めぐみんがかわいいですね!
それは、突然やってきた。日課となっていた散歩(爆裂魔法)を続けて一週間が経った、その日の朝のこと。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっ!』
街中に、お馴染みの緊急アナウンスが響き渡った。……お馴染みになっているのおかしいと思うのは私だけかな?
「早く行きますよシオン!」
「うん……」
不安が胸を支配する。とても嫌な予感がして胸騒ぎが収まらない。私は、剣と新しい木刀を手に取り、めぐみん達の後をついていく。
街の正門前に多くの冒険者が集まる中、そこについた私たちは、凄い威圧感に襲われる。その威圧を放つモンスターがそこには存在していた。首が無い黒馬にまたがり、黒い鎧を纏った騎士がそこには存在していた。
「か、カズマ。あのモンスターの……名前は?」
「デュラハンだ……人に死の宣告をして、絶望を与える首無し騎士だ。アンデットの一体だぜ」
そうなんだ。人に死の宣告を……かなり危ないモンスターだ……。そのデュラハンは自分の首を差し出す。その首からくぐもった声が聞こえた。
「俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……毎日毎日毎日毎日毎日っっ!!俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでくる頭がおかしい大馬鹿者は誰だああああああああ!!」
魔王軍の幹部のデュラハンは我慢の限界を迎えたように怒っている。うん?毎日……城?
ポクポクポク……チ〜ン
あぁああ!!あの城にデュラハンが住んで居たんだ!だから何回撃っても壊れなかったんだ!私は納得したように頷き、めぐみんの方を見る。カズマもめぐみんの方を見ていた。めぐみんは冷や汗を垂らしていた。
うん、まさかこうなるとは思わなかったよね。分かってたら撃っていなかっただろうし。めぐみんは観念したように、溜息をして歩いていく。それに伴ってほかの冒険者が道を開けていく。
これだけ見たら、カッコいいんだけど……相手は魔王軍の幹部、デュラハン。めぐみんと同じパーティーの私達は付き従う形で後ろを歩く。親の敵といわんばかりにアンデットに容赦が無いアクアが今回は大人しい……。興味津々というのかな?
私は警戒をする。何があってもすぐに動けるように。
「お前が……!お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んで行く大馬鹿者か!俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と攻めてくるがいい! その気がないなら、街で震えていろ!!何故こんな陰湿な嫌がらせをするというのだ!?雑魚しか居ない街だと思って放置していれば、調子に乗って毎日毎日撃ってきよって!!頭がおかしいんじゃないのか、貴様!!!」
……。なんと言うか被害者だよね、デュラハン。毎日毎日爆裂魔法を撃たれるがわと考えると、頭がおかしくなるだろうなぁと、私は少し同情と言うか、申し訳ない気持ちになった。
めぐみんは肩のマントをひるがえし
「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」
「……めぐみんってなんだ。バカにしてんのか?」
「ちっ、違うわい!」
突っ込まれてしまうが、めぐみんは気を取り直して
「我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、魔王軍幹部の貴方だけをおびき出すための作戦!こうしてまんまと引っ掛かりこの街に一人で来たのが運の尽きです!」
ノリノリでデュラハンに杖を突きつけるめぐみん。カズマは私とダクネスとアクアにボソボソと囁いた。
「いつの間に作戦になったんだ? 毎日爆裂魔法撃たなきゃ死ぬとか駄々こねるから、仕方なくあの城に連れて行っただけなんだけど」
「……右に同じ。本当にいつから作戦になっていたんだろう……。めぐみん本人もあの廃城にデュラハンがいるなんて思っている様子じゃなかったし」
「しかもさらっと、この街随一の魔法使いとか言い張っているな」
「しーっ!そこは黙っておいてあげなさいよ!今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろにたくさんの冒険者が控えているから強気なのよ、今良いところなんだから見守るのよ!」
私達の会話が聞こえていたのか、めぐみんは杖を突きつけたまま、顔を赤くする。恥ずかしいのか帽子を深く被る。
デュラハンはデュラハンで納得したように頷き
「……ほう、紅魔の者か。なるほど、なるほど。そのいかれた名前は、別に俺を馬鹿にした名前という訳では無いのだな」
「おい、両親から貰った私の名に文句があるなら聞こうじゃないか」
めぐみんはヒートアップするけど、デュラハンは何処吹く風で聞いていない。それだけじゃない、この街の冒険者達を見ても、警戒どころか、気にもとめてない。それだけ自信があるんだ……。
「フン、まあいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいかけにこの地に来た訳では無いのだ。この地には、ある調査に来たのだ。しばらくあの城に滞在する事になるだろうが、これからは爆裂魔法を使うな。いいな?」
「それは、私に死ねと言っているのも同然なのですが。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」
「お、おい!聞いたことないぞそんな事! 適当な事を言うな!」
……。微笑ましい光景に見えるけど、なんと言うか私はそんな雰囲気にのまれることが出来なかった。
「どうあっても、爆裂魔法を撃つのを止める気はないと?魔に身を落とした者ではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。だが、これ以上続けると言うのであるなら、こちらにも考えがあるぞ」
雰囲気が変わる。お巫山戯していた時とは違うと、めぐみんも察したのか、後ずさる。
「迷惑だと感じているのは私達の方です!貴方が城に居座っているせいで、私達はろくな仕事も出来ないですよ! ……そっちがその気なら、こっちだって対アンデットのスペシャリストがいるのですから!先生、お願いします!」
めぐみんは先生と言う人物に丸投げする。誰だろう?先生って……
「しょうがないわねー!」
「「アクアお前(貴方)だったのか!」」
「魔王の幹部だかなんだか知らないけど、この私がいる時に来るとは運が無いわね!明るい内から出てくるなんて、浄化してくださいって言ってるようなものよ!あんたのせいで、まともなクエストがないのよ覚悟しなさい!!」
アクアは先生と言われて機嫌が良さそうだ。先生呼びが響きよかったのか、デュラハンの前に出る。アクアは前に出てデュラハンに片手を突き出す。
デュラハンは興味深そうに自分の首を前に出す。
「ほう、これはこれは。プリーストでは無く、アークプリーストか?アンデットなら確かに有効な手であろうよ。……だが、俺はこれでも魔王軍の幹部の一人。こんな街にいる低レベルのアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいないし、アークプリースト対策は出来てはいる……。そうだな……ここは一つ紅魔の者を苦しめてやるかっ!」
デュラハンは、アクアが魔法を唱える前に、左手の人差し指をめぐみんに突き出した。ただの魔法じゃない!
