「……ほう、見違えたではないか」
「おおー。二人とも、ようやくちゃんとした冒険者みたいに見えるのです」
以前までどのように見えていたのだろう……。カズマも同じ事を考えていそうな表情だ。今のカズマの格好は、こちらの世界の服の上から革製の胸当てと金属の篭手、同じく金属のレガースを装備している。私の格好は、この世界の服の上に、フード付きのロングコート、金属の篭手に金属のレガースを装備し、ズボンはこちらの世界の半ズボンを着用し、右腰に長めの片手半剣、左腰に同じサイズの木刀を装備している。
また、こっちの世界の服を他にも数着購入した。自分で言うのもあれだが、ワイシャツは無いかなとは思っていた。父親のを着ていただけなので。
お金はカズマに少し分けて減ったけど、別にそこまで困るほど少なくなってはない。
あれから、他のスキルも習得し、《両手剣スキル》《魔力昇華》を得た。魔法を使うなら、オススメとめぐみんから教えて貰ったのだ。そして、現在はクエストボード前でクエストを決めようとしていた。ダクネスが提案する
「じゃあ、ジャイアントトードが繁殖期に入っていて街の近場で多く出没しているのでそれを………」
「「カエルはやめよう!」」
ダクネスが言っている途中でアクアとめぐみんが拒絶した。
「……何故だ? カエルは刃物が通り易いし、攻撃も舌を使った補食しかしてこない。倒したカエルも食用で売れるから稼ぎもいい。薄い装備をしていると食われたりするらしいが、今のカズマとシオンは装備なら、金属を嫌って狙われないと思うぞ。アクアとめぐみんはしっかり私が盾になろう!」
「違うの、二人はカエルに食べられたことがあって、二人はそれがトラウマになってるみたいなの。頭からパックリいかれて、粘液まみれになったから。だから、この二人のために今日は違うクエストに……」
私の説明にダクネスは何故か、少し顔を赤らめて
「……粘液まみれ!頭からパックリ……」
「おい。お前今ちょっと興奮してないだろうな」
「してない」
ダクネスは目をそらして言うけど、凄く不安がある。目を離したら一人で突撃しそうで怖いよ。
「じゃあ、カエル以外だな。キャベツは例外にして、このパーティー初クエストだ。出来るなら、楽にクリア出来るクエストがいいな」
その言葉を聞いためぐみんとダクネス、私の三人は掲示板へ見に行く。
「どんな、クエストが良いだろう?」
「シオンシオン!」
「なになにどうしたの?めぐみん」
「これなんかどうでしょう?」
めぐみんが指さしたクエストは
コカトリスとグリフォンが縄張り争いをしている。双方とても危険なモンスターなので何とかしてほしい。撃退で五十万エリス、討伐で百万エリス。
「この二匹に、我が爆裂魔法を……」
「その前に聞きたいんだけど、コカトリスってどんなの?グリフォンは何となくは知ってるんだけど」
「ああ、コカトリスと言うのは、ニワトリの頭に、竜の翼、蛇の尾、黄色い羽毛を持つ怪鳥だ。とても危険な毒を持っているモンスターだな、また蹴りが凄まじいらしい!ああ、いいかもしれないな!」
ダクネスが説明してくれるが、どう考えても自分達には荷が重すぎる。
「めぐみん、却下するよ。危なすぎる」
凄い毒もそうなのだが、相手はグリフォンも居る。二体相手したら全滅は必定。
「レベルも上げたいけど、そうなると危険だよね」
「じゃあ、アクアのレベル上げなんてどうだ?プリーストは一般的にレベル上げが難しいからな」
ダクネスが提案してくれた。そう言えば、プリーストは回復・サポートが多いという話を聞いた。直接モンスターを倒せる職ではないからだとか
「うん、いいかもしれないね。カズマとアクアに伝えに行こう」
私達はカズマとアクアにそのことを伝えるために、二人がいる所に向かう。
戻ると、アクアが机に突っ伏して大泣きしていた。
「何をやっているんですか?………カズマは結構えげつない口撃力がありますし、遠慮なく本音をぶちまけると大概の女性は泣きますよ?」
「うむ。ストレスが貯まっているなら……アクア代わりに私に遠慮なく罵ってくれ。……クルセイダーたるもの、誰かの身代わりになるのなら本望だ!」
「まぁ、アクアを苛めるのは程々にね?」
「こいつの事は気にしなくていい。しかし……」
カズマの顔はダクネスの方を見ている。今日のダクネスの服装は鎧姿ではなく、タイトな黒のスカートに黒いタンクトップと革ブーツ。そして背中には大剣を背負っている様は、騎士と言うより剣士に見える。
鎧は先日のキャベツ狩りの際に、ボロボロになり、修理に出しているらしい。
「……む、今、私のことを『エロい身体をしやがってこの雌豚が!』と言ったか?」
「言ってねえ」
服装が違っても、変わらないところは変わらないみたいだ。カズマはアクアとめぐみん。そして私を見た。一体どうしたのだろう。するとめぐみんが
「おい、今私をチラ見した意味を聞こうじゃないか」
「意味はないさ。ただ、俺がロリコンじゃなくて良かったと思っているだけだ」
「ほう、紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です。さあ、表にいこうじゃないか!」
「まぁ、待って。三人で話してクエスト受けるならアクアのレベル上げに行かないかって……」
「有るのか? そんな都合の良いクエスト」
ダクネスが私の代わりに話しをしてくれる。
「プリーストのレベル上げならアンデット族だな。やつらは、不死という神の理に反したモンスター。彼らには、神の力が全て逆に働く。つまり回復魔法を受けると身体が崩れるのだ」
神と相対しているから起こる現象なのかな?
