クロスオーバー……ではない、と思う。ギリギリ。
わかる人にはわかる……と思う。ちょっと難易度高いですが。
打ち合わせの場で、色々な情報共有を行った後、私達はそれぞれ担当地区を決めて捜索に出た。
いなくなったのは、本州から遥か南に位置している離島『那歩島』から家族でキャンプに訪れていた、島乃真幌ちゃんと活真くん。
お母さんは……どうやらいないらしく、お父さんと3人でここを訪れていた。
聞けば、2人は普段から、出稼ぎで基本的に本州・都心にいるお父さんとは別れて暮らしているらしく、年のわりにしっかりしている。そのため、野外でも危険な遊びはしないし、帰って来れないようなところにはいかない。むしろ、自然が多く残る島で育ったために、そのあたりは普通の都会の子供よりよほどしっかりわかっているのだという。
そう思って油断して目を放してしまった。『お昼ご飯までには帰ってくるんだぞ』といって、山で遊びたいという2人を送り出してしまい、気が付いたら戻ってこなくなったそうだ。
……親としてそれはちょっとどうなんだ、と思うのは私だけだろうか。
しっかりしてるとはいえ、聞けばまだ小学校低学年か中学年くらいの子供のようだし……むしろ、普段触れ合う機会のない子供達なんだから、傍にいてあげた方がよかったんじゃないかな。
いや、人の家の家庭事情に首突っ込む気はないけどさ……
ハイキングコースをいくら探しても見つからないのでキャンプ場のスタッフに相談がいき、それでも見つからないので、緊急だと判断して私達に話が来たわけだ。
ともあれ、小さい子供2人が山で遭難なんて、成人に比べて危険度が段違いだし……それに加えて、明らかに非常事態……いや、『異常事態』だと判断する根拠がもう1つあった。
ラグドールが、『個性』でその追跡を行えなかったのだ。
彼女の個性『サーチ』は、目で見た人の様々な情報が100人分まで丸わかりになる、非常に強力で便利な『個性』だ。もちろんそれは、居場所や、状態なんかも含まれる。
彼女はそれを利用して、今日のキャンプ参加者全員を今朝、一度視界に収めている。万が一迷子になる人が出ても、即座に追跡して救出できるように。
だから今回みたいなケースは、ラグドールがいる限り緊急性は本来、ないのだ。彼女の情報提供を受けて、マンダレイの『テレパス』での指示を聞きながら、パトロール班がすぐにそこへ駆けつければ、それだけで解決するから。
しかし、それができなかった。『サーチ』でその2人の行方を追えなかったのである。
考えられる可能性は2つ。
1つは、ラグドールの『サーチ』が届かないほど遠くに行ってしまったか。
もう1つは……何らかの理由で『サーチ』によるマーキングが解除されてしまったか。
どちらにせよただ事じゃない。この短時間で、子供の足で、しかも山を歩いて『サーチ』の範囲外に出るなんてことは不可能だし……後者の理由はどういうわけでそうなるのか予想もつかない。
幸いと言っていいのか、事故か何かで亡くなってしまったから、という可能性はない。死亡したならしたで、彼女の『サーチ』はそれすら判別できるから。
私は例によって取陰と組んで、担当する地区内を探し回った。取陰は、許可取った上で『個性』もフルに使って。
しかし、見つからない。通信越しに、誰かが見つけたっていう報告も一向に入らない。
それどころか……さらにとんでもない報告まで入ってくる始末だ。
「はぁ!? 洸汰君もいない!?」
『そうなの! いつまで経っても戻ってこなくて……『テレパス』で指示してからもう1時間近く経つのに……!』
捜索開始から小一時間経ったくらいの時間に、突如マンダレイから追加の通信が入った。『テレパス』ではなく、オープンチャンネルでの通信で。双方向にやり取りできるように。
コテージの事務室での打ち合わせの時、その場に洸汰君はいなかった。
例によって1人で遊びに出てるんだと思っていた私達は、それを特に気にしないでしまった。ラグドールの『個性』で監視してるのはキャンプ客だけだったから、私達や彼は、その時点では『サーチ』の対象外だったし。
