緋色の鳥に憧れて、赤とんぼは今日も空を翔ける   作:chee

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こんにちは。

あらすじはサブタイ通りです。
燈花ちゃんとモルドが無性に書きたくなったのと、下手くそ戦闘描写の練習を兼ねて書きました。


小話 燈花ちゃんシャンフロ始めるってよ

シャングリラ・フロンティア。私も名前は聞いたことがある。今日本で最も売れてるゲームタイトル。曰く、「現実と錯覚するほどのクオリティ」「時代を三世代進めた神ゲー」。発売当初こそ興味を持っていて見つけたら買おうくらいの気持ちではあったが、ゲームショップを除くたびにいつも売り切れ売り切れ……なんだか乗り遅れたような気がして結局やらずじまいとなってしまった。

 

それが今日、何故か今更…というか隠岐ちゃんの強烈な推しで始めることになったのだ。

 

それにしても……

 

「キャラ作んのめんど」

 

え、これ職業いくつあるの?見た目も何でもできるじゃん。

 

「どうしよ、これ……」

 

……とは言ったものの職業はある程度決めてるんだよな。隠岐ちゃんや先輩方と一緒に遊ぶのにバランスがいいほうがいいと思って鹿尾野先輩に予め聞いておいたからね。

 

「えぇと……あったあった。騎士(大盾使い)」

 

これで職業が決まったからあとは見た目かぁ……ある程度はリアル準拠でいいかな。でも髪色くらい変えるか。じゃあ適当にオレンジ色で。

 

あとは、出身地……出身地??

 

「何が変わるのこれ……ステータスの伸びに補正がかかるのか…よくわかんないや」

 

あ、これかっこいいじゃん。忌み子。なんか名前の響きがかっこいい。これでいいや。

 

よし。ある程度決まったかな?

 

「…………あ、名前を決めなきゃ。えと、これで入力するのかな?……………『イラ』っと」

 

『夕暮れ』『黄昏』の意味を持つ単語のTwilightからとって『イラ』。私がゲームとかをするときによく使う名前だ。

 

 

「それじゃ、気を取り直して……」

 

 

いざ、シャングリラ・フロンティアの世界へ!!!

 

 

 

 

 

 

『遥かn「スキップ」プロローグをスキップしますか?』

 

もちろん。プロローグは説明書で読んだしね。

プロローグをスキップすると全身を不思議な感覚が襲い、気がつくと私は路地裏にいた。

 

「チュートリアルは……いっか。だいたい先輩に聞いてるし」

 

この後は鹿尾野先輩と合流する予定だけど……もう少し時間がある。となれば……

 

「行くしかないでしょ!戦いに!」

 

そう!せっかくゲーム始めたんだから。戦いこそ醍醐味ってもんでしょ!!

 

という訳で、大きな盾と剣を携えて、私は森へと向かった。

 

 

 

 

私の装備は、『傭兵装備』というあからさまな初期装備一式に『傭兵の大盾』と『傭兵の短剣』を両手に持った状態だ。

 

盾のサイズは私の身長よりちょっと小さいくらい。高さ130cmくらいかな?剣はよくイメージするような剣よりは短い。片手で扱うのが前提になってるから軽めに作られてるんだと思う。

 

試しに剣を軽く素振りしてみたり盾を構えてみたりする。

 

「……意外と難しい?」

 

剣を横や斜めに振ろうとすると意外と盾が邪魔になる。邪魔にならない位置に構えようとすると体のバランスが取りにくくなってこれまたうまく剣が振れない。となると剣は縦に振るしかないわけだ。ただ、これにしても、振り下ろすのはまだマシではあるのだが、振り上げる方が難しい。こればっかりは練習かなぁ…まぁ、実践でやってみないとわかんないか。

 

 

ガサッ

 

 

ちょうどいいモンスター出てこないかなぁ…と思っていたら、ちょうどその時草影から物音がした。

 

「ギギッ!グギャギャッ!!」

 

「あれは……ゴブリン?」

 

出てきたのは、ザ・ゴブリンって言う感じの小さい人型で緑色のモンスター。

 

「グ…グギャッ!!」

 

その手には石を棒に括り付けたような斧。ゴブリンはその斧を振りかぶって………

 

「ギャッ……!!!」

 

「あっぶな!!」

 

振り下ろされる斧をとっさに盾でガードする。盾を通して腕に衝撃が走る。でも受け切れないわけじゃない!

 

「……ふんっ!」

 

盾で斧を押し返して体勢を崩す。いわゆるパリィだ。そして……

 

「狙うは…急所!!」

 

ゴブリンの首を叩き斬る。だけど、LV:1の一撃で倒せるほどは甘くはないか。もう一度振り下ろされた斧を、再び盾で受ける。そしてもう一度剣で斬ろうとして…

 

「やばっ」

 

ゴブリンの腕を斬りつけた。だけど、そのまま剣が弾き飛ばされて私の手を離れる。となればしょうがない!

 

 

「剣がなければ……盾で殴ればいい!!」

 

 

盾を横から全力でぶん回して、ぶっ叩く!!

