私は募集かけているところに向かっていた。特徴と居場所が書かれている。場所は片隅のテーブルで、特徴と言うのが、ひと目でわかる美しい女神のような少女とヒキニートと書かれていた。
いざ探してみるとはやく見つかった。書いている通りに女神と言われても不思議じゃない美しい少女とジャージの少年が居た。この世界にもジャージが存在するのは今知った。
「すいません。冒険者募集の貼り紙を見てきたんですが……あってますか?」
私は二人に尋ねる。すると、美少女の方が目をキラキラさせて、自信満々に
「ほら見なさい!私が本気出せば直ぐにくるもんよ!このアクア様がちょっと本気を出して募集をかければ直ぐにね!もっとも、カズマと違って私には仲間を集める才能があるからしょうがないわね!」
うわ……めんどくさいタイプの人だ。これが所謂残念な人と言うのだろうか。
カズマと呼ばれた少年は呆れた表情で美少女に言う。
「その割には一日募集かけて一人しか来なかったけどな。いや、寧ろ来てくれただけ奇跡かもしれないな」
「そ、それはまだ上の本気があるからよ。それに少数精鋭の方がカッコイイし」
ものは言い様だなと、カズマは溜息を吐き
「ようこそ、こんなところに入ってくれて助かる。オレはカズマ。そしてこっちがアクア。見て分かると思うが、こいつは可哀想な奴で、調子に乗った発言が多いけど、そっとしてやってくれ。そうでもしないと、この世界では生き残れないんだ」
カズマの目は同情しているようだった。その目はアクアに向けられた物ではなく、私に向けられたものだ。
「というか、人前なんだからそのフード外しなさいよね!」
アクアが私の方を見てフードを取れと言ってくる。言ってることは正しいのだろうけど
「……お断りします。外したくないので」
「アクア、本人が嫌がってんなら別にいいだろ」
そんなこんなで話していると
「上級職の冒険者募集を見てやって来たのですが、ここで良いのでしょうか?」
私の後ろから声が聞こえた。私は横に避けるとそこには少女がいた。歳は私とそう変わらないだろう。片目に眼帯をし小柄で細身の少女はマントを翻し
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」
「冷やかしに来たのか?」
「ち、ちがうわい!」
カズマは突っ込まずにいられなかったのか突っ込み、めぐみんと名乗る少女は慌てて否定をする。
「赤い瞳……もしかして、紅魔族?」
アクアの問にこくりと頷き、自分の冒険者カードを手渡した。
「いかにも! 我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん! 我が必殺の魔法は山をも崩し、岩を砕く!」
山も崩して岩も砕く。それが本当ならかなり凄い人なのではなかろうか?よく分からないけど、こうまぞく?という種族随一と言う……そんな人物なら引く手数多だろうにここに来たのか。物好きな子だと思いながら見る。
「そして、図々しいお願いなのですが、もう三日も食べてないのです。できれば、面接前に何か食べさせては頂けませんか?」
その言葉を聞いた時、私のお腹も鳴ってしまう。その音を聞いた三人はこちらを見る。私は顔が熱くなるのを感じながら、ダメ元で言う。
「すいません、五日もまともに食べてないので少し何か食べさせてください」
「五日も何も食べてないのかよ!今二人分飯頼んでやるから……」
「ありがとうございます」
私は頭を下げて礼を言う。神様がここにも居たとカズマを見る。そしてご飯を待つ間話をした。
紅魔族は生まれつき高い知力と強い魔力を持ち大抵は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めている。そして名前の由来である特徴的な紅い瞳と……変な名前を持っていると。アクアが説明してくれた。
確かにめぐみんと聞いたら、変わった名前だなとは思ったが。本人曰く
「私から言わせれば、街の人達の方が変な名前をしていると思うのです」
「じゃあ、両親の名前は?」
「母はゆいゆい。父はひょいざぶろー」
「「「……」」」
どう考えても個性的な名前に他ならない。アクアもカズマも同じ事を考えているのだろう。
「とりあえず、この子の種族はいい魔法使いが多いんだよな?仲間にしてもいいか?」
「いーんじゃない?冒険者カードは偽造できないし、彼女は間違いなくアークウィザードだし。カードにも、高い魔力値が記されているし、期待できると思うわ」
「お待たせしましたー。注文されていたものです!」
話していると、頼んだご飯が来たので食べ始めました。
仲間が増えたことで私達はクエストである、三日以内にジャイアント・トードを計六匹討伐しに平原地帯へとやってきた。そもそもカズマ達が仲間を募集したのは、二人ではジャイアント・トードを討伐するのは難しいからだそうだ。
