同級生に対してこんなことを考えるのって失礼かもしれないけど……芦戸とその後も試験をこなしていく中で、彼女の成長をどんどん目の当たりにして行って、なんだか微笑ましい気持ちになってしまった。……今日何回目かな。
クラスでも知られる……というか、なんなら自他共に認める感じで元気いっぱい、ただしちょっと頭の部分が足りないところがある彼女だが、いくつもの『アトラクション』をこなす中で、きちんと『考えて動く』っていうことを学んでいっていたようだ。
『コーヒーカップ』を模したエリアでは、乗っていて大丈夫なカップとそうでないカップがあって、不規則にそれらが入れ替わる仕組みだった。その状況下で、襲ってくる敵ロボに応戦する。
同じカップにずっと乗っていると、高温の蒸気が噴き出してきたり、カップが基板から脱落してがっしゃんと転げ落ちたり、担当であるミッドナイト先生の『眠り香』が風に乗って流れてきたりする。
周囲の状況や敵の存在のみならず、異音、振動、風向き……適宜それらを察知してカップを移動しながら戦い続ける必要があった。
いつ乗っているカップがダメになってもいいように、常にどう立ち回るか頭において考え続け、ダメになったらどのカップに飛び移ってどう戦い続けようか、こんなことが起こったらどう対処すればいいか……考えながら戦って、とっさの事態にも隙を見せずに対応することができるように。
また、邪魔にならないように、ロボ1つ壊すにしても残骸を飛び散らないようにしたり、適宜外側に吹っ飛ばすようにしないといけなかった。
『観覧車』では、『ヴィランが仕掛けた爆発物を見つけ出して処理する』っていう、戦闘力には関係ないシチュエーションが用意されていた。
ただしこれ、細かい作業や集中力が要求される課題なのかと思いきや、思いっきり肉体労働系の課題だった。
何せ、止まらず動いている観覧車を登っていって、爆発物が乗っている部屋に乗り込むってところまで自分でやらないといけないので。
しかもその後は、揺れに注意しながら必要な手順を踏んで爆弾を解体する必要がある。
その指示は、トランシーバーから担当のエアジェット――ここでも外部のヒーローか――が指示してくれるので、それを聞き逃さないようにしつつ進めるということだった。
なお、何でこのステージの担当が彼なのかというと、万が一観覧車を登っている最中に滑って落下したりしても助けられるようにってことで、飛べる彼が抜擢されたのと、彼は都市部での犯罪への対処にもよく参加しているので、こういう場面の対応も経験があるんだって。
彼はどっちかっていうと避難誘導とか捜索側だけど、ノウハウは知ってるわけだ。
『トロッコライド』っていう名前の、文字通り線路の上をゆっくり走るトロッコに乗って移動するアトラクションでは、トロッコの上から降りずにスナイプ先生の狙撃を防ぎ続けるっていう課題だった。
事前にルート上の地形情報なんかを渡されるので、僅かな猶予時間の間に『ここは狙撃しやすそう、要注意』『ここは隠れられる場所が多い』『ここは遮蔽物が少ない』みたいな場所を洗い出して警戒し、それに応じて防ぎ、なるべく自分達およびトロッコそのものへの被弾の回数を少なくするっていうのが目的だった。
よく考えないとわからないような場所も多く、難題だったな……ゴム弾だから当たると普通に痛いし、それで動き止めたりすれば、狙撃だってのに連射とかしてくるし……。
まあでも、そういう『狙われやすい場所を予想する』『敵の攻撃から乗り物や護衛対象を守る』っていうのは、ヒーローの必須技能でもあるか……。
さらに『お化け屋敷』では……なんかもう、おばけっていうかゾンビが、っていうかクリーチャーが襲って来た。敵ロボをそれっぽい形で作った奴。
舞台になってるのも洋館だったし、脱出が目的だし……バ○オハザードだぞもう……
もちろん、襲ってくる敵ロボ(ゾンビ仕様)はぶっ壊してOKなんだが、音を立てるとわらわら寄ってくるので、戦闘は極力回避しつつ、見つからないように進む必要があった。
