遅ればせながら投稿させていただきます!
「なあ、シオン。なんかこの街の近くにある丘にある城に魔王軍の幹部がいるらしいけど、この話知ってるか?」
「えっ、知らないけど……」
私が一人で冒険者カードのスキルの項目を確認していた昼間のことだった。
カズマが知らない人と飲んでいるのは知っていたけど、そんな話をしていたんだ。それにしても……
「魔王の幹部がこの街の近くに……」
女神エリスに転生させてもらう時に聞いていたもの、魔王の存在。その為に力を貰い、励ましてもらってここに来た。戦うべきなんだろうけど……
「ねぇ、カズマはその魔王の幹部と戦うの?」
「はぁ!?そんなわけないだろ……レベルもパーティーもアレなんだ。挑むだけ死にに行くようなもんだろ」
「そうだね……と言うか、他のメンバーに言わなくていいの?」
「あぁー、別に平気だろ。なんか言ったら碌なことにならないだろうからな」
うん、これからの事を考えるとカズマは苦労するだろうなぁ……
「なんにせよ、この街の北のはずれにある廃城に近づかない方が良いと言う話だ。魔王軍の幹部っていうほどなんだからヤバイモンスターなんだろ。アークデーモンとかな。いずれにしても俺達が相手にしたら瞬殺されるの間違いないモンスターがいるだろうからな。だからしばらく、その廃城の近くでのクエストは受けないようにする」
「分かった。情報を聞いてきてくれてありがとう、カズマ。とりあえず皆に合流しよ」
「おう」
私はカズマにお礼を言って、カズマと一緒に自分達のパーティーのテーブルに向うと
「どうした?俺達を、そんな変な目で見て」
アクアとダクネスとめぐみんが、テーブルの真ん中に置かれたコップにさした野菜スティックをポリポリかじり、私達を見ている。
どうしたんだろう?
「別にー? 二人が違うパーティーに行かないか心配なんてしてないし」
アクアが不安そうな目で私達をチラチラ見てくる。
身に覚えが全然ない言葉がアクアの口から出てきた。隣にいるカズマも不思議そうな顔をしながら。
「……何言ってんだ?情報収集は冒険の基本だろうが」
カズマはそう言ってテーブルに座り、野菜ステッィクに手を伸ばす。私も同じ様にカズマの反対に座り野菜スティックに手を伸ばした。
クイッ。
野菜スティクが私達の手から逃れるように動く。
ほんとなにこれ……
「何やってんのよ二人とも」
アクアがテーブルをバンと叩き、ビクリとなり一瞬動かなくなった野菜スティックを一本つまんで口に運ぶ。
「……むう、楽しそうでしたね。カズマは他のパーティーのメンバーと随分親しげでしたね?」
めぐみんは拳を握りテーブルをドンッと叩き、怯ませた野菜スティックをつまみ、口に運んだ。
「何だこの新感覚は? 二人が他所で会話をしている姿を見ると、胸がもやもやするが、その反面新たな快感が……。は! もしや、これが噂の寝取られ……?」
何を言っているのこの人は!?
変な事を言っているこの変態が、指でピンッとコップを弾き、野菜スティックを指で摘まんだ。
「どうしたんだお前ら、こういった場所での情報収集は基本だろうが?」
カズマもテーブルを叩き、野菜スティックに手を取ろうとするが。
ヒョイッ。
「…………だああああああああらっしゃああああああ!」
「落ち着いてカズマ!分かるけど!カズマの気持ち分かるけど落ち着いてええ!」
「や、やめてええ!私の野菜スティックに何すんの!食べ物を粗末にしちゃいけないって習わなかったの!?」
カズマは野菜スティックの掴み損ねた手で、野菜スティックの入ったコップを掴み、壁に叩きつけようと腕を振りかぶる。それを止めるため私が急いでカズマの手を掴んで止める。
「野菜スティック如きに舐められてたまるか!てゆーか今更突っ込むのもなんだが、何で逃げるんだよ。ちゃんと仕留めたやつ出せよ」
「確かに、こうも食べようとして逃げられていたら食べられないよ」
「あんた達、何言ってんの。魚も野菜も新鮮の方が美味しいでじょ? 活き造りって知らないの?」
活き造りってこういうのいうの?私の知っているのと違う……。
私もカズマも野菜スティックを食べるのを諦めた。
「はぁ……。野菜スティックは今はいい。それよりもお前らに聞きたい事がある。レベルが上がったらどんなスキルを覚えようかと思ってな。ハッキリ言ってこのパーティーはバランスが悪い。そのバランスをシオンがどうにか支えて何とかなっている感じだ。これはシオンの負担が大きい。その負担を自由の利く俺が軽減する感じで行きたいんだが。そういや、お前らのスキルってどんな感じなんだ?」
そう言ってカズマが尋ねる。確かに今、現在は私が皆のフォローをしている。正直に言うと少し辛い。
「私は魔法戦士の上級職って言われてるくらいだから《初級魔法》から《上級魔法》までの魔法と、この職業だけの魔法とスキル、それと《片手剣》や《両手剣》とかあるよ」
