光が収まり視界が確保される。視界に広がるのは石造りの建物、当たり前のように走る馬車。自分が見ていた景色とは異なる世界がそこにはあった。車も無ければ電柱も無く、建物はレンガの建物。行き交う人々は獣耳だったり、とんがった耳……エルフ耳だったり人間とは異なる種も居た。
「これが……異世界……。本当に転生したんだ」
異世界へ転生したことに驚きながら、辺りを見渡す。どうすればいいのか分からないからだ。少し困っていると頭に声が響いた。エリス様の声だ
『ああ、よかった繋がりましたね。説明し忘れていた事があるので伝えます!まず、冒険者ギルドで冒険者として登録してください。登録手数料がかかりますが、冒険者として活動出来る分の資金は支給しています。能力に関しては、シオンさんの任意で発動できます。それではご武運を!』
そう言うと声は聞こえなくなった。気づくと、手には袋が握られていた。その中を見るとお金らしき物も入っていた。
「冒険者ギルド……か。何処にあるんだろう……」
呟き歩き出す。探さないと見つからないのだから、取り敢えず散策を兼ねて冒険者ギルドを探す。
「魔王の話を聞いていたけど、この街はそんな雰囲気が無い……平和そのものだ……」
街の散策を行いながら、街の様子を見て思ったことを呟く。魔王や魔物が居て世界が危ないみたいなことを聞いていた私にとってこの街は平和そのものだった。活気に溢れ暗い雰囲気あるとは思えない。通りすがりのお婆さんに、冒険者ギルドへの道を聞くことにした
「あの、すいません。冒険者ギルドを探しているのですが……知らないでしょうか?さっきこの街に来たばかりなので道が分からなくて」
「あらあら……。この街に来るということは、冒険者を目指しているのかしら。まだ若いのにしっかりしてるわね。駆け出し冒険者の街、アクセルへようこそ。ここの通りを真っ直ぐに行って右に曲がれば、看板が見えてくるわ」
「真っ直ぐに行って右……分かりました。ありがとうございます」
教えてくれたお婆さんにお礼を言い、言われた道を歩く。話に聞いた駆け出し冒険者の街。駆け出しというのだからこうも平和なのかと私は考えながら歩く。教わった道の通りに歩くと大きな建物に着いた。
「ここが、冒険者ギルド……んっ……食べ物の匂いがする。そう言えば、碌な食べ物は食べてなかったなぁ」
私は思い出したくない事を思い出して、顔を歪めてしまう。母さんの事は思い出さない方がいい。自身の首を擦り頭を振る。そして扉を開ける。
「いらっしゃいませー。お仕事の案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へどうぞー!」
短髪のウェイトレスが愛想よく出迎えた。少し薄暗い店内は、酒場と併設されているからだろう。そこかしこに鎧を着た人達がいた。冒険者だから身を守る鎧を着るのは当たり前なのだろう。
私の服装は、サイズが大きいワイシャツにフード付きの上着を着て、下は半ズボン。フードは深くかぶっている。母さんが私にフードをずっと被せていたから癖ついたものだ。新参者というのもあって視線を集めている。私はジロジロ見られるのはあまり好きではない。私は視線を無視して足速にカウンターに向かう。
「こんにちは。今日はどうされました?」
「冒険者の登録お願いします」
その後、冒険者の説明を受ける。
冒険者とは街の外に生息する人に害を与えるモノの討伐を請け負うものであるが、基本的には何でも屋みたいなものである。 冒険者とはそれらの仕事を生業としている者達の総称。冒険者には各職業がある。説明した後、私の前にカードを差し出した。
「こちらにレベルという項目がありますよね? ご存知の通り、この世のあらゆるものは魂を体の内に秘めています。どの様な存在も生き物を食べたり、殺したり、他の何かの生命活動にとどめを刺すことで、その存在の魂の記憶の一部を吸収することができます。通称、経験値、と呼ばれるものですね。普通は目で見ることは出来ませんが、このカードを持っていると、冒険者が吸収された経験値が表示されます。レベルが上がると新しいスキルを覚えるためのポイントなど、様々な特典が得られます。レベルが上がると自然と強くなるので頑張ってレベルをあげてください」
なるほど、経験値でレベルが上がる。友達がしていたRPGと似たような感じだ。説明を聞く限り、強くなりたくば魔物を倒してレベルを上げろという事か。
「まず、こちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をしてもらいます」
受付嬢が差し出した書類に、自分の特徴を書いていく。
身長154センチ、体重34キロ。歳は14……銀髪に碧眼……。
「はい、結構です。では、こちらのカードに触れてください。それであなたのステータスが分かります。その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。経験を積むことにより、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得出来るようになりますので、その辺も踏まえ選んでください」
私はカードに触れる。どんな結果になるのか淡い期待を抱きながら。
「……はい、ありがとうございます。クルスシオンさん、ですね。え?……はぁ!?凄いです!生命力と筋力が平均少し高い位でそれより幸運が高いです。ですが、それ以上に、知性、敏捷性、魔力が平均を大幅に上回るほど高いです!!幸運は冒険者にとって関係はありませんが、それを除いても凄いです!」
聞く限り凄いのだろう。ひとまずは安心かもしれない。だけど、外のモンスターをまだこの目で見たわけでも、能力の確認もしたわけじゃない。油断は禁物だろう。
「この数値でしたら、アークウィザードでも……あ!《魔法戦士》もオススメしますよ」
魔法戦士……私が貰った特典なら、丁度いいのかもしれない。
「じゃあ、《魔法戦士》でお願いします」
「分かりました。では、シオンさんの職業は《魔法戦士》と。では冒険者ギルドへようこそ、シオン様!スタッフ一同、今後のご活躍を期待しています!」
そう笑顔で迎え入れられた私はこの日、晴れて冒険者になった。
私はテーブルに座り、与えられた冒険者カードの確認とスキルの習得をする。
「……『片手剣スキル』と『連撃』に『魔力放出』っと……」
魔法戦士のスキルとスキルポイントを見ながら、スキルを習得する。こんなので本当に使えるように成るのだろうか、戦えるようになるか不安がある。
「……これで大丈夫なのかな」
こういうゲームは生まれてしたことが無い。友達が見せてくれたことや教えてくれたことはあったが、自分は初体験。不安が大きく出ているが、内心楽しんでいる自分も居る。ふと、エリス様がくれたお金を確認する。一番安い武器なら何とか買えそうだが……お腹も空いている。ご飯を食べるか武器を買うか……非常に迷うところだが、後のことを考え道中見かけた、武器屋に行きショートソードを購入した。
「……なんか、クエスト受けないと、先に餓死するかも」
再び冒険者ギルドに戻り、いいものが無いのか掲示板を見ている。一通り目を通すが、自分ではどれも力不足で達成出来なさそうなものばかりだった。
「初心者に優しいクエストって無いんだ……」
あるクエストは、グリフォン討伐や魔法薬の実験体になってくれや、色々ある。だが、どれも今の私じゃ死ぬのが分かりきっているものばかりだ。
「このままだと野宿か……それはいいんだけど、ご飯が食べたい……」
野宿しても死なないが、何も食べなければ死ぬ。その状態が続けば、クエストどころじゃ無い。
「何か無いかな……うん?」
私の目はパーティー募集の掲示板の方を向いていた。よく考えれば、誰かとパーティーを組むというのもありじゃないか。どうして考えてなかったのだろう。その中でも気になる紙を見つけた。
上位職のみの募集の紙だった。アクアというアークプリーストが募集をかけているものだ。
「丁度いいかも……行ってみよう」
私はその募集をかけているところに行く。
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