鉄華団団長とホロライブ   作:フォールティア

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状況整理と異世界転生

「……を……して」

 

「手当……傷が無……」

 

「病……」

 

微睡む意識の中、声が聞こえる。

 

(何だ……?お迎えでも来たってのか?)

 

聞き覚えのない声に、朦朧とした意識でそう思う。

自分は……オルガ・イツカは死んだ。確実に。

鉛弾をこれでもかと言うくらいに身体にくらったのだから当然だ。

死んでいない方がおかしいと言うものだ。

 

「……社長に……を」

 

「身元……わからな……」

 

……に、しては随分と騒がしい。

死んだこと自体、これが初めてなので何とも言い難いが。

自分のイメージしていた死とは真逆の騒がしさに首を傾げる。

 

「あ、動いたッス!」

 

と、今度はハッキリと声が聞こえた。

 

(……何か、おかしくねぇか?)

 

そう認識した瞬間、とてつもない違和感に気付く。

違和感……ではあるのだが、何となく慣れ親しんだ……そう、強いて言うなら夢から覚めるような……

引っ張られるような感覚が強くなり、どうしてそうなったか解らぬまま意識が浮上していく。

そして──

 

「あ、起きたッス」

 

「「「おおっ」」」

 

「…………………は?」

 

──目が覚めたら見たことがない女性たちに囲まれていた。

 

「…………」

 

『…………』

 

お互いに視線を交わすこと数秒。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!?」

 

「はようございますッス!」

 

「いや挨拶じゃないだろどうみても!」

 

「一時的な混乱状態ね、仕方ないわ」

 

「意外と冷静!?」

 

「あ、お茶飲みます?」

 

「自由かっ!」

 

目覚めと同時に訪れるカオスな光景にオルガの脳は一瞬で混乱する。

それもその筈、目の前には鉄華団の面々も、クーデリアのお嬢も居なければ名瀬の兄貴も居らず、かわりに見たこともない、獣耳やら角やら(内一人は帽子だが)が付いた女性が数人、こちらを見下ろしていたのだから。

これで混乱しない人間が居るとすれば名瀬の兄貴位だろう、いや、流石の彼でもこんな状況は想定できないと思う。

 

(落ち着け、オルガ・イツカ……!女の面ァ見て取り乱すなんざ、団長失格だろう……!!)

 

大きく深呼吸して乱れた意識を繋ぎ直す。

二、三回それを繰り返し、漸く呼吸を落ち着かせ、俯いていた頭をあげる。

白を基調とした壁やデスクに、鉄華団の事務所を思わせる雑多な荷物の数々……そして

 

「大丈夫ッスか?」

 

見たこともない服装と外見の少女?達。

 

「……ここは?」

 

今の自分には何もわからない、というのがわかった所で、妙に乾いた口を開いて問う。

いっそあの世ですと言われれば諦めもつくのだが。

少女?達の中でも大人びた雰囲気の女性が答えた。

 

「ここはホロライブの事務所よ。貴方はウチの前で倒れてたから此処に運んで手当てしたの」

 

「ほろらいぶ……?」

 

金の長髪に奇妙な角を生やし、白衣を纏ったその女性の答えにオルガは疑問を浮かべる。

ホロライブという名前の事務所など、クリュセにあっただろうか?

 

(いや、それよりも先ずは、スジを通すべきだろ)

 

姿勢を正し、女性たちに頭を下げた。

 

「先ずは、助かった。手当てをしてくれてありがとう」

 

名瀬仕込みの一礼に女性達は一瞬唖然としたものの、直ぐにオルガの頭を上げさせようと慌ただしくなる。

 

「いやいやいや!頭を上げてくださいよ!」

 

「そうッスよ!ウチら大したことしてないし!」

 

「何もしてなかったアンタが言うな!?」

 

「あ、お茶飲みます?」

 

「そのお茶推しは何なの!?」

 

黒い短髪に帽子を被った少女と、白髪に動物(だろうか?)の耳が生えた少女に翻弄される黒い長髪にこれまた動物らしき耳の少女。

 

「ストップストップ、彼困ってるわよ」

 

それを諌めて金髪の女性がオルガに振り替える。

 

「大したことしてないのは本当。でもお礼は受け取ったから頭を上げて、ね?」

 

「ああ……」

 

女性に諭されて頭を上げると、先程見た通りの現実離れした光景が目に入ってきた。

再び混乱しそうになる思考を抑えていると、自分がまだ名乗っていない事に気づく。

 

「……俺の名はオルガ・イツカ。鉄華団の団長だ」

 

探りを入れる為に敢えて自分の所属を付け足す。

鉄華団──これを聞いて即座に反応するならばギャラルホルンの可能性が高いと踏んでの事だ。

もしもそれが当たっているならば直ぐにでも此処を脱出しなければならない──のだが、相手の反応はあっさりとしたものだった。

 

「私は癒月ちょこ。ホロライブ所属のVtubarよ」

 

「同じくホロライブ所属の大空スバルッス!」

 

「大神ミオでーす」

 

「白上フブキですっ」

 

というか寧ろ更に混乱を招いた。

ホロライブ?Vtubar?全くもって聞き覚えがない。

そんな組織、火星にあっただろうか?

