シオンside
私はカズマからパンツを返して貰い、急いでトイレに駆けこんだ。
そして、パンツを穿き直した。
何であんな運はいいんだろう……。顔が凄い合わせづらい。悪気はないんだろうけどなぁ……
そんなことを考えながら、大きくため息をついていると、
『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』
大音量のアナウンスが響いた。魔法か何かで拡大しているみたいだけど、何かあったみたいだ。私は急いでギルドに戻る
「お、おう。おかえり」
気まずそうだ……。そりゃパンツ取った人だし、相手は取られた側だしね。でもそんなのは後。
「うん。ただいま。話はあとだけど、緊急クエストって何?モンスターが襲撃してきたの?」
不安になりながら聞くと、ダクネスが嬉々とした声で
「……ん、多分キャベツの収穫だろう。もうそろそろ収穫の時期だしな」
………?
頭にハテナが浮かんだ。カズマも似たような反応だ。
「は?キャベツ?キャベツってモンスターの名前か?」
めぐみんとダクネスが可哀想な目で私達を見てくる。いや、キャベツを知らないわけじゃないけどさ……
「あー、そう言えば言ってなかったわね。この世界のキャベツはね」
アクアが申し訳なさそうに言いかけるが、それを遮るように、ギルドの職員が建物内にいる冒険者に向かって大声で説明を始める。
「皆さん、突然のお呼び出しすいません!もうすでに気づいている方もいるとは思いますが、キャベツです!今年もキャベツの収穫時期がやって参りました!今年のキャベツは出来が良く、一玉の収穫につき一万エリスです!くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしないようお願い致します!」
はい?キャベツに逆襲される!?え!?キャベツが逆襲してくるの!?それはキャベツなの!?
頭が痛くなってくる。キャベツが逆襲してくるなんて聞いたことがない。
めぐみん曰く
味が濃縮してきた収穫の時期に近づくと、簡単に食われてたまるかとばかりに。街や草原を疾走し、大陸や海をこえ、最後には誰にも目のとどかない秘境で息を引き取るといわれている。それなら、私達が一玉でも多く捕まえ美味しく食べようって事らしい。
「ほら、シオン行きますよ!出遅れてしまいます!」
めぐみんに手を引っ張られながら、外に出る。外に出ると街中を飛び回る緑色の物体が飛んでいた。冒険者は懸命にキャベツを相手に死闘を繰り広げていた。
ああ、キャベツが飛んでるよ……
ギルドの中で出されたキャベツ炒めを食べ
「何故、キャベツの野菜いためがこんなに美味いんだ。納得いかねえ」
そうかな?すごく美味しいと思うけどなぁ。
「シオン幸せそうに食べてますね」
「ん?」
私はキャベツの野菜炒めを食べている。うん、こんなに美味しい野菜炒めは初めてだよ。
最初は乗り気じゃなかったキャベツの収穫も、いざ参加し集めている内に魔法を撃つのが楽しくなり、気がつけば最後まで楽しんでいた。気づいたらたくさん収穫していた。思っていたより楽しんでいたみたいだ。
「しかし、やるわねダクネス!あなたの鉄壁の守りには流石のキャベツ達も攻めあぐねていたわ」
「いや、私などただ硬いだけの女だ。私は不器用で動きが速くも無い。たがら、剣を振るっても全く当たらず、壁になるしか取り柄がないのだ。……その点、めぐみんは凄まじかった。キャベツを追いかけてきたモンスターを爆裂魔法で一撃で吹き飛ばしていたじゃないか」
「ふふ、我が必殺の爆裂魔法の前においては何者も抗うなど叶わず。………それよりも、カズマとシオンの活躍の方が凄かったです。カズマは魔力を使い果たした私を素早く回収して背負い、帰ってくれました」
「……ん、私がキャベツやモンスターに囲まれ、袋叩きにされている時もカズマは颯爽と現れ、キャベツ達を収穫していってくれた。助かった、礼を言う」
「確かにカズマは盗賊スキルを上手く活用してキャベツ達を強襲する、その姿はまるて暗殺者のようです。シオンは氷魔法で動きを遅くし、風魔法で地面にたたき落とし収穫してましたね。そして、自分にくるキャベツは華麗な木刀さばきで返り討ちにしてました」
