ガンダムビルドダイバーズ -once more-   作:雷電丸

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もう1度、前へ

「やめろ……やめてくれえぇっ!!」

 

 

 そんな叫び声が聞こえた気がした。発していたのは多分、目の前で横たわっているガンプラからだろう。無我夢中で武器を振るい、引き鉄を引いて、すべてが終わった時には土砂降りの雨が降り注いでいた。

 

 眼前に倒れているガンプラには胴に穴が空き、握られたビームサーベルによって齎されたものだと分かる。そしてそれを振るった少年は、所在なさげに黙って空を見上げていた。光の差す隙間もない、暗灰色の空を。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「今の爆発は……!」

 

「まさか、シンヤさんが!?」

 

 

 3人のマスダイバーから逃れようと後退を続けていたリク達。しかし少し離れたところで次々と爆発が巻き起こっているのを目の当たりにして、思わず足が止まってしまう。

 

 

「やっぱり、戻った方が……」

 

「でも、あの人達に勝てるの……?」

 

 

 モモの言葉に、誰も返事ができなかった。マスダイバーと戦った経験があるのは、リクとユッキーだけ。しかもその時相対したマスダイバーらは、最初からブレイクデカールを使ってきており、今回はブレイクデカールを使わずとも劣勢に立たされていた。力量が、違いすぎる。

 

 

「勝てないかもしれない」

 

 

 顔を伏せたまま、リクは弱々しく呟く。だが、レバーを握る力は弱まらず、寧ろ強くなる。このままでいいはずがないと、シンヤを置いて行きたくないと心が訴えていた。

 

 

「だけど、シンヤさんを放ってはおけないよ!」

 

「リクくん……そうだね、僕も同じだ!」

 

「僕も行くよ!」

 

「わ、私も!」

 

 

 本当は逃げるのが最善なのかもしれない。それでも、どれだけ絶望的であっても、リクは前を向くと決めた。前に進むと誓った。自分にこの世界の楽しさを教えてくれた、多くの人の背中を追いかけるためにも。

 

 ダブルオーダイバーが、その身を爆心地へと走らせていく。ガルバルディリベイク、ジムⅢビームマスター、モモカプルも後に続き、4機は一直線に向かった。

 

 

「リクくん、ここは僕が!」

 

「お願いします」

 

 

 動きに逸早く気付いたのは、ヴァイエイトだった。銃口を構える仕草を目にしたコウイチが、リクと入れ替わるようにして前に出ると、コクピットを守るようにシールドを持ってくる。放たれた黄金の砲火はまっすぐに、コウイチのガルバルディリベイクを撃ち抜こうと照射される。

 

 

「これ以上は、やらせない!」

 

 

 ビーム砲を浴び続ければ当然、シールドはあっという間に損壊する。そうなればガルバルディリベイク本体にも大きなダメージが出てしまう。すかさず、ユッキーがコウイチの背後から身を踊らせて肩部のミサイルを解放した。数多と評するには足りないが、それでも数十のミサイルが驟雨となってヴァイエイトへ食らいつこうと走っていく。

 

 

《それじゃあ物足りないねぇ!》

 

 

 ヴァイエイト自身も迎撃のためにビーム砲をミサイル群へ射線を切り替える。そして援護のために、アリオスガンダムもGNビームマシンガンで容易く撃ち落としていった。その迎撃の隙を突いて、リクはダブルオーダイバーと共に大空へと舞い上がる。スーパーGNソードⅡから放たれる光。普通の機体なら、当たれば身体を貫かれるだろうに、ブレイクデカールの恩恵を得たアリオスガンダムは当たってもまるで動じない。

 

 

《少しは楽しませてよね!》

 

「くっ!」

 

 

 粗方のミサイルは撃ち落とせたと判断したのだろう。GNダイバーソードを抜いたダブルオーダイバーへ、アリオスガンダムもまたGNビームサーベルを抜刀して斬りかかる。幾たびもぶつかり合い、火花が散る。急いでシンヤの無事を確認したい焦りから、リクはアリオスガンダムを無視してでも駆け抜けようとする。

 

 

《舐めんな》

 

 

 しかし背中を向けられたマスダイバーは彼の行動に冷徹な声を出す。そして何を思ったのかさらに高度を上げるとモビルアーマー形態となって直上からダブルオーダイバーへと迫った。

 

 

「リク!」

 

「なっ!?」

 

 