それでも、マンダレイが『テレパス』で『非常事態だからコテージに戻って!』と指示を出したし、彼も彼でしっかりしてるから大丈夫だとは聞いてたんだけど……
なお、今回は役割分担で、コテージに司令塔として塩崎とマンダレイを残し、他全員で捜索している形だ。すれ違いで、自力でコテージに戻ってくる可能性もあったし、必要に応じて山の地図やハザードマップなんかを参照する必要もあったから。
『それだけじゃないの! ごめん、この情報、もっと早く手に入れられてればよかったんだけど……キャンプ客の子供たちの中に、例の姉弟2人が、角みたいな飾りのついた帽子をかぶった男の子と一緒にいたのを見たって子がいて……』
「……あのガキンチョ、そんな帽子被ってなかった?」
「被ってた。刺さったら痛いのかなってどうでもいいこと考えてたから覚えてる」
ってことは……遭難者(多分)3人かよ……ていうかいつの間にそんな友達作ったんだ、あの、なんかコミュニケーション能力に難がありそうな感じの少年が。
幸いと言っていいのか、3人共山歩きや自然探索なんかにはなれてる様子だけど……いや、逆にそんな面子が揃ってどうしてこんなことになってるのかって不安も大きいな。
あまり考えたくないけど、何か事件に巻き込まれた、なんて可能性は……
通信の向こうで、緑谷の声で、
『他に何か情報ありませんか? 捜索に役立ちそうな……後は……洸汰君の『個性』は?』
『役立つかどうかはわからないけど……洸汰のは水の『個性』よ。親譲りの……手から水を勢いよく放出できる『個性』! あの子、私達に隠れて『個性』の訓練とかしてたみたいだから、その気になれば結構な量と勢いで放出できると思うけど……』
「……ん? 水? ねえちょっとダイナージャこっち来て! 何か見つけたかも!」
と、それを気いた瞬間、取陰がはっとしたように言った。
インカムでの通信越しにそれは全員に聞こえたようで、『どうした!?』『何かあったの!?』と声が聞こえてくる。マンダレイの声が一番必死そうだな……当然かもだけど。
その取陰だが、現在左目と左耳がない。あちこちに飛ばして情報を集めてるせいだ。
「なんかこう、上手く言えないんだけど……飛ばした目で、めっちゃ水に濡れてる岩壁みたいの見つけて……ここから南西に少し行った川岸! これからちょっとそこ2人で行ってきます。何か手がかりとかありそうならまた連絡……」
『待て、それならば痕跡探索になれている我らからも1人そこに向かった方がいい! 不慣れな者では見逃してしまうやも知れん!』
と、取陰のセリフを聞いて虎さんがそれを止めるように言う。次いでラグドールが、普段のお気楽な感じの声のトーンを捨てて、真面目なトーンで矢継ぎ早に、
『位置的には……ピクシーボブが一番近い! マップ確認、経緯度●●●-●●●! リザーディとダイナージャに合流して現場を調べて!』
『了解!』
そのすぐ後に私達は、リザーディが見つけた痕跡の場所に来た。
そこは、ラグドールが言っていた通りの川岸で、岸壁に……結構乾きかけだけど、広範囲、それも高い位置にまで水に濡れた痕跡があった。
すぐそこに川が流れているとしても、あんな所までは濡れないだろう……大雨で増水したとかならともかく……水しぶきとして見るにはピンポイント過ぎるし。地形からして、上から何か水が垂れて来た感じでもない。
少ししてピクシーボブも合流し、皆でその場所を調べていたんだけど……流石の観察眼というか、ピクシーボブが何かを見つけた。
『これ見て!』と呼ばれて行った私達に向けて、それを指し示して話す。無論、コスチュームに内蔵された通信をONにして、全員に聞こえるように。
「これ……何ですか? 何か、岩の一部が、硬いものでこすられたような感じになってますけど」
「多分だけどコレ、形状からして係留ロープの跡だよ。ボートとか停める時に括り付けて、流されないようにするやつ。碇みたいなもん。これがこんなところにあるってことは……」
「ここにボートか何かが停まってた? ……そんなもの止められるほど広さも水深もないと思いますけど……」
こんな浅瀬にそんなもん持ってきたら、速攻で座礁すると思うんだが。
