東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─紅魔館 自室
「んん......」
今日もいつものように朝が来た。
木漏れ日の中、眠い目を擦り立ち上がる。
もう何ヶ月?も住んでいるのに、何故か懐かしく感じ一息つく。
そしていつものように着替えて、いつものように食堂へ行く。
ここだけはずっと変わらない。
そんな光景に思わず微笑む。
ここ最近は大変だったので、こんな些細なことでも嬉しいのだ。
「おっと、もう着いたのか」
自室から食堂に移動するまで5分ほどだが、今日はいつもより早くついた。
走っていたわけではないが、どうしてこんなに早く着いたんだろう。
無意識に早歩きでもしていたのか?
まあ、そんなことどうでもいいか。
いつもなら気にすることも、今日に限ってはそんな気にならなかった。
そして食堂の扉を開く。
「「おはようございます」」
「おはようございます」
妖精メイドたちにも挨拶を済ませ、台車を取りに行く。
既に咲夜が待っているので挨拶をする。
「おはようございます、天澄さん」ニコッ
「え?お、おはようございます......」
いつもの澄まし顔でなく、にこやかな顔で挨拶をする咲夜に戸惑いつつも手を動かす。
何か良いことでもあったのだろうか?というより咲夜の笑顔なんて初めて見た気がする。
珍しいものを見れたな。
「どうかしましたか?天澄さん」
「いや、ちょっと眠くて......そんなことより運びましょう」
いかんいかん、少しボーッとしてしまった。
さて、早く運ばないと。
「ええ、お嬢様の朝食が冷めてしまってはいけませんからね」フフッ
「......?そうですね」
やっぱり......いつもと違うな。
本当にどうしたんだろう?
─玉座の間
「おはよう咲夜、仁太郎」フフッ
「「おはようございます、お嬢様」」
まず挨拶を済ませ、朝食を用意する。
....よく見ると今日のメニューはここで初めて働いたときと同じものだ。
我ながらよく覚えていたと思い、懐かしい気分になった。
しかしそんな気分を飛ばす一言が。
「それじゃあ二人とも、おはようのキスをお願い」
「承知しました、お嬢様」
「は?」
突然の一言に驚く。
普段の彼女がこんなことを言うはずもなく、頭の中は混乱状態だ。
呆気に取られていると、咲夜はかがんで彼女の手の甲にキスをした。
整理が追いつかず、その場に立ちすくんでいるとレミリアに再度呼ばれる。
「ほら、貴方も早くしてちょうだい」
「は、はい......それじゃあ」チュ......
「よくできたわ。さあ、朝食を準備してちょうだい」
何か夢でも見ているのか?朝起きたときはいつもと変わりなかったのに、咲夜を皮切りにこんなことまで......
いつもと違う様子に、彼は苦労するのであった。
─博麗神社
「あーもう......どうしたらいいのよ!?」
「落ち着けって、まだ異変が起こったわけじゃないだろ?」
「それはそうだけど......もし起こったら......」
その頃、博麗神社では異変解決の人員が集まる予定だったのだが、どこも忙しく結局霊夢と魔理沙しか出れないようだった。
霊夢は昨夜、本格的に異変が起こりそうだと予測し、準備をしてきた。
後は異変が起こればいつでも行ける状態だったが、彼女自身、当然異変の予測が間違いであるように願っていた。
それもそのはず、異変の予測場所は紅魔館なのだ。
これまで紅魔館の連中は二度も異変を起こした。
しかし三度目となると、さすがに幻想郷にとって悪影響がある存在として、最悪の場合......
だがこれまで幻想郷にはそういったことがなく、霊夢にはどうしても気が重かった。
「......ちょっと頭を冷やしてくるわ」
「お、おう......」
─人間の里 稗田家 阿求の部屋
「1週間前から事件がパタリと止んでいるわね......何か意味があるのかしら?」
「う〜ん、どうなんだろう?何かのメッセージかなぁ?」
阿求の屋敷では阿求と小鈴が事件のことを調べていた。
というのも、彼女がもしまた彼に会ったら情報を提供したいと阿求に頼んだからだ。
阿求も最初はあまり乗り気ではなかったが、霊夢にも情報を提供しなければならないので調べることにした。
今わかっていることは事件の数、事件が起こった時間帯など基本的なものだった。
なかなか進まないので、小鈴は自分の店から持ってきた本を読んで手がかりを探し始めた。
「どう?何か見つかった?」
「ちょっと待って......ふむふむ......うん?」
「どうかしら?」
「これ見て、この事件に似てない?」
「どれどれ......確かに似てるわね。もしそうだとすると......」
二人は何かヒントを見つけたようだ。
それが吉と出るか凶と出るか、まだわからない。
─紅魔館 大図書館
「皆さん、いますね?」
『『『はあい、います』』』
「準備は出来ているようね......小悪魔」
「はい、それでは妖精メイドさんたち......何か起きたら徹底抗戦をお願いしますね」
『了解しました。それでは......』
大図書館では美鈴、パチュリー、小悪魔を中心にある組織が作られていた。
結界が張られているので外部に声は聞こえないが、全員警戒していた。
その後、最終確認が済んだところで解散となった。
皆が持ち場に戻ったところでパチュリーは一人呟く。
「レミィ、咲夜、天澄さん......何もないことを祈るわ」
そう呟いた後、パチュリーは図書館の奥からある魔導書を持ち出した。
それを見た小悪魔はニヤリと微笑む。
「それを使ったらパチュリー様の身では持ちませんよ?まあ、使わなくてもどのみち契約の結果になるんですけどね」
「ふふ......面白いことを言うわね。一か八かのチャンスなら、私はかける方よ?」スゥ......
