ガンダムビルドダイバーズ -once more-   作:雷電丸

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今回から、シンヤの過去編です。


始まりの出会い

「君、さっきペイルライダーを使ってたダイバーだよね?」

 

 

 いつものようにソロプレイでGBNにてミッションをこなしていた。その日挑んだのはサバイバルミッションで、制限時間まで生き残った者が報酬を山分けするものだったのだが、シンヤはあと少しと言うところで他のダイバーによって撃墜されてしまった。

 

 それでも始めたばかりにしてはマシな方だっただろう。満足したから今日はもう帰ろう──そう思っていたシンヤに声をかけてきた人物がいた。振り返ると、声の主である少年がいて、答えを待っているのか少しそわそわしている。

 

 

「あ、はい。そうです」

 

 

 シンヤが肯定すると、彼はほっと安堵の息を漏らす。GBNでは大して当てにならないが、ぱっと見は僅かに年上と言った印象だ。なんだろうと首を傾げていると、少年は手を差し伸べながら言った。

 

 

「俺たちのフォースに入ってくれないかな?」

 

 

 それが、フォースブースターズと、そのリーダーを務めるアサバとの出会いだった。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「お待たせー」

 

「おせぇよ」

 

「言うなよ。ってか、前もって連絡したろ?」

 

 

 各フォースが所有する拠点──フォースネストにやってきたアサバを開口一番出迎えたのは、非難の声だった。そこに怒りはないし、軽口だと分かるやり取りに、アサバの後ろを続いていたシンヤは少しだけ緊張感がほぐれたように思う。

 

 

「その人?」

 

「そうそう。そんじゃあ、改めて……みんな、彼が俺たちの新しい仲間だ」

 

「はじめまして。シンヤです」

 

「シンヤ、ね。アタシはマヒル。よろしくー、シンヤ」

 

「オイラはユウ。よろー」

 

 

 礼儀正しく頭を下げるシンヤとは違い、マヒルは如何にもギャルと言った雰囲気で接する。髪もピンクをメインに、毛先に近づくにつれて真っ赤に染まっているだけでなく、星に形取られたアクセサリーが散りばめられている。

 

 また、ユウと名乗った少年はタヌキ型のアバターを使っており、まんまるな体つきらしいゆったりとした口調だ。

 

 

「で、そこで黙りこくってるのが……」

 

「ヨルアだ」

 

「って感じ」

 

 

 ヨルアはあからさまに警戒心と言うか敵意を剥き出しにしている。アサバは気にする様子もなく、ブースターズのメンバーを紹介し、シンヤを適当なところに座らせてモニターを表示した。

 

 

「じゃあ、次にそれぞれのガンプラだけど……」

 

「ストップ」

 

「え、何?」

 

 

 ガンプラについても話そうとした矢先、ヨルアが待ったをかけた。彼は寝転がっていたソファーから身体を起こし、じっとシンヤを睨む。

 

 

「本当にコイツを入れるのかよ?」

 

「えー? 今更?」

 

「前に話して決めたじゃん」

 

 

 ヨルアの言葉に呆れ顔を見せるマヒルとユウ。しかし2人を一瞥するだけで文句は言わず、アサバを見る。

 

 

「ペイルライダーの使い方が上手いのは知ってる。けど、それはあくまで個人戦の話だろ?

 フォースに入るからには、それ以上の動きが必要なはずだ」

 

「それはご尤も。けど、それは入ってからじゃないと。

 シンヤは俺たちの動き方を知らないんだから、まずはそれを知ってもらってから一緒にやってくべきだ。だよなー?」

 

「えっ!?」

 

 

 急に話を振られたものだから、シンヤは素っ頓狂な声が出てしまう。それを笑う者はおらず、寧ろマヒルもユウも「あーぁ」と諦めた顔で流してくれた。

 

 

「リーダー、そうやって他人にいきなり振る癖、治した方がいーよ?」

 

「そーそー。オイラもまだ慣れてないし」

 

「えー? 俺そんな癖ないって。だよな、シンヤ」

 

「だから、それだっつーの!」

 

 

 あからさまな言い方をするアサバに、マヒルが額をベシッと強めに叩く。思い切りではないにしろ、乾いた音は意外と大きく鮮明に響いた。

 

 

「決めた。お前、俺と勝負しろ」

 

「勝負?」

 

「そうだよ。1対1のシンプルな対人戦だ」

 

「さっきフォース戦と個人戦は違うって言った癖に」

 

「マヒル、聞こえてんだが」

 

「聞こえるように言ったの」

 

 

 マヒルはツーンとそっぽを向いてヨルアに冷たい態度をしているが、険悪な雰囲気はない。これが彼らブースターズの日常なのだろう。

 

 

「で? やるのか、やらないのか?」

 

「じゃあ、是非」

 

 

 自分の実力を知ってもらういい機会だ。見合わないと思われればそれでも構わない。入ってからやっぱり弱いからダメと言われるよりは充分ありがたかった。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

《やってくよー。フィールドは市街地、ルールは敵の撃破なシンプル・イズ・ザ・ベストな奴ね》

 

