ガンダムビルドダイバーズ -once more-   作:雷電丸

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潜入捜査

「潜入捜査……ですか」

 

「そうだ」

 

 

 いつものようにキマイラの調整に勤しんでいたシンヤは、かつて共闘したロンメルの部下たるクルトからメッセージを受け、GBNへログインしていた。

 

 メッセージに「頼みたいことがある」と書かれてあり、なにより雲の上の存在と言ってもいいフォースからとあれば、断るわけにもいかない。カフェスペースへと通されたシンヤはクルトから電子情報を受け取り、スクロールしていく。

 

 

「実は先日、『第七機甲師団を潰す』と書き込みがあってね」

 

「それは……穏やかじゃありませんね」

 

 

 GBNについて語らう掲示板は、ダイバーだけでなくプレイしていない者も自由に書き込めるだけあって、数多の人たちが集い、なんらかの書き込みを行っている。中にはいわゆる荒らしと称されるものも見受けられるが、GBNそのものの運営と掲示板の対応にはかなりの労力がかかり、火種を消すにはそれなりの時間を要してしまうのが現状だ。

 

 

「我々のフォースは大所帯だから、掲示板で不穏な書き込みがあれば運営や他のフォースに報告している部署が存在するんだが……」

 

「それでこの書き込みを見つけた、と」

 

 

 シンヤが目で追っていた文章には、【第七機甲師団に入ってぶっ潰す】とあり、彼らのフォース名がはっきりと記されていた。

 

 

「無論、イタズラの可能性も拭えなくはないが……実は少し前に、実際に解散を余儀なくされたフォースがあってね」

 

「え?」

 

 

 思ってもいなかった言葉が紡がれ、シンヤは目を丸くする。渡された資料には、無惨にもズタズタに裂かれたガンプラの写真が添付されていた。

 

 

「000(トリプルオー)と言うフォース名で、主に『ガンダム00』に登場する量産機を軸に組まれた部隊だ」

 

 

 クルトに言われてみれば確かに、アヘッドやジンクス、ティエレンなど量産機ばかりが目立っている。中には特攻兵器として開発されたガガを改良したガンプラもあった。

 

 

「そこのフォースが新メンバーを募集したところ、何人か入ってきたんだが……その内2人はマスダイバーだった」

 

「マスダイバーが?」

 

「あぁ。しかしマスダイバーだけでフォースを瓦解させたわけではない。新入り全員が、グルだったんだ」

 

「どういう、ことですか?」

 

「彼らはまず、目的のフォースに入り込み、信用を得てから新人全員で他のフォースに戦いを挑む。そこで、マスダイバーの出番だ」

 

「まさか……」

 

 

 常にフォースメンバーの募集や実戦が求められるGBNで、新入り同士を戦わせる機会は少なくない。見知ったフォースでの戦いならともかく、まだ知り合って間もない時期に相手がブレイクデカールを使って蹂躙したとなれば───。

 

 

「そしてトドメとなったのが、マスダイバーではない者達の言葉だ。『ブレイクデカールは俺たちのフォースでは当たり前になっている』とね」

 

 

 そんなことを言われれば当然、000(トリプルオー)の信頼は失墜する。いくら初期メンバーが否定しようと、フォースメンバーがブレイクデカールを使ったと言う事実は覆しようがない。

 

 

「000(トリプルオー)は解散。さらに、メンバーは全員がマスダイバーではないかと疑われ、GBNでの居場所もなくなってしまった」

 

「そんなことが……」

 

「運営が初期メンバーの潔白を周知しているが……知らずに後ろ指を指す者も未だ多いと聞いている。なんとかウチで引き取りたかったが、いかんせん部隊の規模などを考えると、難しくてね」

 

 

 第七機甲師団に無条件で入れるわけもないが、それでもロンメルのツテで何人かのフォースメンバーは行き先を得られたのだとか。

 

 

「それで、具体的には僕は何を?」

 

「うむ。今度行われる新人訓練に君も参加して、マスダイバーがいないか探って欲しい」

 

「だから、潜入調査……ですか」

 

「無論、すべて君に丸投げするつもりはない。隊員達の動向には我々も目を光らせるが、やはり新人同士の方が口を開きやすいだろう」

 

「それはまぁ、確かに」

 

 

 掲示板に書き込んだ本人が来るかどうかは未知数だが、マスダイバーも警戒されていると知りながらクルトたち初期メンバーに口を割るはずもあるまい。とは言え、それでも自分に対して話してくれる可能性は僅かだろう。無闇矢鱈に突っ込んだことを聞けば、逃げられる可能性もある。