 悲鳴にも似たサラの叫び。真上から自分目掛けて向かってくるアリオスガンダムは、まるで聖剣のような鋭さを感じさせた。ズンッと大きな振動が全身を襲う。シンヤがそうされたように、リクもまたアリオスに捕らえられてしまう。このまま切断されるのか──そんな不安がよぎるも、ダブルオーダイバーの身体はいつまで経っても引き千切られない。

 

 

「何で……?」

 

《簡単に終わらせちゃあ、つまんないからさぁっ!》

 

 

 通信を介して聞こえてきた女の声はあまりに楽しそうで、それが却って不気味だった。しかし彼女の声色に慄いている場合ではない。必死にもがくリクだったが、ブレイクデカールで強化されたせいで牙から逃れることはできなかった。

 

 

《喰ぅらぁえぇっ!!》

 

 

 防御の体勢をとることも許されず、地面に叩きつけられるダブルオーダイバー。再現された揺れが、リクとサラに襲いかかった。

 

 

「くっ、うぅ……」

 

 

 痛みに悶えている暇はない。それでも、苦悶の声を抑えられない。ゆっくりと機体を起こすと、ガンッと何かがぶつけられて尻餅をついてしまう。それは、目の前に向けられたアリオスの銃口だった。

 

 

《まずは、その頭から消したげる》

 

「っ!」

 

 

 何か武器はないかと周囲を見回すが、先程の衝撃でGNダイバーソードは手から溢れてしまっていた。諦められない想いだけが残された状況に、リクは睨むことしかできない。

 

 だが───

 

 

「大丈夫」

 

「サラ?」

 

「…来るよ」

 

 

 ───リクの傍にいたサラの優しい声色が、焦燥感をあっという間に拭っていく。その言葉は通信を開いていた相手にも聞こえていたようで、嘲笑っているのがよく分かった。

 

 

《あっははは! 何が来るって───》

 

 

 突然、相手の声が途絶えた。しかも起こったのはそれだけではない。向けられていたライフルも、飛来した何かによって火の手をあげて爆発した。

 

 

《な、何が!》

 

「リク、見て!」

 

「あれは……!」

 

 

 戸惑うマスダイバーなど無視して、サラが指差した方向に視線を向ける。ライフルを撃ち抜いたであろうキャノン砲を折り畳みながらまっすぐに駆け抜けてくる蒼いガンプラ。緑色から赤色に染まったツインアイが、眩く光った。

 

 

「ペイルライダー! シンヤさんだ!」

 

《あの爆破から、どうやって!?》

 

 

 驚くマスダイバーよりも早く、リクはその方法に気付く。赤く光るツインアイが、なによりの証拠だ。

 

 

「HADESを使ったんだ」

 

「ハデ、ス?」

 

「ペイルライダーに備わっているシステムだよ。高い反応速度を発揮するんだ」

 

 

 HADES──原作では、EXAMシステムを元にして独自に開発されたものとして登場したものだが、その経緯は決して明るいものではない。パイロットを人間ではなく一部のパーツとして扱い、システムが弾き出した最適解を強制的にパイロットへフィードバックすることで驚異的な反応速度を見せることができる。しかし、当然ながらHADESの反応性にただの人間がその通りに反応できるはずもなく、身体強化や神経伝達向上の薬品を投与されることで、やっとまともにシステムを使えるようになった。

 

 もちろん、GBNでそんな再現はされるはずがない。しようものなら、バッシングの嵐だ。そのため、トランザムやEXAMシステムなどのその他の機体性能を向上させるシステムよりも受けられる恩恵は小さいとされている。

 

 だが、シンヤが駆るペイルライダーは、その恩恵の少なさを感じさせないほどに機敏に動き、あっという間にアリオスとの距離を詰めていく。

 

 

《くそっ!》

 

 

 舌打ち混じりに言い、アリオスは変形すると急いでその場を離脱していく。直線的な動きをすれば180ミリキャノンで撃たれると分かっているのか、その動きは不規則なものだった。

 

 

「シンヤさん、無事だったんですね」

 

「まぁ、なんとか」

 

 

 ダブルオーダイバーと合流し、リクから状況を聞いて再び大地を駆けていく。ヴァイエイトの砲撃をやめさせようと近づいていくと、それをカバーするようにドム・トローペンが立ち塞がった。

 

 

《まさか、無事だったとはなぁ!》

 

 

