ガンダムビルドダイバーズ -once more-   作:雷電丸

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邂逅

「あー……ダメだ、纏まらない」

 

 

 キャスターチェアの背もたれに全身を預け、ギッと音が鳴る。部屋には自分しかいないから自然と声が大きくなるが、下の階には家族がいることを思い出し、シンヤは誤魔化すように咳をする。どうせ聞こえはしないのだが、つい気になってしまった。

 

 目の前の机の上には、新しいガンプラがだいぶ形になりつつある。アヤメとのタッグマッチで使ったマルコシアスベースの新しいそれは、ガンダムキマイラと名付けてある。

 

 頭部はマルコシアスからあまり変わり映えしないが、背部のバインダーは2枚から4枚のスラスターウィングに変わっており、機動力を大幅に向上させた。代わりに、短刀とサブアームの機能はオミットされている。

 

 また、右腕はマルコシアスのものをベースに腕の下部にパイルバンカーを設置している。こちらはナックルガードとクローはそのままで、その内部にさらにパイルバンカーが仕込まれている形だ。相手を掴みやすくするために、手指だけは少し大きめで、本来の細腕と比べると少し異形にも見える。

 

 その右腕よりもさらに異形なのが、巨大な左腕。こちらはマルコシアスが登場する作品と同じ作品で主人公が乗ったガンダムの、バルバトスルプスレクスの腕を基本に作られたものだ。今のところ右腕と違ってナックルガード、クロー、パイルバンカーのような近接武装を有してはいないが、中にリード線があり、肘から先を射出して有線で操ることができる。

 

 そして背中には以前と同様にバスタードメイスγを懸架していた。

 

 上半身だけ見ればだいぶ形になってきたとは思う。しかしシンヤを悩ませているのは、射撃兵装と下半身だった。接近戦を好む自分だが、射撃兵装がまったくない状態は心許ない。あとはどこにどんな兵装をもたせるかと言うことだ。

 

 レールガンのような速射に優れたものがいいのだが、どこに配するかが目下の悩みになっている。ベースとなっているマルコシアスを活かすなら、やはり腰部のバインダーは必須だろう。問題点と言うほどではないが、敵の位置が斜め下にある場合は射角が制限されてしまうのが気になる。

 

 もう少し射角の幅を広げるならば、ストライクフリーダムのような展開式のレールガンがいいだろう。展開してすぐさま放つだけの余裕のある武装でもあるから、こちらの方がメリットはあるとも考えられる。

 

 

(まぁ、メリットって言えるほど大きくはないかもだけど)

 

 

 射角の問題は、結局のところその状況にならなければ分からないことだらけだ。それを大きいか小さいか判断できるほど、シンヤは歴戦の勇者でもなんでもない。

 

 残るは下半身。レールガンを搭載する場所はほぼ腰部で決まりつつある。そうなると、ヴィダールやバルバトスルプスレクスのような足裏に格闘兵装を仕込んだところで、柔軟に動けるとも思えない。

 

 

「バランスよくするのが精一杯かなぁ」

 

 

 重い上半身を支えられるほどの太さと、機動力を損なわないための細さ。自分で考えておきながら、結構無謀なガンプラ作りだと思えてならなかった。

 

 

「……気晴らし、しようかな」

 

 

 なんとか足回りが出来上がったところで、GBNへログインする。相変わらず賑やかなロビーは、自分の悩みなどあっという間に呑み込んでいく。

 

 

(アヤメ、どうしてるんだろう)

 

 

 以前、タッグマッチをした時にアヤメとフレンド登録をしたものの、彼女はログイン状態を非表示にしている。それは別に珍しくもないのだが、あれから一緒に遊んだりしていないのもあって、少し距離があるように思えてならない。

 

 

(いやいや、自惚れてどうするんだよ)

 

 

 フレンドになったからと言って、毎日一緒に遊べるとは限らない。アヤメにだってやりたいこと、やらなくてはならないことがGBNとリアルの両方にあるはずだ。遊べないことは当たり前なんだと自分に言い聞かせながら、表示しているフレンド一覧の電子情報から顔を上げた時だった。

 

 

「きゃっ!」

 

「うわっ!?」

 

 

 ドンッと走ってきた誰かにぶつかった衝撃に、思わず声が出る。押し倒される形で床に転がったシンヤは、痛みに顔をしかめながら視線をさまよわせる。往来の多いロビーだが、当然こんな風にぶつかったら周りの目を集めてしまう。それが少し気になったものの、走ってきた女性が慌てて身体を起こしてくれた。