 

「ギャア!!!」

 

吹っ飛ぶゴブリンがそのままポリゴンとなって消えた。

 

「…勝った」

 

勝った。モンスターを一匹倒した。シャンフロという超ハイクオリティの空間で戦い、勝ったことへの実感は凄い。だが、それ以上に……

 

「めっちゃ気持ちいい……!!!」

 

ゴブリンを思い切りぶっ叩いた感覚が蘇る。手はまだ衝撃でジンジンしていて、この感覚が心地良い。

 

「これ、いい!!」

 

 

大盾使い。不人気職らしいけど、超大当たりじゃん!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

日暮さんがシャンフロを始めるいうことで、とりあえず僕がレベリングに付き合ってあげることになり、僕一人が旧大陸に帰ってきた。新大陸で龍災やらリヴァイアサン攻略やらを乗り越えて上がった僕のレベルなら、一人でもファステイアまで戻ることが出来た。時間は多少かかったけど。

 

そして戻ってきたファステイアの街。ゲームリリースから長い時間が経っていても未だに初期装備のプレイヤーが街にあふれている。………所々にサンラクっぽい見た目のプレイヤーがいるのが気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。

 

 

「……聞いたか?森に居るらしい盾持ち女の話」

 

「あ?何それ」

 

「なんか町を出た森でひたすら盾を振ってるやばい女がいるらしいぞ」

 

「へぇ…何で盾?」

 

「いや、知らん」

 

 

聞こえてきたその会話、ちょっと気になるんだが。

 

「なんてPNの奴だった?」

 

「『イラ』だってよ。初心者っぽいが、何で盾使いなんて不人気職選んだんだろ」

 

「知らね」

 

……………やっぱり。とりあえず、何してるのかわからないけど合流したほうがいいだろうからイラ(日暮さん)のいるらしい森に向かおう。

 

 

「………盾を()()()()ってどういうことだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、確かにイラはいた。森に入って比較的すぐ見つかった。見つかったんだけど、あまりにもその光景が異様すぎて正直話しかけたくない。

 

「……ふっ……ふっ……ふっ」

 

そこで僕が見つけたのは、まるでアップ中に素振りをしている野球部員のように、満面の笑みでひたすら盾を振り続けるイラの姿だった。

 

「盾って振るものじゃないじゃん…」

 

その時、ギョロっとイラの視線がこっちに向いた。え、何で見つかった??

 

「誰ですか……モルド??……あ、ひょっとして先輩ですか?」

 

「…うん。イラ…だよね?」

 

「はい。イラです。……あ、すいません。待ち合わせの時間すぎてましたね。盾の素振りに夢中になってしまいました」

 

「……盾って振るものじゃないよ」

 

「先輩、その考えは古いです」

 

いや、イラの考えが時代を跳躍しすぎただけでしょ。

 

「っていうか、よく僕に気づいたね」

 

「また盾を馬鹿にする輩が来たのかと思いまして」

 

……なにその盾アンチセンサー。ちょっと怖いんだけど。

 

「実際にそういう輩が来たってこと?」

 

「はい。盾のすばらしさを語り始めたら逃げました」

 

「そりゃ逃げるよ」

 

「それどういう意味ですか。殴りますよ。盾で」

 

いや怖いって。目が。そんな僕に向かって盾を素振りしないで。

 

「……ちなみにモンスターと戦うときもそんな感じなの??」

 

「剣も使ってるんですけどね。でも途中ではじかれちゃうことが多くて。そしたら盾で殴ります」

 

「いや、剣を拾いなよ」

 

「気持ちいいんですよ盾で殴るの。すぱぁーーん!!!って」

 

だからそんなにもいい笑顔で盾を振らないでぇ!!リアルでもそんな笑顔見たことないけど!?

 

「よ……ヨカッタネ」

 

「はい!!」

 

 

日暮さんにシャンフロを勧めるとどうなるんだろうっていうのは想像つかなかったけどまさかこうなるなんて思わないよなぁ…誰も。まぁ、本人が楽しそうだからいいんだけどさ。

 

 

 

 

「ハハハ!!!やべぇ本当に盾振ってるやついるよ!!」

 

「マジだ!うっける!盾使いなんて不遇職とってるだけでウケんのに振ってるとかマジウケんだけど!!」

 

「気ぃ狂ってんじゃねぇの?」

 

「アハハ!!!」

 

 

 

 

唐突に降り掛かってきた笑い声。声の主は初心者装備の二人組。イラの事はファステイアでも話題になってたし、そのうち興味本位で見に来る奴が来るとは思ってたけど、その声は完全にイラを馬鹿にしたもので、正直めちゃくちゃムカつ……

 

 

 

「あ?」

 

 

 

僕の隣から底冷えた声が響いた。イラの顔にさっきまでの楽しげな表情は消え失せていて、僕でさえもゾッとするようなその圧に、二人組は更に笑いだした。

 

 

「コイツら、潰す」

 

 

完全にキレていたイラの様子に、僕は冷や汗をかいた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

は?

コイツら今何つった?

盾使いが不遇職?

私の気が狂ってる?

