凄い難産な子が仕上がったので、投稿します。
最近思うことがある。紅音と付き合い始めて数日しか経っていないが、あまりにイベントが多い。
まぁ、何が言いたいかというと、
「……疲れた」
「あれ、夏蓮さんお疲れですか?」
「うん。最近いろいろあったからね」
「でも、私は毎日楽しいですよ?」
「それは私もそう」
「ですよね…えへへ」
紅音の笑顔を見ながらの食事。やっぱりこの時間が癒やしだ。紅音も着実に料理がうまくなっているし、最近は本当に夕食を楽しみにして生きていると思う。
「こうやって夏蓮さんとご飯を食べるだけでも、凄い楽しいんですよ!」
「うん。私も楽しい」
食卓を囲みながらの団欒。紅音の言うとおりとても楽しい時間だ。しかし、体は疲れを意識してしまっている。
この一週間ほどの間にも、痴漢騒動、シャンフロでの“
「たまには紅音ともっとのんびりした時間を過ごしたい…」
「そうですね……あ、ならいいゲームがありますよ!」
「へぇ…どんなゲームなの?」
「のんびり牧場経営を楽しむゲームです!」
それは楽しそうだな。紅音とまったりスローライフ。うん。完璧。
「じゃあ、明日買ってくるからゲームの名前教えてくれる?」
「『スリリング・ファーム』っていうゲームです!」
かくして私と紅音のまったり生活が始まる………はずだった。
翌日、学校で紅音を部活へと送り出してから、葉と二人でゲームショップへと向かった。
「そういえば、こうしてゲーム買いに来るのも久しぶりだね」
「そうだね。今まではネフホロとシャンフロやってれば十分だったし」
そもそも、ネフホロさえあればそれで良かったからね。他のゲームに一切の魅力を感じなかった。ロボゲーは別だが。
久しぶりのゲーム漁り。少し楽しみにしていたが、残念なことにあっさりと、というか、店内に入る前に終わってしまった。
「これじゃない?隠岐さんの言ってたゲーム」
「『スリリング・ファーム』……うん。これだね」
葉が店先のワゴンから見つけ出したのは、件の牧場経営ゲーム。パッケージに映っているののは、のどかな牧場の風景。そこに紅音とのまったり生活が待っているのかと思うと、少しワクワクしてしまう。
「このワゴンのゲーム、一律二百円だって。何かのセールかな?ついてるね」
「うん。早速買って帰ろう」
あまりにも安いゲームに違和感を覚えつつも購入を済ませ、帰宅する。
葉と別れてそれぞれの家に帰り、早速プレイをしてみようという事になった。紅音が帰る頃にはある程度一緒にプレイできるようになっているといいのだが…
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「何?このクソゲー」
え?今何があったの?
私は牧場経営の第一歩としてとりあえず牛を飼うための場を整えようと干し草を植えたところだ。なのに、目の前に広がっているのはただの荒れ地。ゲーム内時間でも五日ほどしか経ってない。こんな序盤にまさか害獣が荒らし回るイベントが発生するとは……
「まさか…たまたまだよね…」
そしてもう一回チャレンジ。今度は六日ほどで、再び荒れ地が生まれた。
衝撃が隠せない。
「…え」
そもそも違和感はあった。そこそこ人気の出そうなジャンルなのに一切聞いたことのないゲームタイトル、一律二百円の超大安売り、チュートリアルでは牧場経営ゲームなのに何故か魔法を撃たされたり、何故か施設に核シェルターがついているし、何なら核爆弾すら作れるときた。
なるほど、このゲームはどうしようもない類の奴だ。
とりあえず、紅音が部活終わらせて帰ってくるまでにある程度プレイできるように練習をしておこう。
試しに、難易度の低いと言われている作物を片っ端から植えてみる。そして迎えた七日目、巨大生物の襲撃を受け、作物は全滅した。
そしてトライアンドエラーを繰り返した先で……
「で…できた…」
目の前には収穫済みの作物。小さな芋が少し。十二回目のチャレンジにして初めて出荷される作物。何度も何度も害獣を撃退して、そのたびに一部が駄目になって。そんなこんなを繰り返して生き残った歴戦の芋だ。
「ここまで…長かった…」
実際にはそこまで長い時間が経ったわけではないが、たくさんのイベントが起きたせいでとても長い時間を過ごした気がする。害獣とか害獣とか害獣とか。
害獣が作物を荒らしに来るのはまあわかる。実際の農家でもある事なのだろう。ただし、ゲーム内時間でだいたい一週間置きに巨大怪獣が天災が如き被害を撒き散らしていくのは違うだろう。しかも、ここで言うゲーム内での一週間って現実だと十分〜十五分くらいだから、やっとの事で巨大怪獣を撃退しても、すぐに次の怪獣が現れる。これ、農作業って言うより怪獣からの護衛クエストがメインって言われた方が納得できるというものだ。
それだけの苦労を重ねて、その成果は、芋、少し。
これまで無為に犠牲になってきた作物のことを考えるとこの僅かな芋にさえも愛着が湧いてしまう。だが、ゲームというものは無情、なんの感動もなく芋は出荷されて行った。
ーーー ランク E ーーー
ものの見事な最低ランクであった。
これ、しんどいなぁ……
でも、紅音と一緒にプレイしたいしもうちょっと粘るかなぁ。いざ一緒にやるってなって私何もできなかったらなんか悲しいし。もうちょい練習しよ。
目指せ、紅音とのまったり牧場経営スローライフ。
「とりあえず、芋、芋、芋………」
……五日後、作物は全滅した。
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【秋津茜】
秋津茜:夏蓮さん!部活終わったので今から帰りますね!
ルスト:わかった。『スリリング・ファーム』やりながら待ってる
秋津茜:良かった、買えたんですね!ところで、今日の夜ご飯何か食べたいものありますか?
ルスト:……芋
秋津茜:お芋さんですか?
ルスト:うん、芋
秋津茜:わかりました!
ルスト:ありがとう
秋津茜:ちなみに、『スリリング・ファーム』はどうですか?
ルスト:………………とても感動した。
秋津茜:確かに、出荷の時は感動しますよね!
ルスト:ウン
秋津茜:早く帰って夏蓮さんと一緒にやりたいです!
ルスト:私も一緒にやりたい。早く帰ってきてね
秋津茜:……!!………!!!!
秋津茜:わかりました!!!!!!
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【サンラク】
ルスト:ちょっといい?
サンラク:どうしたルスト。珍しいな
ルスト:サンラクってクソゲーに詳しいんだっけ?
サンラク:まぁ、それなりには
ルスト:『スリリング・ファーム』って知ってる?
サンラク:……何で『危牧』??
ルスト:それって有名なの?
サンラク:一応俺達みたいなクソゲーマニアの間では有名な作品ではあるが…
ルスト:なるほど
サンラク:本当にどうした?
ルスト:いや、なんでもない
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一方その頃のモルド
「あぁ…また一からやり直しだよ……もうやだあぁぁ!!」
と言いつつやり続けるんですよねこの子。
紅音の前で見栄を張るために陰で努力する夏蓮かわいいなって。
紅音が芋を“芋”って呼ぶか“お芋さん”って呼ぶかはかなり悩みました。“お芋さん”はやっぱりちょっとあざといかな?って思ったけど、疲れた僕の脳内で『お芋さん♪お芋さん♪』と紅音が小躍りを始めたのが可愛かったので、採用です。