東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─正門
「あ、天澄さん!昨日は大丈夫でしたか!?私心配で心配で......」
「おはよう美鈴。昨日はちょっとね......」
朝食を作って数時間、神太郎はパチュリーが予測した時間帯に二人の帰りを迎えるため、正門に来ていた。
心配する美鈴に昨日起きたことを話すと、彼女は複雑な顔になった。
しかし暗い雰囲気は良くないと、彼女の方から二人を待つ間、雑談を交わすことにした。
「......それでさぁ、妖精メイドが愚痴を言ってたんだよ」
「そんなことが?意外ですねぇ」
彼女と他愛無い話をしておよそ30分。
まだ雑談の最中であったが、遠くの方に目的の二人が見えた。
そしてそうこうしているうちに門前に着いたので、美鈴とともに迎えの挨拶をする。
「「お帰りなさいませ、お嬢様、咲夜さん」」
「ただいま......咲夜、部屋までお願い」
「かしこまりました。それと天澄さん。今日は物置の掃除をお願いするわ」
そう言うと彼女たちはその場から姿を消した。
そして彼も美鈴に別れの挨拶をした後、咲夜に頼まれた仕事をしに館へと戻って行った。
─廊下
「それにしても、昨日のことは話した方がいいのか?」カツカツ
廊下を歩いている途中、ポツリと一人ごとを漏らす。
昨日パチュリーが話していたレミリアの妹のことだ。
彼女自身の口からは一度も聞いたことが無く、まだ会ったことも無い。
パチュリーもいるといっただけで、どこにいるのかもわからない。
......と、物置の前に着いたみたいだ。
今日は物置掃除の妖精メイドが非番なので一人で作業をするらしい。
「よし、それじゃあ仕事するか」ガチャ
「あれ?物置の割にはえらく簡素だな......」
物置に入るのは初めてだが、物は散乱しておらずシンプルな感じだ。
木箱がたくさん積まれているくらいで、本当にここが物置なのかと疑問を抱いたが、モップなどの掃除用具が用意されていたのであっているだろう。
突っ立っていても仕方がないので早速手をつける。
上から下へと木箱の埃を落としていき、雑巾で磨く。
木箱の掃除が終わったので次は床をモップで掃く。
地味な作業だが小学生の頃にした大掃除のようで、綺麗になっていく古い物は見栄えがある。
そうして数十分が経ち、物置は入ったときよりもさらに綺麗になった。
「はぁ、これで良いかな ちょっと休憩......」カチッ
「あれ、今なんか押したか......?」ズズズズ....
一旦休憩しようと壁にもたれかかると何かの音がして、木箱が移動し床下のようなものが現れた。
....というよりこれは排水溝では?そう思いバケツの水を捨てようと近づいたのだが......
ガチャ
「え?うわぁっ!?」ガシャン!!バシャッ......
突然、排水溝の蓋が開き、バランスを崩してその中へと落ちてしまった......
─???
「痛ててて......ここは?」
落ちた先で目を開くと洞窟のようになっていた。
空気も冷えていて湿っているようだ。
上に戻ろうと周囲を確認したが梯子や登れそうな場所は見当たらず、どうやら進むしか無いらしい。
先に進めば上に戻れる手がかりがあるかもしれない。
そう思い彼は足を進める。
「それにしても気味が悪いな......紅魔館の地下にこんな場所があったなんて......」
異様な雰囲気に包まれながら歩いていると、先の方にぼんやりと明かりが見えた。
それは蝋燭のようだが、こんな湿気っている場所でつくものなのか。
さらに足を進めると洞窟らしき場所を抜けると急に洋風の廊下へと変わった。
壁や天井は白く、床にはレッドカーペットが続いていた。
「あれは......扉?」
レッドカーペットを進んでいくと扉の前に着いた。
扉には所々に金の装飾が施されていて美しく輝いていた。
しかし自分は上に戻るためにここに来た。
あまり鑑賞している暇はないので部屋に入れるか確認する。
コンコン
「すみません、誰かいませんか?」
シーン......
ノックをしたが返事はこず何の反応もない。
念のため二、三度繰り返すも結果は同じだった。
そこで行動に移そうと鍵穴を探したがそれらしきものは見つからず、ドアノブに手を掛けると扉はギィーという音を立てて開いた。
「失礼します......」
扉の向こうには子供部屋のような光景が広がっていた。
おしゃれな机と椅子、たくさんの人形など西洋の王室のようだ。
しかし何故地下にこんな豪華な場所があるのか?普通なら上にありそうだけど......
「貴方だあれ?」
「うわっ!?」ビクッ
不意に後ろから声をかけられ驚いてしまった。
咄嗟に振り向くと、そこには金髪の少女が立っていた。
しかしすぐに人間でないことに気付く。
背中には翼のようなものが生え、宝石らしきものが付いている。
それにレミリアとよく似て......もしかしてこの娘がレミリアの妹なんじゃ......
「私はフランドール・スカーレット。貴方は?」
「お、俺は天澄......天澄仁太郎だ」
常に好奇心のある目で見てくる彼女、フランドール・スカーレット。
やはりレミリアの妹のようでいかにも子供らしい。
だがレミリアは何故妹のことを話さなかったのか疑問は尽きない。
そう考えていると彼女は彼の身体をまじまじと見つめる。
「ど、どうかした?何か付いてる?」
「その格好......匂い......アイツのもとで働いているのね」
アイツとはレミリアのことだろうか。
それはともかく当初の目的を思い出す。
そう、ここから出ることだ。
もう落ちてから30分ほど経っている。
早く出ないとまた皆に心配をかけてしまう。
そこで彼女にここから出る方法を聞く。
「ところで、なんだけど......ここから上に帰りたいんだ......」
「そうだ!貴方私と遊びましょ!」
「ごめん、俺は上に帰らないと......」
「どうして?ねえ、どうして?私と遊びに来たんじゃないの?」
どうやら彼女に話は通じないらしく、帰してくれないみたいだ。
ここは大人しく従って隙を見て出るしかないな。
いくら何百年生きていようと精神的には幼いはずだ。
よし、早速実行しよう。
「あ、ええと......ああ、遊びに来たんだ。フランドールだっけ?何して遊ぶ?」
「フランでいいわ。何して遊ぼうかしら....弾幕ごっこ?それともかくれんぼ?」
「俺はかくれんぼがいいかな......フランちゃんは?」
「そうね、私もかくれんぼにしましょ」
よし、これでフランが鬼になれば目を瞑っている間に出られる。
なんだ簡単じゃないか。
「じゃあ鬼を決めなきゃね、お兄様」
「お、お兄様!?」
「ええ、何か問題でも?」
ニコニコと微笑む彼女は可愛らしいものだった。
帰してくれないのは遊んで欲しいだけなんだろう。
そうか、そういうことか。
と、彼はこのとき思ったのであった。少なくとも
「それじゃあいくわ。じゃんけん......ぽん!お兄様が鬼みたいね。それじゃあ10数えてね」
「ああ、わかった」
「あ、そうそう......部屋から出ようとなんて考えないでね」ニコッ
「も、もちろん......遊びに来たんだし......」
突然彼女の目から光が消え思わず冷や汗が出る。
なんだろう、嫌な予感がする。
彼女の言うことに従わなければどうなるかたまったもんじゃない。
やっぱりここから出れないのか......
こうして彼女とのかくれんぼが始まるのであった。