土方さんお元気ですか。届くことはないとわかっているのですが、私がなんとなく文を書きたかったでここに記します。
函館五稜郭の戦いから約10年が経ちました。その時から私は生き残った新撰組の隊士の皆さんを探す旅をしておりました。
10年全く手掛かりも見つからず、誰ともお会い出来ていませんでしたが。今日ようやく会うことが出来ました。
斎藤さんと永倉さんです。
お二人とも警察官や道場師範いった形で元気に過ごされているそうです。
そこで不思議な出会いもありました。
土方さん覚えてますか、『人斬り抜刀斎』
人斬り抜刀斎…今は緋村剣心と名乗っているようです。
驚いたことに、人斬り抜刀斎と名乗っていたのが疑わしい程に、温厚で優しい男性です。
そういえば、向こうは覚えてないようですが、私達一度お会いしてたんですよね…確か。
土方さんは、覚えていますか。あれは確か…
それは、新撰組が『池田屋事件』で京の都で名を挙げて間もない頃でした。
私はその日、父雪村綱道を探すため新撰組二番組組長『永倉新八』と新撰組十番組組長『原田佐之助』の見廻りに同伴していました。
「うー。今日もさみーなぁ、千鶴平気か」
「ありがとうございます原田さん。私は大丈夫です」
「サボるなよ。佐之助」
「新八よ俺のこと信用しろよ」
「最近、京では人斬りが流行っているからな。隙を魅せるなよ」
「人斬り…」
「ようは暗殺者だな」
「それはわかりますけど。都でそんな物騒なことが流行っているんですか」
「幕府と薩長の緊迫感が高まっているからな。特に『人斬り抜刀斎』には気を付けろ」
「確か抜刀術の達人だよな。その抜刀斎って奴」
「あぁ。神速とも言われるその抜刀術で対象に武器を持たせぬまま一瞬で斬り捨てるそうだ」
「頬に十字傷があるんだろ。そんな奴に傷をつけた奴もすげーよな」
「でもよ新八。局長の近藤さんや副長の土方さんならまだしも、名を挙げたばかりの俺達を人斬りの対象にするかね」
「さぁ。だが薩長の連中が池田屋の一件で俺達新撰組に恐怖を覚え早急に処理しなければいけないと判断したら、可能性は十分ある。だから最近副長は千鶴を見廻りに同行させるのを嫌うのだろう」
「そういえば、土方さん最近私が見廻りに同行するの厳しい剣幕で拒否しますね」
「あぁ。万が一抜刀斎と遭遇した場合。千鶴がいては足を引っ張るだけだしな」
「うっ…。すみません」
「新八。言い方ってもんがあるだろったく。大丈夫だ千鶴。そんな時は俺達が守ってやるから」
「はい。ありがとうございます」
「でも勝手に動くのは無しな千鶴。流石にそこまで面倒は見れない」
「肝に命じます」
「…なんか刀の音がしないか」
「えっ…」
「あぁ、間違いなく刀のぶつかり合う音だ…俺が見てくる」
「佐之助。頼んだぜ」
原田が曲がり角を曲がると音が聞こえなくなる
「原田さん…大丈夫でしょうか」
「新撰組の組長背負ってる男だそう簡単にはやられねーだろ」
ブゥオーン…ブゥオーン
(槍を振り回す音…佐之助)
「二人とも逃げろ」
「佐之助。様子を見てくる千鶴は…あぶねー」
思わず千鶴を突き飛ばす永倉。すかさず空から降ってきた刀を防ぐ。
(コイツ。屋根の上から。なんて身軽なんだ)
壁を利用し距離をとる襲撃者。
(コイツは…)「千鶴。走って逃げろ」
永倉の声に反応し振り向くと、永倉は刀を折られ勢いそのまま襲撃者は千鶴めがけて走ってきた。運良く転び一振り目をかわした千鶴。
しかし目の前で襲撃者は次の一振りを決めようとしていた。
(頬に十字傷…もしかしてこの人)
「オナゴか…すまんな」
勢いよく振り落とされる刀をどこからか刀が割って入る。
身体を誰かに抱き抱えられる千鶴。
「大丈夫か、お前」
「あっ、その…」
「話しは後だ。先にコイツを追い払う」
「新撰組副長。土方…歳三」
これが、私と土方さん…そして抜刀斎の邂逅であった。