で、ちょいちょい神出鬼没のエクトプラズム先生(の、分身)が襲ってくるからそれへの対処も必要だし、ゾンビロボはゾンビロボで、急に出てくるから心臓に悪いし……
強さは大したことなかった(エクトプラズム先生の分身の方が危険だった。色々と)けど……スリラーとバトルの両方で心臓と神経を酷使する課題だった……
そんな過酷な時間を過ごした甲斐あって、わずか1日の間に芦戸の動きはどんどん良くなっていった。
いや、動きがってよりは、きちんと頭で考えながら体も動かすってことを覚えていった感じだったな……なまじそういうのが要求されるアトラクションが多かったせいもあるだろうが。
……こういうのもある意味、『追い込まれて成長する』……いわゆる『本能覚醒』なのかな。私達が『デウス・ロ・ウルト』でやってるのと同じ感じのそれ。
規模は違うとはいえ、本人のやる気も伴ってのことだし、なるほど成長につながってる。
……ひいき目が入っていないとは言わないけど、この分なら芦戸はもう、心配いらないんじゃないかな。期末で露呈した課題も……多少なりとも克服されつつあると思う。
結局その日は、休憩をはさみつつ7つのアトラクションに挑戦し……内6つをクリア。1つは落としてしまったが、必須じゃない奴なので大丈夫だろう。
中々のハイペースだったな……しかし、実りある時間になった。
なお、食事はなんと敷地内の売店が普通に使えたので、そこでパンと飲み物を買って普通に食べた。
何せ24時間の日程だ。サバイバル要素があるかもって予想してたから、何も食べるものがなくてもいいように、1日分とはいえ携行食料準備してきたんだが……いらなかったか?
「そういえばさ……私達はもう試験終わっちゃった扱いになるんだよね、コレ? 必須課題は2つともクリアしたし」
「そうだな」
「……何でこの『追試』、24時間も時間取ってやるんだろう? 今、えーと……19時42分か。開始から8時間も経ってないのに終わっちゃったのにね」
「それどころかフリーでもういくつも課題受けてるしな……他の連中が私達よりべらぼうに時間食ってるとも考えづらいし……けど、相澤先生が、そして雄英が意味のないことをするとは思えない」
「つまり?」
「何かあるんだろ。まだ……恐らくは、24時間っていう設定にしなきゃいけなかった理由が」
もっとも、それを考えてもわからなかったけど……その他に気になってることならある。
私はおもむろに、ぽん、と、胸ポケットに……そこに入っている、カードに触れる。
試験開始前、私達のアトラクションを指示するために配られたカードだ。先生の指示で、『無くしたり捨てたりせずに最後まで持っていること』とのことだったので、私が2枚、ここに入れて保管していた。
ただ番号を伝えるためだけにしては妙に大仰な用意というか……カード自体もやけにしっかりした作りだし……これ、何かあるよな、確実に。
☆☆☆
時は少しさかのぼり……時刻は、午後5時前あたり。
試験場の1つである、『シルク・ド・デンジャラス』というアトラクション……というか、完全にサーカス、あるいは見世物小屋のテントといった感じの場所である。
機械仕掛けのものは何もなく、頑丈な骨組みを有するテントの中に、高さ1mほどの広く頑丈な円形のステージが置かれているだけの、まさしくサーカスの舞台といった見た目だ。
そのステージ上で、この『追試』参加者のうちで唯一、ヒーロー科に属していない2人……心操人使と青山優雅は、地面に倒れ込んで、あるいはうずくまっていた。
片や体力を使い果たし、片や『個性』の副作用である腹痛をこらえて。
周囲に散乱する、無数のロボの残骸に囲まれながら。
そのステージに『よっこいせ』と上がる相澤……イレイザーヘッド。
ブラドキングもそれに続いて上がり、声をかけて2人の状態を確認する。
「お疲れさん。試験、無事に終わってよかったな」
「無事、ですかね……散々でしたけど……」
「ッ……まだ、僕は……僕の輝きは……☆」
既にどう見ても満身創痍でありながら、2人共、心は燃え続けている。