 

 

「それとすまないが、新人らに合わせてもらいたいから、ガンプラはモノアイの量産機で頼みたい」

 

「はい、分かりました」

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 調査当日───。

 

 

「シンヤです。よろしくお願いします」

 

 

 第七機甲師団の支部にあたる新人だけで編成されたフォース、第七士官学校の制服に身を包み、シンヤは自分と同じ新人らに向けて頭を下げた。パチパチと温かな拍手はあるものの、全員が友好的な態度とは言えなかった。

 

 

(ここから熟練度を見て、さらに振り分けられるし、仕方ないか)

 

 

 ガンプラの出来や操縦技術に関しては、第七機甲師団で享受する機会もある。しかし一朝一夕に身につくわけでもないため、長い目で見るか短期間での成長を重視するかは、配属される部隊によって変わってくる。

 

 誰もが知将と名高いロンメルの直属の部隊を目指しているだろう。早々に戦果を上げて目立つか、はたまた伸び代を強調して長い道のりを行くかはその人次第にはなるが、やはり前者が多いようだ。

 

 

(僕はどうするべきかな)

 

 

 シンヤの目的はあくまでマスダイバーを探し出すこと。その人物を特定するには、向こうから声をかけてもらう方が好都合だろう。

 

 

「今日から諸君らの教官を務める、ジャックだ。よろしく頼む」

 

 

 クルトと同様に副隊長を務めているジャックは、眼帯をしており、なおかつ巨漢ともあってなかなかに厳つい。シンヤは面識がないものの、クルトから話は通してあると聞いているから変に緊張せずに済みそうだ。

 

 

「では早速、各々モビルスーツに乗り込んでくれ」

 

 

 各々のガンプラが姿を現す。シンヤが選んだのは、『閃光のハサウェイ』に登場するメッサーと呼ばれる鈍重なモビルスーツだ。宇宙世紀は物語が進むにつれてモビルスーツの大きさも次第に大きくなっていく傾向があり、メッサーもその例に漏れず巨体になっている。

 

 もっとも、『Vガンダム』や『ガンダムF91』などの作品は逆に小型化が注目を集めており、必ずしも作品を辿れば大きくなっていくとも限らないのが楽しい一面でもある。

 

 そんなシンヤの隣には、今回の新人らの中で唯一の女性、クレハが自機を淡々と見詰めている。真紅の長い髪を一条に束ねてポニーテールにしており、キリッとした表情は凛としていて周りの男性が霞むほどにかっこいい。

 

 クレハの搭乗するモビルスーツは、ドム・バラッジのようだ。ドムの中でも肥大化が目立つ本機は、バックパックにドラム型のマガジンを背負っているのが特徴的で、重兵装のガトリングキャノンの弾が詰め込まれている。

 

 

「へへっ、腕がなるぜ」

 

 

 調子良い声に振り返ると、新人の中で最も豪胆な男が楽しそうに自機を見上げていた。名前はダイナ。彼が選んだガンプラ、ドライセンはドムと酷似した姿をしているが、その実武装を多く保有し、単純な戦闘力は飛躍的に向上していると言えた。

 

 ダイナの隣では、友人同士でフォースに入れた2人──ヒミとギダリが、それぞれリゲルグとサイコザクに乗り込んでいく。

 

 リゲルグはゲルググの発展機で、リファインゲルググを略してリゲルグと呼ばれているのだとか。肩のアーマーが横へさらに広がり、その裏にはスラスターが増設されていて機動力の高さが窺える。ヒミが使うリゲルグは、紫黒色を基調とし、袖には綺麗な紋様が描かれていることから『機動戦士ガンダムUC』に登場したものだと分かる。

 

 そしてギダリが乗り込んでいるサイコザク。バックパックにはこれでもかと重火器が積まれており、扱いの難しさを物語っている。普段からそれに乗っているとすれば、実力は充分にあるのだろう。

 

 

『各員、乗り込んだようだな』

 

 

 コクピットに乗り込み、ハッチを閉じるとすぐにジャックから通信が入った。その画面端には現在の通信が個人なのかチームなのか、それともオープンチャンネルなのかが表示されている。今は自分たち新人と、それを見守る他の団員に聞こえるようオープンとなっていた。不用意な発言には気を付けねばならない。

 

 

『お前たちにはこれから、士官学校の精鋭たちと模擬戦をしてもらう。相手が先輩だからと臆する必要はない。徹底的にやれ!』

 

