東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─大図書館
「はぁ......レミィったら、だから話した方がいいって言ったのに。......でも、
図書館に入り、小悪魔に案内されパチュリーに今朝の出来事を話した。
どうやら以前、妹のことを話すようレミリアに言ったのだが、うやむやに終わってしまったんだとか。
しかし重要なのは次で、死体がいくつもあるということだ。
以前は好きなときに人間を食料にしていたようだが、少し前の問題で霊夢のお咎めにより、「1ヵ月に1度、必要な分。罪人に限ること」を守るようになったらしい。
だが今回、それが守られていなかった。
つまりこの館の知ってはいけないことの一つを知ってしまったというわけだ。
そう実感し、彼は固唾を飲んだ。
「俺も殺されるのかな......」
「大丈夫よ、レミィは貴方のこと気に入っているから。でも、一つ気がかりなことがあるの」
「気がかりなこと?」
「ええ、レミィは1ヵ月に一度をちゃんと守っているの。そんな彼女が霊夢のお咎めを破ると思う?」
彼女の言う通りだ。
レミリアが約束を破るとは思えない。
となると犯人は咲夜としか思えないが......あの動揺していた目を見ると、彼女もこの事を知らなかったのではと思える。
そうなると第三者が絡んでいるのか?ますます謎は深まるばかりだ。
「ともかく、私からもレミィに話しておくわ。また何かわかったら教えてちょうだい。それじゃあ小悪魔、後は頼むわ」
「了解です。さぁ天澄さん、今日は大変だったでしょう?私がたっぷり癒してあげますよ〜?」
「懲りないなぁ、まったく......」
そういうやり取りがあり、数日が経った。
結局犯人は不明なままだが、それ以外に問題は起きず、これまで通りに戻りつつあった。
......そうであれば良かったのだが、その時は突然やってきた。
─???
「ぐっ......私は......こんなところで............」
『はぁ、さっさと楽になっちゃえば良いのに。私はずっと待っていたのよ?
「私は......私は決めたの......あの人に......いやぁぁぁぁぁ!?」
『あーうるさいうるさい。ちょ〜っと近づいただけなのにこんなに叫んで。そんなに嫌?もしよかったらやっぱり止めようかな〜」
「え?止めるって............や、やめてくださいお願いします!」
『どうしよっかな〜」
「お願い......します......どうか......この通り......」
『はぁ、そこまで頼まれたら仕方ないか」
「ほ、ほんと!?止めてくれ」
『なんて言うと思った?」
「え?嫌よ、嫌よ嫌よ、嫌嫌嫌嫌嫌嫌......いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
タタタタ......バァン!!
「どうしたんですか!?」
ズシュッ!!
「......え?」バタッ......
紅魔館の一室で悲痛な叫びが響いた。
それを聞きつけ妖精メイドが飛び込むも一瞬にして絶命させられた。
妖精メイドを殺した者は、死体を片付けるとニヤリと口角を上げ、部屋を後にした。
─自室
「何か聞こえたような?気のせいか。レミリアに夕食を運ばないと」
一方、仁太郎はレミリアに夕食を運んでいる最中だった。
途中で何かが聞こえたような気もするが、気のせいだと自分に言い聞かせ手を動かす。
館内はいつもより静かで不思議と
人間が自分と咲夜しかいないのもあるかもしれないが、今日は一段と静けさが感じられた。
「やけに静かだな......と、着いたか」
ひとりごとを言っている間に着いたらしく、ノックをし中に入る。
そこで待ち受けていたのは......