しかしピクシーボブは、周囲の地形をすばやく確認して……周囲の岩にも同じような痕跡をいくつも見つけ出した。さっき見たのよりもずっと小さい痕跡も見逃さずに。
その位置関係を考えて彼女が出した結論は、小さ目のゴムボートとかカヌー、カヤックなら不可能じゃない、というもの。
「どうしてそんなものがここに停まってたのか……誰が何の目的で停めておいたのかはわからないけど……仮にこの水の跡が洸汰君の『個性』によるものだとしたら……」
「洸太君……あるいはその2人の子は、ゴムボートでずっと遠くに流された可能性があるってことですか!?」
「ちょっ……それまずいんじゃ……この川、結構流れ速いよ!? もしそうなら、ラグドールの『サーチ』の範囲から出ちゃってもおかしくないかもだけど……万が一落ちたりしたら……っていうかなんでそんなことに!? 係留されてたボートのロープに悪戯でもしたとか!?」
「私に聞かれてもわからん! とにかくこれ思ったより深刻! マンダレイ! 聞こえる?」
『聞こえてるわ! すぐにその川の流域に活動範囲のあるヒーロー事務所と、管轄の警察署に連絡を入れて応援を要請する! ピクシーボブ、リザーディ、ダイナージャはその川の下流域の捜索を、虎とラグドールはその分の捜索面積のカバーをお願い! 念のため他のエリアの捜索も同時進行で進めるから!』
それからしばらく、付近のヒーロー事務所も巻き込んで探し回ったけど……手がかりはほとんど見つからず、時間ばかりが過ぎていった。
全く見つからなかったわけじゃない。子供3人が歩いた後思しき足跡や、それ以外にも水の痕跡が見つかったりもした。近くに水場がないのに明らかに不自然なほど大きな水たまりがあって……しかもそれが木陰で、乾きが遅かったようだからわかったらしい。ぬかるんだ地面には、既に乾いてしまった部分も合わせて、子供用の靴の足跡が残っていた。
ちなみにそれを見つけたのは緑谷と麗日だ。そして、それを追って歩いてきたところ……足跡は途中で途切れてしまったものの、私達が痕跡を見つけた川岸近くにまでそれらは伸びていた。懸念していた事態が、より一層現実味を帯びた結果になった。
時刻はもうじき夕方になる。暗い時間帯の捜索は、探す方も危険だ。あと1時間かそこらで今日の捜索は打ち切りになってしまう。
そんな風に考えて、焦り始めた私達の元に……その数分後、予想外すぎる方向から情報が入ってきた。
☆☆☆
それから数時間後。
夕方どころかもうそろそろ日も暮れそうになっている時間帯。
私達は……捜索場所から遠く離れたある場所にいた。
といっても全員ではなく、ワイプシからはマンダレイとピクシーボブが、雄英生からは、私、取陰、緑谷、麗日の4人がここについてきている。痕跡の発見や、その他色々な意味での当事者だ。
ついさっきまで、『打ち合わせ』ないし『引継ぎ』を行っていたんだが……今はとりあえず、休憩ってことで、客間みたいな部屋で休ませてもらっている。
で、ここがどこかって言うと……海難ヒーロー『セルキー』の事務所である。
「けろ……大変だったわね、皆」
「今はとにかく、私達に任せてゆっくり休んでください。引継ぎが終了した以上、私達も動くことができますから」
と、聞きなれた声と聞きなれない声の両方が耳に届く。
片方はまあ、口癖から蛙吹…――もとい、ここでは『フロッピー』――だというのはわかると思うが、もう1人は、ここの事務所に勤めるヒーローの1人、『シリウス』さんである。顔の横にひれみたいなものがついているのが特徴の、セーラー服が実によく似合う美少女だ。
個性は『グッドイヤー』。耳がすごくいい。可聴域外の音を拾ったり、超音波なんかを聞き取ってエコーロケーションみたいなことをすることもできる。
さて、どうして私達がこんなところにいるのかといえば、夕方も近づいたころに入った通信により、例のゴムボートがようやく発見されたからだ。
しかしそれが発見された場所は、私達がいた地点よりはるか下流。時間ずっと流されっぱなしでもたどり着くかどうかっていうほどの場所というか位置だった。
