夏蓮さんと葉さんの教室をあとにして、購買でジュースを買ってから教室に戻ると、授業開始ギリギリだった。危ない。教室に入った瞬間みんなに変な目で見られた気がした。
…その後の授業中でも視線を感じたのは何でなんだろう?
「紅音、二年生の鹿尾野先輩に告白したってマジで??」
……………あれ??
「え、なんのこと?」
「いや、朝鹿尾野先輩の教室でお嫁さん宣言したって聞いたよ?もう学校中に伝わってるんじゃない?」
『あ、そうだ、葉さん!』
『私、頑張っていいお嫁さんになりますから!!よろしくお願いしますね!!!』
あれ、私の言ったことって………
「あれ!?!?」
これって…まるで……私が葉さんに………
「ち…違うの!誤解なの!!」
「誤解も何もないでしょ。あそこまで言っておいて。それにしても“夫婦先輩”とは…珍しいとこ行ったね」
「だから違うってば!!……“夫婦先輩”って何?」
「鹿尾野先輩と佐備先輩っていつも一緒にいるし以心伝心だし、まるで夫婦みたいだねって事で有名なんだよ、あの二人」
「へぇ…」
夏蓮さんと葉さんってそんな風に見られてたんだ……まぁ分からなくはないな。私も昔はそう思ってたし。
「だから、鹿尾野先輩は既にお嫁さんいるから望み薄なんじゃないの?」
「だから違うって……むしろ、そのお嫁さんのお嫁さんというか、お嫁さんがお嫁さんというか……えへへ」
「…うん。紅音にお嫁さん願望があったのはわかったから、一旦落ち着こ。ね?」
おっと、また一人で浮かれちゃうところだった。でもこの誤解はどうやって言ったらいいんだろう……そもそも、私と夏蓮さんの関係って隠したほうがいいのかな?私のせいで夏蓮さんが陰でいろいろ言われたりするのは嫌だし。
「と…とにかく、葉さんとは何もないから!!本当だから!!!」
「お、もう名前で呼んでるんだ。早いね」
「そんなこと言ったら夏蓮さんも名前呼びだから!関係ないんだって!!」
「男子と女子じゃ違うでしょ」
「あぁ…もう……流石に私も怒るよ!!!!」
「ご…ごめん」
本当に違うって言ってるのに!もう!
この誤解、どうやって解こうか……
今日は部活がなかったから早く家に帰ってきた。そして着替えて、また家を出る。夏蓮さんの家で料理をするためだ。
……もうちょっとかわいい服を着ていこう。でも料理するなら汚れとかもつくかもしれないし…うーん…
そんなこんなで服を決めて、食材を買いに行く。葉さんには、
『何か使いたい食材を一個持ってきて』
って言われている。家で採れた野菜はすき焼きでほとんど使っちゃったから、何か買っていこうと思ってスーパーに入る。
「うーん…ん?サンマ大特価?でもそんな安くないような…これ元がすごいいいやつなのかな?これでいいかな」
よし、食材が決まった。早速夏蓮さんの家に行こう!
「あ、葉まだ帰ってきてないから。上がって待ってていいよ」
夏蓮さんが出迎えてくれる。
「葉さん、今日遅いんですか?」
「……知らないならいいや。もうすぐ帰ってくると思うよ」
何かあったのかな?よくわからないけど。
「とりあえず、それ冷蔵庫に仕舞ってきな」
「はーい」
とりあえず買ってきたサンマを冷蔵庫に仕舞ってくる。
ピンポーン
誰か家に来たみたいだ。チャイムが鳴った。
「多分葉だね。出てくるよ」
「わかりました」
夏蓮さんが玄関に向かったので、私は冷蔵庫を物色してみる。うーん…昨日の野菜が残っていて、食材が入っていない訳じゃないけど…なんだろう、いろいろないというか、まるで盛大に使ったあとに買い足し忘れた冷蔵庫みたいだ。
「あ、隠岐さん。今朝ぶりだね」
「葉さん、どうもです」
疲れた様子の葉さんがキッチンに入ってくる。
「今日は大変だったよ。隠岐さんがあんなこと言ったから、僕と隠岐さんが付き合ってるって勘違いされちゃったじゃないか」
「あはは…すいません。私もクラスでも勘違いされちゃって大変でしたよ」
「誤解を解こうと思っても中々信じてくれないし…はぁ」
「私も似たような感じですね」
うーん…私のせいで結構苦労させちゃったみたい。夏蓮さんにそういった類のからかいがなかったみたいなのがせめてもの救いだけど、私も反省しなきゃだな。
「そこは地道に頑張るしかないかな……ところで、今日はどんな食材を買ってきたの?」
「この大きなサンマです!」
冷蔵庫からサンマを取り出して葉さんに見せる。
「なるほど、結構いいサンマ買ってきたね。となると、これとこれと……このへんも使えるかな?」
葉さんが出したのはすき焼きの野菜の残りの一部と、ダシをいくつか。
「夏蓮は骨を取るのが面倒くさいって言ってあまりサンマを食べたがらないんだよ。だから、今回は予め身をほぐして炊き込みご飯にしようと思うんだけど、どうかな」
「いいと思います!!」
葉さんの指導のもと、料理の準備を進めていく。私の料理スキルについては、前に料理に挑戦した経験が活きてるようで、器具の扱いも問題ないし、想像よりもずっとスムーズに調理が進んだ。
「……できました!!!」
「うん。よくできてるよ」
「やった!じゃあ私盛り付けますね!」
「僕は夏蓮を呼んでくるよ」
私が初めて夏蓮さんのために作った手料理。夏蓮さんは喜んでくれるだろうか。いや、きっと喜んでくれるよね!