 

「……聞きたいんだが、ここは火星の何処だ?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「えっ?」

 

返ってきたのはすっとんきょうな声。

何か妙な事だろうか?自分が撃たれた場所と今の自分の格好を考えれば火星なのは間違いない筈……なのだが。

 

「火星ってテラフォーミング出来てたっけ?」

 

「いやいや、そんな一大ニュース聞いたことないッスよ!?」

 

「ロボ子先輩なら火星くらい行っててもおかしくないけど……ロボだし」

 

「えっ、じゃあ火星人ってこと?」

 

「「「そ れ だ」」」

 

「おーい聞こえてんぞー」

 

いきなり円陣を組んでひそひそと話しているが普通に聞こえている。わざとか。

何とも言えないユルい空気に思わず脱力感を感じる。

 

「……んで、結局ここはどこなんだ?」

 

「えっと、ここは地球の、日本って言う国の、東京って都市なんだけど……」

 

「ニホン……?トウキョウ……?」

 

ミオが恐る恐る出した答えに一瞬オルガの思考が真っ白になる。

 

「ま、待ってくれ、地球だって?んな馬鹿な事があんのか?俺が撃たれたのは火星のクリュセだぞ……?こんなナリで地球まで運ばれたってのか……?」

 

「って言われてもここが地球なのは事実だし……」

 

「そもそも火星に人が住んでるのも、クリュセって地名?も私達は知らないです」

 

「……は?」

 

続けてフブキが言った一言に今度こそ完全に思考が消えた。

クリュセはまだしも、火星のテラフォーミングを知らない?学があまりない自分でさえ知っている事なのに?

混乱に混乱を極めていると、ちょこが顎に指を当てながら一歩前に出た。

 

「うーん、どうにも知識に食い違いがあるみたいね」

 

「…………みたいだな」

 

茫然とする頭でそう返す。

ここまで話が合わないとなると、流石におかしいと誰でも気付く。

 

「取り敢えず情報交換しましょうか。そうすれば何かわかるかもしれないし」

 

パンっと手を叩きフブキがそう促す。

オルガとしてもこの不明瞭な状況を打開するのに必要と考え、その提案に賛成する。

 

「それじゃあオルガ……さん?から質問をどうぞ」

 

「ああ、先ずは──」

 

こうして、オルガと彼女達による情報交換が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く。

 

「お互い、情報は出しきったか……?」

 

「そうなるわね……」

 

結論をいうと、食い違いとかいうレベルじゃなかった。

もう色々と違いすぎる。

暦も違えば歴史も違う、技術レベルや世界情勢、果ては人の生活基準まで違うと来た。

異国とかもうそういう次元の話ではなかった。

 

「ワケわかんねぇ……」

 

ここまで来ると頭を抱えたくなると言うものだ。

そんなオルガとは反対に、ホロライブの彼女達は特に混乱はしていなかった。

 

「あー、異世界組みたいな感じかぁ」

 

「というか異世界転生?」

 

ミオとフブキが他のメンバーを思い出し、ある仮説を立てる。

 

「異世界転生?何だそりゃ」

 

「こっちの世界の創作物で流行ってるジャンルで」

 

「ある日突然死んでしまった主人公が目を覚ますとそこは見知らぬ世界だった!!……みたいな導入の物語なんス」

 

ちょことスバルの補足に、オルガは納得する。

確かに今の自分の状況と合致するし、それならあの致命傷で生きているのもわからなくもない。

荒唐無稽、というのを除けばだが。

 

「つまりは、だ。俺はアンタらから見て異世界の火星のクリュセで死んで、その異世界転生とやらでこっちに来ちまった、と」

 

整理するために改めて口にすると、ちょこ達がうんうんと頷く。

 

「納得……するしかねえか……」

 

現実離れしすぎな状況だが、それでも呑み込まなくてはいけない。

でなければ前には進めない。

フブキに渡されたお茶を一口飲んで気持ちを切り替える。

 

置かれた状況はわかった。

なら次は

 

 

「それでオルガ、貴方これからどうするの?」

 

「…………だよなぁ」

 

何をするか、だ。

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