 

 

「ご、ごめんなさい! 急いでいて……」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 

 それっきり会話は終わるかと思いきや、彼女は振り返り、さっとシンヤの背中に回る。何だと思って問いかけるより早く、3人の男が女性と同じように走ってくる。

 

 

「私、この人とミッションに行く約束してたんです!」

 

「え……」

 

 

 開口一番、追いついた男らにはっきりと言う女性。だが1番驚いたのは、もちろんシンヤだ。見ず知らずの人物にそんなことを言われて戸惑うなと言う方が無理なのだが、男たちはすんなり納得してしまう。

 

 

「それじゃあさ、今度は俺たちと遊ぼうよ。これ、俺のプロフィールだから」

 

 

 中央にいた男性が、電子プロフィールを表示してこちらにスッと投げてくる。女性は何も言わなかったが、それを肯定と受け止めたのか、さっさと踵を返してどこかへ行ってしまった。

 

 

「ホストダイバー……ムゴウ?」

 

「はぁ、助かったぁ……」

 

 

 もらった電子プロフィールをまじまじ見ていると、背後にいた彼女が安堵の声を出す。あまりに分かりやすい言い方に、追いかけられていたのをなんとなく理解する。

 

 

「あの、ありがとうございました。ミッションの協力者を募集しようと思ったら、彼らにしつこくされて……」

 

「そうでしたか」

 

「私、ステアって言います」

 

 

 ステアと名乗った彼女は、『ガンダムSEED DESTINY』に登場するステラ・ルーシェが着ていたドレスを身に纏っていた。アバターは恐らくリアルに似たもので、服装だけ変えて楽しんでいるのだろう。

 

 

「シンヤ?」

 

「え? あ、アヤメ」

 

 

 ふと名前を呼ばれて振り返ると、そこにはアヤメが立っていた。その瞳はシンヤとステアとを交互に見た後、じっとシンヤを見据えていた。言葉もなく、視線だけなのに何かチクチク刺されている気がしてならない。

 

 

「あっ、もしかして恋人?」

 

「「違います」」

 

 

 期せずして、シンヤとアヤメの声が重なる。それを聞いてステアはさらに申し訳なさそうに「ごめんなさい」と小さく謝った。

 

 

「あなたは……ステアさん、ですよね」

 

「そういえば……ビルドダイバーズの、アヤメさん?」

 

「アヤメ、フォースに入ったの?」

 

「えぇ、まぁ」

 

 

 はっきりとした物言いの彼女にしては、何か歯切れの悪い感じだ。それを深く聞くことはできなかったが、ビルドダイバーズの名を耳にして、なんとなく気にする必要はないかなと思ってしまう。同名のフォースもなくはないのだろうが、ほとんどのダイバーは被るのを避けたがる傾向にある。それだけフォースに自分の想いを詰め込むからだろう。

 

 

「2人は知り合い……なんだよね?」

 

「そうですよ」

 

「……じゃあ、折り行ってお願いがあるんだけど」

 

 

 おずおずと語るステアの話をまとめると、もうすぐ親友の誕生日があり、その友達が前に取り逃がしたアクセサリーが今、チームミッションの報酬として復刻しているらしい。最初は親友と自分とでミッションに挑むつもりが、リアルが忙しくて一緒に臨めないのだとか。

 

 

「それで、協力者を募集しようか悩んでいたら……さっきの人に絡まれちゃって」

 

 

 さっきの人とは、ムゴウのことだろう。女性ダイバーが1人でいるのは目立ってしまう。GBNでは即座に運営が対応できるよう、ヘルプ機能もあるとは言え、初心者のダイバーばかり狙う悪質なケースも少なくない。

 

 

「復刻してる報酬は、明日までだから、どうしてもミッションを受けたいの。お願い! 2人の力を貸して!」

 

 

 顔の前で両手を合わせ、懸命に頼み込んでくるステア。シンヤがチラリとアヤメを見ると、彼女はすぐに頷き返してくれた。

 

 

「分かりました。僕たちでよかったら、お手伝いします」

 

「あ、ありがとう。アヤメさんも、本当にありがとう♪」

 

 

 駆け寄り、嬉しそうに謝辞を述べるステアと、ちょっぴり恥ずかしそうなアヤメ。そんな2人は、シンヤの目から見ると、少しだけよそよそしく思えた。

 

 

「じゃあ、早速行こうか」

 

 