 ラケーテン・バズを1発放ち、それを追いかけるように後ろからビートサーベルを構えながら肉迫するドム・トローペン。対して、ペイルライダーは弾丸を腕部のビーム・ガンで撃ち落とすと、ビームサーベルを引き抜いて二刀流で迫っていく。

 

 

「っ!」

 

 

 しかしもう少しでぶつかり合うと言った距離で、シンヤはペイルライダーに急制動をかけた。そして地面を蹴って少しでもドム・トローペンから離れると、先程まで自分がいた場所をビームが走り抜けていった。

 

 

《着地地点を狙う!》

 

 

 出力されたビームの威力は小さな物。わざと回避させて、隙を作らせるために放たれたのだろう。跳躍してかわしたとなれば、着地した時に機体が硬直して隙ができてしまう。シンヤは相手の狙いに気付いたものの、スラスターをふかして滞空時間を増やす気はなかった。ペイルライダーは陸戦型で、しかも重装備仕様だ。滞空能力など求められていない。そんな機体で無理に滞空し続ければ、目の前にいるドム・トローペンに良い様にされるだけだ。

 

 

(ヴァイエイトは、そこまで動いてないか)

 

 

 左側に控えているヴァイエイトは、その場からあまり動いていない。ドム・トローペンも射線上に立たないようにしているのか、あまり激しい動きは見せなかった。しかし、狙われている状況に変わりはない。シンヤは跳躍に使ったスラスターをすぐに切り、少しでも早く地面に降り立つと、すかさず全てのスラスターを一気にふかして、前転するように前に躍り出た。

 

 思っていたよりも早くペイルライダーが降りたことで射撃が出遅れたのか、ヴァイエイトから放たれた砲火は何も捉えられずに終わる。その様子など気にも留めず、シンヤはドム・トローペンと斬り結ぶ。位置はドム・トローペンから向かって右側に移動し、その巨体を隠蓑しながら。

 

 

《こいつっ!》

 

 

 明らかに苛立った声色だ。後はアリオスの襲撃に留意しながらドム・トローペンを撃破するだけなのだが、眼前の巨体が紫色のオーラを纏ったことで、その難しさを再認識する。ブレイクデカールを使い、その力をメキメキと増していくドム・トローペン。少しずつ、ペイルライダーは後方へと押しやられていく。

 

 

「くっ!」

 

 

 二刀でヒートサーベルを受け止めているせいで、背部の180ミリキャノンを展開できない。しかしここで時間を取られれば、ヴァイエイトとアリオスから強襲されてしまう。逡巡するシンヤだったが、その一瞬を突かれる形でアリオスがGNツインビームライフルを連射しながら上空から迫ってくる。

 

 鍔迫り合いから、ドム・トローペンの巨体を蹴って後方に回避し、砲火をやり過ごす。しかし隠蓑にしていたドム・トローペンから離れたのを見て、すかさずヴァイエイトがビーム砲を放つ。それに一拍遅れる形で、ドム・トローペンが再び接近戦を仕掛けようと、ヒートサーベルを構える。

 

 

「くそっ!」

 

 

 シンヤは内心、ペイルライダーに謝りながらその場で反時計回りに機体を一回転させる。本体にはビームは当たらなかったが、バックパックの180ミリキャノンが光熱によって溶けていく。それを最後まで見届けず、シンヤはバックパックを切り離した。当然、背中からパージされた武装はそのままビームの奔流に呑み込まれ、爆発を巻き起こす。ドム・トローペンは目の前で起きた爆破に怯み、それを利用してシンヤはビームサーベルを片方だけ投げつける。

 

 

《小賢しい!》

 

 

 爆煙から飛び出してきたビームサーベルを、ヒートサーベルを一閃して弾き飛ばす。その瞬間、爆煙を突き破るようにしてペイルライダーが身を踊らせた。

 

 

《なっ!?》

 

「もらった!」

 

 

 残ったビームサーベルをぎゅっと握り締め、ドム・トローペンの胴体へ一直線に突き刺す。閃く光刃は胴体へと吸い込まれるようにして突き刺さり、やがてその巨体を沈黙させた。

 

 撃墜を示すマーカーが表示されたのを一瞥すると、シンヤは今一度ヴァイエイトへ向かって機体を走らせる。無論、アリオスが黙ってそれを赦すはずもない。背後から浴びせられるビームを右へ、左へ機体を動かしてかわし続ける。しかし可変機と言うこともあり、距離は徐々に縮まっていく。

 

 

「そろそろ、いいかなっ!」

 

 