目を見た瞬間それを理解したブラドキングは、イレイザーヘッドと視線を交わし、互いにこくりと頷いた。
「確かにな、ここに至るまでに、必須課題2つを含む5つに挑戦。うち、達成できたのは1つだけ……試験として見れば失敗かもしれんが、それでも、ヒーロー科生徒を対象とする前提で設定された試験でここまで健闘したのは大いに評価対象だ。反省するなとは言わんが、そこは誇れ!」
「動きを見ていれば分かったが……戦いの中で失敗するたびに、きちんと学んでそれを次の戦いに生かしていた。基礎体力も、普通科である現状を鑑みれば十分な水準に達している。こちらで用意した『追加カリキュラム』をこなしたことを差し引いても、成長幅としては……まあ、合格ラインにはあるといっていい。そこらへんはむしろ、ここからの課題だな」
単純な評価に加え、激励すら混じった――相澤のは若干わかりにくい言い方であるが――講評をもらった後、心操と青山は、救護用のハンソーロボに乗せられて運ばれて行った。
それを見送りつつ、イレイザーは考えを巡らせる。
多少難易度を調整したとはいえ、ブラドキングが言った通り『ヒーロー科向け』に設定された試験内容を、それも立て続けにいくつもこなし……しかし2人は、何度も打ちのめされつつも、1度も弱音を吐かずに最後まで戦い抜いた。考えることも最後まで辞めず、常に頭を回転させて、最善の行動を模索し続け……そのうちの1つに至ってはクリアすらしてみせた。
彼ら2人に関しては、体育祭の時期から特に既に注目されており、アナライジュ謹製の『追加カリキュラム』による強化がなされていたため――『42人』のうちの、ヒーロー科以外の2人がこの、心操と青山なのだ――普通の普通科より動けることに不思議はないが、それでも素直に褒めていい結果だと言えた。
戦闘訓練もほとんど受けておらず、個性訓練も最低限、コスチュームもない。
そんな、前提が何もかも違う条件下で受けて出した結果だと思えばなおさらだ。
心操に至っては、戦闘向きの個性ですらないにも関わらず、イレイザーヘッド直伝の捕縛布を使った戦い方を磨き上げ、実戦レベルとはとても言えないものの、この模擬戦でもそれを発揮してみせた。
「あの2人は特にだが……他にも今年の普通科は優秀なのが多くていいな。鍛えがいがある……さて、どっちがどっちに編入してくると思う?」
「おい、気が早すぎだろうが。まだ試験前の準備段階だぞ……本決まりになるのは、夏休み明け以降の編入試験を待ってだろうが」
「それはわかるが、期待しても仕方ないだろう……あの成長速度なら、夏休みまでにはまだ伸びるぞ? カリキュラムの精度を抜いて考えても、むしろあの2人が『編入確定』になるまで何も準備をしない、というのも非合理的じゃないのか? 何、少し我々の手間が増える程度だ」
「人のいいことで……とはいえ、有力株なのは確かだし、上手く使えばA組、B組の連中にも更に発破をかけられるな……おいブラド、夏休みの件……お前、ありだと思うか?」
「奇遇だな、俺も同じことを考えていた」
何やら意味ありげなことを話しながら、2人の教師は次にやるべきことの準備に移る。
「まあ試験自体は上出来、評価出来るものではあったが……あの様子ではこの後のには参加できまい。残る8組16人だけで始めさせるとしよう」
「もともとコスチュームのない、各種訓練も積んでいないあいつらにはまだ荷が重いことはわかりきっていたからな。見る対象が少なくなって俺らもやりやすい アナウンスは任せていいか?」
「了解だ。なら、関係各位への伝達は頼むぞ」
☆☆☆
時刻はもう間もなく、午後8時になろうかという所。
『どこで寝泊まりすればいいんだろ?』『ホテルとかないのかな? ないだろうな』なんて会話を交わしていた私達の耳に、どうやら演習場全体に響いているらしいアナウンスが聞こえて来た。
ピンポンパンポーン、というありがちな電子音の後に、聞こえて来たのは……
『演習場にいる生徒達に通達事項がある。喋るのをやめてよく聞くように』
B組のブラドキング先生の声? 通達って……何だろう?