 ステアからミッション内容を聞きながら、3人はモビルスーツハンガーには立ち寄らずに即座にミッションを開始する。ステージ数は10と、少し多めだがアヤメの実力を考えればそこまで苦労しないだろう。

 

 

「ガイア、行きますっ!」

 

「零丸、出るわ!」

 

「キマイラ、出ます」

 

 

 3機のガンプラが、それぞれ出撃していく。眼下に広がるは荒野のステージ。ステアが使うガイアにとって都合が良かった。

 

 そのガイアは、原作とまったく同じ造りをしており、特にカスタマイズされてはいない。カスタマイズの有無で勝敗が決まったりはしないし、原作の造りが好きな者も珍しくない。

 

 しかしシンヤの目を引いたのは、零丸が乗っている鳥型のメカだ。

 

 

「アヤメ、それは?」

 

「武装装甲八鳥……サポートメカと思ってくれて構わないわ」

 

 

 零丸と同じく、白と紅をメインとした鳥はサブフライトシステムとして使える他、敵の注目を集めたり、味方の援護も行えるらしい。

 

 

「武装装甲……」

 

 

 名前からして、ただサポートするためだけのものとは思えないが、アヤメが会話を打ち切るような言い回しをするので、深くは聞けなかった。

 

 

「見えてきたよ」

 

 

 ステアの声に視線を移すと、彼女が駆るガイアと同じ作品に登場するザクウォーリアが見えた。数は10機だが、ウィザードと呼ばれるバックパックは装備していない、素体のものばかりだ。

 

 

「先行しますね」

 

 

 言うが早いか、シンヤはキマイラのスラスターウィングを展開し、一気に速度を上げる。前に控えていた3機がすぐさまビーム突撃銃を時間差で放つが、それらをすべて掻い潜って目の前の1機の頭を掴むと、速度を緩めずにそのまま奥へ突っ込んでいく。すぐに次の列のザクウォーリアにぶつかって、隊列が乱れる。

 

 

「このまま潰す!」

 

 

 掴んだザクウォーリアを離さず、右腕下部のナックルガードが下へスライドし、パイルバンカーが閃いた。駆動系を貫いたわけではないから爆発はしないだろうが、そのまま押し倒して2機をドミノ倒しのように押し倒す。

 

 近くを陣取っていたザクウォーリアがシールドに収納されているビームトマホークを抜き、キマイラへ斬りかかる。シンヤもバスタードメイスγを手に、向かってきたザクウォーリアの迎撃にうつった。

 

 互いの得物がぶつかり合い、重撃の音が響く。迫合いに負けると思ったのだろう。ザクウォーリアはバスタードメイスγから逃れるように、後退する。しかしシンヤはそれを追いかけようとはせず、左腕の肘から先を射出してコクピット部を鷲掴みにして、握る力を強めた。メキメキと不気味な音を立てて、ザクウォーリアの身体がひしゃげていく。鋭利な爪が動力部を引き裂き、遂には爆発を引き起こす。硬質なワイヤーを介して腕を引き戻し、シンヤは再びバスタードメイスγで周囲のザクウォーリアと相対した。

 

 銃撃にさらされるかと思ったが、それより早くアヤメとステアが追いついた。武装装甲八鳥が手近なザクウォーリアに突撃し、注意を引きつける。その間に零丸はライフルを撃ち、次々とザクウォーリアのコクピットを的確に貫いていく。

 

 

「わ、私も!」

 

 

 ステアもそれに続こうと、ガイアをモビルアーマーへと変形させ、背部に備えたビームブレイドを展開しながら大地を縦横無尽に駆け抜けてはザクウォーリアの脚部を引き裂くいた。

 

 程なくして最初のステージは終了の合図を告げ、3人は次なるステージに向けて飛翔する。

 

 

「シンヤ、射撃兵装はないの?」

 

「うん。今日はミッションに参加するつもりはなかったから」

 

 

 アヤメからの通信に、ステアには聞こえないよう彼女を介さず返事をする。するとアヤメはしばらく黙ったまま、何も言わずにいる。

 

 

「どうかした?」

 

「いいえ。ただ、お人好しだなって」

 

「そう?」

 

「だって、まだ未完成なんでしょ?」

 

「まぁね。でも、ミッション自体は高難度じゃないから。それに、アヤメもいるからなんとかなるかなぁって」

 

「はぁ……シンヤは私を買い被りすぎよ」

 

「そんなことないと思うけど……」

 

