TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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間に合ったぁ!

えー、今回、オリジナル展開である『追試編』となったわけですが、ここでの展開につきましてひとつ。

……少々、その……タグ詐欺になるような事態が発生してしまいましたので……すいません。
どういう意味かは……本編をどうぞ。


第95話 TS少女と追試験

(多くね? しかも、色々……)

 

 追試当日……午前11時。つまりは集合時間。

 一昨日の試験当日と同じく、バス乗り場に集合した私達なわけだが……そこに来た私が、まずパッと見の印象で思ったのが、そんな感想だった。

 

 そこに集まってる人数が……予想以上に多い。

 

 それ自体はしかし、期末試験の時も思ったことだけど……今回はさらに多く、そしてその多さが『異質』だ。何せ……

 

「何でB組が居……」

 

「聞いたよA組ィ! そっちは追試の対象者が5人も出たんだってェ!? アハハハハハ、どぉぉいうことかなぁ!? A組の皆は僕らB組よりずーっと優秀なはずなのに、あれれれれ、おかしくないおかしくない!? アハハハハハゴフッ!?」

 

 セリフの途中で割り込んで来やがったB組のクレイジー野郎に手刀を叩き込んで(拳藤の真似)黙らせつつ……改めまして、何でB組まで一緒にいるんだよ?

 今回の『追試』……A組とB組合同でやるのか?

 

 どうやらあっちも聞いてなかったらしく、きょとんとしている者もいれば、逆になんかやる気出している者もいる。別な意味でやる気を出して騒いできたバカ者は今黙らせたが……

 

 え? あ、物間(コレ)回収してくれんの? ありがと。

 えーと確か、B組の……吹出君だったっけ? よろしくね。

 

 で、あらためて見てみると……B組からは6人来ている様だ。つまりは、追試対象者はその半分……3人か。

 

 ……いや待て、違う。B組からは『5人』だ。

 よく見ると……

 

「あれ、ヤオモモじゃん!? なんでここにいんの!?」

 

 と、芦戸もそれに気づいて、B組の方に一緒にいる彼女……八百万に問いかけていた。

 彼女は昨日の時点で、追試対象者の誰のパートナーにも選ばれていなかったはずである。なのになぜか、ここにいる。しかも……

 

 それに八百万が『それは……』と答えかけたところで、

 

「私がお願いしたからです。パートナーとしてこの試験に共に臨んでほしい、と」

 

 それを遮って、隣に立っていた塩崎が答えた。

 つまり、塩崎がB組の追試対象者の1人で……八百万はそのパートナー。

 

「マジかよ、クラスメイト以外もありなの!?」

 

「そんなん聞いてねえ……いや、俺達が気付けなかったってだけか。可能性でも気づいて確認すれば、先生は教えてくれたんだろうな」

 

 驚く上鳴に、盲点だったとばかりに頭を抱える瀬呂。

 そこにさらに砂藤と切島が、

 

「でもまあ……そこまで残念がることもねえだろ。それに気づいてB組から選んだところで、必ずしも有利になるとも限らねえわけだし……そもそも俺らは俺らで、きちんと選んで頼んだんだしな」

 

「そうだぜ! むしろそんなこと言ったら、折角頼んで引き受けてくれたパートナーに失礼ってもんだろ。なあ爆豪?」

 

「知らねえ」

 

「コレだよ」

 

 爆豪のいつもの感じはともかく、残念がっていた2人も『それもそうか』と納得していた。

 

 そんな隠しルールはさておいて……B組からは、物間と、彼のパートナーであるらしい吹出、それに塩崎に……鉄哲と骨抜が参加のようだ。内、追試対象は、物間、鉄哲、塩崎の3人。

 

 骨抜は鉄哲のコンビか……こないだ取陰から聞いたけど、彼がB組のもう1人の推薦枠らしいな。『個性』はたしか、体育祭で地面を柔らかくしてたアレか……

 ……どうでもいいが、瀬呂や飯田みたいに顔全部隠れるコスチュームだからわかりにくいな。

 

 『ワーキングホリデー』で一度見てる塩崎はいいとして、鉄哲のコスチュームは……なんか、自前の防御力を生かすためのシンプルなデザインの様子。……切島とコンセプトがまた被っとる。

 

 吹出のは……マンガ、あるいは漫画家的なイメージか? インク瓶っぽいのに加えて、その他大まかには動きやすさ重視のデザインかな?

