骨っこ骨っここーろころ
坊さんと別れてから何年? いや、何十年、百何十年かな?
生きている人は食べない
なるべく味がしなくても人の食事を取るを心掛け、悟りを開く旅をしている鈴です!
いやぁ、味覚が死んでますけど嗅覚が凄く強くなりましたよ私
料理をどうしても覚えたかったんで味覚の代わりに嗅覚と視覚を利用してご飯を作るのですよ
動物のお肉を食べるときなんか特に……ね
日ノ本フラフラしていますが、いやぁ鬼や鬼殺隊に出会う出会う
毎回接敵する前に自慢の嗅覚や直感で逃げてますが、昼間に外を移動できないのが辛いですねぇ
なんか悟りを開くよりも放浪者の方がしっくり来ますけどね
しっかし末法の世ですかここは……
戦、飢饉、冷害、干魃、津波、反乱
人災天災ばっかりで人が死ぬこと死ぬこと
鬼殺隊の数も一時期より明らかに減っていますし、藤の花で囲まれていた場所も戦火でなにもかも燃えて通行可能になっていたり……
……人の業……カルマと呼べばよいでしょうか
相変わらず弱いので、戦場跡地で拾った刀と焼け跡に転がっていた包丁を研いで武器にしていますが、この世だとそんな武器を持たなければ鬼だろうが化け物だろうが追剥に合うんだからたまったものじゃないですよ
「産まれて、鬼となり、今がある……私を鬼にした者はこの光景を見て何を思うのだろう」
「血鬼術……九ノ手」
見えない手が私の周りに現れる
半数が右手、半数が左手の形をしており、10年感覚で1本増えてきた
「1本で持てる物は自分の半分位の物だけだけど、9本あれば色々できるよね」
見えない手に1つ1つに古びた巻物を持っており、そこにはお経が書かれていた
「般若…………」
お経を読み、血鬼術の手ではなく、自身の手に持っている鈴を鳴らし、各地を巡る
死人を口にし、生者は襲わず
供養し、祈る
弱い鬼は戦国の世を巡る
巡りめぐって何処かについた
まだ戦乱は終わる気配は見えず、鬼は嬉々と人を喰らうが、鬼殺隊が明らかに強くなった
水や炎を纏い、雷の様な速さで切り裂き、岩のように固く、風のように無音で頸を刈っていく
まだ悟りを開く事が出来ない私は死ねないので直感と鼻頼りに逃げているが、自分のような五感に優れた者が居たらバレるんだろうなぁ
そんな生活をしていると、夜遅くだと言うのに音が聞こえるではないか
珍しいと思い木の影からこそっと音のする場所を見ると、顔を火と書いた布で隠し、鬼殺隊の殺の字を×とした珍妙な格好で舞う老人がいた
日輪刀と呼ばれる刀も老人は持っておらず、手には朱色の扇を持っていた
余りに美しいもので日が開けるギリギリまでその光景を眺めていた
次の日も、次の日も老人は舞った
次第に私も隠れながらその舞いを真似た
ある日気がついた
この舞いは完成していないことに
私は舞いの足りない部分を坊さんから習った剣舞や幸若舞を混ぜた
毎日それを舞っていた訳ではないが、体に染み付かせた動きは老人の舞いの足りない部分を埋めるにはちょうど良かった
数年たったある日
老人が亡くなった
いや、老人だと思った者は窶れた若者だった
舞いは途中に倒れた彼に驚いた私は物陰から飛び出て大丈夫かと問う
「縁壱様すみませぬ、我々が疑ったバッカリに……縁壱様……貴方の日の呼吸は美しかった。嫉妬もしました。……縁壱様ごめん……なさい」
彼はそう言って事切れた
わからない……何もわからない
ただ最後の時まで謝罪とは、彼はその縁壱と言う人物に酷いことをしたのかもしれない
死ねば仏となるかもしれないが、来世でその償いを……あばよくば、彼を安らかに眠らせたまわれ
舞いに魅入られた私の一方的な感情だが、彼は償いをしたのではないのか? と思う
「本当に何もわからないけど……舞いは覚えたから踊り念仏と合わせて継承しますよ」
なーんて呑気な事をしていたら後ろから手足を斬られ、達磨にされて何処かの山に入れられました
藤の花ばっかりで出ようにも出れません
命があるだけましか、天災でもないとここから出れない事を嘆けばいいのか……気にしていてもしょうがないですね
時間はあるので舞いの練習をしますかね
「はぁはぁはぁ……死ぬ、死んじゃう」
舞元 芳輝(まいもと よしてる)は死にかけていた
最終選抜3日目、雷の呼吸を習得(できていません 彼の育手は彼よりも他の弟子の方が才能があり、当て馬程度にしか思ってなかったので呼吸が未定着なのに最終選抜向かわせました)していた彼はなんとか鬼を2鬼殺して2晩を乗り越えました
しかし、体力も、精神も、呼吸も未熟な彼はこうして死にかけています
「どこか……休める場所を探さないと……」
神は彼を見捨てていなかった
運と努力、1点に振りきれた才能が江戸時代最強と呼ばれる柱にまで登り詰めたのだ
シャン……シャン
「なんだ……あれ……?」
ボロボロの着物に火と書かれた布で顔を隠した鬼が剣舞を行っていた
「……綺麗だ」
鬼殺隊では既に縁壱の記憶が薄れ、痔についても失伝していたこと、鬼舞辻無惨と上弦の壱が日の呼吸を知る者を片っ端から殺していたためほぼ何も残っていない戦国末期
藤の花咲き乱れる藤襲山で鈴は毎日40年間舞い続けた
既に餓えを超越しており、鬼を恐れる恐怖心により藤の近くで毒に耐えながら舞い続けた
