「害獣さんとは私が戦います!夏蓮さんは作物のケアをお願いします!」
「わかった」
ジョウロ片手に走り出す。急いで畑を見回して、被害が出始めている風上側のとうもろこしから手入れを始めた。絵面だけ見れば、台風クラスの暴風の中でのんきに水やりをしているという間抜けなものでしかないが、とうもろこしの品質ゲージが回復しているので多分これであっているはずだ。
紅音を見ると、なんかすごい魔法を使いながら害獣へと向かっていった。
その姿に重なって見えるのは、シャンフロ内で私とモルドを守るために一人で“
少し、見惚れてしまう。
紅音は害獣を畑に近づかせないために、ヘイトを奪って畑から離れて行くように立ち回る。私を、私達のとうもろこしを、絶対に守るんだっていう気迫で
かっこいいんだけど……
少し、寂しいよ。
「よし」
とりあえず、とうもろこしの状態は持ち直した。
今、行くよ。
ジョウロを放り捨てて鍬を構え、紅音の元に走り出す。このゲームの経験が少ないとか、そんな事は関係ない。紅音の足を引っ張るかもしれない。それでも構わない。ただ、今私達は
そんな寂しい戦い方、させない。
「わ、夏蓮さん!なんでこっちに!?」
「私も戦う」
「でも、夏蓮さんは作物の方を……!!」
「かもね…でも…」
確かに、私が畑に残ったほうがスコアは出るかもしれない。でも…
「…一緒の方が、楽しい」
「………!!!」
目を見開いた紅音が唐突に動きを止める。害獣がここぞとばかりに紅音に攻撃をしようとするから、鍬でとっさに受け止めた。
「ほら、紅音、
「…は、はい!!!!」
私達は隣に並ぶ。二人でこの困難を超えるために。私達の顔に、既に追い詰められたような緊迫感はない。この
「行くよ」
「はい!!」
「「【イグニース・ブラスト】!!!」」
私達は互いに手を取り、目の前に立ちふさがる
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーーー ランク B ーーー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
仮想世界から現実世界に帰って来て、VRギアを外す。夏蓮さんと至近距離で目があった。
「………ふふっ」
「………あはは」
ログイン前のような気恥ずかしさが無いわけではない。それでも、一緒にゲームで遊んだのが楽しかったから。あの熱が、体の中で尾を引いていたから。今度は照れるでもなく、自然と笑いが込み上げてきた。
「あー、お腹空きましたね!」
「そうだね。葉を呼ぼうか。ご飯にしよう」
「そうですね!」
さっきゲーム内で出荷されて行ったとうもろこしはランクBだった。惜しくもランクAには届かなかったが、そこまで嫌な気分じゃない。意外とスッキリしている。
「私、とうもろこしが食べたいです」
「確か、缶に入ってるやつがあったと思うよ」
「じゃあ、とうもろこしとお芋さんで作れる料理を葉さんに教えてもらいましょう」
「うん……今呼んだから、多分もうすぐ来ると思う」
ふと、私の手と夏蓮さんの手が触れた。そういえば、私達は今同じベッドに寝転がっているんだっけ。冷静になると恥ずかしいけど、あまり違和感がない。
しゅるりと、指を滑らせる。
そのまま夏蓮さんの手を握ると、夏蓮さんが握り返してくる。
「……」
「……」
目の前の夏蓮さんの顔は優しい笑みに包まれている。多分私も似たような顔をしていると思う。
一緒にいると、楽しい。
例え言葉が交わされなくても、思っていることが伝わってくる。一週間前の夏蓮さんと出会う前の私は知らなかった気持ちだ。夏蓮さんと出会って、恋をして、一緒に遊んで、今、やっとこの気持ちにたどり着いた。
「…夏蓮さん」
「ん?」
「好きです」
今まで何回も言ってきた言葉。でも、今までとは違う『好き』。きっと今までよりも私は夏蓮さんが『好き』。こうやって一緒にいるだけで、どんどん夏蓮さんへの『好き』が膨れ上がっていく。
「私も好きだよ」
夏蓮さんもきっと同じだ。前回の『好き』よりもずっと『好き』が籠もっている。言葉に籠められた『好き』を感じることができる。こんなにも幸せな事はない。
目を合わせて、手を触れ合わせて、言葉を交わして、気持ちを重ねて、私達は………
ピンポーン
「…ぷっ」
「…あははは!」
思わず、同時に笑いだしてしまった。葉さんといい、害獣さんといい、タイミングが悪すぎる。
「多分葉だね。出てくるよ」
「じゃあ、私はキッチンに先に行っていますね」
「うん」
二人で布団から降りて、手を離し、それぞれ歩き始める。名残惜しいけれど、まだ気持ちが重なっているから、寂しくはない。
キッチンに入り、既に見慣れた調理場を見渡す。さっきは『夏蓮さんが私の家に嫁入りする事があったら』なんて言っていたけど、これだとやっぱろ私が夏蓮さんの家に嫁入りして来たみたいだ。
「えへへ…」
少しいい気分に浸りながら料理の準備を始める。
「あ、隠岐さんこんばんは」
「こんばんはです!葉さん!」
葉さんがキッチンに入ってきた。
「今日はどんな料理を作ろうか」
「今日はこれです!とうもろこしと、お芋さん!!」
「なるほど…となると、味付けはバター醤油が鉄板かな?」
「いいですね!!」
私の料理を食べて『美味しい』と言ってくれる夏蓮さんを頭に浮かべると、これからの料理が楽しみになる。今までは料理は苦手だったのに、夏蓮さんのために作り始めてからは料理が楽しくて仕方がない。
「よし、頑張って作りましょう!!!」
そして今日も私は包丁を手に取る。
「うん。今日も美味しい。ありがとう、紅音」
「やった!たくさん食べてくだだいね!!」
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このカップリングをやってる二次創作ってこの作品しかないじゃないですか(僕が確認した範囲内では少なくともそう)、『こんなシチュエーションとか良くない?』とかあったらください!頑張って書きます!