『現時刻は午後8時だが、現時刻において、既に全ての対象者が、必須課題を含む複数の課題を達成済みである。よって、諸君らに『追試』として定められているカリキュラム自体は、既に終了している……そのため、これより諸君らには伝えていなかったもう1つのカリキュラムに移行する』
「もう1つのカリキュラム!?」
「……まーた何かいきなり始まったよ……何やらされるんだろ」
こういうの好きだよな雄英……まあ、やる以上は必要なことだからやるんだろうけど。
言ってた通り、もう8時だ。売店も……8時閉店って言ってたから、もう閉まった時間である。こんな夜更けから一体何を……?
訝しんでいると、不意にケータイが振動した。芦戸も同じようだ。
見て見ると、そこには学校のアドレスからメールが届いていた。
内容は……『追試後半戦・標的通知』……なんか不穏な文言書いてないかコレ。
そして本文には……
「え、ええ~……!?」
「おいおい……マジかよ」
☆☆☆
永久の予想通り、アナウンスは演習場全体に響き渡っていた。
そして、同時に届いたメールの内容と合わせて……十人十色、それぞれ異なった反応を、追試の参加者達は見せていた。
焦る者、高ぶる者、冷静に戦略を考える者……各々の反応は一様ではなく、しかし皆が、この事態への対応を迫られる。知らされていなかった、追試『後半戦』。
その課題内容は……至極単純。
生徒同士の、模擬戦である。
『今各自の携帯電話に送ったメールにある名前が、各自の対戦相手だ。今回の模擬戦は、期末試験同様、こちらで対戦相手を勝手に決定させてもらった。原則として、今日この『追試』でそれぞれが学んだことを生かして戦うことが求められるであろう相手を選定してある』
「マジかよ……ここに来て戦闘訓練……しかも相手、八百万達って!」
「八百万君はもちろん、B組の彼女……塩崎君も相当な手練れだと聞く。油断できないな」
「飯田さんと上鳴さんが相手……一筋縄ではいきませんわね」
「誰が相手だろうと、全力で当たるのみです……よろしくお願いいたします、八百万さん」
飯田・上鳴ペアVS塩崎・八百万ペア
☆☆☆
『勝利条件は、各自がそれぞれ持っている番号カードの破壊! そのカードは数字が書いてある面がシールのようになっていて、それをはがして接着できるようになっている。各自、体のどこかにそれを張り付けろ。張り付ける場所は自由だが、服などで隠れていない、外から目で見える場所に限定する。模擬戦の中で、相手のカードを破壊すれば勝利、破壊されれば敗北だ!』
「お、ホントだ剥がれた。これがターゲットってことね……。っていうか対戦相手……物間って、体育祭の時のアイツかよ……」
「……ぶっ殺す」
「あーあ、やっぱり火ぃついて……いや、割と誰にでもそんな感じだったなお前」
「ガーンだね……あの怖い人が相手だってさ……。しかも、確か物間、体育祭で喧嘩売ったんだよね? 目つけられてそう……」
「アハハハハハ! 何を人聞きの悪い、尋常の勝負の中でのことだよ? もしそれを持ちだして来たらそれはつまり相手の度量がその程度ってことだね! まあ、油断できない相手なのは変わらない……作戦詰めようか、吹出」
切島・爆豪ペアVS物間・吹出ペア
☆☆☆
『時間は今この時から、追試の終了時間である明日の正午までとする。いつ、どこで、どのように戦闘を行うか……そういったことは一切こちらでは指定しない。演習場から出なければ、全て自由だ。明るくなってから戦うもよし、暗いうちにさっさと始めるもよし。ひとまずゆっくり寝て休むもよし、相手が寝入っている間に動き出すもよし。正々堂々正面から仕掛けるも、奇襲をかけるも、全て諸君らに任せる。早い話が何でもありだ! これを実戦だと思って臨め!』
