東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISODE1:ある夏の日

 

これは、とある世界の物語である。

一人の青年と一人の吸血鬼......両者の出逢いが幻想郷にもたらすものは運命(Fate)か、それとも運命(Destiny)か?

紅い霧が再び辺境を満たすとき、その先に待ち受けるものとは?

運命の歯車は音も立てずに回り始めた......

 

 

 

─20XX年 日本

 

「はぁ、やっと着いた......さて、今日からここに一週間滞在か」

 

ひとり呟く青年......名を天澄仁太郎(あずみじんたろう)、高校二年生。

今は夏休み真っ只中で、田舎にある親戚の家に来ている。

親戚の家は神社だが参拝客はほとんどおらず、静かな所である。

自然が多く長閑(のどか)な所であり、そんな環境を好む彼は、毎年夏になるとここに来る。

都会の喧騒から離れて過ごすには、うってつけの場所である。

 

ピンポーン

 

「こんにちは、天澄です」

 

「あ、仁太郎君ね。今開けるわね......」

 

ガラガラガラ

 

「よく来てくれたわねぇ!ささ、上がってちょうだい」

 

この人は俺のおばさんだ。

優しくて料理が上手で、俺の母さんとは従姉妹(いとこ)だ。

現在は神社で旦那さんと仕事をしているが、若い頃は風祝(かぜほうり)という役職をしていたそうだ。

風祝は何十代と続いており、現在は再従姉妹(はとこ)が風祝をしている。ちなみに旦那さんは神主で、一家揃って神職をしている。

 

「それじゃあ、お邪魔します」

 

挨拶を済ませ、家へと上がる。

この家も、初代当主から受け継がれてきたもので、何百年もここにあるらしい。

もちろん建て替えされているので崩れる心配は無い。

 

「これ......お土産のお菓子です!喜んでもらえるといいのですが」

 

「まあ......いつもありがとうね!あとで皆で食べましょうか......ここまで来るのに大変だったでしょう?ゆっくりしていってね」

 

「はい、お世話になります......!」

 

おばさんにお土産を渡し、奥にある和室に寝転ぶ。

新幹線で二時間ほど費やし、そこから市電に乗り換え、電車を降りた後はバスで一時間費やす。

結構疲れるんだなこれが。

そんなことを思いつつ、携帯をいじることにした。

そこでふと、目についた記事を見ることにした。

 

ニュース記事 20XX年○月×日

参拝客減少 消えゆく神社

現在、国内の神社が年々減っており......

 

「ここも人が本当に少ないし、遠くないうちになくなりそうだな......」

 

考えてみれば、小学生の頃は参拝客を何度か見たが、中学生からはほとんど見なくなった。時代は古と離れつつあるようだ。

そんな記事を見ていると、不意に(ふすま)が開き、ある人物が入ってきた。

寝転んだままは悪いので体勢を立て直す。

 

「あっ、仁太郎くん......!また来てくれたんですね......私、ずっと待っていたんです!」

 

「お、おい!いきなり抱きつかないでくれ......恥ずかしいだろ......」

 

「こ、これは失礼しまひた......正式に夫になってから......」

 

「噛んでるぞ。あと勝手に夫にするな......」

 

そう、同い年の再従姉妹、東風谷(こちや)早苗(さなえ)である。

おばさんいわく俺のことが好きらしく、将来の夫に決めてるんだとか。

またおばさんにも早苗の夫になって欲しいと頼まれており、色々と大変だ......

大変というのも、伝統的に何十代と受け継いできた風祝を絶やすわけにはいかず、断るに断りきれないためだ。

そんな俺も早苗のことが好きなのだが、人生はまだ長い。

もしかすると、運命の人は他にいるかもしれない。

そのため、一歩踏み出せないでいる。

 

「それで、そっちの方はどうでしたか?......へぇ、そんなことが......ふふ、それは良いですね。それではまた夕食のとき......」

 

早苗と会話した後、夕食まで一眠りすることにした。

朝から家を出て、電車に乗ったり歩いたり、おまけに早苗と会話したり、少し休憩したい......。

視界がボヤけていき、再び寝転ぶ。

 

「おやすみ......」

 

畳の匂いに包まれながら、俺は静かに目を閉じた......