 ペイルライダーに無茶を強いる戦い方だが、シンヤはスラスターを逆噴射させて機体のスピードを一気に落とす。アリオスが頭上を通過した瞬間、ブルパップ・マシンガンで執拗に狙う。関節部やスラスターなど、作り込みの甘そうな部位に弾丸を当て続け、ようやく1つのスラスターを破壊することに成功する。アリオスは機体を大きく傾ける──が、マスダイバーの反応はシンヤの思っていたそれより早く、また急速に離れてしまう。

 

 

《私達は狩る側なのに、何で……!》

 

「次だ」

 

 

 離れたからにはすぐに戻ってくる心配はないだろう。シンヤは今度こそヴァイエイトを撃墜すべく、ペイルライダーを駆る。その動きに乗じて、リク達もヴァイエイトへの攻撃を再開する。ジムⅢビームマスターとモモカプルが懸命にビームを放ち、少しでも反撃にかかる時間を増やそうとしていた。

 

 身動きが制限されているところに、コウイチのガルバルディリベイクが迫り、ハンマープライヤーを頭上から振り下ろす。紙一重でかわされたが、重装備であるハンマープライヤーが叩きつけられたことで地面に入った亀裂が、さらにヴァイエイトの動きを鈍らせる。その連携によって生じた隙に、ペイルライダーはヴァイエイトを間合いに捉えられる距離まで迫っていた。

 

 

「……何っ!?」

 

 

 しかし、突如としてぞわっと嫌な気配が背中を駆け巡る。HADESによる反応速度向上の恩恵か、ペイルライダーが何かが急速に近づいているのを教えてくれた。慌てて身を翻すと、真上からそれが飛来してきた。まるでミサイルが降ってきたかのような衝撃と、巻き起こる土煙。

 

 

《お、おい! 俺は味方──うわあああぁぁ!!》

 

 

 状況も分からないまま、土煙の向こうで何かぎ爆発する。モニターに表示されたのは、ヴァイエイトの撃墜を示すものだった。

 

 

《トランザム!》

 

「なっ!?」

 

 

 雄叫びにも似た声。トランザムを搭載しているのは1機だけなのだから、降ってきたのはアリオスと言うことになる。煙が晴れるのも待たずに突っ込んできたアリオスは、トランザムによって赤い輝きと紫色のオーラをまとってGNビームサーベルを振るう。まず真横に一閃、続いて右斜めから一閃。振るい、払い、薙ぐ。光刃を幾度も閃かせるアリオスの姿は、鬼気迫るものを感じさせる。

 

 

「味方ごと僕を撃とうとしましたね!」

 

《だから何さ! 私達は常に狩る側……狩られるなんてあっちゃいけないのよ!》

 

 

 モビルアーマー形態で噛みつこうとしたが、寸前でペイルライダーにかわされ、誤ってヴァイエイトを捉えてしまったのだろう。しかしアリオスはそれを放すどころか、構わず切断してしまったのだろう。

 

 

「仲間なのに……!」

 

《仲間ぁ? 笑わせないでよ。邪魔なら潰すに決まってんでしょ!》

 

 

 つい先程までは連携を見せていたはずが、一転して邪魔だと一蹴するマスダイバー。例え仲間であっても躊躇いなく引き鉄を引くその姿勢は、かつてシンヤをフォースに誘いながら、ブレイクデカールに手を出して相手を蹂躙した知り合いを彷彿とさせる。

 

 ブレイクデカールを使うなんて、赦せなかった。なにより、相手をいたぶるやり口が目の前で行われることに、シンヤは耐えられなかった。だから───

 

 

「……ペイルライダー」

 

 

 ───だからシンヤは、ペイルライダーを自分の思うがままに動かし、マスダイバーに成り果てた知り合いに向かって引き鉄を引いた。それが、ペイルライダーを傷つけているとも知らずに。

 

 

「もう1度、君の力を貸して欲しい。でも今度は、マスダイバーを狩るためじゃない」

 

 

 レバーを握る拳に、より力が籠る。アリオスとの距離が近いせいで援護できないでいるのか、後ろで控えてくれているリク達と、そのガンプラ達。

 

 

「あの子達を守るために……もう1度!」

 

 

 バイザーに覆われたツインアイが光る。コクピットにいるシンヤにはそれは分からなかったが、応えてくれるのではないかと言う不思議な感覚があった。

 

 

「ペイルライダー! HADES! 応えてくれるのなら、その力を貸してくれ!」

 

 

 HADESの限界時間まで、残り30秒。迷いも、不安も、躊躇いも、尻込みする気持ちはすべてかなぐり捨てて、アリオスへ斬りかかる。

 

 上段から一閃。それが当たる当たらないにかかわらず、頭部バルカンで牽制。アリオスは鬱陶しそうにするが、バルカン程度で傷はつけられないからとGNビームマシンガンを連射してくる。

 

 

(離れれば飛んで逃げられる……!)

