東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
「......君は?」
突如現れた鯨の被り物をした少女。
迫ってくる住民たちから守ってくれたのは良いが、誰かわからないので聞いてみる。
すると彼女は手をかざし、あることをした。
「ああ、ちょっと待ってて」ポッ
「......うん?」ホワンホワン
─約半月前 紅魔館 玉座の間
「ねえ貴方、人里へ買い出しに行ってもらえる?」
「人里?」
「ああ、言ってなかったわね。この湖の先へ行くと人里があるの。そこで買い出しをしてきて欲しいのだけど......今日は咲夜と妖精メイドは他の仕事があるから貴方に頼みたいの」ピラッ
いつものように仕事をしていると、レミリアにお使いを頼まれた。
目的地は人里という場所で、その名の通りほとんど人間が住んでいるんだとか。
ほとんどということは人外もいるようだ。
少し気になるが行かなければ。
「なるほど......わかりました。行ってきます。」
「ええ、行ってらっしゃい」
─人間の里
「ええと、この店だな」
「いらっしゃい......」
「すみません、これください。─ありがとうございました」スタスタ......
「......行ったか?」
「ええ、あの館の人みたいでしたよ......」
「あの館のやつか......気にくわねぇ......」
─小道
「......あれ?迷ったかなぁ......げ、地図が無い」
初めて来た人里。
買い物をしたまではいいが、地図を落としてしまったらしく、小道に迷ってしまった。
日当たりも悪く、あまり長居はしたくないので出口を探すがなかなか見つからない。
元いた世界でも方向音痴だったが、この世界でも迷子になってしまうなんて本当についてない。
そう思っていると、近くの路地で誰かがうずくまっていた。
「......あれは?」
「いたた......
路地にうずくまっている少女。腕に怪我をしているようで休んでいたのだろう。
幸い手元に絆創膏を持っていたので、彼女の元へと立ち寄る。
「君、大丈夫?」
「貴方は......?」
「俺は天澄仁太郎。ところで君、怪我をしてるね。ほら、腕出して」
「は、はい......」(なんか恥ずかしいなぁ......)
幸い水筒の水を飲んでいなかったので、傷口を洗い流す。
少し痛そうにしていたが、直に慣れたようなので絆創膏を貼る。
「これで......よし。何日かしたらこれを剥がしてくれ」
「あ......ありがとうございます。あの......よかったらこれ」スッ
「お、ありがとう。饅頭は好きなんだ」
彼女はお礼をすると饅頭を差し出してきた。
この饅頭は彼女の手作りらしく、試作品の余りだという。
それはさておき、帰り道を聞かなければ。
「ところで、ここから通りに出たいんだけど......」
「ああ、それなら......」
─紅魔館への帰り道
「お腹空いたな......そうだ、貰った饅頭でも食べるか」パクッ
「酒饅頭か、美味しいな......あれ?なんで饅頭食べてるんだろ?」
─ 一方その頃
コソコソ「あ、普通の饅頭と間違えちゃった......あーあ、忘れちゃったか......今度会ったらもっとちゃんとしたお礼しないと♪」
─現在 人間の里
「どう?思い出してくれた?」
「あ、あの時の!」
そうだ、あの時怪我をしていた少女だ。
となると、この場には俺が助けた数少ない二人がいるってことか。
......それにしても助かった。
二人がいなければこの状況を穏便に済ますことはできなかっただろう。
そういえば二人の名前を知らなかったな。早急に紹介を済ませよう。
「えっと二人とも、助けてくれてありがとう。俺は天澄仁太郎」
「改めて、
「あっ、本居小鈴っていいます。よろしくお願いします......!」(天澄さんかぁ......)
「こんな状況だけど、こちらこそよろしく......」
「本居さん、案内お願いします!」
「あ、ごめんなさい!皆さん、付いてきてください!」
少し話が逸れたが、美鈴の呼びかけでその場を移動した。
小鈴によると向かう場所は彼女の友人の家らしい。
そこに向かって何をするのかは知らないが、付いていく他ないだろう。
しばらく移動すると、大きな屋敷が見えてきた。
ここが彼女の友人の家のようだ。
「本居さん、それとこの方は?」
「この人は私の知り合いです。安心してください」
「わかりました。それでは皆様、こちらへ」
使用人の案内により屋敷へ入ると奥の座敷に連れられた。
そこには紫色の髪をした少女がいた。
小鈴が事情を説明すると紫髪の少女は頷き、紹介を始めるのだった。
「初めまして、稗田阿求といいます。この前は友人の小鈴を助けてくださりありがとうございました」
「いやいや、さっき俺も助けてもらったし......俺は天澄仁太郎っていいます」
挨拶を済ますと、緊迫する中、彼女は事件に関することを話し始めた。
─里のはずれ
「ウゥゥゥ......」
「やめろ、やめ......うわぁぁぁ!?」ザシュッ......
「何の騒ぎ!?......え?きゃあぁぁぁ!?」ザクッ
里のはずれでは、集落で妖怪化した集落の人々が里の住民たちを襲っていた。
妖怪が人間を襲って食べるのはこの世界の理だが、この場においてはそうでなかった。
妖怪たちは住民たちを殺しているが、一切食べていないのだ。
むしろ殺すのを楽しんでいるかのようで、辺りには少しずつ血の海が広がっていた。
─上空
「まずいわね......予想以上に早い。早く結界をはらないと......ってあれは......」
その頃、上空では霊夢が人里の様子を見ていた。
集落の人々は妖怪化したためか移動するのが速く、里のはずれは蹂躙されつつあった。
しかし里の入口までは到達していないようだ。
紅い霧も迫っているが、今なら結界を張る時間がある。
そして霊夢は里の入口へ急ごうとしたのだが、何を見たのか里のはずれへと向かった。
─永遠亭
「難しい話だわ......」
一方、魔理沙は人々を元に戻す薬を作ってもらおうと永遠亭に来ていた。
しかし、そこの医者は簡単には薬を作れないという。
それもそのはず、紅い霧のサンプルも無く、人間が採取するのは非常に危険だからだ。
採取できる人がいればいいのだが、そう簡単に見つかることはない。
永遠亭の医者も忙しい中、魔理沙の対応にあたっているのだ。そして時が流れていった。
「そんな......どうにか出来ないのか!?」バンッ
「......尽力はしてみるわ」
両者の間には沈黙が流れていたが、魔理沙の強い訴えかけに応じたのか、医者は薬を作ることにした。
と言っても、サンプルの無い状態......作るのは非常に困難でどんな効果があるのかもわからない。
下手をすれば本末転倒な結果になるかもしれないと医者は伝え、作業を始めた。
「悪いことにならなきゃいいんだけどな......」
二人がそれぞれ行動している間、阿求の部屋では事件のことが話され、各自が行動を開始した。
美鈴は入口の見張り、美宵と妖精メイドたちは住民たちの誘導、小鈴と阿求は事件の調査、そして仁太郎は急に豹変した二人、レミリアと咲夜についての情報を話すのであった。
人物紹介
奥野田美宵(おくのだ みよい)
里にある酒屋の看板娘。
怪我をしていたところを仁太郎に手当てされた。
いつか恩返しをしたいと考えている。