TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第94話 TS少女と試験終了……?

 

 試験終了し、後は解散……ってなるのかと思ったんだが、私達は終了後、集合場所だったバス乗り場に再度集合していた。

 

 皆、どうやら大きなケガもなく……無事のようだ。怪我した者も、リカバリーガールの治癒で既に治ってるしな。

 

 ただ、その時に見たんだけども……今回用意されてたあの仮設テントみたいなの、『リカバリーガールの出張保健所』になってたんだが……。

 保健所? 保健室じゃなくて? 意味違ってくるよな……

 

 ともあれそんな感じで、皆きちんと無事に戻ってくることができて、元通り整列している。

 

 ……まあでも……

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 試験結果まで無事だったわけじゃないのが残酷なところだが……

 

 なんか、集合場所の一角がお通夜ムードだ。理由は明白だが。

 芦戸、切島、上鳴、砂藤の4人が……課題クリアできないままにタイムアップを迎えてしまったのである。

 

 この試験、事前に『林間合宿に行けるかどうか』がかかった試験だというのは、相澤先生が大々的にアナウンスしていた。そして、彼らはクリアできなかった。

 ……つまりはそういうことだ。

 

「皆……お土産話、っひぐ、楽しみに……うう……してる、から……!」

 

 嗚咽をこらえて言う芦戸。

 上鳴も切島も、普段の元気さ、テンションの高さが嘘のようにお通夜である。

 砂藤も……なんか背中に影を背負ってて……重苦しい……。

 

 悲痛だ……見てらんない。何て返すのが正解だよコレ……?

 みんなの分まで楽しんでくるね、とか……いやコレは違うな。泣くな芦戸たぶん。

 

 今も緑谷がどうにか励まそうとして……しかし失敗して上鳴に攻め立てられている。

 

 慰めなんていらないと。どんでん返しなんて起こりっこないと。

 

 コレはあれか、なんかもうやけくそでテンション変になってんのか?

 

 などと考えているうちに、相澤先生がやってきた。全員、習慣で背筋が伸びる。

 朝と違って全員が集合するわけじゃないようだ。来てるのは相澤先生だけだし。

 何か連絡事項でもあるのかな? あるんだろうな……いい内容じゃなさそうだが。

 

 表情と声のトーンはいつも通りのまま、先生は続ける。

 

「えー……諸君、試験ご苦労だった。結果についてだが……残念ながら赤点が出た。したがって……

 

 

 

 林間合宿は全員行きます」

 

 

「どんでん返しだぁ!」

 

 

 

 またこのパターンですかい。

 いや、よかったけども。皆で行けて。

 

 先生によると、筆記は赤点なし(もう採点終わったのか)、実技の方は、課題を達成できなかった4人と……瀬呂が赤点だった。頑張ったのが峰田1人で、何もできなかったからって。

 普通に不合格で赤点になるより恥ずかしいって、落ち込んでた。……ドンマイ。

 

 予想した通り、あの試験は生徒個々人に合わせた課題を設定し、また意図的に勝ち筋を残して課題と向き合わせていたそうで……その部分が足りないと判断されたわけだな、5人は。

 

 で、林間合宿は元々『強化合宿』なので、赤点取った奴らにこそ励んでもらわなければならないってことだそうだ。

 

「しかし、こう何度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!」

 

「わあ、水差す飯田君」

 

 4人が喜んでる傍でそんなことを言ってくる飯田……と、穏やかに突っ込む麗日。どっちもいつも通りで結構。……疲れてる分、若干キレがないかもだが。

 

「まーいいじゃん飯田、誰も不幸になったわけじゃないんだからさ」

 

「む、それはそうだが、コレはあくまで信頼感の欠如につながる故の問題であって、不幸云々ではなくてな……」

 

「それを言ったら、そもそも私らがきちんと課題をこなして、それこそ教師陣の信頼に応えてればよかった話だろ? そこらへんをついてもたらされる精神的な負担くらいは甘んじようぜ」

 

「! なるほど一理あるな……そうだな、これを機に一層奮励努力に励むこととしよう。求められているものに的確に応え、いやそれ以上の成果を上げることができてこそヒーローというわけだ!」

 

 細かいところを気にする割に、割と簡単に納得する飯田。

 ……今の、自分で言うのもなんだけど割と暴論だった気がするんだが……まあいっか。

 

「ちょっとちょっと飯田くーん! 永久ー! 何もうそんなとこで景気の悪い話しないでよー、折角一緒に行けることになったんだからさー!」

 