 

 で、物間(気絶中)だが……なんかフォーマルというか、正装って感じの服装なんだが……パーティーにでも出られそうな……。

 何、『個性』が『コピー』だから奇をてらう必要がない? って言ってた? あっそう、ありがと塩崎。……てらってないつもりなのかアレ。

 

「しかし、塩崎が追試って意外だな……頭も要領もよさそうなのに」

 

「……買いかぶりです、栄陽院さん。私などまだまだ未熟……かつての失敗を、未だ生かすことができなかったがゆえの、この醜態です」

 

 ? どういう意味だろ……って聞くより前に、

 

「全員揃ったな? それじゃ、これから試験についての説明を始める」

 

 相澤先生からそんな言葉が発せられ、全員背筋を正す。

 

 あ、今まで放置してたけど、先生方ももう集合済みである。

 で、こっちもこないだと同じように、人数多い……1、2、3……また8人か。

 

 相澤先生にマイク先生、エクトプラズム先生にセメントス先生、スナイプ先生にミッドナイト先生……それに、私の試験官だった13号先生に……B組担任のブラドキング先生。

 また、相澤先生の襟元から校長が出てきたり、不意打ち気味にオールマイト先生がでてきたりは……しないか。しないといいな。内容にもよるけどさ。

 

「言うまでもないことだが、今回の試験は、各々自分に足りないものがある者が集められた『追試』だ。ただ闇雲にやってまぐれで合格貰ったところで意味なんぞない。常に自分の課題と向き合い、それをどうにかするか考えながら取り組めよ」

 

「「「はい!」」」

 

 追試対象者8人の、揃った返事。

 

「よろしい、では説明に……入る前にひとつ、言っておくことがある」

 

「今回、お前達追試対象者とそのパートナー達に加えて……この試験を一緒に受ける者がいる。そいつらを今、紹介させてもらう」

 

 と、相澤先生と、ブラドキング先生も続く形でそんな説明が。

 

 ? 他に受ける奴がいるって……どういうことだ? A組とB組の追試対象者以外ってことだよな、今の言い方だと……

 

 ブラドキング先生が、後ろに停まっているバスに向けて『出てこい』と声をかけると……どうやら今までその中に乗っていたらしい人影が2つ、バスを降りて私達の前に姿を現した。

 

 それが誰なのかを目にして……私達のほとんどが『あ!』って感じの目になる。

 何せ、2人のうちの片方が……よく知ってる奴だったもんで。

 

 もう片方は知らな、い……?

 知らない、けど……どこかで見たような気が……。

 

 なんか、横で緑谷も、1人目を見た時に『あ!』って顔になった後、2人目の彼を見て『あれ?』って顔になってるし……どこかで会ったっけかな……?

 

 そんな私達の心中を知ってか知らずか、相澤先生とブラドキング先生はそのまま紹介を続ける。

 

「今回、お前達と一緒に本試験に参加することになる2人だ。普通科からヒーロー科に編入を希望している……まあ、希望している生徒自体は今年は結構多いんだが……」

 

「その中でも特に成績が上位、言ってしまえば最有力株の2人だ! 現時点での実力等の把握のため、今回一緒に試験を執り行う。では、自己紹介を。簡潔に」

 

 そう促され、その2人は1歩前に出て……

 

 

「今回、一緒に試験を受けさせてもらうことになった……普通科、C組の心操人使です。体育祭とかで世話になった人もいますが……全力で臨むつもりですんで。よろしく」

 

「普通科D組、青山優雅……遅れて来た星の輝きで、ヒーロー科を照らしに来たよ☆キラッ」

 

 

 ……だそうです。

 

 また何か随分と……変というか、濃いというか……独特なのが普通科に隠れてたもんだな。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 さて、そんなわけで。

 