「あるっ!」

 

 

 苦笑いしていたシンヤだったが、アヤメのあまりの剣幕に驚きを隠せない。それが伝わったのだろう。アヤメも申し訳なさそうに目を逸らした。

 

 

「じゃあ、アヤメはどう思われたい?」

 

「それ、は……別に、どう思われても平気よ」

 

 

 最初こそ言葉を詰まらせていたのに、『どう思われても構わない』とはっきり口にしたのを考えるに、悪い印象をもたれてもいいと言うことかもしれない。今までのアヤメを見ていて悪く感じる部分はないが、それが平気となれば、そう思われても仕方ないことをしてきたとも考えられる。

 

 

(まぁ、それを聞けたら苦労しないけど)

 

 

 結局、細かいことを聞こうとは思わず、シンヤも口を閉ざす。それが会話の終わりだと察したのか、アヤメも通信をやめて視線を戻した。

 

 進むにつれて、次第に岩壁の目立つ峡谷へと景色が変わっていく。やがて【2nd stage】と記された電子掲示板が現れ、3機がそれを越えた瞬間アラートが響き渡った。

 

 

「くっ!」

 

 

 咄嗟に回避行動を取る3機。その横を掠めるように、ビームの閃きが駆け抜けていく。敵の姿を視認できないことを考えると、零丸とガイアの武装では射程距離が足りない。その間にも砲撃は続き、3機は次第に高度を下げていく。

 

 

「二手に別れましょう」

 

「了解」

 

 

 ちょうど峡谷でできた道が2つあり、零丸とガイアは小型であり、また細身なのを活かして一緒に行動することに。キマイラはスラスターウィングを展開したままでは2機と同じ道は辿れないため、少し幅広の道へ。

 

 

「今のビーム演出……ガナーザクか」

 

 

 ビームの色は作品によってバラバラだが、似ているものも少なくない。それでも、ライフルではなくビーム砲など火力の高いものは結構違いが出ている。また、先程のステージでザクウォーリアが出たことを踏まえると、敵の想像は容易だった。

 

 ガナーザクウォーリア──前述するザクウォーリアに、オルトロスビーム砲を備えたガナーウィザードを装備させた砲撃タイプで、機動性は素体のザクウォーリアから大きく増していないものの、その分火力に重きが置かれている。当たりさえ良ければ一撃で戦艦を屠るほどだ。

 

 

「射角を考えると……」

 

 

 さっき放たれたビームから、ある程度の位置を算出しようとパネルに手を伸ばす。その矢先のことだった。

 

 

「後ろ!?」

 

 

 アラートが耳をつんざき、シンヤは慌ててマップを確認する。見れば、自機を追いかけるように、敵の機影が1つついてくる。幸い、曲がり道も多いので直線的な場所に出なければ砲撃される心配はないが、追従してくるスピードを考えると油断はできない。

 

 

「グゥルに乗っているのか」

 

 

 大気圏内でも機動性を損なわないためにモビルスーツを懸架するサブフライトシステム。その中でザクウォーリアと登場作品を同じくするグゥルは、ミサイルも積んでいるので攻撃手段も増えて厄介だ。

 

 

「迎え撃つ!」

 

 

 徐々に直線的な道が近づいてきた。これ以上後ろを取られるのはまずいと判断し、シンヤはキマイラを転身させる。曲がり角から姿を現したガナーザクウォーリアは、構えていたビーム砲の銃口を素早くキマイラへ向けた。

 

 

「遅い」

 

 

 このまま突っ込んでも、敵の火力に焼き尽くされるだけだ。シンヤはキマイラのスラスターウィングを動かし、高度を上げて閃光をかわす。そのまま真上まで来ると、バスタードメイスγを抜いて襲いかかる。

 

 だが、ガナーザクウォーリアは寸前でグゥルから飛び降りて一閃をよけ、スカートに懸架しているクラッカーを放り投げてきた。咄嗟にバスタードメイスγで受け止めると、すぐさま左腕を射出してビーム砲の砲身を掴み、破壊する。残る武器は先程投げてきたクラッカーと、ビームトマホークだけ。シンヤは畳み掛けるように、バスタードメイスγを叩きつけた。

 

 

「アヤメとステアさんは……?」

 

 

 マップを見ると、どうやら近くで戦闘中のようだ。ジャミングなどがないから位置をすぐに確認できるのはありがたい。岩壁をこえて反対側に行くしか道はない。シンヤはキマイラを飛翔させ、アヤメたちのいる場所へ向かおうとする。

