緋色の鳥に憧れて、赤とんぼは今日も空を翔ける   作:chee

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お久しぶりです。

これは結構書きたかった話だったので、頑張って書きました。




私の走る理由 上

私は広い競技場に立っていた。

 

 

 

その熱気は凄まじくて、私の心を滾らせる。

 

観客席はキラキラ輝いていて、私の視界を華やかにする。

 

友人たちの応援は、私を高揚させる。

 

そんな中張り詰めたような緊張感が私達(選手)を包み込む。

 

この空間を堪能する。

 

楽しくて仕方がない。

 

いつまでも味わっていたいと思う。

 

 

 

だが、無慈悲にもスタートの合図(死刑宣告)は鳴り響く。

 

 

 

私達は一斉に走り出した。

 

頭に思い浮かべるのは私のゴールを祝福する友人たち。 

 

 

………あれ??

 

 

おかしいな。追いつけない。

 

両隣を走る選手の背中がどんどん遠くなる。

 

もっと早く走らなきゃ。

 

 

でも…追いつけない。

 

 

 

心臓の音が嫌に煩い。

 

息が苦しい。

 

会場を包む熱気が私を苛むように肌を刺す。

 

観客席は私を責めるようにギラギラと輝く。

 

 

そして、友人たちの落胆する声を聞いたとき、

 

 

 

………ポキッ

 

 

 

私の中で、何かが折れる音がした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

不意に背筋がゾワッと寒くなって目が覚める。勢いよく起こした私の体は運動直後のように息が切れていて、背中は冷や汗に濡れていた。

 

息を落ち着けると、何故か熱くなっていた頭が冷えてきて、私に何が起きたのか……いや、()()()()()()()()()()()を理解することができた。

 

「また……あのときの夢……」

 

中学三年生の時、夏の陸上競技大会200m走女子、全国大会初戦。私の一番キツい思い出。

 

「最近増えたな…この夢見ること…」

 

何故この夢を見る事が増えたのか。原因は分かってる。陸上の大会が近いからだ。何も今回だけじゃない。前回の高校に入っての初めての大会の時もそうだった。

 

 

……怖いんだ。負けることが。

 

 

負けて、他の人たちの期待を裏切ることが、怖い。

 

 

初めて、あんなに圧倒的に負けた。何のいい所もなく負けて、友達が『なんだ、こんなものか』と私を見放した。

 

その目に映る感情は、落胆、失望、諦め、同情。

 

やめて!!私はみんなと楽しく走りたくて陸上をしているのに!!そんな顔しないで!!!

 

でも、全国優勝でもしない限り必ずどこかしらで負ける。前回の大会でも、いいところで負けてトラウマが蘇り、終わった後には一人でトイレで泣きながら嘔吐(えず)いていた。

 

涙が、止まらなかった。

 

 

 

 

「………音、紅音!!」

 

名前を呼ばれて不意に我に返る。

 

「ぼーっとしてないで、早く学校行っちゃいなさい!」

 

「あ……うん」

 

そう促すのはお母さん。自分の姿を見るとすでに制服で、私は考え事をしながらでも朝の支度を全て終わらせていたようだ。

 

「……行ってきます」

 

お母さんに言われるまま家を出る。そして、歩き慣れた通学路を歩いて学校へと向かう。だが、どこか落ち着かない。楽しい学校に向かっているのに、全く気分が高揚していない。()()()を見た朝は決まってそうだ。

 

「はぁ…」

 

思い足取りで学校へと向かう。電車に乗ると、嫌いな通勤ラッシュの中でもみくちゃにされるが、今日はそんなに気にならなかった。

 

気分は良くない。それでも、学校につく頃には切り替えないと。こんなテンションじゃ、みんなの迷惑になっちゃう。

 

 

「…紅音」

 

「ふぇ?」

 

 

唐突に声をかけられれ変な声が出ちゃった。慌てて振り向くと、夏蓮さんと葉さんが私の後ろを歩いていた。

 

「おはよ」

 

「おはよう」

 

「…おはようございます!」

 

声に熱が籠もる。

 

夏蓮さんと目があって、思わず笑顔になった。さっきまで曇っていた気分が一気に晴れ渡ったかのようにスッキリしている。

 