 

─???

 

「ん......ここは?」

 

目が覚めると辺り一面の闇があった。

前後左右に加え、上下にも吸い込まれそうな深い闇が続いている。

そんな中に立っていると、不意に前方に人影が見えた。それは後光のような光を発し、ぼやけていてよく見えない。

訳もわからず立っていると、その人影の方から話しかけてきた。

 

「......に......る............を......の............とに......し............い」

 

その人影は何かを言っているのだが、所々途切れていてうまく聞き取れない。

戸惑っているうちに、人影は消えてしまった。

そして再び、俺は深い闇の中に落ちていった......。

 

─和室

 

「......てくだ......い......きて......さい!」

 

「......あれ?夢......だったのか?」

 

「はぁ......よかったぁ......」

 

「はぁ......どうも」

 

目が覚めると夜になっていた。

気持ちよく寝ていたはずなのだが、起こしに来た早苗いわく、うなされていたらしい。

それよりも夢に出てきたあの人は誰だろう?

一体何を伝えたかったのだろうか?

そんな疑問を持ちつつ、夕食を取ることにした。

 

─リビング

 

「おっ、仁太郎君じゃないか。よく来たね、お土産ありがとう」

 

「いえいえ、喜んで頂いて何よりです。さてと......」

 

全員『『いただきます!!』』

 

おばさんの旦那さんにも挨拶をし、早速夕食を食べる。

今日の献立のメインはたくさん盛られた野沢菜漬けで、とても美味しそうだ。見ているだけでよだれが出そうになる。

これを白米と共にかき込めばどんなに美味しいだろうか。

 

「はむっ......!」

 

野沢菜漬けと白米を一緒にかき込むと、凝縮された旨味が込み上げてくる。

シャキシャキとした野沢菜漬けと、白米のほかほかとした温かさ、おまけにピリッとした辛味のアクセント、ただそれだけで天にも昇りそうだ。

......って毎年思ってんだけどな。

 

「うん、美味い......!」

 

「どう?おばさんが作ったのよ、美味しいでしょ?」

 

「もちろん、最高です!」

 

毎年この説明をされているが、そこは置いておくことにしよう。

で、このやりとりの後には......

 

「じんくん、あ〜ん......」

 

「じ、自分で食べる......!」

 

そう、早苗が毎年のように俺に食べさせようとするのだ。

恥ずかしいので毎度断っているが、内心嬉しかったりする。

小さい頃は出来たのだが、今できないとは、どこか悔しい気がする......。

 

「あらあら、照れちゃって」

 

賑やかな夕食が終わり、風呂にも入ったらもう寝る時間だ。

昼間はあんなに暑かったのだが、夜になると少し肌寒く感じる。

それはそれで風情があって良いものだ。

そんなことを考えながら、和室に向かう。しかし和室に向かう途中、何かの視線を感じた。

辺りを見渡すが、誰もいない。

少し気になるが、どうせ早苗だろうと思い込み、和室へ足を進めるのであった。

 

─???

 

「やはり今の状態では(ろく)に言葉も伝わらないか.....しかし、ここで手を引く訳にもいかない.....あの力(・・・)さえあれば.....!」

 

闇の中に誰かがいた。

その者が望むものは秩序なのか、それとも混沌か。

いずれにせよ、彼に干渉しようとする何者かであることに変わりはない。

その人物は探っている。

深い深い闇の中で.....

 

─和室

 

「さて、もう寝るとしようか.....」

 

夜風が吹き、空には満月が浮かんでいる。

すこし切ない気持ちになりつつ、彼は静かに眠りに入った。

彼が寝た直後、早苗がこっそりと布団に入り、くっついて寝ていたのは秘密である。

 

「うぅ.....暑い.....」

 

「えへへ.....あったかい.....」





人物紹介

天澄仁太郎(あずみ じんたろう)
本作の主人公。
高校2年生で東風谷早苗とは再従姉妹の関係。
風情を味わうことが好き。
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