 

 

「うん?」

 

 

 が、敵にロックオンされたアラートに身をかためる。視線をさまよわせて全方位に気を張るシンヤへ向けて、3方向から時間差でビーム砲が放たれた。それらを身を捻り、或いは高度を下げてかわし、ビームが発された方を見やるとガナーザクウォーリアがそれぞれ控えている。

 

 

「上を取られているのは厄介だなぁ」

 

 

 射撃兵装を持たないキマイラでは、3つの方向への対処が難しい。ガナーザクウォーリアは3機とも別の高さ、別の場所におり、常に時間差でシンヤを狙う。

 

 

「潰せても1方向だけか」

 

 

 壁伝いで行けば射角を確保できない機体もあるようだが、せいぜいが1機だけだろう。しかし、シンヤは迷わずその方法を選択した。

 

 キマイラを駆り、岩肌が鋭い壁際のすれすれを上がっていく。そして最初のガナーザクウォーリアとの距離が詰まっていく最中、岩壁に左腕を突き立て、そのまま足下から腕を振り上げて機体を引き裂いた。

 

 

「1つ」

 

 

 続く2機目はビーム砲の狙いを定め終えていて、よけることはかなわない。よけられないのならば、“受け止めればいい”。迫りくるビームの奔流を、キマイラはバスタードメイスγの鞘で受け止めきる。程なくして光が終息したのを認め、エイハブ粒子を通わせて破壊力の増したそれをガナーザクウォーリアへ向けて投げつけた。

 

 

「2つ」

 

 

 圧壊して爆散する姿に、痛かったのではないかと少しだけ申し訳なさもあったが、シンヤはそれを回収してさらに上空へ。最後の1機を、鞘から抜いたγナノラミネートソードですれ違い様に切り裂いた。

 

 

「3つ、と」

 

 

 崖の上に降り立ったところで、反対側から同じようにガイアと零丸がやってきた。

 

 

「良かった。無事だったんだね」

 

「えぇ、なんとか。お二人も無事に切り抜けたみたいで、よかったです」

 

「あはは、ほとんどアヤメちゃんがやってくれたから」

 

「そんな。私は、別に……」

 

 

 ステアの言葉に、アヤメは少しだけ恥ずかしそうな反応を見せる。その年相応な姿を見て、シンヤは人知れずほっと溜め息を零した。

 

 続く第3ステージ。ザクウォーリアはシールドを肩の左右に有した指揮官タイプのザクファントムとして現れ、ウィザードもミサイルポッドを備えた中距離タイプのブレイズウィザードを装備していた。

 

 3機で1本道を進む中、真正面から数多くのミサイルが降り注ぎ、1度は後退したもののキマイラの堅牢なバスタードメイスγで防ぎながら、零丸が小回りを活かして手裏剣を投げたりライフルで打ち倒したりと、活躍を見せた。

 

 

「たあぁっ!」

 

 

 そうして敵陣に突っ込んだことでキマイラと零丸に注目が集まった瞬間、ステアとガイアが続いて奇襲を仕掛ける。モビルアーマー形態での機動性を活かして俊敏に大地を駆け抜け、背中を向けていたブレイズザクファントムをビームブレイドで両断。さらにモビルスーツ形態へと変形し、ビームライフルで1機のコクピットに風穴を開けた。

 

 

「着地は狙わせないわ」

 

 

 すぐに迎撃の動きを見せたブレイズザクファントム目掛けて、零丸のサポートメカである武装装甲八鳥がぶつかり、狙いを狂わせる。怯んだその隙をついて、他の敵からの攻撃を掻い潜った零丸が、忍者刀で胴体を切り裂いた。

 

 

「これで終わりかな」

 

 

 頭上から左腕を叩きつけるように振り下ろし、鋭利な爪でブレイズザクファントムに爪痕を刻み付けるキマイラ。右腕に装着されたナックルガード付きの腕を閃かせ、コクピットを拳によって破壊する。

 

 

「ふぅ……第3ステージも突破だね!」

 

「はい。ステアさんの動きもすごかったです」

 

「あはは、あれからいっぱい練習して──あっ!」

 

「どうしました?」

 

「う、ううん。なんでもない!」

 

 

 ステアの言う“あれから”がいつからなのかは分からないが、余計なことを言ってしまったと後悔しているような反応に、シンヤは何も聞けなかった。アヤメに何か話題を振ろうかとも思ったが、彼女も押し黙っていてとても話しかけられる雰囲気ではなかった。