それこそ、沿岸付近を縄張りにしている、このセルキー事務所の活動範囲にギリギリ入ってしまっているほどの位置だった。当然のように県境も超えている。
加えて、強烈に違和感を覚える……というか不自然な点があった。
そのボートに残されていた痕跡だ。
まずそのボートだが、救命ボートみたいな簡易的なものではあったのだが……動力付きだった。ある程度練習すればだれでも使えるような簡単なエンジンがついたもので、手でこいだりする必要はなく、手漕ぎ式よりも速く移動できる。
そしてその動力には、満タンまで燃料が充填された痕跡があり……しかし発見された当時にはほとんど残されていなかった。つまり、動力を使って移動してきたということだ。
次にそのボート、どう見ても子供2~3人が乗っていただけの痕跡ではなく、成人男性かそれに準ずる体格の者が複数人、2~3人は乗っていたような痕跡だった。それでいて、子供が乗っていた痕跡もあった。土足の足跡なんかがその代表例だったようだ。
また、ボートには毛髪が残されており、そのうちのいくつかは、明るい茶髪。DNA鑑定の結果、真幌ちゃんと活真君のお父さんとの親子関係が認められた。つまりは彼らの毛髪だ。
そしてそして他のもののうち、黒色のものの1つは、コテージの枕に残っていた洸汰君のDNAと一致。この時点で、彼らがこのボートに乗っていたことが確定した。
そして一番重要なのがここなのだが……それらの毛髪以外にも、まだいくつかの毛髪が残っていたんだけども、そのうちの1つが……警視庁のデータベースに登録されていた、前科のある犯罪者のDNAと一致した。
動力を使って移動した形跡のあるボート。
大人数人と、真幌ちゃんと活真君、そして洸汰君が乗っていた痕跡。さらに大人の1人は前科者の犯罪者。
予想をはるかに上回ってまずいことになっている。彼らは何か、事件に巻き込まれてしまっている可能性が非常に高い。
ゆえに、情報提供と引き継ぎのためにこうして、私達は直接セルキー事務所を訪れ……しかし日中からずっと動きっぱなしだったことで疲労が蓄積していることを指摘され、しばらく休んでいるよう言われてここに通されたわけだ。
今、蛙吹とシリウスさんから出されたコーヒーその他を飲んで休んでいる所だ。
マンダレイは最後まで『協力させてください!』って言ってたが、セルキーさんは頑として『今は休め』の姿勢を崩さなかった。肉体的にはともかく、精神的には無理をしてるのが丸わかりだったからだ。それこそ、素人の私達にも。
今は部屋に置いてあるソファに腰かけて、うつむいてじっとしている。食欲がないのか、出されたコーヒーにもお茶請けのお菓子にも手を付けた様子はない。
ピクシーボブ曰く、『彼女もきちんとプロだから、少しすれば調子を取り戻す。今はそっとしておいてあげて』とのことだけど……
「心配はいらないわ緑谷ちゃん。セルキーさんはこの辺りの地形は、海だけじゃなく港湾周辺まで含めて知りつくしてるし、周辺のヒーロー事務所とのチームアップも既に済んでるわ。もっとも、それは別件での協力を見据えてのものだったようだけど……きっと見つかるわよ」
「そう、かな……うん、そうだよね。ありがとう梅雨ちゃん」
「けろ、いいのよ。不安になる気持ちはわかるし、緑谷ちゃんは優しいものね」
視界の端では、同じように不安になってそわそわしている緑谷を、コーヒーのお代わりをもってきた蛙吹が慰めていた。表情は変わらないけど……それなりに長く一緒に過ごしていると、彼女の表情というか感情の微妙な変化もわかるようになってきている。今は、不安がる緑谷を慈しみ、労わるような感じのそれになっている。
隣にいる麗日は、緑谷が少し楽そうになってよかったと思っている反面……女としてだろうか、少し複雑な気分にもなってるように見えた。
そのまましばらく部屋の中が静かだったんだが、ふいに、ソファに座っていたマンダレイが、『ごめんなさい』と、呟くように口を開いた。
さっきより少しは落ち着いたようだが、依然として悲痛そうな表情である。
「私がもっとしっかりしていれば……こんなことには……」
