、栄陽院さん、準決勝進出よ!」

 

 その瞬間、今しが破れ飛んだボロボロのジャージを一応羽織るようにして着たところだった栄陽院は、全方向から叩きつけるような勢いで押し寄せる大歓声(絶対意味が違うのが混じってるが)に、天高く拳を握った左腕を突き出すことで応え、一礼してステージを後にした。

 

 去り際に、何かミッドナイト先生と話してたみたいだったが……よく聞こえなかったな。

 

 …………なんつーか、濃い試合だったな……見ててどっと疲れた……!

 

 あと、横目で見てて……試合終了後にトイレに行く奴が……多い。

 ……理由はあんまり考えないでおこう。

 

 ええと、次は確か……爆豪と切島か。……間に休憩挟んでくんねーかな……

 

 

 

 




筆が進みすぎた……キーボードを叩く手が止まらなかった……
思いついたら……書かずにはいられなかったんですッ……!

この世界のデクとくっつけるなら誰?

  • 永久(オリ主ルート)
  • 麗日(原作メインヒロインルート)
  • その他
  • ハーレム(英雄色を好むルート)
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