パチュリーは小悪魔に微笑むと、魔導書を開き呪文を唱え始めた。
ガタガタガタガタ......
すると図書館は大きな音と共に唸り始めた。
本棚は揺れて倒れ、紙が宙を舞い、やがて図書館は荒らされているかのようになった。
─???
「それで、私に協力を求めるとわね」
「───」
「なるほど、この少年に......いつか会ったら......うふふ」
廃墟のような建物が無数に広がる世界。
そこではある人物が仁太郎への協力を呼びかけていた。
協力を求められた人物はある条件のもと、彼への協力を容認した。
そしてその人物は早速何かをし始めた。
─紅魔館 玉座の間
コンコン
「天澄です。失礼します」
今日の仕事も終わり、報告のため玉座の間に入る。
朝の出来事を除けば、もう何度も見た光景だ。
奥の玉座にはレミリアが座り、隣には咲夜が立っている。
さて、報告しないと。
「すみません、今日の仕事終わりました」
「............」
あれ、聞こえなかったのか?
「あの、今日の仕事終わりました......」
「............」ニヤリ
もう一度報告するとレミリアは無言のまま笑みを浮かべた。
しかしその笑みにはどこか違和感があった。
そこにいるのはレミリアなのだが、何故か別人な気がする。
そうだ、咲夜の方は?
「咲夜さん、仕事終わったんですけど......」
「............」ニヤリ
咲夜の方にも報告をしたのだが、彼女もまたレミリアと同じように微笑む。
そんな彼女たちに不安を覚える。
今朝のことといい、やはり何かおかしい。
いよいよ我慢が表に出たのか、固唾を飲み後ずさりする。
そして彼女たちに聞いてみた。
「あの、二人とも......どうかしたんですか?」
この言葉を聞き、二人はいっそう笑みを深めた。
レミリアは頬杖をついたままだったが咲夜が反応し、こう答えた。
「ええ、どうかしたわ」
「......何?」
どうかしたと言う彼女の言葉に疑問を浮かべていると、再び彼女が喋り出した。
「まだ気付かないのか?私たちは、貴方の知る人じゃないの......」
「え、それってどういう......」
それに続き、レミリアも喋り始めた。
しかし、それは耳を疑うような内容だった。
「まったく愚かな吸血鬼ですわ。人間を愛するだなんて......忘れたのかしら?」
レミリアの口から出た言葉は、自分を否定するような内容だった。
しかし混乱しているのも束の間。
再び聞こうとした直後......
バァン!!
「天澄さん、逃げてください!」ガシッ
シュウゥゥゥ......
「うわぁっ!?」
「......ちっ、邪魔が入ったか」
突然ドアが突き破られ、妖精メイド数人が玉座の間に入ってきた。
そして煙幕を張ると、彼を掴むなり部屋の外へと放り出した。
部屋の外で待っていた妖精メイドたちに話を聞く。
「何だ!?一体何があったんだ!?」
「詳しいことは後です!いいからこちらへ!」ガシッ
「ちょ、ちょっと......!」
─正門
「いいですか?貴方はこのまま人里の方へ向かってください。護衛がついてくので安心してください」
「待ってくれ!何があったんだ!?」
「いいから早く!」
「......!ああ、わかった......」
妖精メイドに連れられ館の外に来ると、人里に向かうように言われた。
事情を聞こうとしたが、緊迫している様子だったので詳しいことは聞かず、彼女の言う通り人里へ向かって走り出した。
その途中、ふと後ろを振り返ると......
「なんなんだ......あれは......」
館からは紅い煙......というより霧が溢れ出していた。
それはみるみる上へと昇り、空を紅く染めていた。
やがて霧は空を覆うと、紅魔館上空から地上に向かって降り始めてきた......
─博麗神社
「おい霊夢!あれって......」
「わかってる......やるしかないわね」
紅い霧は博麗神社でも確認された。
危惧していたことがとうとう起きてしまい、霊夢は不安そうな顔をした。
しかし朝と違い、頭を冷やした彼女は心を鬼にして決意したのであった。
そして改めて紅魔館のある方角へ顔を向けた。
「すぅ......はぁ......待ってなさい。幻想郷の......"敵"!」