「えげつねえルール出してきたな……障子、コレ実質、寝て休む選択肢とかねえよな?」
「そうだな。奇襲をかけられる可能性を考えれば、そんな無防備なことはできん。ただ、休息時間をとることも重要だ……寝るにしても仮眠程度。最低でもどちらかは起きているべきだろう」
「ああ、そうだな。そんで相手は……体育祭で切島と戦ってた奴だな。色々被ってる奴と……もう1人は、地面を柔らかくしてたな」
「B組の推薦入学者だ……思考が柔軟で頭も回ると聞く。油断はできんぞ」
「おい骨抜! こいつらどんな奴だっけ、トーナメントには出てなかったよな?」
「発動条件のある増強型と……パワーはあるけど本領は索敵型の奴だね。バランスのいい組み合わせだ……障子がいるから奇襲は困難。でも戦闘自体は接近戦主体になるな」
「つまり小細工はいらねえってことだな! よっしゃ行くぜぇ! 待ってろよA組ィ!」
「……まあ、策としては間違ってないし。いいんじゃね?」
砂藤・障子ペアVS鉄哲・骨抜ペア
☆☆☆
そして……
「うわぁあ……A組最強の一角が相手かあ……。瀬呂だってかなり強いよね……どーしよ永久?」
「……無策で挑める相手じゃないのは確かだな。とりあえず休んどこ……体力回復させないと」
「探して奇襲かけてきたりしない? あ、いやあっちは索敵能力とかないし大丈夫か」
「……どうだろ。何か最近妙な……いや、率直に言ってヤバい勢いで成長してきてるからなあ……」
「え、そうなの? うわ……ますます怖……」
「おいおいおい……あの2人かよ。俺相性悪りーぞ……芦戸は『酸』でテープ溶かされちまうし、栄陽院にはパワー負けするだろうし……どうする緑谷? つか、すぐ動くか?」
「……いや、ひとまず休もう。あっちも疲れてるはずだし、索敵能力はないから、そんなに夜中に力を入れて攻めては来ないはず。栄陽院さんはエネルギーが続く限りは体力無限だけど、だからこそ逆に無駄遣いは嫌うはず。明るくなってからが勝負だ」
「そうだな……戦い方や場所もできれば考えたいところだな。」
瀬呂・緑谷ペアVS芦戸・栄陽院ペア
(緑谷との、勝負……!)
(栄陽院さんが、相手……!)
(……思えば、訓練以外で……ほぼ実戦形式でのガチバトルって、あんまりしたことないな。特に……『デウス・ロ・ウルト』が始まって以降は)
(示し合わせたみたいに、学校の戦闘系の課題でもぶつからなくなった。もしかしたら……初めて全力同士での戦いになるかもしれない)
(緑谷の実力はもう、私が把握できる範疇なんかとっくの昔に超えてしまっている……一体何がどれだけできて、どんだけ強くなったか、もう全然わからない……でも、だからこそ……!)
(ここまで強くなるまで、最初の一歩からずっとお世話になってた人だ……当然その強さも、いや、それが最近さらに強くなってることもよく知ってる。でも、だからこそ……!)
(こんなにも胸が高鳴る……心が躍る! 全力の緑谷に自分をぶつけられる、全力の緑谷を受け止められる……お互いの修行の集大成を見せられる、運命的なほどに最高のタイミングだ!)
(一歩も引かない、引くわけにはいかない……全力でぶつかって僕の全てを使って挑む! 栄陽院さんの全てを受け止める! それくらいできなきゃ……その先になんて行く資格はない!)
ある意味では罰当たりかもしれない考え。『追試』の主役であるはずの2人を差し置いて……激突の機会が巡ってきたことに、闘志を燃やす2人。
そのどちらもが、心のどこかで感じていた。
この、ある意味運命的なタイミングですらある戦いは……何かの1つの区切りになると。
この闘いを経て、自分達の関係……その何かが終わり、そして始まる気がすると。
期末試験編クライマックス、100話も近くなって、とうとうこの2人が激突することとなりました。