「そうだそうだー、それに俺達、行けることになったからって傷ついてないわけじゃないんだぞー! 慰めろー、甘やかせー!」

 

 と、芦戸と上鳴が……行けるとわかった途端にこれか。現金なもんだ。

 

 まあ、気持ちはわかるから無理もないけど……とか思ってたんだが……

 

「おい、まだ途中(きゅぴーん)」

 

 光る相澤先生の目。一瞬で静まり返る一同。

 あ、まだあったのね話……そういやもう終わりとはまだ言ってなかったな。

 

「今しがた飯田が言っていたことにもまあ、一理あると言えばそうだ。そこらへんは以後鑑みるよ……ただ、全部が全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ、お前らには林間合宿の際、別途に補習時間を設けてる。……ぶっちゃけ学校に残っての補修よりきついからな」

 

 その宣告に、再びお通夜ムードに突き落とされる一同。

 しかも今度は瀬呂まで加わって……ああ、痛々しい。

 

 まあでも、行けないよりましだろ……大変なくらいは、うん、頑張れよ。乗り越えろ。Plus Ultra。

 

「合宿のしおりについては来週以降配る。そこに記載するスケジュールを参照すればわかるが……まあ先に話しとくか。基本、夕食後の自由時間とか睡眠時間の枠が削られて補修に充てられる」

 

「睡眠時間、削るんすか……?」

 

「それ、昼間きつくなるんじゃ……べ、勉強の効率とか、ほら……もっとゆとりを、ね?」

 

 険しい顔になる砂藤。次いで上鳴が、どうにか条件を緩和しようとしてか、一応もっともなことを言ってみたりするが……しれッと返される。

 

「心配するな。多少負担にはなるだろうが、それでも最低限の睡眠時間は確保できるプランニングになってる。ただ、勉強を終えてから何もせずすぐに寝て、朝起きてまた勉強を始めるサイクルに努めればいいだけの話だ」

 

 夢も希望もない追い打ちの宣告と共に。

 毎日毎日仕事ばかりで趣味や遊びの時間がない、社畜みたいな生活習慣になるのか……

 

 補習組が背負う闇が深くなっていく……心なしか常闇の黒影が元気になりそうな気すらする。

 

 しかも恐ろしいことに、まだ『下』が用意されていた。

 

「ちなみにもしそれでも足りなければ、他の勉強でも睡眠でもない他の時間……レクリエーションの部分を削る。肝試しとか、花火とかな」

 

「う そ だ ろ!?」

 

 ああ、芦戸が崩れ落ちた……。

 

 さ、流石にここまでくると……『行けるだけよかったじゃん』って言うのすら……

 ガチで補習組はきついだけの強化合宿になりそうだな……場所が学校か合宿所かだけで、楽しい場面にいられないの事態は変わんなくなってくるから……

 

 レク削減は……『そうならないように頑張れ』としか言えん、か……と、思っていたが、

 

 

「……と、言いたいところだが」

 

 

 相澤先生、今度こそ話が終わるかと思っていたところで、さらに何かある様子。

 補習組も、その他の生徒も、みたび視線を集中させる。

 

「赤点である以上、そういう扱いにするのが例年のことであるし、そうでもしなければならない状況にその個人個人が置かれているのは確かだ。が……ここでクラスの他の連中との足並みが乱れたり、仕方なくでも効率が下がるってのも、それはそれで完全に合理的とも言い難い。特に今年度は試験的なカリキュラムをいくつも実施している分、なるべくペースは乱したくない。なので……」

 

 一拍、

 

「救済策を用意した。つまりは……『追試』だ」

 

「「「!?」」」

 

「コイツを受けて今度こそきちっと合格点を出すことができれば、その後、合宿前にいくらかの補講を行うことで、合宿日程中の補習授業は免除になる。もっとも、この『追試』は自由参加だから、内容説明も含めて、あくまで受ける者に限った話ではあるが……」

 

「「「受けます!」」」←補習組全員

 

 ま、そりゃそうだろうな……ここで受けないで、合宿当日苦労する方を選ぶって奴はいまい。

 折角用意された救済策だ。がんばって通常日程での楽しい合宿を送れるようにやり切ってほしいもんである。応援してるぞー、皆。

 

 がんばるぞー、おー! と気合を入れている芦戸達補習組、あらため追試組を、皆、微笑ましい目で見守っていた…………1人を除いて。

 

 

「おい、まだ途中」

 

 ――きゅぴーん

 

 

 微笑ましさの欠片もない視線と共に、静寂が戻ってきた。相澤先生、続きどうぞ。

 ため息と共に、やれやれ、と話に戻る先生。

 