 

 ステアの様子から休憩を挟んだ方がいいのではないかと思ったものの、彼女の口から「先に進もう」と言われたからには仕方がない。その言葉に従い、3機は次なるステージへと駆け抜けていく。

 

 

「ガナー、ブレイズと来たから、次は……」

 

「スラッシュ、ですよね」

 

「一応、外伝なら他にもあるんだっけ?」

 

「えぇ。確か、ケルベロスバクゥハウンドのウィザードを装備してたものとか」

 

 

 外伝に登場したものを挙げれば、きっとキリがない。残りのステージは2つなので、次はスラッシュウィザード。その次のラストでボス戦だろう。

 

 案の定、4つ目のステージは中近距離戦用のスラッシュウィザードを装備したザクファントムが現れた。特徴的な2門のビームガトリングに加え、近接武器としてビームアックスをリアスカートに装備している。

 

 2機がビーム突撃銃を連射しながら迫る。駆ける火線をかわし、シンヤは内1機と接近戦をできるまでに間合いを詰めた。素早く抜いたビームアックスと、バスタードメイスγがぶつかり合い、火花を散らす。重量で言えばバスタードメイスγの方が上回る。

 

 

「押し切る!」

 

 

 4枚のスラスターウィングが推進力を増し、スラッシュザクファントムを確実に押していく。そうはさせまいとさらに別のスラッシュザクファントムが、援護すべく近づいてきた。このまま挟み撃ちされる気はないので、シンヤはまず目の前のスラッシュザクファントムとの迫合いをやめる。

 

 バスタードメイスγで弾き飛ばし、ガラ空きになった胴体を蹴り飛ばして姿勢を崩させる。そうして肉薄していた方のスラッシュザクファントムが振り下ろそうとしていたビームアックスを、右腕のナックルガードで受け止める。そして巨大な左腕でメインカメラをぶん殴った。思い切り。グーで。

 

 頭部への攻撃が直撃して怯んだからには、畳み掛けるしかあるまい。右腕のナックルガードを反転させてクローへ切り替え、スラッシュザクファントムの左腕に強打を見舞う。モニターを介してもはっきりと目に映ったヒビ。そこへ再びキマイラの鋭利な爪が襲いかかる。スラッシュザクファントムの腕は容易くもがれ、両手持ちをしていたビームアックスは地面へ真っ逆さま。

 

 峡谷の岩壁に叩きつけられ、身動きができなくなったスラッシュザクファントムのコクピットに、そっと右腕を当てる。

 

 

「やりすぎ、かな」

 

 

 戦いの最中にそんなことを考えられるほど余裕ができたのはいいことかもしれないが、これが対人戦なら悪いことだろう。シンヤは申し訳なさを振り払うように、パイルバンカーを射出してスラッシュザクファントムを沈黙させた。

 

 

「このぉっ!」

 

 

 一方、ステアはモビルアーマーの形態となって機敏に動き回り、ビームの雨霰を切り抜けるながら、背部ビーム砲で何機かを貫いていた。

 

 メインカメラをビームによって貫かれたスラッシュザクファントムがフラフラと落下するのを見て、ここぞとばかりにガイアが飛びかかる。

 

 

「やあぁっ!」

 

 

 落ちてきたスラッシュザクファントムを踏み台にして、さらに上へ飛び上がるガイア。それを追いかけるようにビームアックスを手に、1機がビームガトリングの照準を合わせながら迫ったが、ステアの方が早かった。

 

 岩壁を蹴って反対側に移動し、ビームガトリングをかわすと素早く変形をといてモビルスーツへと姿を変える。一瞬とは言え目標を見失ったスラッシュザクファントムの隙を見逃さず、ガイアはビームサーベルを抜いて斬りかかった。自重と落下スピードとが合わさり、スラッシュザクファントムの身体すら一刀両断する。

 

 

「やった♪」

 

 

 うまくいったことが嬉しいのだろう。ステアの喜びが通信を介して聞こえてくる。それはシンヤにも伝播し、自然と気分が高揚する。

 

 

「……はっ!」

 

 

 アヤメも零丸を駆ってスラッシュザクファントムを圧倒していた。苦無を放り投げ、関節部へダメージを通してから忍者刀で引き裂く。無理のないシンプルな戦いだが、その実3人の中で最も被弾率が少ない。

 

 

「このステージもクリア、だね」

 

「えぇ」

 

「そのようですね」

 

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