「ハッ、当たり前だ!」

 

「作戦とかは……」

 

「いらねぇよ、そんなの。所詮は支部の連中だろ」

 

 

 ヒミの問いかけに、ダイナは強気に答える。しかしいくら支部とは言え、自分らと違って彼らは連携に長けているに違いない。無策で挑むには強敵過ぎる。

 

 

「作戦って言われてもなぁ。俺たち、まだ何も知らないし」

 

「ギダリまで……」

 

「とりあえず、アレを囮に使うか」

 

 

 割って入ってきた声に視線を移すと、クレハがドム・バラッジで後ろに並んでいる最中だった。彼女の言うアレとは、ダイナのことだろう。

 

 

「いや、でも味方だよ?」

 

「では、何かいい作戦でもあるのか?」

 

「それは……」

 

 

 短時間で案を出すには、場の空気が重すぎた。冷静沈着な雰囲気を纏うクレハに、尽く却下されてしまいそうな気配がのしかかっているし、これから第七士官学校との戦いが待っていると思うと、うまく思考がまとまらない。

 

 

「……とりあえず、クレハの案でいいんじゃないかな。時間もないこの状況で出しても、すぐ実行できるかは分からないし」

 

 

 味方を囮にすると言う作戦に後ろめたさがあるのか、ヒミもギダリも何も言わないので、シンヤはそっと背中を押す。この言葉が決め手になったようで、3人は先に向かったダイナの後ろをついていく。それを見送ってから、シンヤもメッサーをスタート地点へと移動させた。

 

 

《準備はいいな? では、試合開始!》

 

「オラァッ、行くぞぉ!」

 

 

 ジャックの合図が終わるや否や、ダイナがドライセンを駆って戦場へと躍り出る。ホバー移動で駆けていくが、さすがの彼も直線的には動かずに不規則に蛇行して先行していく。

 

 

「やれやれ……」

 

 

 その後を追いかけるのは、ドム・バラッジに乗るクレハだ。離れすぎず、かと言って近づきすぎず、一定の距離を保って襲撃の際には自分だけでも離脱できるように機体を走らせた。

 

 

「ギダリ、俺たちは……」

 

「そ、そうだな。とりあえず、あの森林地帯に何かないか探ろう。多分、トラップとかありそうだから、上空から」

 

「了解」

 

 

 リゲルグとサイコザクが、高度を上げていく。あまり高過ぎると敵の視認すら難しくなるため、高度は少し低めに飛んでいく。

 

 

「さて、と……今は試合に向き合おうか」

 

 

 メッサーに語りかけながら、シンヤは先行したダイナとクレハに続く。都合よく2人ずつに分かれた上、ヒミとギダリは友人なので今後も共に行動する機会は多いはずだ。まずはダイナとクレハを見ておいていいだろう。

 

 

「早速お出ましか」

 

 

 ダイナの声に視線を巡らせると、1機のモビルスーツが身構えていた。一見してザクを彷彿とさせるシルエットだが、それにしては四肢が少しばかり細い。

 

 

「ギャバンボルジャーノン、か。珍しいかも」

 

 

 ザクにそっくりなモビルスーツ、ギャバンボルジャーノンは『∀ガンダム』に登場する量産機の1つだ。量産機を使うこともそうだが、『∀ガンダム』と言う作品から自分の愛機を選ぶダイバーはあまり多くない印象だ。理由は幾つかあるが、ガンプラ化されていないことや独特な造りによる扱いの難しさが大きいだろう。

 

 

「潰してやる!」

 

 

 バズーカを構え、狙いを定めるや否やトリガーを引く。まっすぐに飛んでいく弾頭を、ギャバンボルジャーノンは難なくかわす。しかしダイナの攻撃はそれで終わりではない。腕部のカバーがスライドし、3連装のビームガトリングが姿を現した。絶え間なく連射されるビームの弾丸が襲いかかっていく。

 

 しかしあまりに直線的過ぎる攻撃だけに、たった1歩下がり、身を捻ると言う僅かな動作でかわされてしまう。

 

 

「なにぃ!」

 

 

 当たると思っていたのか、ダイナは苛立ちを見せる。彼のドライセンは速度を落とすことも忘れ、遂にはギャバンボルジャーノンを射程外へと逃してしまう。

 

 

「……下手ね」

 

 

 溜め息まじりに呟き、クレハはドム・バラッジのガトリングキャノンを構える。照準はすぐにギャバンボルジャーノンを捉えず、少し手前の地点から狙い撃ちながら銃身を上げていく。こうすることで敵がどの方向に逃げてもすぐに追いかけられるからだ。