「うん。大丈夫そう」

 

「何がですか?」

 

「紅音、なんか元気なさそうだったから」

 

あ、ばれちゃってたみたいだ。

 

「やっぱりわかっちゃいます?」

 

「うん。でも、葉は気づかなかったくらいだしあんまり気にするほどじゃないとも思ったけど、やっぱり元気なさそうにだったから。何かあったの?」

 

「ちょっと悪い夢を見ちゃいまして」

 

「なるほど、それで」

 

くしゃり、と夏蓮さんが頭を撫でてくれる。その手の温もりに、思わず表情が緩む。

 

「……えへへ」

 

「もう大丈夫?」

 

「はい!!」

 

夏蓮さんの手が頭から離れる。名残惜しくて、代わりにその手を握りしめた。すると、夏蓮さんは握り返してくれる。それが嬉しくて、歩きながらずっと手を眺めていた。

 

 

「二人とも!!!」

 

 

急に肩が引かれて立ち止まる。葉さんだ。

 

「あのね…いちゃいちゃするのはいいんだけど、せめて前見て歩こうよ。信号、赤なんだけど」

 

ため息をつく葉さん。前を見てみると、確かに信号が赤だった。

 

「うわ……!!ありがとうございます、葉さん!」

 

「助かった。ぐっじょぶ」

 

「はぁ…見てると気まずいのに怖くて目が離せないって………」

 

「もう、大丈夫です!」

 

「うん。任せて」

 

「不安しかない…」

 

これ以上葉さんに迷惑はかけられない。私ももっと気をつけよう。

 

「大丈夫、もう学校つくし」

 

「へ?」

 

ふっと目線をあげると、学校が見えた。

 

「あ、本当ですね」

 

「紅音気づいてなかったの?」

 

「あ、あはは…」

 

夏蓮さんがジト目で私を見てくる。言い訳も出てこなくて、ちょっと目をそらした。

 

「気をつけてよ、紅音が事故に会うとか、嫌だから」

 

「もちろんです!!」

 

「……私もちょっと心配かも」

 

夏蓮さんに心配をかけるのは良くないな。

 

「大丈夫ですよ!私もう元気ですから!」

 

校舎への道を歩きながら、握りこぶしを作って元気アピール。夏蓮さんの目は相変わらずジト目のままだ。

 

「……やっぱり心配」

 

「あはは…」

 

自分でもいっぱいいっぱいになっちゃっている事は分かる。やっぱり夏蓮さんには分かっちゃうのかな?

 

 

 

「じゃあ、私こっちなので!」

 

「うん。またね」

 

「はい!またです!」

 

校舎に入って靴を変えると、夏蓮さんと別れて教室へと向かった。

 

……うん。大丈夫。

 

夏蓮さんに十分元気を貰った。()ももう引きずってない。私、元気十分!!

 

やっぱり、夏蓮さんはすごいや!!

 

勢いよく教室のドアを開ける。そして自席へと移動し、席の近い子にあいさつをする。

 

「おはよう!!」

 

「おはよ〜。隠岐ちゃんは今日も元気だね」

 

「うん!夏蓮さんが元気にしてくてたの!!」

 

「あぁ。今日も一緒に登校したらしいね。ラブラブじゃん」

 

「ラブラブ……えへへ……」

 

そう言われると照れちゃうな……

 

「あ、バレンタインの時はありがとう!おかげでチョコ渡せたよ!」

 

「うん。それは良かった。わざわざ隠岐ちゃんの家に手伝いに行ったかいがあったよ」

 

「本当にありがとう!大好き!夏蓮さん程じゃないけど!!」

 

「うんうん。私も隠岐ちゃん好きだよ〜。それで、佐備先輩の反応はどうだったの?」

 

「えっと、夏蓮さんね、えへへ……」

 

 

思わず頬が緩む。夏蓮さんの話をしてるだけで幸せな気持ちになってくる。

 

もう、今朝見た夢の事は忘れちゃった。

 

気分はすっかり晴れていて、とても気分が良くなった。




こないだ百合ラノベ二冊買って読んだんですよ。何か参考にならんかなって。そう簡単にはいかないですよね(泣)やっぱプロの方はすげぇっすわ。これからも精進精進。
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