 

 アサバは相変わらず呑気な物言いだが、お陰で緊張せずに済みそうだ。シンヤはペイルライダーを駆り、市街地へ繰り出す。モビルスーツでも余裕で通れる道もあるが、高層ビルが多く立ち並んでいて道も入り組んでいるせいでトップスピードを維持するのは難しい。

 

 

「ヨルアさんは……」

 

 

 出撃タイミングは同じだが、移動にかける時間はまったく違う。彼が扱うガンプラについて何も聞かされていないので、どこで接敵するか分からないので少しばかり慎重に立ち回る。

 

 そして唐突に、敵にロックされた際のアラートが鳴り響いた。スナイパー系ならもっと早くに射程に収めていたはず。ならば敵は中・近距離系と考えていいだろう。

 

 ふっと直上が翳った。ペイルライダーを通じて空を見上げると、1機のガンプラが大剣を振りかぶって飛び降りて来るのが目に入る。

 

 

「うわっ!?」

 

「どぉっせぇいっ!」

 

 

 まっすぐに叩きつけられた一閃。機体の重量と落下速度が相まって道路は瞬く間に陥没し、後退するシンヤの足下まで迫る勢いだ。

 

 

「何だぁ? 逃げんのかよ!」

 

 

 苛立ちの籠もった声音と鋭い瞳がシンヤを射抜く。ヨルアのガンプラは近接戦闘用の武器を多数所持しており、そのために厚い装甲を追加しているのが分かった。

 

 

「このネモ・スラストから簡単に逃げられると思うな!」

 

 

 モスグリーンをメインに、濃いブラウンの追加装甲に覆われたネモ・スラストは、腰部の左右についているアンカーを射出する。咄嗟にシールドで1つは防いだものの、もう1つが右腕に巻きついてしまう。勢いよく引き戻され、陥没した地面に足を取られてよろめくペイルライダー。

 

 

「もらったぁっ!」

 

 

 背中に大剣を背負い直し、次はリアスカート懸架しているビームアックスを展開して斬りかかる。伸ばされた伸縮式の柄はネモ・ストライカーの全高より高く、威圧的だ。真上から振り下ろされる光刃を、シンヤはビームサーベルを引き抜いて受け止める。すぐにヨルアが動くより早く、ペイルライダーの背中に折り畳まれている180ミリキャノン砲を展開して胸部目掛けて放った。

 

 

「ヤロォッ!」

 

 

 分厚い装甲を撃ち抜くには至らず、強い衝撃によろめくネモ・スラスト。眼前で炸裂した弾丸が煙を広めて視界を奪うが、それも僅かな間だけ。ペイルライダーが両手にビームサーベルを握って、煙から躍り出る。

 

 一閃。まっすぐに振るわれた光刃がビームアックスの柄を捉えるものの、切断には至らない。こうした近接戦闘を想定して、対ビームコーティングを施しているのだろう。

 

 互いに得物をぶつけ合い、一歩も引かない。しかし攻めきれないじれったさに痺れを切らしたのか、ヨルアが動く。競り合ったまま右膝でペイルライダーを蹴り飛ばし、そのまま前へ踏み込むと同時にビームアックスを押し出して体勢を崩させた。

 

 

「くっ……!」

 

 

 再び斬りかかろうと迫るが、ネモ・スラストが突き出した踵からヒートダガーが飛び出し、すぐさまスピードを落としてギリギリで間合いに入らないよう留まろうとするが、判断が遅かった。胸部に迫る刃を機体を右に傾けてかわし、さらなる追撃に備えてそのまま転げて離脱。持っている武器をビームサーベルからマシンガンに変えてネモ・スラストに弾丸を浴びせる。

 

 

「そんなヒョロ弾で止まるかっつーの!」

 

 

 ビームアックスを構え直し、尖端についたスパイクが太陽に照らされて鈍い輝きを放つ。シンヤは後ろに下がりながらマシンガンを撃ち続ける。

 

 

「逃げの一手かよ。気にいらねぇなぁ!」

 

 

 ヨルアは血気盛んなようで、離れようとするシンヤに対して苛立ちを見せる。その様子に恐怖を感じながらも、シンヤは自分のスタイルを崩さずにビル群でできた細い道を駆けていく。

 

 

「あー、それは良くないねぇ」

 

「ま、知らないししょーがないんじゃない?」

 

「けどビビるだろうなぁ。ヨルアのあれを見たら」

 

 

 モニタリングしていたアサバは苦笑いしつつ、ヨルアの行動を楽しみにしていた。なにせこういった市街地でしか見られない光景だ。マヒルとユウは最早分かりきった動きには興味がないようで、どちらかと言うとシンヤがどうペイルライダーを操縦するか気になっている。

 

 

「はんっ。建物で俺の道を塞いだつもりか?」

 

 

 構えていたビームアックスをリアスカートに戻し、ネモ・スラストはタックルの姿勢を取る。スラスターが今までよりも強い火を灯していき、遂にはそれが最大まで達した瞬間──ネモ・スラストが、眼前のビルに突っ込んだ。

 

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