「なぁ、シオン。お前本当にあれだけでよかったのか?もっと食えばよかったのに。五日も食ってなかったんだろ?」
「気にしないで、あれだけでお腹いっぱいだから」
私はめぐみんより明らかに少ない量でお腹がいっぱいに成った。長期の休みの時はまともに食事を与えられない時も多々あったから仕方ないと言えば嫌気がさす。
「爆裂魔法は最強魔法です。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかります。準備が調うまではあのカエルの足止めをお願いします」
「遠い方のカエルを魔法の標的にしてくれ。近い方は俺達に任せてくれ!」
カズマが伝えると、めぐみんは頷き了承する。
「おい、行くぞアクア。今度こそリベンジだ。一応は元なんたらだろ?たまには元なんたらの実力を見せてみろ元なんたら!」
「元って何!? ちゃんと現在進行形で水の女神アクアよ!アークプリーストは仮の姿よぉ!」
「「……女神?」」
女神と言えば思いつくのはエリスなのだが、どういうことなのだろう。
「を、自称している可哀想な子だよ。たまにこういった事を口走ることがあるんだけど、できるだけそっとしてやって欲しい」
それを聞いた私とめぐみんはアクアに同情の眼差しを向けていた。アクアは涙目になり、ヤケクソ気味に拳を握り、近くのカエルへと駆け出した。
「な、何よ。打撃系が効き辛いカエルだけど、見てなさいカズマ!それに新入り達! 今度こそ女神の力を見せてやるわよ!」
そしてそう叫びながら、頭からカエルに食われた。そのシュールな光景に少し見入っていたが、少し考えれば仲間が食われているのだ
「うわぁ………」
「見ていて下さい。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段……これが爆裂魔法!」
めぐみんの方を見ると、杖には光が灯り、膨大な光を凝縮したような眩しい小さな光。めぐみんが、紅い瞳を鮮やかに輝かせ見開く。
「『エクスプロージョン』ッ!」
目も眩む強烈な光、そして空気を震わせる轟音と共に、カエルは跡形もなく消え去った。凄まじい爆風に飛ばされないように姿勢を低くして耐える。
「凄い魔法だ……」
爆煙が晴れると、カエルがいたところにはクレーターが出来上がっていた。
「……すっげー。これが魔法か」
私達が魔法の威力に感心していると、魔法の衝撃で目覚めでもしたのか、一匹のカエルが地面から出てきた。カエルはめぐみんの近くに這い出ようととしているが、動作自体は遅い。
「めぐみん!一旦離れて、距離をとってから……」
カズマが指示を出そうとして途中で止まる。
「めぐみん?」
そう、めぐみんは力尽きたように倒れていたのだ。
「ふ……。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力故に、消費魔力もまた絶大。つまり、限界を超える魔力を使ったので身動き一つも取れません。あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です。……やばいです。食われます。すいません、助け……ひあっ……!?」
そのまま頭から食われた。
「お前もかぁあああ!?」
「カズマ!私がめぐみんを助けます!アクアは任せます!」
私はめぐみんを食べているカエルを見据える。カズマはアクアの方を向き
「本当に大丈夫なんだろうな?」
すごく不安そうに言う。そりゃ、期待していた人があっさり食われたのだから仕方ないのかもしれない。
「何とかするよ……!」
ショートソードを抜き構える。特典の能力が私の意思と共に発動する。ただの鉄の剣は、青白く輝き、血管のような模様が浮き出る。そのタイミングと共に私は魔力を放出させる。獲得したスキル『魔力放出』は自身の魔力を身体から放出し能力を上げるもの。その勢いは烈風を巻き起こす。
「ふっ……!!」
瞬間的さらに放出し、カエルに向かい飛ぶ。カエルはめぐみんを食べている最中で全く動かない。つまりスキだらけ……仕留めるには絶好の機会。
「はぁぁああっ!!!」
剣は青白い魔力を放出し、剣が伸びたように見える。そのまま剣を振るい、切り抜ける。私が剣を鞘に収め振り返ると、カエルは仰向けに倒れた。口からはめぐみんの足だけが出ていた。私はめぐみんの足を掴み、引っ張り出す。
近くで見れば見るほど、すごくネバネバしてるよ……。
私はめぐみんの顔を覗き込む。
「だ、大丈夫?めぐみん」
「……助けてくれるなら、食べられる前に助けてくれたら、嬉しかったです」
「……次は気をつけるよ」
人生初クエストは何とかなったみたいだ。