TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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評価、6000超えて……UAも20000近く……
日間ランキング……5位!? Σ(゚Д゚)

いや、もう……感謝の仕方がわからない……逆にビビってます。こんなの初めて……

これからも楽しんでもらえるように頑張ります!

戦闘訓練回です、どうぞ。





第7話 TS少女と戦闘訓練(後編)

 栄陽院と八百万が入って5分後、ヒーロー役である蛙吹・常闇コンビは動き出した。

 

 スタートしてすぐに蛙吹は壁に張り付いて外から侵入を試み、そして常闇は中から進んでいく。

 

 しかし、使えそうな窓にはことごとく仕掛けが施されていることに蛙吹は外からでも気づけたため、なかなか侵入経路を探せずにいた。

 時間を気にしつつ、中にいる常闇に連絡を取る。

 

「八百万ちゃんやるわね……外からの侵入にはしっかり対策済み。無暗には入れないわ……常闇ちゃん、中の様子はどう?」

 

「中は各所に捕獲テープの罠が張ってある……大量にだ」

 

「大量……そうか、八百万ちゃんの個性で複製したのね」

 

「そのようだ。この短時間だ……複雑な仕掛けではないと思うが……ッ!」

 

「? 常闇ちゃん、どうし……」

 

 ――ドゴォン!

 

「!? 常闇ちゃん、どうしたの? 状況は?」

 

「ッ、敵チーム……栄陽院と遭遇! すまん、余裕がない!」

 

「わかった……私も急ぐわ、気を付けて!」

 

 蛙吹が慌てて(表情からはわかりづらいが)動き出した頃、中ではすでに栄陽院と常闇の戦いが始まっていた。

 

 近づいて殴る、というシンプルな接近戦を仕掛けてくる栄陽院に対し、常闇は個性『黒影』を出して応戦する。スピード、攻撃力共に優秀な個性だが、接近戦において、その戦闘性能は一歩栄陽院に譲っていた。

 

「エネルギーチャージ、全身300%……!」

 

 体全体にまんべんなくエネルギーをいきわたらせ、床を蹴り砕きかねない勢いで突進する。真正面から突っ込んで放ったフックの一撃で、黒影の攻撃を弾いたばかりか、その体を大きく揺らす。

 

『痛ッテェ! 何テバカ力ダ、コノ女!』

 

「っ……正面からではさすがに不利か!」

 

「悪いが喧嘩じゃ負ける気はしないね! その分絡め手を使われるとヤバいから、短期決戦で決めさせてもらう!」

 

「道理だな……だが、作戦や弱点を自ら明かすとは……迂闊だぞ」

 

「安心しな、問題ないさ……お前、もう逃がすつもりないからな!」

 

 そこから始まる、栄陽院の怒涛のラッシュ。拳が、蹴りが、冗談のようなプレッシャーと風圧を伴って常闇と黒影を襲う。

 

 そして、パワーだけでなくスピードも速い。間合いを離そうとしても即座に追いつかれ、むしろ縦横無尽に跳びまわってこちらの横や後ろに回り込もうとしてくる。

 足だけでなく、時に手をついて猫のように着地したり、壁を走ったり天井を蹴ったり、体全体をバネにして跳ねたりとダイナミックに動く。

 

 それだけの無茶苦茶な動きをしていても、息一つ乱れる気配はない。

 

(無尽蔵のスタミナ……聞いてはいたが、常に全力で動き続けられるとはここまで厄介か)

 

 受け流すようにして戦い、時に黒影が常闇をかばうようにしつつも、その全てを防ぎぎることはできない。少しずつだが、ダメージが蓄積して動きは鈍くなっていった。

 

(……黒影は、闇の中ではより強くなる……薄暗いビルの中で、黒影の戦闘能力は確かに上がっている。にも拘らず防戦一方とは! パワーもスピードも段違い……それに、あの学ランが……!)

 

 その時、常闇は栄陽院の背後に、ピンク色の鞭のようなものがしなるのを見て、はっとした。

 

 その常闇の表情の変化に気づいたのか、それとは別に音か何かが聞こえたのかはわからないが……突進のモーションに入りかけていた栄陽院は素早く身をひるがえし、横に避ける。

 

 一瞬前までその体が在った場所を、蛙吹の蛙のような舌が薙いだ。

 

「けろ、遅くなってごめんなさい、常闇ちゃん」

 

「……すまん、助かった」

 

「ち……合流されたか」

 

 この状況になる前に勝負を決めるつもりだったらしい栄陽院が舌打ちをする。

 しかし、怯む様子は微塵も見せない。2人を相手にして、距離こそ取りつつも退くつもりはない姿勢で立ちはだかっている。階段を背にしている辺り、ここから先へ通すつもりはない、ということなのだろう。

 

「……時間がない、撤退して迂回路を探していてはタイムアップになる……戦闘は避けられん。気をつけろ蛙吹、奴の接近戦闘能力は桁違いだ、パワーもスピードも、反応速度も……スタミナもな」

 

「知ってるわ。でも、2人がかりなら何とかなる……私も黒影ちゃんもリーチが長いから、距離を空けて慎重に攻めれば対応はできるはずよ」

 

「ああ……だが、それでも気を付けろ。特に、あの学ランが厄介だ」

 

「? 学ラン? どうして、何か仕込みでもあったの?」

 

「防御力が高い以外はただの学ランだ。だが……アレが栄陽院の動きに合わせて、マントのように派手に翻るせいで、奴の手足の動きが隠れて初動が読みづらい。厚手だからか、腕や足の微妙な動き、筋肉のこわばりなども隠してしまう……対応が後手に回りがちだ」

 

「けろ……了解。そこまで計算したコスチュームだったのね」

 

 そこまで2人が小声で話したところで、栄陽院は1歩足を前に踏み出した。

 

 警戒して構えを取る2人。少しの動きも見逃さないように、栄陽院の挙動1つ1つに注目し、集中力を保ったままにらみ合いが続く。

 

 栄陽院はというと、すたすたと散歩でもするかのように普通に歩いている。特に構えもとらず、しかし視線だけは常闇と蛙吹に向けたままで。

 何をしてくるかわからない不気味さが、2人の警戒心を掻き立てる。

 

 常闇は、次の瞬間急加速して突進してきたり、あるいは先程までの攻防で転がった瓦礫を投擲、ないし蹴飛ばしてきても対応できるように、すぐに柱の陰に隠れられる位置で身構えていた。

 

 ……が、それがまずかった。

 

 ――ボゥンッ!!