レベルが上がればスキルポイントが貰え、新しくポイントが貰える……。でも、カズマは違う所に目をつけたみたいで、
「なるほど、悪くないな」
「でも、ダクネスの鎧はどうするの?」
私はダクネスの方を見ながら。
「うむ、私なら問題ない。鎧なしでもアダマンマイマイより硬い自信がある。
伊達に防御スキルに特化しているわけじゃない。それに、鎧無しの方が気持ち良いしな」
「お前今殴られると気持ちいと言ったか」
「……言ってない」
「言ったよね?」
「言ってない。……それより、後はアクアにその気があるかだが……」
「おい、いつまでもめそめそしてないで……」
カズマは静かにしているアクアに手を伸ばし、肩を叩こうとした。
「……すかー……」
「子どもか、この駄女神……」
カズマは呆れた表情でアクアを見ていた。
「ちょっとカズマ、その肉は私が目をつけていたのよ! ほら、こっちの野菜が焼けているんだからこっちを食べなさいよ!」
「俺、キャベツ狩りからどうも野菜が嫌いなんだよ、焼いている最中に跳び跳ねたりしないか心配になるから」
私達は今、街から外れた丘の上の共同墓地の近くで夜になるのを待ちながら、キャンプをしていた。ただ待つのもアレということで、離れたところで鉄板を敷き、バーベキューをしている。
今回引き受けたクエストはゾンビメーカーというモンスターの討伐。
ゾンビを操る悪霊の一種で、自分は質の良い死体に乗り移り、手下の代わりに数体のゾンビを操るそうだ。駆け出しの冒険者パーティーでも倒せるとの事で受けたクエスト。
少食の私は皆より早くに食べ終え、ココアを飲んでいる。
カズマに教えて貰った、初級魔法を使った方法で作ったのだ。マグカップにココアの粉末を入れ、『クリエイト・ウォーター』で水を入れ、『ティンダー』という火の魔法で温め、混ぜて完成。カズマに初級魔法を教えた後に、この使い方を教えて貰った。こんな使い方もあるんだと驚いたし、感心した。
カズマもお腹がいっぱいになったみたいで、珈琲を飲んでいる。
そんなカズマを見てめぐみんが複雑そうに自分のコップを差し出した。
「……すみません、私にもお水ください。って言うかカズマは私より魔法を使いこなしてますね。初級魔法はほとんど誰も使わないものなんですが、カズマとシオンの使っている所を見てると何か便利そうです」
カズマはめぐみんに頼まれ、めぐみんのコップにクリエイト・ウォーターで水を入れる。
「いや、元々こういう風に使うものじゃないのか? 初級魔法って。あ、そうそう。『クリエイト・アース』! これって何に使う魔法なんだ?」
「私も気になっていたんだよ。どんなの出来るの?」
教えて貰った、火、水と風はなんとなく分かったけど。土がどうにも思いつかなかった。
「………えっと、その魔法で作った土は、畑などに使うと良い作物が育つそうです。……それだけです」
めぐみんの説明を聞き、アクアが吹き出し。
「何、カズマさん。畑でも作るんですか! 初級魔法で土も作れて、水も出せる。天職じゃないですか! プークスクス!」
畑作り……其れは其れでのどかでいいのかもしれない。でも、これは明らかにバカにしている。そう言えば、風で砂が目に入ったら痛いよね。
「カズマ、風で土飛ばしたら?」
カズマは土の載った手の平をアクアに向け。
「だな、『ウインドブレス』!」
「ぎゃあああっ!ぎゃー!目が、目がぁぁああああ!!」
突風で飛ばされた土がアクアの顔に直撃し、目に砂埃が入り、アクアは転がる。
「……なるほど、初級魔法はこう使えばいいのか」
「……こういう風に使えるんだね。初級魔法って、便利だね」
「違います! 違いますよ!普通はこんな使い方はしません! ていうか、何で二人は初級魔法をこんなに器用に使いこなしているんですか!」
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