上鳴・飯田ペア

切島・爆豪ペア

砂藤・障子ペア

瀬呂・緑谷ペア

芦戸・栄陽院ペア

鉄哲・骨抜ペア

塩崎・八百万ペア

物間・吹出ペア

心操・青山ペア

 

 以上9ペア、18人の参加者――ほとんどクラス1つ分だな――が揃ったところで、あらためて説明に入るようだ。……ここまで長かったな。

 

 なお、心操と……青山というらしい彼は、先生たちが言っていた通り、今現在普通科にいて、2年次からヒーロー科への編入を希望している生徒達の中でも、特に見込みがあるとされている2人だそうだ。

 ゆえに今回、現時点での実力の把握と課題の洗い出しのため、この『追試』の機会を利用することになったとのこと。

 

 彼らにとっては、編入試験……ではないけど、それを受けるまでの準備段階、ないしアピールタイムみたいな扱いなわけだ。気合も入るだろうな、そりゃ。

 

 ……2人とも、表情からそれは読み取りづらいけども。

 心操は相変わらずの仏頂面(そして寝不足気味を疑う隈で人相悪い)だし……青山の方は、こっちはこっちでなんか……ニコニコ笑ってばっかでよくわからん。逆に表情とか感情が読めん。

 発言も独特だし……なんか、色物感がすごい。ていうか、ナルシストか、もしかして?

 

 あと、何で青山の方は見覚えある気がするのかまだわからん……まあいいか、今は。

 

「今回の試験だが、期末試験と同様に、教師その他相手の模擬戦だ。もっとも、形式から何からだいぶ違うから、感触は全く異なるし、場面場面で柔軟な対応が求められるがな」

 

(…………? 教師……その他? 今何か、変な言い方を……)

 

 私……と、何人か、その言い回しの不自然さに気づいた者がいたようだが、止まらず説明は続く。

 

「今現在、ここには8人の教員がいるが……今回試験官として設定され、準備している人数はもっと多い。これから行く先の演習場φ(ファイ)で、ここにいる面々と合わせて……総勢18人の試験官がお前達を待ち構えている」

 

「18人!?」

 

「俺らの人数と同じじゃないっすか……え、もしかして、今回は模擬戦……2対2でやんの?」

 

「違う。最後まで聞け。さて、この追試験だが……当然ながら諸君らに求められているのは、心操と青山はともかく……本試験でできなかったこと、こなせず未だ残る『課題』の克服である。そのためにお前らには、それぞれの課題にあった相手との模擬戦を行ってもらう」

 

「と、ここまでならば期末試験と同様だ! だが、この追試ではさらに厳しくいく……1段劣っている所から、合格した生徒達に追いつくのだから当然だな。さて、追試対象者達には、事前に紙の封筒を1つずつ配布しているが、持ってきているな? それを今、開いて中を見てみろ」

 

 言われた通りに、私の隣で芦戸はそれの封を開け――っていうかそんなの貰ってたのか――中に入っているものを取り出した。それを横から覗き込んで見る私。

 

 中に入っていたものは2つ。いや、厳密には3つかもだが。

 

 1つは、名刺くらいの大きさの、白無地のカードが2枚だった。素材は……プラスチックか?

 特に何も仕掛けとかはなさそうな感じだが……ど真ん中に大きく、『5』と『14』って数字だけがそれぞれに書いてあった。

 

 もう1つは、地図みたいだ。コレは……さっき言ってた、『演習場φ』の地図か。

 A4サイズでラミネート加工されているそれは、あちこちに数字というか、番号みたいなのが書き込まれている。コレは何を意味してるんだろうか?

 数字は1から18まである……18、か。ってことは、恐らくこれは……

 

 それに『φ』って確か……雄英の敷地内にある演習場の中でも、特に大きくて広い1つだよな。

 

「中に入っていた地図。それのあちこちに書き込まれている番号は……全て、試験官がいる場所を示している。それらのうち、同じく封筒に入っていた2枚のカード……そこにかかれた番号が、自分が挑戦すべき試験官がいる場所だ。その場所で待っている試験官のプロヒーローにカードを提示し、模擬戦を行う。それを……24時間の間にこなせるだけこなす」

 

「こなせるだけ……? いただいてるカードは2枚ですが、ひょっとしてそれ以外の番号も?」

 