「汝に死の宣告を!お前は一週間後に死ぬだろう!!」
「めぐみん!危ない!!」
「え、し、シオン!?」
私はめぐみんの手を引っ張り、私より後ろに行くようにする。咄嗟の事だから、自分の回避も何も考えていなかった。
その瞬間、苦痛も、気持ち悪さもない何とも言えない不思議な感覚に襲われる。なんだこれ?
「っ!」
「シオン!大丈夫か!?痛いところとかないか!?」
「う、うん。何ともないかな?」
私は手を閉じたり開いたりして感覚を確かめている。うん、特に何も感じない。
「その呪いは今は何とも無い。若干予定は狂ったが、仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、寧ろこっちの方が堪えそうだな。紅魔の娘よ、このままでは、そのフードの女剣士は一週間後には死ぬ。お前の大切な仲間は、そのまま死の恐怖に怯えて苦しむことになるのだ。貴様のせいでな!」
「クソっ!クルセイダーとして仲間を庇うはずが!間に合わなかった!!……羨ましすぎるぞ!!」
こんな時に何言ってるの!?通常運転で安心すらするよ!最後のが無ければ……かっこよかったのに!
しかし、めぐみんの顔は青ざめる。
「これより一週間、仲間の苦しむ様を見て、己が行いを悔いるがいい。ふっ、俺の言うことを素直に聞けばよかったものを……」
「つ、つまり!言うことを聞かないとあんな事やこんな事がされるということか!?呪いを解いて欲しくば黙って言うことを聞けと……つまりそういうことではないか!!羨ましすぎるぞ!!奴もその目で見ているぞ!!」
大衆の面前で何言ってるの!?風評被害を受けたデュラハンは
「え?」
「シオンでは無く、私に呪いを!私にも呪いを!絶対燃えるシチュエーションになる!行きたくはないが、行くわけに行かないのだが、やはり私にも!」
「止めろ、行くな!デュラハンの人困ってるだろ!シオンも止めるの手伝え!」
「うん!」
ダクネスを二人がかりで押さえる。デュラハンの人はほっとしているようだった。迷惑行為を止めるように言いに来ただけなのに……
「これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を放つのは止めろ!そして、紅魔の娘よ!そこのフードの女剣士の呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい!俺の城の最上階のまで来れたら、その呪いを解いてやろう!ひよっこ冒険者のお前達に、果たして俺の所まで辿り着く事ができるかな?」
デュラハンがそう宣言して、哄笑しながら街の外の馬に乗り立ち去った。
あまりと言えばあまりの展開に、冒険者達は呆然と立ち尽くしていた。私は呪いをかけられた側の人だけど、自然と落ち着いていた。一週間後に死ぬのに。
めぐみんは青い顔で震えながらも、杖を握り直し、街の外に一人で行こうとする。
「何処に行くつもりなの?」
「今回は私の責任です……。城に行って、あのデュラハンに直接爆裂魔法をぶち込んで、シオンの呪いを解かせます」
「そんな、今すぐに行かなくても……」
「何を言っているんですか!!」
めぐみんは私の服をつかみ言う。目に涙をためながら
「私のせいでシオンは一週間後に死ぬかもしれないんですよ!?なのに、何でシオンがそんなに落ち着いてるんですか!私は一人でも行きます!」
めぐみんが私から手を離し、歩いていく。私は呆然とする。そんなふうに言われたのは初めてだから……
「俺も行くに決まってんだろが。お前一人じゃ、雑魚相手に魔法を使って終わりそうだ。そもそも、俺も毎回一緒に行って気づかなかったマヌケだしな。シオンには何時も助けてもらってるしな」
そのまま二人は作戦を組み立てていく。潜伏スキルの使用や、通いながらとか色々な案を出し合っている。
泣いていためぐみんも話しているうちに、希望がもてたのか明るくなってくる。
「シオンの呪いは俺達が何とかしてやる!だから……」
「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」
アクアが魔法を唱える。私の体がなんか光ってるんですけど……。アクアはドヤ顔で
「この私にかかれば、デュラハンの呪いなんて解除楽勝よ!どう?私だってたまにはプリーストぽいでしょう?」
デュラハンの呪いをいとも簡単に解呪してしまうアクア。低レベルとは何なのかと聞きたいけど。
「うん、ありがとう。アクア」
「いいってことよ!」
盛り上がっていたカズマとめぐみんはテンションが下がっていた。