上弦の白兎 作:ヨーギラス
金髪の少女と別れた後、地上に戻ってすぐに集めた魔石を換金しにギルドに行くとエイナさんが駆け寄ってきてこう言ってくる。
「ベル君、ちょっと話良いかな?」
「別に構いませんけど、先に換金だけ済ませて来ます」
そう聞いてくるエイナさんの言葉に僕は同意をする。
「うん、解ったよ。それじゃあここで待ってるから早く来てね」
「はい」
そう言って僕は換金所に行き、集めた魔石と
換金されたヴァリスを担いでエイナさんの所にへと戻ると、こう言ってくる。
「ベル君、たくさん稼いできたんだね・・・」
「はい」
エイナさんは担いでいる袋を見て圧倒されているみたいだ。
「それで話っていうのは何ですか?」
僕がそう言うと、エイナさんはこう言って来る。
「うん、ここじゃ何だからこっちの個室で話そっか」
「解りました」
そう話しながら個室に向かっている途中、声が聞こえてくる。
「エイナが弟君を個室に連れ込んだ!?」
「あれがエイナちゃんの好きな
「あーいうのが好みなのか!?」
周囲が何を言っているのか解らないけど、危険が及ばないなら放っておこう。
「い、行こうかベル君」
「あっ、はい」
エイナさんの後ろを着いて行き、ギルドの個室に入ると早速本題に入る。
「実はね、今日君の事で神ヘスティアに相談に行ったの」
「そこで、僕の経歴を知るべきだと言われたんですね」
「‼ うん、そうなの」
僕が神様に言われたことを当てるとエイナさんは驚きながらも肯定する。
「解りました、それじゃお話しますよ。僕の経歴を」
僕は今までの経歴の全てをエイナさんに話した。
僕は辺境の山奥で11歳まで農家として祖父との二人暮しをしていた事。
祖父を亡くしてからの三年間は傭兵として過ごしていた事。
傭兵として初めての仕事では足がすくんで動けなかった事。
傭兵になった事を後悔した事。
その後に傭兵として生きることを覚悟した事。
二度目の戦場で大将首を挙げた事。
そこから傭兵としての実績を上げていった事。
依頼主に契約を反故にされて殺されかけた上で逆に徹底的に追い詰め、当初の契約金の十倍を支払わせた事。
昼夜問わず五日間戦い続けた事。
他の傭兵達からは【
そうして、最近傭兵最後の仕事を終えて三年間の傭兵生活に終止符を打ち冒険者となるためにこの迷宮都市オラリオにやって来た事。
「これが今までの僕の経歴です」
全てを話し終えてそう言うと、エイナさんはこう言って来る。
「そうだったんだね、ベル君は元傭兵だったんだ…」
そう言いながら暗い表情を見せるエイナさんに僕はこう返した。
「エイナさん、僕はこの生き方に後悔はありません。むしろ、自分を高めることが出来て丁度良かったと思っているので」
「でも、ベル君は農家として生きていく道だってあったんだよ。それを捨ててまで傭兵や冒険者のような危険な職業をしようとするの?」
そう問いかけてくるエイナさんに対してこう答える。
言うことは決まっている。
「祖父が子供の頃から読み聞かせてくれた英雄譚に僕はなりたいからです」
「英雄?」
「はい、子供っぽいとは思いますけどね…」
そう言いながら僕は椅子から立ち上がってこう言った。
「それじゃあエイナさん僕はそろそろ帰りますね、神様が待ってますから」
「う、うん。引き止めちゃってごめんね」
「いえ、いつかは離さないといけませんから」
そう言いながら僕はギルドから
街中を歩いていると、離れた位置から数十人単位で後を付けて来ている集団がいる。
このまま
「{それにしても、下手な追跡だな。これなら野生の肉食動物の方がマシに思えるな}」
そう思いながら路地裏に飛び込んだ瞬間、僕は琵琶を取り出して金の入った大きな袋を無限城に移動させた後追ってくる集団を路地裏の奥に誘い込む。
路地裏の奥に行くと丁度良いと言っていい程に行き止まりになっていた。
「へへっ、ようやく追い詰めたぞクソガキ!!ぜぇぜぇ…」
