東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISPDE25:醜悪な影

 

「喰ラエェェェ!!」ドッ

 

「............!」ドッ

 

「きゃっ......」

 

拳がぶつかりあうと小さな衝撃波が発生した。

どうやら想像以上に威力があるようだ。

両者睨みあった後、一旦距離を置き再びぶつかりあう。

 

「グルラァァァ!」

 

「はぁぁぁ......!」ドゴッ

 

「グッ......コノガキガァ......」

 

妖怪が薙ぎ払ってくるが咄嗟に躱し、脇腹に正拳突きを打ち込む。

他の部位にくらべ、あまり剛毛に覆われていない胴体に攻撃が通りやすいようだ。

それに妖怪の身長が高いこともあり、胴体を狙いやすい。

戦闘が始まって早々、有利な状況に息を整える。

 

「クソガァッ!」

 

「俺が言うのもなんだが......動きが単純なんだ......よぉ!」ドッ

 

「グフッ......」

 

妖怪は不利な状況にいら立ちを抑えられず、動きが単純となっている。

すかさず躱し次々と拳を放っていく。

美宵たちが気になり、攻撃の合間に後ろを見たが無事にここから離れているようで安心した。

確認は出来たとして、今は目の前に集中しなくては。

 

「何故......俺ガ......押サレテ......イル!?」

 

「そうやっていちいち喋ってるからじゃねえか!?」ガッ

 

「グルルルル......」ギリギリィ......

 

「......ちっ」

 

......確かに有利ではあるが、なかなかしぶとい。

もうすでに何十発も拳を打ち込み相手も疲弊しているのだが、向こうも攻撃を止める気配がない。

そうこうしてるうちに当然こちらも疲労が溜まっていく。

そして心なしか自分の力が減ってきている気もする。

いくら美宵と兄妹が離れたからといって、この妖怪を野放しにしておく訳にはいかない。

彼女らだけでなく他の人たちもいるのだ。

そろそろケリをつけよう。

 

「来いよ、犬野郎......」スッ

 

「テメェ......ブッ殺シテヤルゥゥゥ!!」ダッ

 

走ってくる妖怪に対し構えをとる。

呼吸や瞬きをする度に距離が縮まる。

相手の一挙一動を意識してこちらも走り出す。

一歩ずつ、そして確実に近づいていく。

 

「はぁぁぁ......」

 

「死ネェェェェェェ!!!」グワァァァ

 

「......!」(今だっ......!)

 

ぶつかりあう直前、妖怪が大きく腕を振りかぶる。

この瞬間(スキ)を逃すわけにはいかない......!

 

「......」サッ

 

「何ィ!?」

 

「おらぁぁぁ!!」ドゴォォォ‼︎

 

「ゴフッ......!!?」

 

相手の懐に潜り込み、下から拳を顎に向けて突き上げる。

見事なアッパーがきまり、妖怪はようやく地に伏せた。

 

「はぁ......はぁ......やったのか?」

 

倒れた妖怪を見たが動くといった様子はなく、大の字のままだ。

ホッと一息を吐き、妖怪に背を向け美宵たちが向かった場所へと歩き出す。

突然出て行ってしまい、阿求や小鈴にも迷惑をかけたことだろう。

早く戻らないと......

 

「うっ......何だ......急に疲れが......」

 

戦闘が終わると力は勝手に消えるようだ。

どういう風に戦っていたかもよく思い出せない。

ゆっくり歩いてるその時だった。

遠くの方で美宵が何か身振り手振りで伝えているのが見えた。

 

「......ろ!!」

 

「......え?」クルッ

 

すかさず後ろを振り向くと......

 

 

 

「グルラアァァァァァァ!!!」ガブリュウゥゥゥ!!

 

倒したはずの妖怪が襲いかかってきたのだ。

あまりに突然なことに防御しようとしたが、腕に噛みつかれてしまう。

そしてそのまま押し倒されてしまう。

 

「グルルルル......フゥゥゥゥゥゥ!!」

 

「ぎっ!?あ......ああああああ!!?」

 

感じたことのない痛みに悶絶する。

あの時に噛みついてきた妖怪よりずっと痛い。

このままでは腕を噛み砕かれてしまう。

くそぉ......油断していた......こんなところで......