「何言ってるのよマンダレイ。この事件であなたに責められるような個所なんでないでしょう? 行き過ぎた自意識過剰な罪悪感なんて持ってても、誰もそんなの求めてもいないわ」
少し強めの口調で、ぴしゃりというピクシーボブ。
「ラグドールの『個性』による監視だって、彼女の脳のキャパシティーがある以上、常に全員を見ていられたわけじゃない。キャンプは人数も多いし、範囲も広かったからね……走り回るから小さな怪我をする子なんて珍しくもなかったから、対処に忙しかったんでしょ?」
「それでも……請け負った以上は仕事は果たさないといけなかったはずよ。それに、仮にキャンプ地の方は多忙で限界があったとしても……私は、洸汰の保護者なのよ……あの子のこと、きちんと見ていてあげるべきだった……仕方ないなんて思って、距離を置いたりせずに……」
その言葉に、緑谷がふと何か思いついたように聞いた。
あるいは、今のこの空気を、どうにかして方針転換させられないかとか思ったのかもしれないが。
「あの……気になってたんですけど、マンダレイの従甥なんですよね、洸汰君って? どうしてマンダレイが面倒を見てるんですか? ご両親とかって……」
ただなあ……この手の話題は、えてしてもっと重い話につながりかねないんだが……
それを予想していたかどうかはわからないが、緑谷も少しして『あれ、まずいこと聞いた?』って表情になったものの、マンダレイはどうやら隠しておく気はないらしく、
「そうね、話しておいた方がいいか……洸汰の……あの子の両親はね、2人共プロヒーローだったの。でも……殉職してしまったのよ」
☆☆☆
沿岸部のすたれた倉庫街に、今はすでに潰れてしまった会社の、もう長いこと使われていない倉庫や工場がある。
一時期は不法就労者の温床になっていた場所だが、最近では電気もまともに通らなくなり、不法就労すらできなくなってしまったとして、誰も手をつけないまま放置されている。
そこに今夜は、やけに多くの、しかも身なりを小綺麗にした人間たちが集っていた。
もっとも、小綺麗という以外にも、やたらと奇抜な恰好が目立つ者達でもある。
大きく2グループに分かれ、向かい合う形を取っている。まるでこれから、悪の組織同士が裏取引でも進めるかのような光景だが……実際その通りだ。
片方は、ペストマスクや、それに似た形状の仮面を顔に装備している者達。大柄なものからやたらと小柄なもの、若い者から壮年の者まで様々いるが、どうやらその中心にいる、年若い、しかし隙の無いたたずまいの青年が彼らのボスのようだ。
そしてもう片方の団体は、大きく分けて2種類の構成員がいるようだ。作業用のツナギに身を包んでいる者と、背広など正装を纏っている者。そしてその中心にいるのは、スーツに加えて、厚手のコートと、なぜか潜水用のマスクのようなものをつけて、顔を半分隠している男だ。
双方のボスと思しき2人の視線が交差する。
「遅かったな……『キュレーター』」
「遅いって、約束の時間より15分も早く来てるんだがな……ああ、日本のヤクザは30分前行動が基本だっけか? 『オーバーホール』?」
「……まあいい、さっさとビジネスの話に移ろう。品物はきちんと持ってきてるんだろうな?」
「当たり前だろ。そっちこそ……? 何だ、事前の話にはなかったモノが転がってるように見えるが……いつから『死穢八斉会』は人身売買なんぞ始めたんだ?」
「別に。部下がバカやってな、成り行きで攫って来たガキだ。これから口封じするとこだが、お前のとこは人も取り扱ってたと思ってな? 欲しけりゃ安くしとくが、どうする?」
男達の視線の先。
そこには……薬で眠らされ、ピクリとも動かないでいる……茶髪の姉弟と、黒髪の少年が、手足を縛られた状態で床に転がされていた。
今回、『敵』枠で2人ほど出てきてもらいました。
『オーバーホール』:
ヒロアカ原作キャラ。ただし、出番は夏休み終了後、『ヤクザ編』。ワイプシと同様、フライングして登場。
『キュレーター』:
ヒロアカのアーケードカードゲームに登場したキャラ。ヒロアカ作者の別作品の悪役の流用である。館長、って言うとわかる人にはわかる。興味ある人は調べてみてね。