東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
「単刀直入に聞くわ。里の人々を殺してるのって、あんた達なの?」
博麗の巫女の口から物騒な言葉が漏れる。
依然として目は鋭く、吸血鬼とその従者を見つめている。
ここ最近、人里ではある異変が起きていた。
その異変というのは、彼女らが人里を訪れた翌日に必ず何人か殺されているということだ。
ただでさえ人口が少ない幻想郷で、事件が多発いるのだ。
なら呑気に宴会を開いている場合では無いが、これも霊夢の策略の一つだ。
緊張を解くことで話しやすくする、実に簡単なことだが効果はある。
この問いに対して彼女らは何と答えるのか?
「......何のことかさっぱりだわ。咲夜と彼はともかく、私はこのところ人里には訪れていないわ。ねぇ咲夜?」
「ええ、確かにお嬢様が紅魔館を離れるのはここ3週間で初めてですし」
二人の意見は同じようだ。
仁太郎が来ておよそ3週間、出歩くといっても咲夜と彼、妖精メイドが食材を調達しに行くぐらいであった。
彼にいたっては付き添いがないと迷子になるため共に行動している。
「そう......でも目撃者の中には、あんたを見たって人が何人もいるわ。そのことについてはどうなの?」
霊夢は警戒を緩めずに質問する。
隣で聞いている魔理沙も二人を
そんな彼女らに対し、レミリアは苛立ちを覚え始める。
「......知らないと言っているでしょう?そんな事をしたら貴女達に退治されるでしょう?それとも何?犯人がわざわざここに来るとでも?」
「お嬢様、落ち着きください」
苛立ちの
同時に咲夜は二人を鋭い目で見る。
そうして少し経った後、彼女は新たな人物の名を出す。
「......天澄さんの証言も聞いてもらおうかしら?」
「確か厠に行っていたわね。......でも少し遅くない?」
名前が挙がったのはいいが、肝心の彼がいない。
厠に行った彼を呼ぶため、霊夢は途中で境内へ向かった。
コンコンコン
「ちょっとあんた!いつまで入ってるの?」
戸を叩くが、中から返事は無い。
それどころか、人の気配すら無いようだった。
「あれ?何処に行ったのかしら?......もしここから出たら」
嫌な予感がした。
「お〜い、聞いてるのか?」
霊夢が厠へ迎えに行った後、魔理沙は他の質問を二人にしていた。
咲夜が応答してる間、レミリアは不安な表情のままだった。
魔理沙の呼びかけにも反応せず、ただ座っているだけだ。
「なぁ咲夜、さっきからレミリアが黙ってばっかりだけど、どうかしたのか?」
「............」バッ!!
「お嬢様......」パッ
「うおっ!?お、おい待てよ!」
突然、レミリアは何かに気付いた表情になり、すぐに飛び去ってしまった。
咲夜もそれに続き、瞬間移動でいなくなってしまった。
不意打ちを喰らった魔理沙だが、すぐに後をつけることにした。
途中で霊夢と合流し、レミリアと咲夜の後を追う。
─近辺の森
「はぁ......はぁ......疲れた......」
博麗神社から逃げ出しておよそ20分、彼は森の中にいた。
鳥居とは反対の方向で、獣道そのものだった。
幸いなことに怪我もなく、ここまで来た彼だが、ここである事を思い出す。
そういえば八雲が夜は妖怪が出るとか言っていたな......実際あの時噛まれて大怪我したし......
大変な事を思い出し彼は不安になる。
目前の恐怖だけに囚われ、こんな大事なことまで忘れてしまうなんて情けない。
「どうしようか......」
ガサッ......
「うわっ!?」ズルッ
不意に草陰の中から音が聞こえ、驚き転んでしまった。
しかし、それだけならいいものの、彼は新たな恐怖を味わうことになる。
「いててて......」
「ゥゥゥゥゥゥ......」
「な、なんだ?」
転んだ後に聞こえてきたのは唸るような低い声。
それは獣のようにも聞こえるが、どこか違う耳に残る不気味な声だった。
そしてその声はだんだんと近づいてきて......姿を現した。
ガサガサッ
「ひっ!?」
「オマエ、ウマソウダナ......」
そこに現れたのは2mはあろう妖怪だった。
巨大な黒い塊で、あるのは人のような大きな口と細長い腕が二本。
しかもそれが人の言葉を喋るのだから、不気味さを助長している。腰を抜かしてしまった彼は動けず、妖怪はチャンスと言わんばかりに距離をつめる。
「安心シロ......骨マデ残サズ食ッテヤル......」
「く、来るな!来るなよ......」
必死でそう呼び掛けるも届くはずがなく、彼は腰を抜かしたまま後ずさりするだけであった。
すぐに追いつかれ、彼は妖怪に持ち上げられ宙吊りになった。
「サテ、イタダクトスルカ......」ガバァッ
開かれた口は所々血の跡がついており、黄ばんでいたり、あるいはまだそれほど経っていないであろう鮮やかな血の跡もある。
獣のような歯でなく、人間のような歯が、かえって恐怖を増やす。
だんだんと妖怪の口が迫り、絶体絶命となった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼の声が夜の森に響いた。
その時だった。
グシャッ
「............え?」ドサッ
「グギャアァァァァァァ!!?」ジュウゥゥゥ......
喰われたと思い目を閉じたが、何も起こらず、目を開けると先程の妖怪は紅い槍に体を貫かれていた。
そして不気味な声を上げ、蒸発するように消滅していった。そしてその先にいたのは......
「あら、こんなところでどうしたのかしら?」
「レミリア......」
そこにいたのはレミリアだった。
しかし自分は勝手に逃げたのだ。
3週間も側で付き合ったが、一時の考えでこんな行動を起こしてしまった。
今のは助けたのでは無く自分で始末しに来たのだろう。
許してもらえるはずが無いが、謝るだけでもしておきたい。
「ご、ごめん......なさい......勝手な思い込みで.逃げました......こんな......バカなことを......うぅ......」
「............」
両膝をつけ、うつむく彼。
そんな彼を見て彼女は黙ったままだ。
彼女もまた顔をうつむかせ、目元が暗い状態だ。
そんな彼女はだんだんと彼に近づいていき......
ギュッ
「怖かったでしょう?咲夜は問題ないけど、普通の人間が何週間も紅魔館にいては狂ってしまうわ。逃げ出すのも無理ないわ。それと......貴方が生きていて本当に良かったわ......」
「あ............」
なんと彼女は彼を許したのだった。
疑いの心を持ち、主を欺く行為をした彼を。
そんなことさえ許せる心を持つレミリアに安心したのか、彼は体の力が抜け眠ってしまった。
その様子は幼い子供のようであり、彼女は微笑んだ。
そして眠る間際にもう裏切ったりしないと誓う彼であった。