緋色の鳥に憧れて、赤とんぼは今日も空を翔ける   作:chee

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ルストと秋津茜の百合短編です。

ルストはモルド以外絶対にカップリングさせたくないって人は合わないかもしれません。


例えばこんな出会い、そして始まり

私は、挑戦することが大好きだ。

 

達成した瞬間は気持ちいいし、達成するために試行錯誤することも楽しい。

 

でも、挑戦している事が必ず上手く行くわけではないこともわかっている。

私もたくさん挫折してきた。

そのたびに心が折れそうになって、とても苦しかった。

 

小さい頃、病気のせいで満足に動けなかったあの時。

 

陸上の大会で隣のレーンを走る優勝選手にどうしても追いつけなかったあの時。

 

私の人生の特に辛かった時期だ。

いつも一人で泣いていたっけ。

 

でも、もう私は一人じゃない。

ゲームの中ではあるけれど、たくさんの()()()ができた。

 

この前、ゲーム(シャンフロ)をしていた時、ノワルリンドさんと一緒にジークヴルムさんと戦っていたけど、私一人だと多分勝てなかったと思うし、また挫折して心が折れていたかもしれない。

 

みなさん(旅狼)が背中を押してくれたから。

 

緋色のロボットに乗った()()()が、隣で戦ってくれたから。

 

 

私は、挫折しなくて済んだんだ。

 

 

 

私達の挑戦は、達成できたんだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「バイバイ、紅音」

 

「また明日ー」

 

「うん。じゃあねー」

 

駅前で陸上部の友達に手を振って別れを告げる。今日の練習も終わり、私はこれから帰るだけだ。早く帰ってゲームをしたい。

 

今日は何をしようかな…そういえばシークルゥさんが行きたいところがあるって言ってたっけ………

そういえば、クランの皆さんにジークヴルムさんとの戦いを手伝ってくれたお礼をしなきゃ。何がいいかなぁ…素材とか?アイテムとか?まぁ、何がいいとかあまりわからないから、困ったなぁ………

 

駅について、改札をくぐり、ホームドアの前に立つ。そして、ゲームの世界に思いを馳せながら、帰りの電車を待つ。この時間は私のお気に入りの時間の一つだ。

 

耳を澄ませば、心地良い喧騒が私を包み、私の体は部活後の適度な疲労感や充足感で力が抜けていくようだ。頭の中はゲームの事を思い巡らせて、幸せな気分に浸る、至高の一時。

 

「ふふ…」

 

思わず笑みもこぼれてしまうような和みの中、唐突に事件は起きた。

 

 

ふと、お尻を不思議な感触が撫でる。

 

まあ、ここは人の多い駅の中。そういう事もあるだろう。

 

再び、お尻を不思議な感触が撫でる。さっきより長い。

 

「ひっ……」

 

はっきりとわかる。人の手だ。

…………これ、痴漢だ!!!

 

体が硬直する。思考がまとまらなくなって、冷や汗がダラダラ流れてきた。

怖くて後ろは振り向けない。逃げようにも足がすくんで動かない。

おしりの感触はなくならない。目尻には涙がたまり始めている。

いつまで続くか分からない恐怖。私には、もう何もできない。

 

怖い、気持ち悪い、怖い、気持ち悪い…………

 

 

 

……………誰か助けて!!!!!!!!

 

 

 

 

 

「私の友達に触るな。下衆が」

 

 

 

 

 

不意にお尻から感触が消える。思わず振り返ると、知らない女の子が大柄な男の手を捻り上げている。

 

「すぐに連れが駅員を連れてくる」

 

「……チッ」

 

男が走って逃げていく。女の子は私の方を振り向いて、心配そうに覗き込んでくる。

 

「……大丈夫?」

 

知らない女の子??いや、見覚えがある顔。この世界じゃない。……となると、シャンフロ?でも、いや、何で……??