そう、この間のカエルの報酬で木刀を買ったのだ。安く上がるし、攻撃力は私の能力の特性上、ショートソードでも木刀でも大丈夫。木刀の場合なら、能力を使わなかったら加減も効く。
「カズマにシオン……私の名において、カズマには【華麗なるキャベツ泥棒】、シオンには【吹雪】の称号を授けてあげるわ」
それって、ただの名前じゃ……
「やかましいわ!そんな称号で呼んでみろ、引っ叩くからな!ああ、もうどうしてこうなった!」
「では……。私はダクネス。職業はクルセイダーだ。一応両手剣を持ってはいるが、戦力は期待しないでくれ。何せ、不器用すぎて攻撃がちっともあたらん。だか壁は大得意だ。よろしく頼む」
仲間が一人増えました。
アクアは満足げな表情を浮かべ
「……ふふん、カズマ。ウチのパーティーもなかなかに、豪華な顔触れになってきたんじゃない?アークプリーストの私にアークウィザードめぐみん。そして、防御特化の上級前衛職であるクルセイダーのダクネス。近中距離で攻撃力が高い、魔法戦士のシオン。五人中四人も上級職業のパーティーよ。カズマ、あなたものすごくついてるわよ?感謝なさい」
改めて整理する。一日一発きりのアークウィザード、攻撃が当たらないクルセイダーに宴会芸が出来るアークプリースト。
「んん……っ。あのキャベツの攻撃は凄かったな……。カズマ!このパーティーには壁役が私だけの様だから、いつも壁役にしてくれて構わん!なんなら、危険な状況では真っ先に捨て駒としてくれ!んん……っ、想像しただけで武者震いが……っ!」
昨日も思ったけど、凄いドMの人だよね。
「それではカズマ。多分これから……いや、間違いなく足を引っ張る事になると思うが、その時は遠慮せず強めに罵ってくれ。これからよろしくたのむ」
職業だけで見たら完璧な布陣だと思う。
隣で涙目で見てくるカズマの苦労を思うと、可哀想に思う。
「キャベツ食べる?」
「……うん」
出来る範囲でフォローはするよ。……うん。
カズマside
冒険者レベルが6になった。
キャベツ狩りでレベルが二つも上がった。キャベツを食べただけでレベルが何故上がるかなんて、考えるだけ無駄だからスルーしよう。
キャベツが一玉一万エリスの報酬は、新鮮なキャベツを食べると経験値が貰えるから、という事らしい。
現在のスキルポイントは二ポイント。
キャベツを食べてレベルが上がったから、得たポイントだ。
俺は、シオンから《片手剣》のスキルと《初級魔法》のスキルを教えて貰った。また、ポイントが空になったが、剣は元より、魔法は是非とも覚えておきたかった。魔法が使える世界に来たのだから一度でも使わないと。
その時に、シオンの職業について詳しく聞いてみた。
職業は前衛職の戦士と後衛職のアークウィザードが合体したような職業らしい。強力な魔法と剣が扱えるのは羨ましい限りだ。
スキルの説明だが片手剣スキルは片手剣の扱いが上達、初級魔法スキルは火、水、土、風の各種の簡単な魔法が使えるようになるスキルらしい。
魔法使いの皆は殺傷力のない初級はとらず中級魔法をとるようだが、シオンは初級から中級の魔法、一部上級の強力な魔法までとっていたので助かった。
スキルも覚え、冒険者らしくなった。となれば、次は装備の話だ。こっちで買った服もあるが、今の格好がジャージにショートソード一本のみ。
と、言うわけで
「……で、シオンは兎も角、なんで私まで付き合わされるのよ、その買い物に」
同じく装備を整えた方がいい、シオンとアクアを連れて、俺は武具ショップにやって来た。
「いや、お前も一応装備調えておけよ、俺とお前も似たようなもんだろ?お前の装備ヒラヒラした羽衣だけじゃないか」
アクアは呆れたと言わんばかりの表情で
「あんた忘れてるみたいだけと、私は女神よ?二人に言ってなかったけどこの羽衣だって神具に決まってるじゃない。あらゆる状態異常を受け付けず、強力な耐久力と様々な魔法が掛かった逸品よ?これ以上の装備なんてこの世界に存在しないわ」
そんな凄いものをバケツで洗って、馬のエサの藁を乾かす場所で一緒に干してたな……この女神
「それは良いことを聞いた。ないと思うが生活に困ったら、その神具売ろうぜ。おっ、この革製の胸当ていい感じだな」
「こっちもいいと思うよ」
「……ねぇ、冗談よね?この羽衣は私が女神である証みたいなものだからね?売らないわよね?売らないわよね?な、何か言ってよ!!」