 

「なっ!?」

 

「常闇ちゃん!?」

 

『ナンダァ!?』

 

 突如、常闇のすぐ横に在った柱が中から爆発し……そこから、大量の『確保テープ』を編んで作られたネットが飛び出して、一瞬にして常闇と黒影を覆ってしまった。黒影がとっさにもがいたせいでネットは複雑に絡まり、常闇もろとも体中をがんじがらめにされてしまう。

 

 どこか一カ所にテープを巻き付ければ確保扱いになるルールだが、これでは全身にそれがなされているようなものだった。

 

 そして、吹き飛んだ『張りぼての柱』の中から……ネットを撃ち出したギミック銃らしきものを構えた八百万が、ふぅ、と息をついて出て来た。

 

「うまくいきましたわね……」

 

「っ……偽物の、柱だっただと……?」

 

「ああ。気が付かなかったか? このフロアの柱が、他より1本多かったことにさ」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 作戦は単純なもんだ。

 

 核を置いてある最上階の窓は『わかりやすい』しかし『解除もできない』トラップで全部塞ぎ、その他の出入り口も全て塞いでおく。核がある最上階への出入りが、今私が守っている階段以外ではできないようにしておく。

 

 あとは私はそこで待ち構えていれば、ヒーローたちは必ずここに来る。来ざるを得ない。

 2人共破壊力がそこまである個性じゃないからな、壁を壊して侵入とかは無理だ。ひょっとしたら黒影ならできたかもしれないが、無音では無理だ。変な音が聞こえた段階で私が行く。

 

 そしてそのフロアの端に、八百万に個性で『偽物の柱』を作ってもらい、その中に潜んでいてもらう。当たれば一撃必殺の『捕獲テープ』ならぬ『捕獲ネット』を打ち出せる銃を持って。

 

 そして、戦闘中に隙があれば、無理そうならどうにかして私が気を引いて隙を作るから、射程圏内に入ったヒーローを一気に『捕獲ネット』で捕獲する、と。

 ホントは2人まとめて一網打尽にできれば一番よかったんだが、まあ贅沢は言うまい。

 

『常闇少年、君は『確保』扱いだ! 悔しいだろうが、そこで待機しているように!』

 

「……承知」

 

 無線機の向こうから聞こえたオールマイト先生の声に従う意思を見せ、身動きをやめる常闇。

 さて……コレで残るは、蛙吹だけだ。

 

 その直後、八百万は柱の中からさらに2丁の『確保銃』を取り出し、それを手に階段の前まで行って立ちふさがった。射程距離のある、それも攻撃範囲が広い『網』を放ってくる武器が相手では、伸びる舌を持つ蛙吹でもうかつには近づけないだろう。

 

 何より、もたもたしている間に私が後ろから襲い掛かるし……そうでなくともここからは、八百万が守りに回っている以上、蛙吹は私と戦わなければいけない。戦闘能力では黒影よりも劣るだろう彼女には、それは無理だと即座に分かるはずだ。

 

「けろ……仕方ないわね」

 

 そうつぶやく蛙吹。

 諦める、という意味ではないことは、次の瞬間の彼女の挙動ですぐ分かった。彼女は蛙の脚力を活かして、窓目掛けて突っ込んでいく。

 

 そのまま、腕を顔の前でクロスさせて突っ込み、ガシャアン!! と窓ガラスを派手に割って外に飛び出した。なんか、こう……脱出の仕方がかっちょええ。

 

 おそらく、あのまま壁面に張り付いて直で上の核を目指すつもりなんだろう。

 私達が2人ともここにいるんだから、逆に言えば核を守っている奴はいない。トラップだけで守られている。

 窓を割れば音で見つかるとかそのへんはもう気にしなくていい。それらを強引にでも何とかやり過ごせば、核を確保できると考えたんだろう。

 

 だが……

 

 ――ビタァッ!

 

「……けろ!?」

 

 窓を突き破った蛙吹は……その窓の内側から出て来た、というか仕込まれていたテープネットに取っ捕まっていた。常闇と同じくがんじがらめになった状態で宙づりになっている。

 『確保ネット』じゃなく、無色透明のただのテープで作られたネットだから、そうなっても確保扱いにはならないが……身動きできなくなったことには変わりない。

 

 そして、蛙吹が状況を飲み込めずに混乱している間に……

 

 

『タイムアップ! 15分経過だ! よってこの試合、ヴィランチームWIIIIIIN!!』

 

 

 無線から流れて来たその声が、戦いの終わりを告げた。

 

「やられたわ、八百万ちゃん、栄陽院ちゃん。まさかこんな罠まで用意していたなんてね」

 

「最上階の窓の罠は、見てわかる罠ばっかりだったからな、盲点だったか? きちんと目に見えない形でトラップがあったことにさ」

 

「ええ……それもまさか、こんな手の込んだ作りにして隠していたなんてね、そんな時間はなかったはずだけど……どうやったの?」

 

「そのへんは、この後の講評の時にでもな」

 

 

 

 


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