東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─里のはずれ
「グゥゥゥ......」ビキビキ
里のはずれでは、霊夢に倒された妖怪のうち数体が
他の妖怪たちは里に駆り出たらしく、周りにはいない。
そんな中、ある一体の体が脈を打ち始め、だんだんと変化していく。
「......ッガァァァ!!」バリバリッ!!
突然叫んだかと思うと、その一体の体はより禍々しいものとなった。
牙や爪は鋭く、顔と耳は長く、そして身体中から体毛が生え両足の形も変わった。
そして極め付けに、長い尻尾が生えていた。
その姿は狼男と呼んで差し支えなかった。
自身の身体が変化したことに気づいた妖怪は、里の中心へと向かう。
その表情は血に飢えているようで、ただただ恐ろしいものであった。
─人間の里 大通り
「みなさーん、こちらに続いてくださーい」
里のはずれで起きていることも知らず、美宵と妖精メイドは里の人々を誘導していた。
誘導が順調に進んでいる途中、美宵と妖精メイドは遠くの方に紅い霧が充満しているのを発見した。
早くここから逃げなくてはならないので、急いで人々を誘導する。
その中には、親とはぐれたと思われる兄妹もいた。
「うぅ......怖いよぉ......」
「おい泣くな......俺だって怖いよ......」
兄が妹を落ち着かせようとするが上手くいかない。
兄は泣いてこそいないが、内心は妹と同じでこの状況を怖がっている。
突然異変が起こり、親とはぐれた上に、よくわからないが周りについて行くことしかできないのだ。
そんな兄妹を見て、美宵はすぐに駆け寄った。
「君たち、大丈夫?」
「お姉ちゃんは?」
「私は奥野田美宵。ほら、二人とも、饅頭をどうぞ」
前の彼を真似て心配をするが、なんだかぎこちなくなってしまい、とりあえず饅頭を二人にあげる。
そんな光景に、誘導しつつも妖精メイドたちは微笑んだ。
と言うことはさておき、このまま二人を誘導するのも心配なため、美宵は二人を側に置いた。
両親もきっと探しているはずだ。じきに会えるだろう。
「う〜ん......そうだ、お姉ちゃんとお話ししない?」
「お話し?」
「ええ、この前こういうことが......」
そんな彼女らは、影が迫って来ていることに気が付かない。
「サア......狩リノ時間ダ......ッ!!」
─永遠亭
「......出来たわ」
「本当か!?」ガタッ
医者が薬を作り始めてしばらく経ち、ようやく完成に至った。
しかし先程言ったように効果は不明。
医者いわく細胞の配列を云々かんぬん......と、言っていたが魔理沙は理解できなかったようだ。ともかく使ってみなければわからない。
「サンプルもない上に試作品......効果がなければ無理だと思いなさい。くれぐれも気をつけて......」
「ああ、行ってくるぜ」
魔理沙が飛び去った後、医者は腕を組みながら空を見上げる。
そして薬の効果が出ることをただ祈るのであった。
─阿求の屋敷
「......といった感じだ」
「ええ、わかったわ。吸血鬼の方はわからないけど、あのメイドは......となると......」
阿求の屋敷では、仁太郎が阿求と小鈴に豹変した二人のことを話し、ようやく結論が出ようとしていた。
彼女らが集めた証拠によると、犯人は
そしてその女性とは
「それってもしかすると......いや、そんなまさか......」
「どうかしら?」
女性、殺害方法、外の世界の事件。
たった三つの小さな手がかりだが、とある事件が浮上した。
そして阿求は悩んだ末に話そうとしたところ......
ガラガラッ!!