 

分からない。でも、その名前は自然と口から出てきた。

 

「…ル…スト……さん…………」

 

「うん。あなたは秋津茜だよね。見た目そのまんま」

 

やっぱり…ルストさんだ……

 

体から力が抜けて床にへたりこんでしまう。涙はもう、止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……もう大丈夫です。ありがとうございました」

 

ルストさんに導かれるまま椅子に座り込んで、数分間も泣いてしまった。その間ルストさんは何も言わずに隣にいてくれて、とても心強かった。

 

「もう大丈夫?」

 

「はい!!」

 

ルストさんのおかげですっかり立ち直れたな。ありがたい。もしルストさんがいなかったらと思うと………

 

「そういえば、ルストさんはいつもこの路線使ってるんですか?」

 

「私の高校、駅出てすぐそこだから」

 

「え!?私もですよ!!」

 

「……制服見たら気づく」

 

……あ、本当だ。ルストさん私の高校の制服きてる!!今まで気づかなかった………

 

「それと……夏蓮」

 

「?」

 

急になんだろう…

 

「私のリアルの名前。こっち(現実世界)では、そう呼んで」

 

「夏蓮さん……」

 

夏蓮。夏蓮。夏蓮さん………………

 

夏蓮さんの名前を噛みしめる。なんだろう、この感じ。夏蓮さんの新しいリアルの一面が見れて、とても嬉しい。

 

「私は、隠岐紅音っていいます!」

 

「うん。紅音、よろしく」

 

「こちらこそ!」

 

目の前の夏蓮さんを見る。

見た目はシャンフロアバターの色違い。顔はほぼ同じで、身長は…ちょっといじってるのかな?アバターよりもちょっと背が高い。とは言っても私よりは低いけど。

 

でも、私を救ってくれたその小さな体は、とても大きく感じる。

 

所詮はゲーム友達。女の子同士だけどそこまで仲の良い訳でもなかったと思う。

 

それでも、今日私を救ってくれたあなたを、

 

あの日、私とノワルリンドさんのジークヴルムさんへのリベンジが失敗しそうな時に助けに来てくれたあなたを、

 

私にはできない方法で、あの人達の力になっている、かっこいいあなたを、

 

私は…………

 

 

「どうしましょう! 夏蓮さん! どうやら、私は夏蓮さんの事が好きみたいです!!」

 

 

「…え?」

 

この気持ちを自覚しちゃえば、もう止まれない。

 

「私、リアルでも、シャンフロでも、もっと夏蓮さんと一緒にいたいです!!」

 

「…う、うん」

 

「だから……女の子同士だけど………私の恋人になってくれませんか!!」

 

「ワ…ワカッタ」

 

「じ、じゃあ、今日は失礼します!!!」

 

無我夢中で電車に駆け込む。恥ずかしくて夏蓮さんのことは見れない。そのまま電車が発車する。結局夏蓮さんの様子は見る事ができなかった。

 

 

 

 

……………って私何言ったの!?!?!?

あれ、私夏蓮さんに出会って初日で告白しちゃった!?!?

おかしくない!?やっぱりおかしいよね!?!?

 

「…あれ?でも夏蓮さん『わかった』って………」

 

ただでさえ熱い顔が更に熱くなる。

 

つまり、私と夏蓮さんは恋人同士に…………

 

 

 

!?!?!?!?!?!?!?

 

 

 

とりあえず今日はシャンフロにログインするのやめよう。シークルゥさんには申し訳ないけど、万が一夏蓮さんに会ったらと思うと、恥ずかしすぎる。また冷静じゃいられなくなるだろう。

 

うん。今日は一人で落ち着いてできるゲームをしよう。

 

夏蓮さんとのことは、それから考えよう。

 

 

ピロン

 

ん?メッセージかな?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

【ルスト】

 

ルスト:とりあえず、よろしく。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

………うひゃあ。

 

 

 

そこから先の事はあまり覚えていない。ただ、凄く幸せな時間だった気はする。気がついたら、私は家に帰っていて、何をするでもなく眠りについてしまった。




僕の中でのルスモルの距離感って、なんというか、「互いを恋愛対象に?……うーん、見れなくはないけど、別に見る必要はないかな。だって、互いが誰と恋人になろうが、どうせ一緒にいるわけだからね」って感じ。まさに一心同体、緋翼連理。だから、別に誰か別の人と付き合うのを止めはしないし、誰か恋人ができたからって一緒にいなくなるなんてことはない。それでいて、お互いが幸せになることをちゃんと最優先で考えられる。尊い。
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