鉄華団団長とホロライブ   作:フォールティア

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もう一つの明日へ 2

その後。

予定されていた打ち合わせを手際よく済ませ、昼休憩がてら公園に来ていた。

 

手早く打ち合わせを終わらせたココの仕事ぶりにオルガは改めてその能力の高さに舌を巻いていた。

なんなら自分より手際がいいんじゃないか。と考えてしまう程には。

話には聞いていたし、横目に見てもいたがこれ程とは思っていなかった。

本人は人間社会は初めてと言っていたが、果たしてそうなのだろうか。

何だか張り切っている様子の彼女にその事を聞いてみたが、

 

「ワタシはやりたいようにやってるダけ。能力が高イ?そりゃあドラゴンだからナ!」

 

とはぐらかされてしまった。

張り切っている理由も聞いたが、

 

「"ワタシ"が視れなかった景色を視たいかラ」

 

と納得出来るような出来ないような回答を返された。

「それに」とココは続ける。

 

「ちゃんと支えてくれル誰かが居るから突っ走れるんだ」

 

そういってサンドイッチ片手に彼女は笑った。

その笑顔を見て、オルガはどうしてか名瀬の兄貴を思い出した。

自分を……鉄華団を拾い、導いてくれた恩人。

 

「……」

 

一瞬、あの頼れる背中を、姿をココに重ねて、言葉に詰まる。

最期は愛した人と共に逝ってしまった彼を見いだして。

 

「……そうだな」

 

瞑目し、なんとか声を絞り出す。

そんなオルガに何を見たのか。ココがその背中を思い切りひっぱたいた。

 

バシン!!

 

「いっ──!?」

 

突然の激痛に視界が弾ける。

思わずベンチから飛び上がったオルガが仕立て人を振り返ると、こちらを見ながらココが腹を抱えて爆笑していた。

 

「おま、いきなり何してんだ!」

 

「アッハハハハハハ!しょぼくれてるオルガ団長おっかしくってアッハハハハハハ!!」

 

「んな──誰が」

 

「────大丈夫」

 

「え?」

 

不意に、ココが立ち上がる。

 

「ワタシは桐生ココ!!何時かの──何処かの"ワタシ"が視れなかった未来(あした)を視る為に進む!!桐生会会長……桐生ココだ!!」

 

「……」

 

「ワタシは止まらないシ、止まるつモりも無い!!」

 

そこまで言い放ち、ココは己の胸をドンと叩く。

 

「だからそんな不安になんナ、団長。ダチが先輩が……桐生会の皆が居る限り、ワタシは大丈夫」

 

木々の梢の下──。

快活に、ハッキリと。目の覚めるような笑顔で。

ヒトが好きなドラゴンは、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。

夏だからかまだ明るい空の下。

桐生ココは一人歩いていた。

ダンスレッスンはとうに終わり、飲みかけのスポーツドリンクを片手に茜に染まりだしたビルの森を進む。

 

思い出すのはつい先ほどの事。

 

 

 

レッスン終わり、オルガとの別れ際。

 

「なあ、桐生」

 

「うん?」

 

「朝のアレって──」

 

アレ、と言うのはきっと朝の運転手だろう。

何となくで済ませていたが気になったらしい。

それに対してココは、

 

「仕事熱心な、ワタシのファンだよ」

 

そう答えた。

 

 

 

我ながら随分と下手な誤魔化しだと自嘲する。

しかし強ち嘘でもない。

正真正銘、彼は桐生会の……一員なのだから。

 

コツコツコツ──

ヒールの音が雑踏の中を通り抜けていく。

やがて人混みを抜け、静かな裏路地に出る。

 

「────」

 

コツコツコツ──トットットッ

 

薄暗く、人気も無い道を行く。

とても……静かだ。

 

「……ふぅ」

 

息を一つ吐く。

そして、ピタリと歩みを止めた。

 

コツコツコ──トトッ

 

「もう、尾行下手ですヨ、先輩」

 

何時の間にか後ろに増えていた足音。

その発生元に振り向く。

 

「うう、バレてたか~」

 

室外機の裏からバツが悪そうに苦笑して、るしあが現れた。

 

「バレバレもバレバレ、足音丸聞こえでシたよ」

 

「えぇ~?消してた筈なんだけどな~」

 

「ドラゴンイヤーは聞き逃さないのデ」

 

自らの長い耳を自慢げに指でトンと打つ。

納得いかないのか少し不満げに頬を膨らませるるしあにココは肩を竦めた。

 

「で、どうして今日、あんなことしたんです?あの運転手──生き霊だったでしょ」

 

真剣な面持ちでそう訊くココに、るしあは「ホントは言わないでって言われたんだけどなぁ……ま、しょうがないか」と前置きして答えた。

 

「頼まれたの。彼らに」

 

「彼ら?」

 

「それと生き霊とは厳密には違うかな。強いて言うなら、願いの結晶……みたいな」

 

「……そっ、か」

 

ストン、と納得が胸に落ちる。

 

「何処の誰でも良い。どうかこの声を一度だけ届けさせて欲しいって。近くて遠い所から私に頼んで来たんだ」

 

るしあは空を見上げる。

紅玉の瞳には日に別れを告げる茜と、夜の訪れを伝える紺。その淡い境界が映る。

瞬く間に過ぎる、黄昏の色が。

 

「だから届けるくらいなら自分達で言いなって、象ってあげたんだ」

 

「…………」

 

「綺麗な魂の色だったよ。虹色で、キラキラしてた」

 

帳が落ちる、その一瞬。

るしあは優しく、或いは励ますように

 

「愛されてるね、ココ」

 

そう言った。

それに対してココはただ一つ、満面の笑みをもって答える。

堂々と、大きく胸を張って答えられる。

 

「当然!ワタシの──ファンなんだから!!」

 

 

 

夏の夜空に、先駆けの一番星が輝いた。

 

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