東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
これは、とある世界の物語である。
一人の青年と一人の吸血鬼......両者の出逢いが幻想郷にもたらすものは
紅い霧が再び辺境を満たすとき、その先に待ち受けるものとは?
運命の歯車は音も立てずに回り始めた......
─20XX年 日本
「はぁ、やっと着いた......さて、今日からここに一週間滞在か」
ひとり呟く青年......名を
今は夏休み真っ只中で、田舎にある親戚の家に来ている。
親戚の家は神社だが参拝客はほとんどおらず、静かな所である。
自然が多く
都会の喧騒から離れて過ごすには、うってつけの場所である。
ピンポーン
「こんにちは、天澄です」
「あ、仁太郎君ね。今開けるわね......」
ガラガラガラ
「よく来てくれたわねぇ!ささ、上がってちょうだい」
この人は俺のおばさんだ。
優しくて料理が上手で、俺の母さんとは
現在は神社で旦那さんと仕事をしているが、若い頃は
風祝は何十代と続いており、現在は
「それじゃあ、お邪魔します」
挨拶を済ませ、家へと上がる。
この家も、初代当主から受け継がれてきたもので、何百年もここにあるらしい。
もちろん建て替えされているので崩れる心配は無い。
「これ......お土産のお菓子です!喜んでもらえるといいのですが」
「まあ......いつもありがとうね!あとで皆で食べましょうか......ここまで来るのに大変だったでしょう?ゆっくりしていってね」
「はい、お世話になります......!」
おばさんにお土産を渡し、奥にある和室に寝転ぶ。
新幹線で二時間ほど費やし、そこから市電に乗り換え、電車を降りた後はバスで一時間費やす。
結構疲れるんだなこれが。
そんなことを思いつつ、携帯をいじることにした。
そこでふと、目についた記事を見ることにした。
ニュース記事 20XX年○月×日
参拝客減少 消えゆく神社
現在、国内の神社が年々減っており......
「ここも人が本当に少ないし、遠くないうちになくなりそうだな......」
考えてみれば、小学生の頃は参拝客を何度か見たが、中学生からはほとんど見なくなった。時代は古と離れつつあるようだ。
そんな記事を見ていると、不意に
寝転んだままは悪いので体勢を立て直す。
「あっ、仁太郎くん......!また来てくれたんですね......私、ずっと待っていたんです!」
「お、おい!いきなり抱きつかないでくれ......恥ずかしいだろ......」
「こ、これは失礼しまひた......正式に夫になってから......」
「噛んでるぞ。あと勝手に夫にするな......」
そう、同い年の再従姉妹、
おばさんいわく俺のことが好きらしく、将来の夫に決めてるんだとか。
またおばさんにも早苗の夫になって欲しいと頼まれており、色々と大変だ......
大変というのも、伝統的に何十代と受け継いできた風祝を絶やすわけにはいかず、断るに断りきれないためだ。
そんな俺も早苗のことが好きなのだが、人生はまだ長い。
もしかすると、運命の人は他にいるかもしれない。
そのため、一歩踏み出せないでいる。
「それで、そっちの方はどうでしたか?......へぇ、そんなことが......ふふ、それは良いですね。それではまた夕食のとき......」
早苗と会話した後、夕食まで一眠りすることにした。
朝から家を出て、電車に乗ったり歩いたり、おまけに早苗と会話したり、少し休憩したい......。
視界がボヤけていき、再び寝転ぶ。
「おやすみ......」
畳の匂いに包まれながら、俺は静かに目を閉じた......
─???
「ん......ここは?」
目が覚めると辺り一面の闇があった。
前後左右に加え、上下にも吸い込まれそうな深い闇が続いている。
そんな中に立っていると、不意に前方に人影が見えた。それは後光のような光を発し、ぼやけていてよく見えない。
訳もわからず立っていると、その人影の方から話しかけてきた。
「......に......る............を......の............とに......し............い」
その人影は何かを言っているのだが、所々途切れていてうまく聞き取れない。
戸惑っているうちに、人影は消えてしまった。
そして再び、俺は深い闇の中に落ちていった......。
─和室
「......てくだ......い......きて......さい!」
「......あれ?夢......だったのか?」
「はぁ......よかったぁ......」
「はぁ......どうも」
目が覚めると夜になっていた。
気持ちよく寝ていたはずなのだが、起こしに来た早苗いわく、うなされていたらしい。
それよりも夢に出てきたあの人は誰だろう?
一体何を伝えたかったのだろうか?
そんな疑問を持ちつつ、夕食を取ることにした。
─リビング
「おっ、仁太郎君じゃないか。よく来たね、お土産ありがとう」
「いえいえ、喜んで頂いて何よりです。さてと......」
全員『『いただきます!!』』
おばさんの旦那さんにも挨拶をし、早速夕食を食べる。
今日の献立のメインはたくさん盛られた野沢菜漬けで、とても美味しそうだ。見ているだけでよだれが出そうになる。
これを白米と共にかき込めばどんなに美味しいだろうか。
「はむっ......!」
野沢菜漬けと白米を一緒にかき込むと、凝縮された旨味が込み上げてくる。
シャキシャキとした野沢菜漬けと、白米のほかほかとした温かさ、おまけにピリッとした辛味のアクセント、ただそれだけで天にも昇りそうだ。
......って毎年思ってんだけどな。
「うん、美味い......!」
「どう?おばさんが作ったのよ、美味しいでしょ?」
「もちろん、最高です!」
毎年この説明をされているが、そこは置いておくことにしよう。
で、このやりとりの後には......
「じんくん、あ〜ん......」
「じ、自分で食べる......!」
そう、早苗が毎年のように俺に食べさせようとするのだ。
恥ずかしいので毎度断っているが、内心嬉しかったりする。
小さい頃は出来たのだが、今できないとは、どこか悔しい気がする......。
「あらあら、照れちゃって」
賑やかな夕食が終わり、風呂にも入ったらもう寝る時間だ。
昼間はあんなに暑かったのだが、夜になると少し肌寒く感じる。
それはそれで風情があって良いものだ。
そんなことを考えながら、和室に向かう。しかし和室に向かう途中、何かの視線を感じた。
辺りを見渡すが、誰もいない。
少し気になるが、どうせ早苗だろうと思い込み、和室へ足を進めるのであった。
─???
「やはり今の状態では
闇の中に誰かがいた。
その者が望むものは秩序なのか、それとも混沌か。
いずれにせよ、彼に干渉しようとする何者かであることに変わりはない。
その人物は探っている。
深い深い闇の中で.....
─和室
「さて、もう寝るとしようか.....」
夜風が吹き、空には満月が浮かんでいる。
すこし切ない気持ちになりつつ、彼は静かに眠りに入った。
彼が寝た直後、早苗がこっそりと布団に入り、くっついて寝ていたのは秘密である。
「うぅ.....暑い.....」
「えへへ.....あったかい.....」
人物紹介
天澄仁太郎(あずみ じんたろう)
本作の主人公。
高校2年生で東風谷早苗とは再従姉妹の関係。
風情を味わうことが好き。