上弦の白兎   作:ヨーギラス

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豊饒の女主人

下層で荒稼ぎしてきた僕は管理機関(ギルド)で換金した後、勧められた『豊饒の女主人』へと向かう。

 

「賑わっているなぁ」

 

そう呟きながら店に入ると、シルさんが出迎えてくれる。

 

「ベルさん、来てくださったんですね」

 

「えぇ、貴方のような美人さんのお誘いを無下には出来ませんから」

 

「そんな美人だなんて・・・良く言われます♪それではお席にどうぞ!」

 

僕の褒め言葉にシルさんは照れて顔を赤くしながらも仕事をこなす。

 

そうして案内された場所は細長い席(カウンター)

 

すると、眼の前に恰幅の良い女性が現れる。

 

「アンタがシルの言ってた坊主だね、なんでも私らに悲鳴を上げさせるくらいの大喰らいだって聞いてるよ!!」

 

「えぇ、とりあえずこの牛肉鉄板焼き(ステーキ)を血が滴るくらいの半生(レア)で三十枚ほど頂けますか」

 

「あいよ、酒はどうする?」

 

「では、赤葡萄酒(ワイン)を頂けますか」

 

「あいよ」

 

そうして待つこと十分、注文通り三十枚の牛肉鉄板焼(ステーキ)と赤葡萄酒(ワイン)が届く。

 

「いただきます」

 

食事の挨拶をした後、一枚の肉を一口で食らう。

 

たった三十口で牛肉鉄板焼き(ステーキ)を完食し、葡萄酒(ワイン)を飲み干した。

 

「すごいですねベルさん、あの量のお肉を食べきっちゃうなんて」

 

シルさんが驚きながらそう言ってくるが、まだ物足りなかった僕は注文を始める。

 

「そうですかね・・・すみませんシルさん、この貝の酒蒸しと茹で海老と魚と根菜の揚げ物(フライ)と丸鶏の丸焼きに麦酒(エール)大形杯(ジョッキ)で」

 

「あっ、はーい!!」

 

まさかの追加注文にシルさんは厨房に注文を伝えに行く。

 

ガツガツ、ボリボリ、ザクザク、バキバキ、ゴクゴクッ!!

 

海老も丸鶏も殻と骨を丸ごと噛み砕き麦酒(エール)で流し込んで行く。

 

「最高だな」

 

そう言って余韻を楽しんでいると、店員の一人が大声を出す。

 

「ご予約のお客様ご来店ニャー!!」

 

その声とともに入ってくるのは様々な種族が入り混じった集団に道化(ピエロ)徽章(エンブレム)があった。

 

「【ロキ・ファミリア】だ・・・」

 

周囲の客がざわつく。

 

「ベルさんも【ロキ・ファミリア】の方々のことが気になられますか?」

 

「いえ、別に。特には・・・」

 

「そうなんですか?珍しいですね、オラリオ最大派閥の一角に興味がないなんて」

 

「よそはよそ、うちはうちですから」

 

「なんか、だだをこねる子供に言って聞かせるような感じですね」

 

「否定はしません、それよりも腹が満たされましたので会計をお願いします」

 

「はい、解りました。それでは五万ヴァリスになります」

 

「それではこれで」

 

僕は懐からヴァリスの入った麻袋を手渡す。

 

「確かに受け取りました」

 

「では、また来ます」

 

「はい、また来てくださいね」

 

こうして、僕は最高の夕食を堪能したのだった。

 

 

ベルが帰った後の豊饒の女主人では・・・。

 

狼人(ウェアウルフ)の団員が警戒するように入口を見ていた。

 

「ん、どないしたんやベート、そんな怖い顔してせっかくの宴やで?もっと盛り上がらんかい!!」

 

「ベート、なにか感じたのかい?」

 

「さっき店を出たあの白髪野郎、血の匂いがした」

 

『!?』

 

「それも十や二十じゃねぇ、べったりと濃い血の臭いがしやがった。相当人数を殺してやがる」

 

「それって誰かが招き入れたってこと?」

 

「解らねぇが、碌な事が起きそうにねぇ気がするのは確かだ」

 

「んまぁ、難しいことは後で考えるとして今は宴を楽しむでぇええええええ!!」

 

そうして、【ロキ・ファミリア】の宴が始まるのだった。

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