 

 

「っ!」

 

 

 だが、2機の間に突如として巨体が割り込んだ。それが味方のドライセンだと気付いて、クレハはすぐに攻撃を中止する。

 

 

「こいつは俺の獲物だぁっ!」

 

「邪魔をして……!」

 

 

 ドライセンに射線を切られたせいで、ギャバンボルジャーノンはまったくの無傷。一緒に撃ち抜いてしまいたかったが、そんなことをすれば第七機甲師団への正式な採用はなくなってしまう。仕方なく、別の場所から再びガトリングキャノンを見舞うべく移動を開始する。

 

 

「連携取れそうにないな……」

 

 

 クレハならともかく、ダイナは完全に独りよがりな戦い方をしている。彼を差し置いてクレハと連携しても、ギャバンボルジャーノンを撃墜するのに苦労しそうだ。

 

 メッサーの右手に握られたビームライフルを構え、ドライセンを貫かないように側面から狙い撃つ。放たれた光はまっすぐに駆け抜けるが、後ろに下がってかわされてしまう。その着地の隙をつこうと、ドライセンがヒートランサーを手に襲撃する。

 

 

「もらったぜ!」

 

 

 ダイナは撃墜を確信した声音で嬉しそうに刃を振り下ろす。しかしギャバンボルジャーノンは着地後の硬直など物ともしないように俊敏に動き、シールドで防いでしまう。

 

 

「何っ!?」

 

 

 それどころか、体格差を感じさせない勢いでドライセンを押し返す。思っていたことができず、その上反撃を許してしまうったことに、ダイナは明らかに狼狽えていた。ギャバンボルジャーノンがビートサーベルを振り上げたのを見て、ドム・バラッジがガトリングキャノンで一閃を阻む。

 

 集結を始めた3機を相手にするのは厳しいと判断したのか、ギャバンボルジャーノンは森林地帯へと後退していく。

 

 

「逃がすかぁっ!」

 

「そんな不用意に追いかけたら……!」

 

 

 頭に血が上ってしまったのか、ダイナはシンヤの言葉に耳を貸すこともなく、猛スピードで追いかけていく。シンヤとクレハは第七士官学校が仕掛けたであろうトラップを警戒しているため、迂闊に飛び込めない。

 

 その迷いに乗じて、密林から1機のモビルスーツが飛び出してくる。突然の出現に、2人は弾かれたように視線を向けた。眩しく輝くような白で彩られた機体が、モノアイを光らせながら迫りくる。

 

 

「見た目はザクなのに!」

 

 

 クレハが毒づくのも納得だ。肉薄する機体はどう見てもザクⅡでありながら、手にしている武装はゲルググのもので、強襲を仕掛けられた側は判断が鈍ってしまう。

 

 ビームナギナタを構えて突進してくるザクⅡとの距離はまだ充分にある。ドム・バラッジのガトリングキャノンで迎撃しようと銃口を向けた。だが引き鉄を引くより先に、ザクⅡが飛び出してきた密林で何かが煌めいた。それがなんの光なのかは分からない。分からないが、撃たれる──脳がそう直感し、気付いた時にはその場から離れていた。

 

 

「くっ!」

 

 

 クレハがいた場所を、ビームマシンガンの閃光が貫く。ドム・バラッジはその機動性を活かして身を翻し、熱線をかわしていく。それでも、その間ザクⅡから視線が逸れてしまうのは避けられない。逃げた先に回り込まれていたとなれば、できる手立ては極端に少なくなる。

 

 

「しまっ……!」

 

 

 ビームナギナタを振り被るザクⅡが目の前にいたのを理解した時にはもう、クレハは相手の間合いから逃れられないほどに近づいていた。頭からまっすぐに降ってくると確信していた刃は、しかし割り込んできた別の光刃によって止まることを余儀なくされる。

 

 

「大丈夫?」

 

 

 シンヤのメッサーがビームサーベルを抜き、受け止めてくれたのだ。クレハは答えなかったが、見た目に損傷は確認されないからとそれ以上は問わずにザクⅡを押し返す。できた距離はそのままにせず、シンヤはメッサーを突っ込ませて斬り結ぶ。

 

 

「射線からして、敵の位置は……」

 

 