「うん、シオンは普通に優秀だな。で、問題はその他なんだか……」
「私は《物理耐性》と《魔法耐性》、そして各種の《状態異常耐性》で占めているな。後はデコイという囮になるスキルくらいだ」
「……《両手剣》とか覚えて、攻撃の命中率あげる気はないのか?」
「無い。だが、私は体力と筋力はある。攻撃が簡単に当たるようになってしまえば無傷で倒してしまう。それでは駄目だ。かといって、手加減しわざと攻撃を外して攻撃を受けるというのも違うのだ。なんというか、私が必死で剣を振るうが全く当たらず、力およばず圧倒されるというのが気持ちいい…」
「もういい、黙ってろお前は」
「んん……っ! 自分で言っておいてなんという仕打ち……」
私の隣で頬を赤らめている騎士はとりあえず、無視するしかない。突っ込んだらキリがない。めぐみんの方に視線を移すと、小首を傾げて口を開いた。
「私は勿論、爆裂系スキルです。《爆裂魔法》に《爆裂魔法威力上昇》、そして《高速詠唱》などです。最高の爆裂魔法を放つためのスキル振りです」
絶対に仕留める気しか無いような振り分け方だ……本当に爆裂魔法だけを極めようとしてる……
「……なにかの間違いでもシオンみたいに中級魔法スキルとかを覚える気は……」
「無いです」
やっぱり駄目か……
「えっと、私は……」
「お前はいい」
「ええっ!? そんな!?」
自分のスキルを言おうとしたアクアをカズマが黙らせる。支援系の魔法、回復魔法は覚えているだろうけど、それ以上に宴会芸スキルの方が多いだろうね。
「何でこう、まとまりがないんだよこのパーティーは……。シオンと移籍を……」
カズマがそう呟くと三人がビクリとした。
ーーーーーーーーーーー
緊急のキャベツクエストから数日が経った。 あの時格闘し、収穫したキャベツは売りに出され。そして、冒険者達にはその報酬が支払われた。
私達のメンバーも例外なくその報酬を受け取って各々使ったみたいだ。
「カズマ、シオン、見てくれ。報酬が良かったから、修理を頼んでいた鎧を少し強化してみたんだ。……どう思う?」
ダクネスが嬉しそうに修理から返ってきた鎧を見せてくれた。
「うん、いいと思うよ!」
「成金趣味の貴族のボンボンの鎧みたい」
「……私だって素直に褒めてもらいたい時もあるのだが」
珍しく凹んだ様子のダクネス。私はダクネスを励ましていた。
「今はお前より酷い魔法使いが居るから、構ってられないんだよ。お前を超えそうな勢いの変態を何とかしろよ」
カズマの視線の先には報酬で杖を新調しためぐみんが居た。杖を抱き抱え頬ずりをしていた。
「うん……危ないね確かに」
目を逸らして呟く。マナタイトと言う希少金属を杖に混ぜたらしい。何でも魔法の威力を向上させる特性があるとか……。今関われば試し撃ちに付き合わされることは目に見えている……よし、放っておこう。
私もカズマも換金を終えてホクホク。
キャベツを追うモンスターを引き付けたダクネス。それをまとめて粉砕しためぐみん。盗賊スキルを駆使し強襲を仕掛けていたカズマ。そして魔法でキャベツを気絶させた私。一人を除いてマイペースにキャベツを追いかけていたアクア。
報酬はパーティで均等分配ではなく、それぞれが捕まえた分を個人で受け取るという話でまとまっていた。言い出したのは私と同じくらい収穫したアクアだ。
「なんですってぇぇえええ!?どういうことよ!?」
受付のお姉さんの胸ぐらを掴んでいちゃもんをつけている。
「ダメだよ、アクア!そんなことしちゃ!」
「聞いてよシオン!シオンと同じくらいキャベツを捕まえたのに報酬が五万ちょっとなのよ!おかしくない!?」
「おかしいかもしれないけど、とりあえず手を離してあげて!」
受付のお姉さんからアクアを引き剥がして話を聞く。
「それが、申し上げ難いですが……アクアさんの捕まえてきたのが殆どレタスで……!」
「……あの中にレタスも居たんだ」
「なんでレタスが混じっているのよーーー!!」
「私に言われましてもっ!」
これ以上は埒が明かないので無理矢理アクアを引っ張り、カズマ達のところに行く。その頃にはアクアは受付のお姉さんに文句を言うのを諦めている雰囲気だった。
「カーズマさん!今回のクエストの、報酬はおいくら万円?」
「百万ちょい」
「「「「ひゃっ!?」」」」
私、アクア、ダクネス、めぐみんが絶句する。そんなに貰えていたんだ。
「シオンも大分稼いだんじゃないのか?」
「私は八十五万くらいだよ。予想よりもらえたね」
私が収穫したキャベツは質が良かったらしく、私が予想していたよりも多く貰えた。その後、アクアがカズマに泣きついてツケの足りない分を出してもらった。その時に何か言ってみたいだけど、聞こえなかった。