「皆さん、大変です!」
先程まで誘導をしていた妖精メイドの一人が飛び込んできた。
急いできたのか息を切らして精一杯のようだ。
話の途中だったが、こちらも慌てて何事かと尋ねる。
「ど、どうしたんだ?」
「里の人たちを誘導していたら妖怪が襲ってきたんです!もう一人と美宵さんが応戦していますがこのままだと......それに小さい子供も......」
「............っ!」ダッ
「ちょっと、多澄さん!」
阿求の制止を振り切り、彼は美宵たちが誘導している場所へ走り出した。
─大通り
ザワザワ
「ぐはっ......」
「うわぁぁぁ!!」
「なんてことを......」
彼が向かっている途中、通りでは妖怪による殺戮が行われ始めた。
妖精メイドと美宵が抵抗するも地に伏せられ、逃げ遅れた里の人々は一人ずつ犠牲になっている。
先程の兄妹はなんとか庇えているが、殺されるのも時間の問題だろう。
「......ひっく......お姉ちゃん......」
「ごめんね......私が力不足だから......」
「フンッ......!」ザシュッ......
「きゃあっ......あ......が......」
目の前の人々は皆殺され、血が広がっている。
最後のターゲットはこの場に残った妖精メイドと美宵、そしてこの兄妹だ。
妖怪はまず妖精メイドの方に近づいた。
「や、やめ......」
「死ネエッ!!」ズシュッ......
「あ......れ?」ドサッ
「............」ブルブル
妖精メイドが妖怪の攻撃を喰らう。
すると彼女の視界がずれそのまま倒れた。
「見ちゃダメ......うぷ......」
とっさに兄妹の顔を隠した美宵だが、その光景を見てしまった彼女は吐き気を覚える。
真っ二つにされた妖精メイドと目があってしまったのだ。
そしてとうとう妖怪は三人に近づいてきた。
「いや......来ないで......」
「やめろ......妹には手を出すな......」
「貴様ラデ終ワリダ......!!」
「「「........っ!」」」
三人が息を呑んだ瞬間だった。
「だあぁぁぁぁ!!」
ザクッ......
「うぐっ!?」
「ナ、ナンダ貴様ァ......」
「お、多澄さん!?」
目の前に現れたのは仁太郎だった。
妖怪の攻撃を受けてしまい、腕に傷を負ってしまったが、そのことよりも周囲を確認し始めた。
だがそれは同時にショックを与えるものでもあった。
「大丈夫か?お前たち......」
「私たちは大丈夫ですけど......みんなが......」
「なっ......」
周囲を見渡すと死体がたくさん転がっていた。
まるであのとき地下で見た光景のようだ。
さらに妖精メイドも酷い殺され方をしていた。
この前まで紅魔館で共に過ごしてきた同僚の死に、彼は心を痛めてしまう。
だがここで動かなければこの三人を見殺しにしてしまう。
そう思った彼は手を広げて三人の前に立つ。
妖怪は再び近づいてくる。
「今度コソ終ワリダ......貴様モ殺シテヤル!!」ザッザッザッ......
「美宵、子供たちを連れて逃げろ。俺が囮になる」
「でも、それじゃあ貴方が......」
「俺なら大丈夫だから、ほらっ......」
本当は怖い。
今すぐここから逃げ出したい。
でも女子供を置いて逃げることなんてできない。
それに小鈴のときと状況が似ている。
あのときも自分の方から割り込んだ。
逃げるという選択肢などないのだ。
「グルラァッ!!」ダッ......
「天澄さん......」
「すぅ......はぁ......」
そしてとうとう、妖怪の魔の手が彼に伸びた。
ブンッ‼︎
「きゃあっ!?......あれ?」
「ぐっ......?」
「ナンダトォ......?」
またも不思議なことに、妖怪の鋭い爪は身体を貫かなかった。
それどころか、前よりも力が漲ってきたようだ。
すると、脳内に直接語りかけるようにあの声が聞こえてきた。
『遅れてすまなかった。この力があれば、その妖怪と戦えるはずだ』
「あ、お前......」
『詳しい話はまたいつかだ......』
遮られてしまったがまあいい。
ともかくこの三人を守らないと。
「ドウイウ訳カハ知ラナイガ、コッチカラ行カセテモラウゾォ!!」ダッ
「............!」スッ
妖怪が走り出し、彼は咄嗟に構える。
あのときのように体が勝手に動くように感じる。
そして妖怪が拳を突き出すと同時に、こちらも拳を突き出して戦闘が始まった。