三人分の料理を運び、席につく。
「「「いただきます」」」
一口食べてみる……美味しい!!
こんなに美味しい料理を自分で作ったのは初めてだ!夏蓮さんの反応は………
「うん。美味しい」
やった!!!
「なんかもっと感想ないの?隠岐さんの初手料理」
「うん。愛情を感じる味」
愛…情……。確かに籠めたけど……恥ずかしい。
「なんかもっと具体的に感想を言ってあげなよ」
「…このサンマのほぐし方、葉より丁寧。野菜は切り口が揃っていて、すごい気を遣って切ったのがわかる。盛り付けも綺麗だった。至るところに愛情を感じる。幸せな味」
「………ありがとう、紅音」
………顔が熱い。夏蓮さんにここまで私の料理を味わってもらえたって事が嬉しくて、つい頬が緩む。
「ど…どういたしましてです」
「……ここまでしてくれるんだもん。私も覚悟を決めなきゃね」
夏蓮さんの呟きが聞こえる。なんの話だろう。
「葉、紅音、明日の朝なんだけどさ……」
昨日の夜に夏蓮さんに言われて、今日は登校前から夏蓮さんの家に向かう。今日は一緒に登校しようって夏蓮さんが言ってくれたからだ。
「紅音、おはよう」
「おはようございます!夏蓮さん!」
「じゃあ、行こうか」
「はい!」
二人で出発する。葉さんは既に学校に行ったらしい。二人で電車に揺られて、学校の最寄り駅につく。そのまま学校へ向かおうとした時……
………夏蓮さんが手を握ってきた。
「ひゃっ……!!」
「……嫌だった?」
「嫌じゃないです。嬉しいです!」
私もその手を握り返す。夏蓮さんが少し顔を紅く染めて、二人で笑い合う。
そして二人で手を繋いだまま、校門を潜った。
「ん!隠岐さんきたぞ」
「佐備さんと手を繋いで登校?鹿尾野とじゃなくて?」
「佐備先輩が鹿尾野先輩以外といること自体珍しいな」
流石に昨日の今日。やっぱり注目されちゃってる。私のドジが原因なんだけど、やっぱり夏蓮さんのいるところだとちょっと………
……不意に夏蓮さんが指を絡めてきた。
!?!?!?!?!?
これは俗に言う恋人繋ぎというやつなのでは!?
急劇に顔が熱くなる。夏蓮さんを見ると、さっきよりも赤い。耳まで真っ赤だ。
私達のことを見ていた人たちも呆気にとられている。凄い見られているけど、夏蓮さんは何も気にすることなく校舎に向かって歩みを進めた。
その時、私の知らない女子が話しかけてきた。二年生のリボンを付けているから、夏蓮さんの知り合いだろうか。
「あ…あの、佐備さん?隠岐さんとはどういう関係なの?」
「どういうも何も、付き合ってるけど、私達」
「…………え?」
再び聞いてた全員が呆気にとられる。ついでに私も呆気にとられる。
「…夏蓮さん、言ってよかったんですか?」
「うん。紅音があんなに頑張ってくれたのに、私だけコソコソしてるわけにもいかないしね」
「か…夏蓮さん……」
もしかして夏蓮さん、昨日の私の料理を食べて今日のことを?……嬉しい!私の気持ち、料理で届いたんだ!
「ありがとうございます!!」
両手で夏蓮さんの手を握り返す。そのまま夏蓮さんに笑いかけると、夏蓮さんが笑みを返してくれた。
「紅音は私の恋人なんだって、ちゃんと、胸張って言いたかったから」
「やっぱり私は、紅音が大好きだから」
「だから、ゲームでも、学校でも、もっと一緒にいたい」
「……私もです!!!!」
「うん。これからも、よろしくね」
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…どんどんネタがなくなっていく…………