 

 

 

「......たぁぁぁっ!」ドドドッ

 

「うぐっ......!?」

 

「グギャアアアアアア!!?」バラッ....

 

今度は何だと思い目をつむる。

そして目を開けると妖怪はバラバラになっていて、そこには美鈴が立っていた。

 

「美......鈴......?」

 

「............」スタスタ......

 

名前を呼ぶと美鈴は向きを変えこちらへ歩いてくる。

うつむいていて表情は見えないが、余計な心配をかけてしまっただろうか。

謝らないと......

 

「ご......めん......」

 

「............」ピタッ

 

美鈴の動きが止まる。

ど、どうしよう......

 

ギュッ......

 

「......うん?」

 

「よかったぁ......

 

ただ優しく、美鈴は抱きしめてくれた。

それだけだったが、安心と嬉しさがこみ上げてきた。

 

そしてとうとう、彼は気を失った。

 

 

 

─阿求の屋敷

 

「ううん......」パチッ

 

「あ、天澄さん!」ユサユサ

 

「ちょっと小鈴、落ち着いて」

 

目を覚ますと阿求の屋敷に寝かされていた。

後で美鈴にお礼を言わないと。

......それよりも外が紅いままでどれくらい経ったのかもわからない。

里の人たちはあの場にはもういなかったよな......そういえば......

 

「美宵と子供は無事か!?」

 

「ええ、さっき美鈴が連れてきたわ」

 

「その後、彼女は避難してる人たちの護衛に行ったわ」

 

美宵と兄妹の無事を聞き、ひとまず安心する。

しかしそれも束の間。

里の端ではまた新たな脅威が生まれていた。

 

 

 

─里の端

 

「いぎゃあああ!?」バリバリバリ

 

「あがっ......たす......け......」バキッボリッ

 

「ギギギギ......」ギョロッ

 

里の端では逃げ遅れた人々に対し、新たな虐殺が行われていた。

生きたまま貪られ、すでに何人も犠牲になっていた。

骨が剥き出しになっている者や、腹を食い破られた者もいる。

それはまさに生き地獄だった。

......何を思ったのか、この一連の事件の犯人は里の中心へ向けて進み始めた。

 

 

 

─里の中心

 

「よし、大丈夫みたいね。......霧を除けばだけど」

 

内部の霧の対処をする霊夢。

霧の対処と並行して、逃げ遅れた住民がいないか確認したが、幸いすでに避難していたようだ。

それにしても霧は本当に厄介だ。

なんとか大量に流れ込むことは防いだが、それでも止まることなく広がっていく。

振り払っても時間が経てば元通りになってしまう。

それともう一つ、異変の元凶である紅魔館にも向かわねばならないのだ。

 

「はぁ......まったくもう......」

 

ガタッ

 

「............」ジッ

 

ため息を吐き、動き出そうとしたその時、背後で物音がした。

すぐに振り返り辺りを警戒する霊夢。

さすがは博麗の巫女といったところか、物音の原因はすでにわかっているようだ。

そしてお札を取り出し、路地に向けて飛ばす。

 

「......そこっ!」ヒュンッ

 

物音の原因に命中したようだが様子がおかしい。

今使ったお札は爆ぜるようになっているのだが、どうも爆ぜない。

まるで水にでも浸したような手応えだ。

疑問に思っていると物音の原因は姿を表した。

しかしそれは霊夢の気分を悪くさせるものだった。

「ギギギィ......」ギョロッ

 

「な、なんなのこいつ!?」

 

出てきたのは何とも醜悪な半魚人だった。

頭は魚そのもので体は人間。

おまけに全身緑がかっていて粘液に覆われていて生臭い。

先ほどのお札は半魚人の胸部に張り付いていた。

見たこともない妖怪に霊夢はお祓い棒を取り出そうとするが状況を見て止める。

ここは民家が密集していて隠れ場所が多い。

それにこの妖怪、七尺ばかりあるにも関わらず狭い隙間に隠れていた。

おそらく粘液により狭い場所などお手のものというわけだ。

そこで霊夢は隙を見て広い場所へ誘導することにした。

 

「さあ、来なさい!」シュッ

 

「ギギ......ギィ......」

 

その場から飛び出した霊夢を妖怪が追うことはなかった。

どこを向いているかわからない目で立っているだけだった。

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