追いかけてきていた冒険者らしき集団の全員が僕を取り囲みながら息切れを起こしていた。
「随分と息が上がっているみたいですけど…、大丈夫ですか?」
その言葉と共に嘲笑を含んだ笑みを浮かべる。
「このクソガキィ、大人しく金だけ渡せば命までは取らねぇでやったのに…。テメェ等構わねぇ、殺しちまえ!!」
すると、一人の男の声に従って集団は額に青筋を浮かべながら各々の得物を手にして襲い掛かって来る。
「馬鹿が」
その言葉を言うと同時に刀を抜いた。
【全集中 雷の呼吸参ノ型 聚蚊成雷】
襲い掛かってこられた瞬間、僕は参ノ型を放つ。
その瞬間、黒雷を纏った斬撃の波状攻撃が集団に牙を剥く。
本来、雷の呼吸参ノ型 聚蚊成雷は標的の周囲を回転しながらの波状攻撃だが今の状況のように集団に囲まれた状態で一対多を制する事が出来る。
追い詰めていたと思っていた相手からの予想外の反撃に集団の殆どが絶命している。
「な、なぁ…っ!?」
運良く生き残った一人の男は何が起こったのか解らずにいた。
襲い掛かった瞬間、雷鳴が聞こえたと思えば他の連中は血の海に沈み自分も両腕を失っていた。
「ど、どうなってんだ!?こりゃあ、一体!?」
「うるさい、黙れ」
目の前で喚く男に対して僕は不快感を抱き、刀の切っ先を突きつける。
「ま、待ってくれ!殺さないでくれ!!」
「何を言っている、最初に殺しに来たのはお前達だろう。それに殺そうとする奴等が殺される覚悟がないというのは滑稽を通り越して呆れてしまうな」
僕は今目の前にいる男に対してどういった顔を向けているのだろう、怯え方が普通じゃないからまともな顔はしてないだろうなと思った。
「来世では真っ当な生き方を薦めておく」
「やめ…っ!!」
なんの躊躇もなく刀を振るい、男の首を跳ね飛ばした。
「さて、帰るか」
ポツリとそう言いながら縮地を使い、消えるように移動するのだった。
その後、すぐに雷鳴を聞きつけた冒険者達が路地裏で死んでいる同業者を発見する。
最初にこの場に辿り着いたのは都市の守衛を担っている
「なんだ、コレは…!?」
目の前に広がる惨状に息を呑む【ガネーシャ・ファミリア】の冒険者達。
「月と盃の
シャクティが遺体から
「【ソーマ・ファミリア】といえば日頃からギルド職員と換金の事で問題視されていました。今回のこの惨状もそれが原因なのでしょうか?」
「…まだ、断定することは出来ん。もしかすれば、
「
「それはなんとしてでも防がなくてはならない」
話しながらも思考を巡らせていると団員の一人が走ってやって来る。
「シャクティ団長、大変です!!」
「どうした、落ち着いて話せ。何があった!?」
「我々が遺体を収容しようと触れた途端、身体に亀裂が入ったと思えば全身が罅割れていき塵となってしまいました!!」
「なんだとっ!?」
団員の驚愕の報告にシャクティは声を上げる。
「くそッ、どうしてこうも予想外の事が起こるんだ…。」
そう悪態をつきながら頭を抱えるシャクティは、現状出来ることをすることにして団員達に指示をする。
「ハシャーナ、お前は何人かを連れて【ソーマ・ファミリア】にこの事を知らせた上で内情を探ってくれ。イスカは調査班を編成してここら一帯を隈なく調べろ。残りの者達はここら一帯の住人達に不審人物を見なかったか聞き込み捜査だ!!」
「了解!!」
団長の指示に団員達は自分の役割を果たそうと動き出す。
襲撃してきた集団を蹴散らした僕は
「ふぅ、やっぱり人形を斬っているようにしか感じないな」
そう言いながら僕はコップに水を注ぎ、一気に飲み干した。
「神様はまだバイトなのか…」
そう言っていると、隠し扉が開いて神様が入ってくる。
「おかえりベル君!!それから、ただいま!!」
「はい、ただ今帰りました神様。おかえりなさい」
互いに帰宅の挨拶をした後、今日もジャが丸くんを食した後眠るのだった。
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