「まあ、やる気があるのは結構だ。一応全員参加希望ということで話は受け取った。が……この『追試』について、いくつか注意点を含めた説明を今行う。お前ら全員、よく聞いとけ」

 

 ……ん? 何か今、相澤先生……補習組だけじゃなく、私達クラス全員に向かってそんな感じのこと言った気が……

 というか、私らを帰さないで同じ話を聞かせるのは何でだ? そもそもこういう話って、短い話じゃない以上、関係者だけ別室に集めてやる的なのが本来のやり方じゃ……

 

「……あの、相澤先生。俺達も一緒に聞くんですか? いや、別に面倒とかそういうわけじゃないですけど……」

 

「こういうのって、関係者だけを集めて話したりするものじゃないかしら? その方が5人も、落ち着いて聞けると思うのだけど……追試の話なんて、他人に聞かれたいものでもないはずよ」

 

 と、同じことを気にしたらしい尾白と梅雨ちゃんが質問する。

 質問事態は想定内だったらしく、相澤先生も『そうだな』と返していた。

 

「普通ならな。ただ……関係ある場合はそうはいかん」

 

 関係『ある』? 私らが?

 誰かが訪ねる前に、今度は先生が回り込むようにして、

 

「それも今から話すから黙って聞いとけ。まず初めに、今回の『追試』についてだが……受けるにあたっていくつか注意点、ないし条件がある」

 

「追試に……条件?」

 

「そうだ。まず1つ目……この追試は、赤点になった者が対象なわけだが、受けるにあたって、試験と同じペアで挑むわけではない。上鳴と芦戸、砂藤と切島はそれぞれ別々に受けることになり……瀬呂が受けるからって峰田が受ける必要はない」

 

 それを聞いて峰田、ガッツポーズ。正直な反応である。

 瀬呂がそれを見て微妙な表情になってたが、自分は何もできなかったのに加え、助けられた手前……何も言えないようだ。

 

 瀬呂が最初に峰田を助けたからこそ峰田が動けた、っていうバックグラウンドもあったけど、他人を助けたからと言って自分が戦闘不能になっていいわけじゃないしな……そういう考え方が甘い、ダメだっていうのは、あの『個性把握テスト』の時に、緑谷が先生に言われてたことだ。

 

「2つ目。この追試は……1人で受けることはできん。参加は2人1組とする」

 

「「「!?」」」

 

 え、どういうことそれ……今、試験でのペアは使わないって言ったばかりじゃ?

 しかも、それだと追試5人だから、誰か1人余るんだけど……

 

「3つ目。今言ったペアを作るのに際し……追試を受ける者同士が組むことはできない」

 

「「「!?」」」

 

 しかもまた意味わかんない条項が……しかしコレ、2つ目の条件と組み合わせて考えると……

 追試自体がペアじゃないと受けられない……でも、同じ追試対象者でペアを組むことはできない……ってことはつまり……。

 

「……追試対象者は、補習とも追試とも無関係な他のクラスメイトを巻き込んで、なんなら頼み込んで一緒に追試に出てもらわなきゃならねえ、ってことか……」

 

「そういうことだ」

 

 独り言じみた轟の言葉に、そしてそれを肯定した相澤先生の言葉に、ぎょっとする5人。

 いや、5人だけじゃないな……もしかしたら『巻き込まれる』かもしれないっていう、クラスの他の面々もちょっと警戒してる。

 

 うん、まあ……無理もないが。テストもう1回、しかも巻き込まれでやんなきゃいけないっていう可能性が浮上してきたわけだもんな……応援してるし、一緒に合宿楽しみたいとは思ってても……その辺の道連れになるのもOKかって言われると……

 

 それに、そんな条件で協力してくれる人を探すのが難しいっていうことを、追試組5人もまた理解している。突如として出現したハードルに、戦慄していた。

 

 なるほどな……これがあったから、私達全員を残して話を聞かせたのか。

 

 まあでも……

 

「もちろん、巻き込まれるだけってのは非合理的でもあるから、ペアを組むことになった相手には、この『追試』の分を追加の評価点として成績に加算することになるし、『フレックスタイム』の貯蓄に回すこともできる。講評やアドバイスも別個にもらえる。時間と労力は食うが、損にはならん」

 

 この一言でやる気出す者が何人か出てきてるあたり、向上心豊かなクラスなんだよな、うちは。

 

 空気が変わったのを5人も察して、誰に声をかけようか早くも考え始めたようだ。

 

 ……なんか芦戸が私に視線を送ってくるんだが……え、狙われてる? どうしようかな……

 

