東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

27 / 36
EPISODE27:束の間の戦い

 

─里の中心

 

「よし、やっと追いついた......」

 

「もう追いついたのか?速いなお前」

 

里の中心着くと、すでに魔理沙は妖怪の痕跡をたどっていた。

所々濡れた跡があり、それが目印になっている。

それにしても家が密集した場所に妖怪がいるなんて、どこから出てくるかもわからない。

そんなことを考えていると不意に声が聞こえた。

 

「きゃっ!」

 

「っ霊夢の声だ!私が追うからお前は外で待ち伏せしてくれ!」ダッ

 

「ああ、任せろ!」

 

魔理沙は霊夢の声が聞こえた方へと走り出した。

後は彼女を信じてここで待ち伏せしよう。

 

(里に来た時はあんなに警戒していたのに......とてもヘマをする人には見えなかったんだが......)

 

 

 

─現在

 

「ギギッ......」

 

「なるほど、こいつが......」

 

民家から出て来た妖怪と対峙するが、目がどこを向いているかわからない。

正直動きを予測するのは困難だろう。

魔理沙がいれば心強いが彼女は霊夢を保護してる。

時間稼ぎをするためにも無理はできない。

だが今戦えるのは自分だけだ。

 

「さぁ来い!」シュッ

 

「ギギッ!」ダッ

 

「......はっ!」

 

「ギィィィ......」ガキンッ

 

妖怪に槍を突こうとするが防がれてしまった。

よく見ると妖怪の腕が蟹の鋏に変わっている。

どうやらこの妖怪は自身の体を変化させることができるらしい。

こちらも槍で押しつけているが、押し返されてはひとたまりもない。

あの鋏を喰らえば、最悪体が真っ二つになる。

 

「くっ......」ガッガガガ......

 

「ギィ......!」

 

「ちっ......」

 

背中に周りこんで槍を数発叩き込むが、またしても蟹の甲羅で防がれてしまう。

素早さで勝っていてもそう簡単にはいかないようだ。

関節を狙いたいところだが、的が小さく狙いづらい。

当てられたとしてもあまり効果はないだろう。

いったいどうすれば......

 

「ギギィッ......」

 

「このぉ......」グググ......

 

「ギィッ!」ガキンッ

 

「......っ!」シュッ

 

槍を鋏で掴まれ、反対の鋏でそのまま挟まれそうになるが間一髪で躱す。

あの腕をどうにかしなければ近づくことさえ難しい。

魚の頭してるくせに上手いこと考えやがる。

 

「ギイイイ....」ガキツ

 

「くそっ....」ガキッ カチャカチャ

 

(いくら力が増しているとは言え向こうのほうがパワーは上か......これ以上接近戦をしても無駄に体力を消耗するだけ......ならば......)

 

「ほら、こっちに来い!」ダッ

 

「ギッ......ギィィィ......!!」ズズズ......

 

路地に向かって走り出すと、妖怪の方は動きが止まり変化を始めた。

幅が広くて重い蟹の体なら、俺を追いかけるには不相応......

狭い場所に誘き出せば、細くて柔らかい姿にならざるを得ない。

走り続けながら、途中で振り返る。

 

「ギギギギギギ............」ズズズ......

 

「なっ......冗談だろ......」

 

妖怪の変化に思わずゾッとする。

それもそのはず、変化したのは魚類でも最速のカジキだったのだ。

時速100km以上であの槍のような口に突かれれば命はない。

それにこの先は行き止まりであり、横につながる通路もない。

相手までの距離はおよそ数百メートルといったところか、どのみち走り出せばすぐに到達する。

一か八か、いや、必ず仕留めなくてはならない。

 

「............」ヒタヒタ......

 

「すぅ......はぁ......」

 

落ち着け......相手は一直線に向かってくる。

槍で突こうにしても的が小さすぎる。

体を突く前に奴の口が到達する......

行き止まり......壁......槍......的......それなら......

頼む、上手くいってくれ......

 

「............!」ズブッ‼︎

 

壁に槍を突き刺し、その前に立つ。

 

「............!!」ダッ

 

無言のまま、相手は突き進んでくる。

あっという間に距離が縮まり、妖怪と対峙する。

あとはギリギリまで引きつけて飛ぶだけだ......

 

「............」

 

100 ......70 ......40 ......一瞬の間だが、妖怪との距離がつかめる。

心臓の鼓動が激しくなるのを感じる。

 

やがて民家一軒分の距離に差し掛かった時だった。

 

「ふっ......!」ガッ

 

「ギ!!?」

 

槍の柄を踏み台にし妖怪の上を飛び越える。

妖怪が驚いた時には、すでに遅かったようだ。

 

ズブシュッ!!

 

「ガッ......ギギ......」ビクビク......

 

槍が妖怪の頭部を貫き、胴体と分かれさせていた。

まだ動いているが、白目を剥き血が溢れ続けている以上、再起は不可能だろう。

 

「はぁ......はぁ......ギイギイ気持ち悪いんだよ......」

 

妖怪が動かなくなったのを確認し、魔理沙の元へ向かうことにした。

 

 

 

─路地

 

「魔理沙......大丈夫か!?」

 

「ああ、問題ないぜ......ちょっと霊夢がな......」

 

魔理沙の元に着くと、彼女の隣には元気のない霊夢の姿があった。

聞いたところ、普段ならあり得ない失敗続きで落ち込んでしまったのだという。

しかし、この場に留まるわけにもいかず、二人で彼女に肩を貸して歩く。

 

「......悪いわね」

 

「霊夢らしくないな......な、仁太郎?」

 

「......そうなのか?」

 

謝る霊夢に対して、らしくないという魔理沙。

そんな彼女に霊夢は少し顔を背けるのであった。

 

 

 

─阿求の屋敷

 

「勝手に飛び出して......危機感というものがないのですか!?」

 

「すみません......ちょっと眠たくて......」

 

「......っもう!」

 

「阿求......美宵ちゃんも起きちゃうから......」

 

帰還した彼は阿求にこっぴどく叱られた後、疲労も重なり眠ってしまった。

霊夢と魔理沙もまた、仕事続きで休まざるを得ないようであった。

もう辺りも暗く、これ以上の行動は支障をきたす。

やがて屋敷の周りに結界の札を貼ると、阿求や小鈴も休息をとるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。