「そういうことだ。お前達の手元にあるカードの番号は、あくまで『必ずこなすべき課題』を指示しているもの。それ以外の番号の試験官による模擬戦も、任意で受けることができる。その場合はカードを二枚とも提示し、任意での受験であることを示して受けるように。そして、それによって出した結果は……自分の評価に加算される」

 

「つまり、受ければ受けるだけ、アピールの場になると。それがプラスに転ぶかどうかは別にして」

 

「そういうことだ。ただし、他の人が受けている場合は無理だし……原則として『必ず受ける』奴が優先だがな。それと、それで無駄に怪我したり、無様晒してちゃ逆効果だと思え。自己管理とか適切な現場判断ができてない証拠だからな。あとは、必須課題との間に順番の指定は特に設けないから、どういう順番でやってもいいが……その2つの課題が、明日正午……すなわち試験終了時点で、どちらか1つでも未達成の場合は、問答無用で赤点、補習決定だから注意しろ」

 

 ふむ……まとめるとこんな感じか。

 

・広大な試験場内のあちこちに、1から18までの番号が割り振られており、それらの場所でプロヒーロー達が試験官として待ち構えている。

 

・追試対象者及びそのパートナーは、それらのうち、必ず受けるよう指定された2カ所を含め、制限時間内に回れるだけ回って課題、ないし模擬戦をクリアする。

 

・時間や体力に余裕があれば、指定された個所以外でもいくつでも受けていい。受ける順番は早い者勝ちで、既に他の者が受けていたら、順番を待つか他に行くこと。なお例外として、その課題が必須課題の者は順番を優先とする。

 

・制限時間は今日の正午から明日の正午までの24時間。

 

 これらのルールの元、課題をこなすのはもちろん、できるだけ自分の成長や改善をアピールすることが肝要になるわけだ。そのためには、必須の2つに加えて、自由参加の他の試験も積極的に受けて積み重ねていくべきだろう。

 

 

 

 その後、一通り説明した後で、相澤先生から『バスに乗れ、移動する』と告げられ、私達は全員同じバスに乗って目的地へ……『演習場φ』へ向かった。

 

 バスの車内にいる間に、簡単に作戦会議?とかしたものの……相手がどんなヒーローで、どういう模擬戦をこなすことになるのかがわからない以上、対策なんてろくに考えられないので……私達の連携とかそのへんの簡単な確認に終始した。まあ、仕方あるまい。

 

 そうして到着した『演習場φ』は……なんか、超大型のテーマパークみたいな外見だった。

 というか、そのものなんじゃなかろうか。各アトラクションも動いてるみたいだし……っていうかこの番号って、もしかしてアトラクションの位置に対応しているんじゃないか? 位置的に、そんな気がしてきた……

 

 入場口から入って、それぞれ指定されたスタート地点に行く。

 ここからだと……5番のアトラクション……もとい、試験官が近いな。誰が待ち受けているのかはわからんけど……だったら行けばわかるってだけの話だ。

 

 芦戸も、色々とややこしいというか予想外な事態に戸惑っていたものの、覚悟を決めたようだ。これから24時間の間、合格へ向けて全力で戦い抜く覚悟を。

 

 全ては、楽しい『林間合宿』のため……クラスメイト達との、楽しい夏の思い出作りのために。

 

 カウントダウンだ。5、4、3、2……

 

『期末試験追試、レディー…………ゴォ!』

 

 あ、今回もアナウンス役、リカバリーガールなんだ。

 

 じゃ……試験開始だ。5番のアトラクションに行こう。

 

 

 

 




【速報】青山優雅、復活。

1年A組から姿を消してしまった彼ですが、普通科にいました。そして、今、復活しようとしています……。
……当初はホントに彼は出す予定なかったんですけど、ちょっと展開上、色々思う所があって……すいません。
気が向いたら応援してあげてください。

あ、それとタグもちょっと変えました。詐欺にならないように……手遅れ? 知ってる。

なお、心操、青山ともにヒーロー科じゃないので、ジャージ姿です(ただし心操は捕縛布、青山はベルト装備)。コスチュームはありません。

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