東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
人物紹介
東風谷早苗(こちや さなえ)
ヒロインの一人。
天澄仁太郎とは同い年で再従姉妹の関係。
守矢神社の風祝をしている。
─翌朝
「よく寝た......って、なんで布団の中にいるんだ?」
「いいじゃないですか〜......」
「......放っておこうか」
目が覚めると早苗が隣にいた。
早苗が起きたらこのままもう一眠りと誘ってくるに違いないので、布団から出ることにする。
夏の朝は明るく、気の早いセミはもう鳴き始めている。
そんなこんなでいると、台所から良い匂いがしてきた。
丁度、朝食ができたらしい。
「やっぱりここの味噌汁は良い匂いだなぁ......」
台所から漂う味噌汁の匂いに連れられ、足を進める。
ここに来ると、毎日出る味噌汁は楽しみの一つだ。
ワカメと豆腐、ネギといった三つの具材と自家製の味噌。
シンプルな構成だがそれが良い。“シンプルは洗練の極み”とも言うだろう。
「おはようございます。おじさん、おばさん」
「おはよう仁太郎君」
「おはよう仁太郎君、早苗ちゃんは?」
「早苗はまだ寝てるみたいです」
朝の挨拶を済ませた後、朝食を取り始める。
口に出さずとも、ご飯は絶品で朝から本当に幸せだと感じだ。
こんな日々がずっと続けば良いのにな......
─守谷神社
朝食を済ませた後は、境内の掃き掃除だ。
参拝客がいなくとも、神社の掃除は大切なことだ。
なのでここに来た時には毎日している。
自分で言うのもなんだが、掃除が得意で、隅から隅まで綺麗にするので神主であるおじさんにも気に入られている。
「ふ〜ん、ふ〜ん、ふっふっふ〜ん♪」
何処かの弾幕STGで聴いたような鼻唄を歌いながら、掃除を続ける。
動かす手は素早く、ゴミを残さず取る。
至って普通だが、徳を積むようでいい気分だ。
そして掃除が終わる頃になり、ようやくおじさんが来た。普段ならもう少し早く来るのだが、おそらく早苗が原因だろう。
早苗は普段真面目だが、俺が来ると気が抜けるのかなかなか起きなくなる。
「お待たせ、仁太郎君。早苗を起こすのが大変でねぇ〜......あれ?もう掃除は終わったのかい?すまないね」
「いえいえ、お気になさらず。それじゃあ家に戻ります」
掃除も済んだので家に帰る。
掃除を手伝うことは出来るが、神職は出来ないので戻る以外ない。
まあ留守番になるから問題という程でもないが。
─東風谷家 和室
「......暇だな」
それにしても退屈だな。
そうというのも東風谷一家は日中神社の仕事をしていて、あまり家にいないのだ。
風情を楽しむのも良いが、それは毎日のことなので置いておく。
それ以外で楽しむとすれば、パソコンをいじるか寝るかだ。
外で遊ぶのもありだが、遊ぶ相手が早苗しかいない。
しかし早苗も休憩時間以外は基本神社の仕事をしている。では何をしようか......。
「......東西Presentsでもするか」
持ってきたノートパソコンを起動し、好きな弾幕STGをする。
東西Presentsは日本で人気のゲームだ。
たくさんのキャラクターたちが登場し、どのキャラも魅力的でネット界隈では一大勢力を築いている。
「それじゃあ雷神録を......っと、自機はサニー・コーチャにしようか」
彼がゲームをしている一方、早苗はとある人物たちと話をしているのであった。
─守谷神社 社務所
「それで、覚悟は決まったか?」
「い、いえ......私、どうしても仁くんと離れたくないんです......もちろん神事も大切ですが、せめてあの人と縁結びするまでは......」
「早苗、気持ちはわかるがそろそろ行かなければならない......"幻想郷"に」
早苗は今、幻想入りについて
その理由は、現代の日本では信仰がほとんど得られないため、長くはいられないからだ。
彼と縁結びするまで待っていては、祭神である二柱の神様が消滅してしまう。
信仰が昔と比べて半分以下になってしまった今では、どこへ行っても信仰を得るのは難しいだろう。
早苗もまた神職により、二柱から離れる訳にはいかないのである。
「早苗もわかっているだろう?私だってお前の力になりたいが、どうすることもできない......本当にすまない......」
体が少し薄くなっている彼女は、威厳ある姿と違いどこか弱々しく見える。
手を握りしめ、歯を食いしばっている。
早苗に対してどうすることもできない歯痒さが見て取れる。
それを見て早苗も、つい悲しい気分になってしまった。
「早苗、このことは仁太郎には秘密だよ。」
そう言って次に出てきたのは
幼い姿をしているが、これでも立派な神様で、祟り神であるミシャグジ様を束ねている。
そんな彼女も早苗のことを心配していた。
この話の件について、早苗の両親は知っているが、彼はこのことを知らない。そんな諏訪子は、彼が悲しまないように早苗の家族には黙っていてもらうことにしたのだ。
縁結びをして欲しいというのも、悲しさを誤魔化そうとしていたのだが、やはり無理なようである。
早苗の好意は本物だが、それすら叶わぬのはいかがなものだろう。
「......早苗、決心できたら教えるんだよ。あと二日で幻想郷に入るからね、それじゃあ」
「早苗......すまない」
そう言うと二柱の祭神は姿を消した。
そこに残ったのは早苗一人だ。
彼の前では、明るく積極的にしていたが、それも終わりの時が近づいていた......
「............」
早苗は小さな涙を一粒こぼし、決心するのであった。
─守矢神社 本殿
「やっぱり仁太郎に幻想郷のことを言うべきかな......」
本殿の中では諏訪子が考え事をしていた。
彼に幻想郷の存在を教えるかどうかというものだ。
しかし教えたとしても、彼は神職をしているわけでもなく、向かう理由が無いのだ。
早苗の両親が上手く取り繕ってくれれば問題無いが、自分たちの存在を知らない彼がいきなり納得するだろうか?
「......そもそも神太郎って、私たちのこと見えるかな?」
その後も考えた彼女だったが、名案は浮かばず、ただ時だけが流れていった。
人物紹介
東風谷真早(こちや みさき)
早苗の母。
仁太郎の母とは従姉妹の関係。
気立てが良く、優しい女性。
東風谷苗彦(こちや みつひこ)
早苗の父。
東風谷真早とは大学で知り合い今に至る。
とても穏やかな性格。