 

 

 破壊したスラスターはメインのものではないし、トランザムを使った状態では簡単に逃げられてしまうだろう。少しでも飛翔するタイミングを与えまいと、シンヤは臆さずアリオスの懐へ飛び込んではビームサーベルを振るう。

 

 刃と刃とがぶつかり合い、火花を散らす。その一瞬の内に、ペイルライダーの脚部に備えられているミサイルポッドを切り離して少しでも身軽になっておく。接近戦では不利だと思ったのか、アリオスは下がろうとする。それを認めまいと、ペイルライダーは瞬時に足元に転がったミサイルポッドを蹴り飛ばし、アリオスの胸部にぶつけた。倒すには弱すぎるが、怯ませるには充分だった。

 

 

「はああぁっ!」

 

 

 すべてのスラスターをふかして、ペイルライダーを急接近させる。怯み、たじろいだアリオスは咄嗟にGNビームサーベルで対応しようとするが、真横から振るわれた右腕を、シンヤは機体を屈ませてやり過ごす。そして、起き上がり様に頭上を通り過ぎた腕を斬り上げる。

 

 

《え……?》

 

 

 呆けた声と、空を舞う右腕。シンヤはそれを一瞥することもなく、その場で一回転してアリオスを蹴り倒す。ズシンッと重たい音と振動が響き渡ることすら気にも留めず、仰向けに横たわるアリオスが逃げてしまわないよう、胴体を踏みつけた。

 

 

《ま、待って! 赦して!》

 

「……その言葉、あなた達が倒してきたダイバーも言ってませんでしたか?」

 

《え? 言ってた、けど……“それが、なんなの?”》

 

 

 聞くだけ無駄だった──このやり取りはかつてマスダイバーになった知り合いとかわしたものだったが、その時とまったく同じ結果に、シンヤは顔を伏せる。

 

 赦せないと。赦さないと、心が叫ぶ。それでも、あの時と違うことだってある。今は、自分に希望を見せてくれた少年少女がいるのだ。だから、その希望を摘み取らせないために。

 

 逆手に持ち替えたビームサーベルを、高々と振り上げる。その剣尖に、かつて怒りに囚われてペイルライダーを巻き込んだ自分への離別を籠めながら、シンヤはまっすぐに刃を振り下ろした。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「シンヤさん、すごかったです!」

 

「助けてくれてありがとうございます♪」

 

 

 マスダイバーを倒したことでミッションクリアのテロップが表示される。恐らくブレイクデカールによって勝利条件に影響が出たのだろう。リザルト報酬を確認していると、リクやサラが駆け寄ってきてくれた。シンヤは彼らに向き直り、照れくさそうに頬を掻く。

 

 

「みんな無事で良かった」

 

「最後まで頼りっぱなしになっちゃったね」

 

「コーイチさん。いえ、こちらこそ助かりました。

 みんなを守ってくれて、ありがとうございます」

 

 

 リクたちは報酬画面を確認してそれぞれのダイバーランクが上がったのを嬉々としてモニターしている。その様子を横目に、シンヤは改めてペイルライダーに向き直る。先程の苛烈な様子はそこにはなく、ただ静かに鎮座している。

 

 

「シンヤ」

 

「サラ?」

 

「この子と戦ってくれて……ありがとう」

 

 

 柔和に微笑み、後ろで手を結ぶサラの姿はとても愛らしかった。シンヤもつられて笑み、ペイルライダーに視線を戻す。

 

 

「シンヤさん、よかったら俺たちのフォースに入ってくれませんか?」

 

「え? フォースに……」

 

 

 リクの誘いは、正直言えば嬉しいものだった。彼ら彼女らとなら、きっと楽しく過ごせるに違いない。フォースメンバーとして、掛け替えのない仲間として共に切磋琢磨していけるはずだ。

 

 だが───

 

 

「ごめん」

 

 

 ───シンヤはその申し出を断った。

 

 今はまだ、少しだけフォースに加入することが怖かった。

 




ビルドダイバーズリライズ、熱かった…!(語彙力)
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