東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISODE14:静かな図書館

 

─紅魔館 正門

 

「はぁ......やっと着いた......」フラフラ......

 

「天澄さん!?今までどこに行ってたんですか、心配したんですよ!」

 

人里を出ておよそ1時間。

普段の倍、時間をかけて彼はようやく紅魔館へ戻ってきた。

しかし疲れが溜まっているため、足取りがおぼつかないようだ。

顔にも疲労の色が見えている。

そんな彼を見て、美鈴は介抱しようとすぐさま駆け寄るが......

 

「いや、大丈夫だ......いつも助けられてばかりじゃそっちも大変だろうし......」

 

彼は美鈴の介抱を断った。

美鈴には2度も世話になっている。

初めて紅魔館に来たとき、レミリアが彼を連れ帰ったとき、話によると真っ先に美鈴が動いてくれたんだとか。

そのことに対する感謝と申し訳なさから、彼は彼女の提案を遠慮したのである。

そんな彼の態度に驚きつつ、美鈴はしぶしぶ承諾するのであった。

さて、随分と帰るのが遅くなってしまった。

自分でも予想外のことばかり起きたのが原因だけど、レミリアにも心配かけたに違いない。

早いところ事情を説明して明日に備えないと。

......これから食材の調達はどうなるんだろう?

 

 

 

─玉座の間

 

コンコン

 

「天澄です......失礼します......」

 

少し緊張しながら、彼は玉座の間の扉を叩く。

レミリアが気を悪くしていたらどうしようかという不安もあるが、まずは自分が無事であることを伝えなければ......

ドアノブに手をかけ、ゆっくりとそれを回して押し出す。

 

キィー......

 

扉を開けるが中には誰もいなかった。

しかし何故か窓が開いており、床には紙が散乱していた。

普段なら有り得ないことに疑問を持ちつつ、とりあえず部屋の片付けをすることにした。

窓とカーテンを閉め、携帯用のマッチで蝋燭に火を灯す。

次に床に散乱している紙を拾っていく。

書類を拾っていると、あるものに目が行った。

 

「これは......家族の絵かな?」

 

手にとったのは1枚の紙。

そこには貴族らしい男性と貴婦人、二人の少女らしき人物が描かれている。

しかし劣化が激しく、それが誰かまではわからなかった。

少し気になるが、再び手を動かし十分ほどで床は片付いた。

それにしてもレミリアは何処へ行ったのだろうかと思い、近くにあったイスに腰をかける。

 

「あれから1ヶ月か......随分と早かったような気がする」

 

何の前ぶりも無く、八雲紫に訳のわからないうちにこの世界に送り込まれて、今じゃこうして住み込みで働いている。

危なかったことも何度もあった......今日だってそうだ。

仕事以外で1人の時間を過ごしたのが久しぶりなのか、次々と色んなことを思い出す。

大変だったこと、驚いたこと、楽しかったこと、様々な出来事が浮かんでくる。

そうして十数分ほどが経過した。

 

「......早苗、元気にしてるかな?」

 

早苗のことを思い出す。

彼女の家に遊びに行って、一緒に川遊びしたり、花火を見たり、時には同じ布団で寝たりもした。

それがどうだろう、何も言えずに離れ離れになってしまった。

自分のことを誰よりも好きでいてくれる彼女を裏切ったのではないかと思い、気がつくと涙が一筋こぼれていた。

 

コンコン

 

「失礼するわ」

 

そんな時、扉を叩く音が聞こえ誰かが部屋に入ってきた。

泣いている姿を見られまいと急いで涙を拭くと、入ってきたのはパチュリーだった。

彼女とはあまり話したことが無く、たまに本の場所を聞くぐらいであった。

それよりも何の用事だろう。

 

「あら、ここにいたのね。貴方とお話しがしたいの。一緒に図書館に来てちょうだい」

 

彼女は自分と話がしたいと言う。真面目なものかプライベートなものかはさておき、図書館に向かった。

 

 

 

─大図書館

 

「小悪魔、お茶を2つお願い。それと吸血鬼に関する本を一冊ちょうだい」

 

「は〜い......あ、天澄さんじゃないですかぁ」

 

「あ、ああ......こんばんは」

 

