東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─フランの部屋
「あははははははは!やめてお兄様くすぐったいよぉ!」
「ほらほら、そんな怖い顔するともっとしちゃうぞ〜」
狂気を含む笑みを見せるフランに対して、ある策を思いついた。
そう、くすぐり作戦。
老若男女、これをされて笑わない人などあまりいないはず。
一か八かにかけてでしてみたが、これが上手くいったようだ。
狂気はすぐに引き、たちまち無垢な笑顔に変わった。
そんな彼女を見て自分も嬉しくなる。
おっと、やりすぎも良くない。
そろそろ止めようか。
「はぁ......はぁ......貴方って大胆なのね」
「まあこれくらいはな。せっかく遊びに来たんだし、挨拶代わりと思ってくれ」
「何よそれ。......まあいいわ。で、何して遊ぶ?」
くすぐりを終えた後、フランは何をして遊ぶのか聞いてきた。
前にも話したが、ここに来た目的は彼女と関わること。
積極的に関わる遊びと言ったらまさしくこれだろう。
「それじゃあ......おままごとはどうかな?」
「それがいいわ!ずっと
「そ、そうなんだ......でも落ち着いた雰囲気もいいんじゃないかな?」(やる......?)
何かまずい予感がしたので、咄嗟に落ち着いてすることを提案する。
これで彼女が乗ってくれれば、そのまずいことは起きなさそうだが......
「......確かにそれもいいわね。でもちゃんと教えてよね」
よし、しめた。
彼女の考えているおままごととやらはよくわからないが、とにかく乗ってくれたので一安心した。
さて、始めるとするか。
「まずおままごとっていうのは......」
─数週間後
「お兄様、はいコレ!」
「お、ありがとう......どれどれ......」
今日も地下室で彼女と遊ぶ。
最近は自然な笑みを浮かべることも多くなり、それを見るとこっちも嬉しくなる。
そんな日が続いていたのだが......
「動くな......」シュッ......
「......え?」
「───!」
誰かの声が耳元で聞こえたかと思うと、一瞬にして目の前が暗くなった。
─玉座の間
「......これはどういうことかしら?」
「............っ!?」
フランとの密会が始まり、気付けば何週間も経っていた。
最初のうちはフランに狂気が垣間見えたが、会う度に狂気は少しずつ減っていき、改善しつつあった。
このまま良くなれば、皆のいる上の階にいけるかもしれない。
そう思いながら今日もフランと関わっていたのだが、突如視界が暗くなると玉座の間にいた。
言うまでもなく、咲夜の仕業だろう。
そしてレミリアの方は、フランとの密会を知っているようだった。
「確かにあの時は私の責任だったわ。あの娘のことを黙っていて悪かったと......それなのに貴方は私の許しも無く自らを危険にさらした......いえ、あの娘が良くなってくれたのはありがたいわ......それなのに......貴方は......」ワナワナ
「だ、大丈夫......ですか?」
どうやらフランのことには怒っていないようだ。
しかし彼女は拳を強く握りわなわなと震えており、よほどまずいことをしたのではと今更ながら思う。
そしてとうとう、彼女は堰を切った。
「どうしていつも貴方は危機感が無いの!?妖怪に襲われた時だって私がいなければ死んでいた......フランだって何をするかわからないのに......これ以上勝手な行動で自分の命を危険にさらさないで......いい?」
ザザッ......
「私は貴方が好きなの......死ぬなんて許さないわ」
「............」
あまりにも唐突な彼女の告白に、言葉を失ってしまった。
いや、問題はそこでは無い。
なぜこのタイミングで告白をするのか。
直前まで彼女は感情を昂らせていた。
なのに急にこのような発言に至るとは思えない。
そういえば、フランと毎日会う前からレミリアが何か変だったな。
苦しんでいると思ったら次の日は何事も無かったみたいに。
今回みたいに怒っていると思ったら告白したり......やっぱり何かおかしい。
「───」
そして再び、視界は途切れた......
─大図書館
「......何だって?」
「だから...... 1週間しか経っていないわよ」
場所は変わり、地下の大図書館。
パチュリーなら何かヒントを得られると思い、ここへ寄ったのだがそこで驚くべきことを聞いた。
レミリアが苦しんでいたことは、彼女は妖精メイドから聞いていたので話は円滑に進んだ。
驚くべきこととは時間の差であった。
フランと密会を始めたのはレミリアが苦しんだ日の翌日で、今日まで何週間か経っていたはずなのだが、パチュリーは1週間しか経っていないというのだ。
何かの間違いだと思い、小悪魔にも聞いたが答えは同じで、1週間しか経っていないという。
「そんなバカな......だったら数週間の記憶は一体?」
「レミィのことはさておき、他の住民にも聞いてみるといいわ」
「わかった、ありがとう」
「ええ、また来て......いや、来ないことを祈るわ」(まずいことになったわね......もう時間がないみたいだわ......)
去っていく彼を見て、パチュリーは顔をしかめる。
彼女には大体予想がついていた。
これから起こるであろう異変に。そして彼が図書館を去った後、彼女は小悪魔と数名の妖精メイドに
「───ちょうだい」
「......ええ、わかりました。もちろんそれが終われば......わかりますよね?」
「もちろん。ここで動かなきゃそっちの方が嫌よ」
暗く冷たい図書館で、魔法使いと悪魔との最後の契約がなされた。
─正門
「やっぱりそうか......」
「どうかしたんですか?」
続いて正門に行き、美鈴にも話をしたが、やはり1週間しか経っていないという。
となると、やはり自分の中の何週間というのは明らかにおかしいことになる。
......もしかすると、今まで過ごした数ヶ月というのも1ヵ月しか経っていないのかもしれない。
「大丈夫ですか?天澄さん」
「あ、ああ......問題ない。それじゃあまた今度」スタスタ......
「何かあったのかな?」
「美鈴さん......実は......」ゴニョゴニョ
「え......そんなことが......わかりました。それにしても起こらなければいいんですけどね......」
彼が去った後、門番の仕事を再開した美鈴のところへ妖精メイドがやって来てパチュリーの旨を伝えた。
美鈴は納得したものの、複雑な気分だった。
幻想郷に来てあまり経っていないが、館に住み始めたのは数十年前。住民たちの中ではなんだかんだ3番目に長く住んでいるのだ。
もしパチュリーの危惧する異変が起これば、愛着のあるこことも別れなければならない。
そんなことを思い、彼女は少し寂しそうな顔を浮かべた。
─自室
今日の仕事も済み、部屋へ帰ると月明かりが差し込んでいた。
明日には満月になるであろう月はこちらを見ているかのようだった。
いつもならここで風情を感じるが、今日はそんな気にもなれずにいた。
それどころか何か妙な感じがする。自分の見えない所で何かが動いているような......
「......あれ?」ポトリ
そんなことを思っていると突然涙が一粒溢れた。
悲しいとか寂しいとかじゃなく、何故か涙が溢れる。
とうとう情報量が限界を迎えベッドへ身を預ける。
そして何も考えることなく、そのまま眠りについた。
─博麗神社
「霊夢さん、風邪ひいちゃいますよ?」
「いや、何か変な予感がするの」
博麗神社では霊夢が何かを感じているようだった。そして深呼吸した後、改めてある方向を見る。
「明日何かが起こりそうね。準備しておかないと」
霊夢が見たのは紅魔館がある方向だった。
彼女の目は真剣であった。