 しかし、さらにそこに冷や水を浴びせる我らが相澤先生。

 

「それと……一応言っとくが、間違っても暇な奴とか、単に仲がいい奴を適当に選んで声かけたりするなよ。追試のパートナーを誰にするか、よく考えて声かけろ」

 

 その言葉に、何人か『え、ダメなの?』って感じの表情になったが……果たして先生、気づかなかったのか、意図的に無視してくれたのか……

 

「……お前ら、この追試ってもんをどうして自分が受けることになったのかをよく考えろよ。期末試験……一体自分の何が悪くて、何が足りなかったから赤点になったのか、どうすればよかったのか。そもそも自分の課題とは何か……そして同じようなことが起こった際、どうすればそれを克服できるか、その為に力を借りるべきは誰か……考えることはいくらでもある。これは『追試』……言うなれば、何かしら足りなかったがゆえに逃してしまった、期末試験の延長上なんだぞ」

 

 苛立ち交じりではあるが、真剣なその先生の言葉に、はっとする者多数。

 

 ……つまりアレか。そこを考えるところから、取り組む姿勢を要求されている。言うなれば……

 

「パートナー選びの時点から、すでに『追試』は始まっている、ということか」

 

 と、障子。まさにそれだな……一気に重要度が増した。

 追試組の5人、本気で頭を回転させて考え始める。

 

 その様子を見て……まあ、先生も何かしら言いたいことがないわけじゃなさそうだったが……ひとまずは見守ってくれる判断を下したようだ。

 

「なお、期末試験同様、追試で何をするかは当日その時まで教えん。何が起こっても、何を要求されてもいいように備えておけ。そして、注意点4つ目、これが最後だが……日程についてだ」

 

 と、話は続く。全員また聞く姿勢になったところに……これまた結構な爆弾発言というか、重要、ないし強烈?な情報がぶっこまれてきた。

 

「『追試』の実施日程だが……開始は明後日の正午。そこから……翌日の正午まで、24時間の日程で実施する」

 

「「「一泊二日ぁ――!?」」」

 

 そんないきなり、しかも外泊って……しかも日程、近ッ! 明後日かよ!?

 

「ああ、でもあくまでそれが開始時間だから……移動時間考えて、集合は午前11時な」

 

 しれっとそんな情報まで付け足してくる先生。

 私ら一同、最後の情報が爆弾過ぎて何も言えん……つか、24時間かける試験って、何やらされるんだ……?

 

「先に言った通り、内容は教えられん。ペアを組む相手が決まったら、明日の正午までに俺に報告すること。報告がない場合は棄権とみなし、補習対応とする。なお……今回の演習でコスチュームが破損した者は、速やかに予備への取り換え及び修理申請を行っておくように。特に追試者及び協力者は、早いとこ直さないと間に合わなくなるぞ。以上だ、解散」

 

 最後の最後にどでかいのをぶっこんで、その場は終了となった。さっさと帰る先生。

 これは……とんだ延長戦が待ってたな……荒れるぞこれは、割とクラス中が最後まで……。

 

 結局その後、解散直後から……教室に戻るまで、戻ってからも、ずっと5人の追試組は悩み続け……時折、緑谷とか飯田、八百万あたりの、分析が得意な面々に相談しながら、自分の『課題』を探っていた。

 

 そしてその上で、放課後になるまでに全員悩みに悩み抜いて……それぞれが決めた、協力を要請するパートナーに対して、アプローチを行う。

 ある者はOKをもらい、またある者は断られて他を探し……

 

「永久! お願い……私の追試、一緒に受けて!」

 

「芦戸か。ああ……いいよ、私でよければ」

 

 とまあ、そんな感じで……放課後までにどうにか全員がパートナーを決めて、相澤先生に報告。明後日の正午から24時間の日程で、『林間合宿』の命運を……天国になるか地獄になるかを賭けた、勝負の『追試』に臨むことになった。

 

 なお、ペアの組み合わせは以下の通りである。

 

 

上鳴・飯田ペア

切島・爆豪ペア

砂藤・障子ペア

瀬呂・緑谷ペア

芦戸・栄陽院ペア

 

 

 さーて……思わぬ形で始まった、期末試験の延長戦。

 一泊二日のお泊り演習で、一体どういうことをやらされるのかね、っと。

 

 

 

 




試験は終わりましたが……ここからまたしてもオリジナル展開入ります。今回はそんなに長くは続きませんが。

そして、赤点メンバーは原作と同じになりました。
経験は積めて実力も上がったけど、『課題』はそのまんまだった様子……ということで。
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