図書館に着くと小悪魔が出迎えた。

あの一件以来、小悪魔に対して警戒しているが、今日はパチュリーもいるので大丈夫だろう......保証はしないが。

それにしても図書館ということもあってとても静かだ。

小悪魔がお茶を用意しにその場を離れると、カウンターの隣にあるテーブル席に案内された。

テーブルの上ではランプが灯り、怪しい雰囲気を醸し出していた。

そして小悪魔が戻ってきたところで話が始まる。

 

「さてと......話は二つあるわ。真面目な話とプライベートな話。雰囲気を崩したくないから前者からでいいかしら?」

 

「ああ、わかった。......小悪魔、どうかしたか?」

 

「いえ、何でもありませんよ」ニヤリ

 

小悪魔が気になるが、構わずパチュリーは吸血鬼の本を開く。

タイトルは何語かわからないが、さっき言っていた吸血鬼に関するものだろう。

そう思い、彼女の口から出る言葉を待つ。

真面目なものと言っていたが、どんなことだろう。

 

「それじゃあ......まずは1つ目、吸血鬼は月に1度、若い人間の血を飲まなければ生命を維持できないの。だからどうしても、人間を襲わなきゃいけないの。でも安心して、レミィは貴方の命はとらないみたいだから」

 

彼女の口から出たのは、いかにもなことだった。

生きるために他の命を奪うのは人間も同じなため、複雑な心境だがうなずく。

他にも吸血鬼の特徴を聞き、話は次に移る。

 

「それでレミィ......レミリアには妹がいるの。そして最後に、レミリアと咲夜の中には誰か(・・)が住んでいるの。私にもわからないけど、これだけは重々理解してほしいわ」

 

「レミ......お嬢様に妹が?それと誰かが住んでいる?」

 

今まで知らなかったことを聞き驚く。

紅魔館に住んでしばらく経つが1度も会ったことは無いし、存在すら知らなかった。

レミリアは何故そのことを言わなかったのだろうか。

そしてもう1つ。

彼女が言った、誰かが住んでいるということ。

正直これは想像つかず、何なのかはわからない。

 

「おそらくあの二人がいないのもそれが関係しているかもしれないわ。私もレミィが心配だから、何かあったら教えてちょうだい」

 

話が終わると怪しげな雰囲気は解け、静かな図書館へと戻る。

プライベートな話に移る前に、小悪魔が持ってきた紅茶を飲むことにする。

冷めてしまってもったいない。

まずは香りを楽しむことにする。

茶葉の深い香りがし、鼻腔をくすぐる。

そして口に含むと、濃くて力強い味わいがする。

 

「これは......アッサムティーかな?すごく美味しい」

 

「私も飲みましょ......美味しいわね。さすが私の使い魔ね」

 

「それほどでも」ニヤニヤ

 

「......はぁ、まったく」

 

「......?」

 

紅茶を飲み終えると、次はプライベートな話をした。

外の世界のことを話したり、紅魔館での生活や仕事の感想、日常の趣を感じるところなどをメインに30分ほど話した。

そして時計の針は0時を差し、自室へ帰ることになった。

パチュリーによるとレミリアと咲夜は昼ごろに戻ってくると予測しているため今夜は寄る必要が無いのだ。

 

「おやすみなさいパチュリーさん......」

 

「それではパチュリー様、天澄さんを送ってきます!」

 

「ええ、私も寝るわ......おやすみなさい......」

 

そして、パチュリーの命令で彼を部屋まで送ろうとする小悪魔であったが、入り口の扉まで来ると彼は寝てしまった。

それを好機と言わんばかりに、小悪魔はこっそりと図書館の奥へと連れ込んでいく。

そしてベッドを召喚し、彼を寝かせると愉悦の笑みを浮かべるのであった。

 

「それでは天澄さん......夢の世界でお会いしましょう♪」

 

図書館は至って静かであった。

 

 

 

─翌朝

 

「うぅ......あれ?小悪魔が部屋まで送ってくれたのか......さてと、妖精メイドと朝食でも作りに行こう」

 

目が覚めると自室にいた。

図書館で寝たのはどうやら夢だったらしい。

それにしても小悪魔が運んでくれただなんて、なんだか予想外だ。

けど......なんか妙に頭がモヤモヤするなぁ......

 

 

 

「はぁ......天澄さん、とても美味しかったですよ♪」

 

と、図書館では淫らな夢を見せた小悪魔(サキュバス)が微笑むのであった。

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