連鎖反応の刃   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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私が鬼になったわけ 2

 イッヌが死んだ

 

 最後は私が自分の太ももの柔らかい肉や内蔵を尖った石で切って与えてたけど……だんだん噛む力が無くなって死んじゃった

 

 最後は目も見えてなかったのかな

 

 ……いただきます

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ああーああーコンニチハコンニチハ」

 

 イッヌ食べたら片言だけど喋れるようになった

 

 でもなんだろう……虚しさとか悲しさしかない

 

 鬼って感情を食べているのかもしれない……もしくはそれによって成長するのかもしれない

 

 イッヌが生きてるときに強い鬼に襲われた時、その鬼は死んだ人の歪んだ顔を集めて篭に入れていたり、食った人間の体の一部を生やす鬼もいた

 

 そんな鬼ばっかりだから鬼ってやっぱり虚しい生き物なんだろうな~なんて鬼の私が思ったり……

 

 イッヌが死んでから狩りが上手くいかない

 

 というか言葉が話せてもよわっちぃ私……この角め……鬼なのに力が無いからなぁ……はぁ

 

 戦の跡地でも行けば骨くらいはあるかな? 

 

 ……森を出るかぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ鈴や、仏門の道は厳しいぞ。悟りを開くのでは無かったのか?」

 

「アノ……ヒトコトモイッテナイデス」

 

「えぇい! 戦の跡地で遺骨を埋めていたではないか! 男たるもの精進せい!」

 

「ワタシオンナ、オンナ!」

 

「ん? 女? たわけ者が! そんな声の女など居らぬわ!」

 

 駄目だ話が通じない

 

 この坊さん眼が見えないらしく地面をガリガリ削って遺骨を掘っていた私を遺骨を埋める優しい人だと何をどうしたらそんな結論になるという理由で悟りを開くのだと言われて誘拐された

 

 ボロボロの寺でよくこんな場所で暮らしているなぁなんて思うくらい古くて崩れそうな寺で坊さんは私に御経や自宗派の規律、教えを説いていた

 

 食事は寺の後ろにある畑で取れた僅かなものを坊さんが出してくれるが、坊さんが痩せ細っていて今にも死にそうなので私はほんの少しだけ口に含み味にも栄養にもならない葉物を食べ、残りは気がつかれないように坊さんの茶碗に箸で入れていく

 

 

 

 

 夜は私の時間だ

 

 こっそり寺を抜け出して墓地を漁り骨を頂く

 

 バレるとまた鬼狩りの鬼殺隊がやって来るので丁寧にお墓を治し、周りの掃除をして、近くの花をむしって供える

 

 ま、代価の代わりですよ

 

 べ、別に死んだら地獄に堕ちるから善行を積み極楽に向かうのだと坊さんに言われたからじゃないし……死にたくないしぃ……痛いのやだしぃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっほっほっ」

 

「……」

 

 坊さんガリガリなの舞? が凄く綺麗なんだよね……剣舞だったり坊さんいわく幸若舞って言う舞だったり……

 

「眼が見えんとな、ズレるのだ……どんなに綺麗な舞でも心と動きと視線と音が一致しないとズレるのだ」

 

「……ワカリマセン」

 

「だろうな。わかったのは眼が見えなくなってからだ……もっと早ければ……」

 

「……」

 

「覚えよ、そして悟りを開くのだ」

 

(本当に何がしたいんだこの坊さん……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっあー! なもあみだぶ! なもあみだぶ!」

 

「浄土の教えよ、全ては周りのお心のまま、悪人と自覚し、全てを他人に委ねるのだ」

 

「いや、ぼうさんそれはダメでしょ」

 

「ん?」

 

「たにんの力、ほとけの力ですくわれるのはあがいた者だけじゃない? なもあみだぶと唱え、自覚するだけでは極楽にいくのはムリ」

 

「……なるほどな! しかし今答えを出すなど時期尚早だ! もっと励め! もっと学べ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は坊さんを見て3つの努力こそが素晴らしいものだと感じた。堪える努力、生きる努力、寛容の努力」

 

「……ねぇ気がついているんでしょ人ならざる鬼だって……なぜそんな私に仏門を説いたの? 自身の努力である舞を見せたの? 食事を分け与えたの? 墓漁りを見逃したの?」

 

「浄土の教えよ……全ては鬼であろうと人であろうと他力本願の救済などでは極楽など行けぬ、私は教えに疑問を持ち、地位を捨て、探し続けた……いまだに答えなど出ておらぬが、生きる為に必死な者に手を差し伸べられぬのでは人ではない! 自身を鬼だと言うが、本当の鬼は心だ! 他人を傷つけ、裏切り、自身の快楽や目的のみで他人を巻き込む者こそが本当の鬼だ」

 

「……」

 

「眼が見えていた時に何にもの鬼を見てきた! 人も鬼も……どちらも醜いではないか! 私は弱かっただから見たくないから眼を閉じた……閉じ続けたら見えなくなった何もかもがな」

 

「……」

 

「初めてだ……身がもう尽きる寸前でようやく見つけた醜くない鬼を……人ですら醜くなるのになぜお前は醜くないのだ? 鈴よ?」

 

「私は浅ましい人の墓を漁り、人の骨を喰らう鬼でございます」

 

「ではなぜ食べるときに泣いている? すすり泣くのだ?」

 

「それは……」

 

「5年だ、鈴よ出会ってから5年……そして今日確信した。鈴よお前は鬼ではない。醜い者では断じてない! ……その心を忘れるべからず! そして今日まで私の身の回りを世話してくれて有り難うな」

 

「今日まで? え? 坊さん!? 坊さん!!」

 

「お前の進む道は厳しいぞ……食え私を……それが供養だ……最後は人との温もりのなか……死にたい……」

 

 最後の力だったのだろう

 

 坊さんは私にそう告げると亡くなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は坊さんの亡き骸を食べた

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後色々旅をしてみた

 

 肌を隠し、角を隠し、顔を覆って旅をした

 

 自身の悟りを開く為

 

 坊さんを食べたので極楽には行けないと思うけど……鬼として長生きできるのだから何かしら役に立てればと、生きたいと思い者に手を差し伸べられればと……室町の時代を歩んでいく

 

 

 

 

 

 

 

「とは言うもののお腹が空くなぁ……」

 

 本質は変わらないものである

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