「はぁ......はぁ......ぐっ......うぅ......」
「お嬢様、大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」
部屋に入ると苦しそうに呻くレミリアと、それを支える咲夜が映った。
当然ただ事ではないので、すかさず駆け寄り介抱しようとするが、レミリアはそれを断り彼にこう告げるのであった。
「ここから......で......なさ......い......」
「そんなこと出来ません!今すぐ休憩室に運びますから!」
彼女はどういうわけか逃げるように指示した。
しかし主がこんなに苦しんでいるのだ。
それを見捨てられる従者などいるものか。
なんとか助けようともう一度介抱しようとするが、今度は強くそれを制止した。
「出......ろと......言っている......こ......れは......めい......れいだ......」キッ
「............!」
レミリアに睨まれ思わず息を呑んだ。
相手は吸血鬼という化物......人間から見れば、捕食者の立場にある。
狩られる立場の動物が、捕食者の目を恐れることと同じで、彼は彼女の睨んだ顔に不安を覚えた。
あの美しい顔が恐ろしい形相に変わるなど何かが絡んでいることに違いはなかった。
部屋を後にした後、ふと咲夜のことが気になった。
彼女もレミリアを支えていたが、特に何も言われていなかった。
何か事情があるのかもしれないが、彼女自身もいないので真相は不明だ。
「......また後でこようか」
今日はこれ以上することも無く、彼は自室に入るなりすぐに眠るのであった。
─翌朝
「今日は大丈夫かな?あ、咲夜さん......おはようございます」
「おはようございます。天澄さん」
次の日の朝、食堂に朝食を取りに行くと咲夜がいた。
いや、いつもいるのだが、今日はどこか雰囲気が違った。
しかし妖精メイド達はそんなこと気にせず働いているので、気をとりなおし早速台車を運ぶ。
途中で一度振り返るも、咲夜はその場から動いていなかった。
そこまではいいが、出入り口の扉を開ける前にもう一度振り返ると、咲夜はいなくなっていた。
厨房にも姿が見えないので不思議に思いつつも食堂を後にした。
─玉座の間
コンコン
「天澄です。失礼します」
「おはよう......どうかしたの?」
「いや、何でもありません......」
「そう、ならいいけど」
部屋に入るといつも通りのレミリアがいた。
拍子抜けた顔を見て、レミリアは彼に質問をする。
昨日の様子とはまるで別人のようで驚いたのだが、なんでもないと伝え食事を用意する。
いや、なんでもないはずがない。
昨日あれほど苦しんでいたのだ。
体の問題であれば、吸血鬼なら1日で回復してもおかしくないが、それがどうしたことか、何事もなかったかのようにしている。
何でもないと言う前に昨日の事を聞こうとしたが、彼女の方からどうしたのか聞いてきたため、おそらく昨日の事を覚えていないのだろう。
静寂が流れ、レミリアの食事が終わったところで部屋を後にした。
─人間の里
「あーもう!全然証拠が無いじゃない!」
「そうだ、阿求に聞いてみたらどうだ?」
一方その頃、人間の里では霊夢と魔理沙がここ数日、異変の調査に来ていた。
里の人達の話を聞くと、レミリアと咲夜を目撃した翌日に誰かが殺されるというのだが、肝心の霊夢と魔理沙は一度も目撃しておらず、決定的な証拠が掴めないままだった。
そこで魔理沙は現稗田家当主である
寺子屋は異変により休校中である上、より大きな阿求の屋敷ならば少なからず異変に関する情報が入っているだろう。
「確かに魔理沙の言うとおりね。大した異変じゃないといいけど......」
「あのなぁ......」
言われてから動く霊夢に対し、魔理沙は呆れながらも阿求の屋敷へ足を進める。
相変わらず今の人里は活気が無く、まるで別の世界に入ってしまったかのようだ。
以前は人で溢れていた大通りも、数えるほどしか人がいない。
「なぁ霊夢〜」
「なによ?」
「静かだな」
「......そうね」
人気の無い大通りを横目に二人は複雑な顔をする。
いくら実力があっても、いくら異変を解決してきた彼女たちも、まだ少女なのだ。
周囲の活気がなくなれば、不安になるのも不思議なことではない。
短い言葉を交わし合い、進んでいくと阿求の屋敷が見えてきた。
そして門前に着いたところで呼び鈴を鳴らす。
呼び鈴を鳴らすと使用人が出てきて、2人を阿求の部屋へと案内した。
─稗田家 阿求の部屋
「あらこんにちは、お二人さん。今日はどんなご用事かしら?」
稗田阿求......稗田家の現当主であり、九代目である。
幻想郷縁起を編纂するため、千年以上前から転生を繰り返しており、かの有名な歴史書『古事記』を
そんな彼女に、2人は異変について聞く。
「このところ人里で異変が起きてるわよね?」
「ええ、そうね。あの吸血鬼と従者が関係してるって言われているけど......」
話が始まり1時間ほど経った。
基本的には里の人達の証言と同じであったが、新たな情報も得られた。
最近は例の殺人事件が減っていること。
そしてもう一つ、少し前に
目撃されたと言っても、何度か人里には訪れているらしく、その時は問題がなかった。
しかしその少年は殺人現場に来たところで見つかり、その場から逃げたのだとか。
不審に思った住民たちが追ったが、結局捕まえることが出来ずその後の行方は不明なようだ。
里の人達は口をそろえて湖の屋敷の奴だと言う。
ヒソヒソ
「霊夢、それってあいつしかいないよな?」
「......そうね、でもあいつが犯人とは思わないわ」
洋服の少年と聞き、二人はすぐに仁太郎のことを浮かべる。
紅魔館にいる人間の男性は彼しかいないので当然だ。
しかし以前宴会を開いたとき、彼はその場から逃げようとしたのだ。
そんな彼が殺人なんてするだろうか?おそらく誤解されているように思われるので、彼について深くは言及しなかった。
「なるほどね、大体わかったわ」
「それなら良かった......あ、そういえばもう一つ話があるの」
霊夢が話の内容を確認したところで、阿求は何かを思い出したかのように話を始めた。
人物紹介
稗田阿求(ひえだの あきゅう)
稗田家当主の少女。
幻想郷縁起を編纂するため何度も転生を繰り返している。
彼女によれば完成まであと半分らしい。