 ビームマシンガンを撃ってきたのがどんな機体かは分からないが、大まかな位置は把握できている。ザクⅡの身体で射線を遮るように立ち回っていると、ドム・バラッジが移動し始めた。ドライセンが走っていった軌跡を辿るように動いていたが、それも途中まで。密林に入る直前で軌道を変え、ガトリングキャノンを連射しながらザクⅡの背後辺りにいるであろう敵機をあぶり出す。

 

 

「現れたわね!」

 

 

 たまらず飛び出したのは、後期型ザクⅡだった。下半身は本来の緑色だが上半身はサンドブラウンで彩られたその機体は、ギラ・ドーガが装備するビームマシンガンとシールドを有していた。

 

 

「逃がさない!」

 

 

 姿を見せたからには、ここで仕留めたい。クレハは後期型ザクⅡへ肉薄しながら吠えた。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「くそっ、なんなんだよ!」

 

「落ち着いて、ギダリ!」

 

 

 同じ頃───。

 

 上空から敵を探していたギダリとヒミ。密林から立て続けに狙い撃ちされ、苛立ちと焦りを募らせていた。

 

 

「何で当たんないんだっ」

 

 

 舌打ちし、バズーカとマシンガンで反撃しているがどうにも手応えが感じられない。恐らくある程度撃ったらすぐに移動しているのだろう。相手はこの地形を隅々まで把握していると思った方がいい。

 

 サイコザクは多くの火器を搭載しており、取り回しも考えてサブアームも備えている。しかしそれでも1度に全ての武器が使えるわけではなく、また何度も連射を継続できる武器ではないため、必然的に何かしらの穴ができてしまうのだ。敵はそれを利用して一方的に攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「こいつら、いい加減に……!」

 

 

 構えたバズーカに向かってバルカンが走り、粉々に撃ち砕く。このまま狙い撃ちされると思い、ギダリは慌てて機体を下がらせた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

 だが、突如として背後に衝撃が走る。モニターを見ると、ヒミのリゲルグとぶつかってしまったようだ。自分はともかく、ヒミがよそ見をしていたとは思えない。よく見ると、彼もシールドを前に構えて攻撃を防いでいる。挟み撃ちにされたのだとすぐに分かった。

 

 

「この野郎!」

 

 

 未だにバルカンは止まらない。ギダリはサイコザクを走らせ、一気に距離を詰めるとヒートホークを手に、主へと襲いかかる。

 

 怯ませられなかった驚きからか、バルカンの持ち主──ザクキャノンは1歩後ろに下がる。ヒートホークはリーチが短いものの、それを考慮して距離は詰めれるだけ詰めてある。あとはこれを思い切り一閃する。それだけだ。

 

 だが、ザクキャノンは逃げるどころか両手にビッグガンを取り、サイコザクに照準を合わせる。近すぎる距離にありながら高い火力を誇る武器へ躊躇わず手を伸ばす速さに、ギダリは驚くしかできず、彼が乗るサイコザクの胴体が容易く撃ち貫かれた。

 

 

「ギダリ!?」

 

 

 仲間の、親友の反応がなくなったことに気を取られたヒミは、自分へと攻撃を集中しているアクトザクから視線を外してしまう。それが命取りになってしまうことは、頭で分かっていたはずなのに。視界の端にビームサーベルの光を捉えた時にはもう、アクトザクとの距離は避けようがないほど縮まっていた。

 

 

「下手くそがっ!」

 

 

 ギダリ、ヒミと立て続けに撃墜されたと知り、ダイナは苛立たしげに舌打ちする。ギャバンボルジャーノンを追いかけて密林に足を踏み入れたはいいものの、敵機の姿はどこにもない。見失ってしまった焦りが余計にダイナをイライラさせていく。

 

 

「どわっ!?」

 

 

 だから、足元にワイヤートラップが仕掛けられていることに気付かなかったし、よろめく機体を立て直すのに必死で、背後からギャバンボルジャーノンが肉薄しているのも分からなかった。

 

 

「……決したわね」

 

「みたいだね」

 

 

 クレハとシンヤにも、味方がやられたことは伝わっている。戦力差を考えるとこれ以上長引かせては却って目立ってしまうため、早々に撃墜されるよう動き始めるシンヤ。

 

 ドム・バラッジがガトリングキャノンで後期型ザクⅡとザクⅡとを分断し、その隙にシンヤが斬りかかる。大振りの一閃だから敵には格好の的として映っているだろうが、なんとなく後ろに控えているクレハに申し訳ない気持ちになった。

 

 

「分かってたけど……向いてないなぁ」

 

 

 後ろ髪を引かれる思いのまま、シンヤは苦笑いしながら撃墜を受け入れるのだった。

 

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