 

言いたいことの一つ一つは分かる。ちゃんと言われれば内容次第では納得する。

 

だが、コイツら今、()鹿()()()()()

 

よりにもよって人の楽しみを。私の好きなものを。私に直接。

 

 

「コイツら、潰す」

 

 

そう。文字通り潰してやる。この盾で。物理的に。

 

そう心に決めた私は、装備していた短剣をモルド先輩に放り投げる。

 

「先輩、これ持ってて」

 

「は、なんで!?」

 

「いらない」

 

「いや、何言ってるのさ!!」

 

何言ってるも何も盾があれば十分。これは真理。

 

 

「お前ら、盾使いを不遇って言った事、後悔させてあげる」

 

「は?何こいつ、盾で俺らと戦う気?」

 

「もちろんだけど」

 

 

もちろん勝算がないわけじゃない。というか勝てる。盾があれば。

 

「やば、ウケる!!」

 

「どうする?戦う?」

 

「面白そうだしいいっしょ!」

 

どうやら、向こうは戦いに乗ってくれるらしい。二人揃って杖を構えた。

 

 

なら……

 

 

「潰れろ……!!!」

 

 

盾を構えて一気に駆け出す。相手は二人共魔法職。それは装備を見てればさっきからわかってた。なら……

 

()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう、なら私は盾越しに突っ込めばそれでいい!!!

 

「はぁ!?」

 

そのまま一人目にタックルでぶつかる。そいつはそのままスタンが入って一瞬だが行動不能になる。

 

「盾使いが調子乗んなぁ!!」

 

その隙にもう一人が杖で直接殴りかかってくる。あーあ、魔法を打ってくるならまだ防ぐしかなかったけど、物理攻撃は()()()ってさっき覚えたもんね!

 

「パリィ!からのぉ……」

 

さっきのゴブリンとの戦闘で覚えたスキル。パリィの後のカウンターの一撃に補正が入るというもの。なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

「…「フラッシュカウンター」!!!」

 

弾いた後の盾を巻き込むように回転して振りかぶって……そのまま殴る!!!!

 

 

ダアァァァン………と気持ちいい音が響いて二人目の魔法使いも吹っ飛ぶ。

 

 

「は、ヤバ。こいつ相手にしてもしょうがねぇって。逃げようぜ!」

 

「お、おう」

 

 

そのまま魔法使い二人組は逃げていった。

 

ふぅ…正直まだ腹は立ってるけど一発づつ殴れたから良しとしよう。

 

 

「えっと…イラ?」

 

「あ、先輩。短剣持っててくれてありがとうございました」

 

「あ、どういたしまして。……じゃなくて!なんでいきなりPKしようとするのさ!?」

 

「その、対人でも盾を使ってみたいなぁ…って思いとアイツらにイラッとしたのが重なった結果ですね」

 

「だからってあんなにキレることはないでしょ」

 

お、私そんなガチギレに見えた?実際はそこまでじゃないんだけどなぁ…

 

「そこまでキレてもないんですけどね。まぁPVPがやりたくて多少突っかかりはしましたけど」

 

「あれで倒してたらPK扱いにされる所だったんだよ?」

 

「まぁそれでも後悔はないですね。アイツらには相当イラッとしたので」

 

「だとしても、あんなに怒らなくても良くない?」

 

まぁ実際そうなんだけどね。

 

「だって、好きなものをバカにされたら腹立ちません?」

 

「立つけど……」

 

「私も、あそこまで怒ることはそうそうないですよ?さっきも言いましたけど、さっきのは戦いたさでちょっと盛った所ありましたから」

 

「えぇ……」

 

「そんなもんですよ」

 

先輩が腰に手を当てながら「はぁ…」とため息を一つつく。

 

「もうやめてね。こういうのは」

 

「はい!もう満足したので大丈夫です!」

 

アイツを殴った時のスカッと感といったら。もう大満足ですよ。

 

 

「ちなみに、何を馬鹿にされたら素であれくらい怒るの?」

 

どうだろう、そもそもガチギレすることなんてないからな…

 

「そうですね…そうそうないですよ?でもあえて挙げるなら、家族…妹の事とか、隠岐ちゃんや友達の事とかーーー」

 

 

 

 

「ーーー先輩の事とか?」

 

 

 

 

答えながら首を傾げる。怒れるかな、先輩のことで

 

「何で僕の事は疑問系なのさ」

 

「実際にその場面に遭遇して見ないとわかんないですね〜」

 

「むむ…なんか微妙な気持ち……」

 

「大丈夫ですよ、きっと怒ってあげますから」

 

「いや、別に僕の事では怒んなくていいんだけど……」

 

「まぁまぁそう言わずに」

 

 

うん。多分怒れるかも。わかんないけど。

 

 

 

でも、それくらい先輩とこうして遊んでる時間は楽しくて、私は大好きだ。




「何でも盾でPKするやべぇ女がいるらしいぞ」

「あ、俺それ見た。盾へのこだわりを熱意が感じられた素晴らしいPKだった」

という感じでファステイアにいた着せ替え隊にPKerとして一目置かれてしまうのはまた別の話。


こうして物理打撃系大盾使いイラちゃんは生まれたのでした。

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