偶然鈴の舞いを見た彼は舞いが終わった瞬間に声をかけた
「死ぬ前に良いものを見れました」
と……
「鬼殺隊の方? 私を殺すのですか? まだ死にたくはないのですが」
「……ここは鬼はお前だけなのか?」
「えぇ、まぁ……40年近くここに居ましたがはじめてですよ、ここに来た鬼殺隊の方は」
「取り合えずどうですか食事でも……といっても塩も無いため素材の味になりますが……」
「塩と梅干しならある! 何か食えるのか! 殺すなら何か食ってから死にたい!」
「そ、そう。じゃあこっちにおいで……」
何回も修復跡の有る掘っ立て小屋を指差しながら
「あそこで少し休みましょ」
「
泣きながら芋と山菜、兎肉等を具にした塩味の鍋だったが彼は勢いよく食べていた
「死にそう死にそうって言ってたから大丈夫かと思ったけど本当に死にそうだったのね」
腕が折れており、肋骨も数本折れてていた
「ねぇ、質問してもいいかな? 今室町幕府はどうなってるの?」
「へ? 室町幕府? とっくに滅んで最近関ヶ原って場所で決戦があったぞ」
「室町幕府滅んだの!」
「あぁ、織田信長っていう大名が滅ぼしたんだけど家臣が裏切って死んで、羽柴秀吉っていう農民上がりが殿様の仇討をして、数回合戦のあとに天下統一したんだが、大陸に2回攻めこんで失敗して死んだからまた天下が揺らいで合戦へみたいな感じだったハズだ」
「へぇ……詳しいね」
「没落したけど実家が武士だったんですよ赤揃えってしってます?」
「知らないな北条?」
「武田です。北条、武田、今川全て滅んでますよ」
「えぇ! へぇ栄枯盛衰のそれだね」
「鬼舞辻無惨もそのまま滅びれば良いのに……」
「誰? それ?」
「あ? 知らないんですか……あ!! 忘れてたけど鬼はその名前を話すと再生ことなく死ぬらしいので絶対に言わないで!」
「へ!? えぇ! 死ぬの私!」
「鬼舞辻無惨についても教えますけど、赤揃えは知っていてほしいので先に教えます」
そこから武田最強の赤揃えだの、武田の長男の粛清に巻き込まれたのだの、それでも生き残り、真田や井伊に受け継がれただの言われたけど
「あれ? 何でじゃぁ鬼殺隊になろうとしているの? 没落したのはなぜ?」
「……親父が武田に凝り続けて武田ではない赤揃えなどいる価値無しだと言って帰農し、俺も兄上達が沢山いたから田を受け継ぐ権利もなく、途方に暮れていた時に鬼殺隊の隊服を着た侍が村に現れて隊員を募集していて飛び付いた」
「鬼殺隊ってそんな募集なんかしてたの!!」
「当たり前だろ、でないと浪人がわんさかいるのに鬼となった者を斬れば金になる、鬼は減る、民は安心して寝れると良いことづくめではないか」
「へ、へぇー(30年位前まで殆ど鬼殺隊居なかったのにいつの間にか増えてたんだ)」
「でだ、そんな鬼殺隊の最終討伐目標が鬼舞辻無惨の討伐だ……しかし、名前位しか隊員未満の俺にはわからんがな」
「何で最終討伐目標なの?」
「人を鬼に変える力を持った唯一無二の鬼……らしい、鬼のお前も会ったこと有るんじゃないか?」
「んー、んーわかんないや。昔過ぎて忘れちゃったよ」
「そうか」
その後も問答は続き、鬼と鬼殺隊員見習いの一時的な和議ということで落ち着いた
試験終了まで後4日
この際互いに出せる物は全部出してしまおうと深夜のノリで舞元は鈴に呼吸法(未完成)を、鈴は剣舞を教えた
それが互いの未来を決めるターニングポイントであるとは知らずに……
「外に出たい」
舞元と出会い、呼吸という技に触れ、俗世から離れ、尼の様な生活を強制的に送っていた私はこの山からの脱出を決意する
呼吸は結局私には習得できなかったけど、変化する時代を見てみたいと思いから、藤に囲まれた場所からの脱出方法を山の鬼の間引きと称してやって来る舞元に聞いてみた
「いやいや、鬼のお前を出したら流石に俺も討伐しないといけないからな。材料と調味料は持ってくるから料理の研究でもしててくれよ」
「私もそれでも良いかなぁなんて前までは思ってたんだけど、もう私自身人を食わなくてもなんとかなるしさ」
「血を見ても?」
「……」
舞元が血のついた布を差し出す
「……いや、大丈夫」
「いや、駄目だろさっきの間はなんだよ」
「……ごめん」
「はぁ、たく……外に出てたら探すからな」
舞元ありがとう
舞元が置いていった血のついた布で口と鼻を覆い、肌を極力出さないで藤の花が咲き乱れる場所を突破した
実に42年ぶりの俗世である
「町や村はどう変わったのかな? 今の流行りはなんだろう? 舞元に聞いた話は本当なのかな」
藤の香りがついた服を脱ぎ捨て、覆っていた布を外し、月明かりの反射する川で体を洗いながらそう呟いた
「この花だけはなんで赤いのだろう?」
ぶらりぶらりと僧の格好をしながら旅を続け、菜の花を使った料理を食べたいと自生している場所に向かうと、1本だけ真赤に染まった菜の花があった
血……で染まった? 誰かのいたずら? なんて考えたけど、夜に不気味に光のは血でも染めても無理だしなぁ……
「……光る菜の花お浸しなんかやだけど……なんだろう、食べてみたいと思っちゃう」
見つめているだけなのにヨダレが止まらなくなり、そおっと掘って地面から離す
媚薬を使った人間みたいな顔をしながら鈴はその菜の花を食べた