東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─里の中心
「よし、やっと追いついた......」
「もう追いついたのか?速いなお前」
里の中心着くと、すでに魔理沙は妖怪の痕跡をたどっていた。
所々濡れた跡があり、それが目印になっている。
それにしても家が密集した場所に妖怪がいるなんて、どこから出てくるかもわからない。
そんなことを考えていると不意に声が聞こえた。
「きゃっ!」
「っ霊夢の声だ!私が追うからお前は外で待ち伏せしてくれ!」ダッ
「ああ、任せろ!」
魔理沙は霊夢の声が聞こえた方へと走り出した。
後は彼女を信じてここで待ち伏せしよう。
(里に来た時はあんなに警戒していたのに......とてもヘマをする人には見えなかったんだが......)
─現在
「ギギッ......」
「なるほど、こいつが......」
民家から出て来た妖怪と対峙するが、目がどこを向いているかわからない。
正直動きを予測するのは困難だろう。
魔理沙がいれば心強いが彼女は霊夢を保護してる。
時間稼ぎをするためにも無理はできない。
だが今戦えるのは自分だけだ。
「さぁ来い!」シュッ
「ギギッ!」ダッ
「......はっ!」
「ギィィィ......」ガキンッ
妖怪に槍を突こうとするが防がれてしまった。
よく見ると妖怪の腕が蟹の鋏に変わっている。
どうやらこの妖怪は自身の体を変化させることができるらしい。
こちらも槍で押しつけているが、押し返されてはひとたまりもない。
あの鋏を喰らえば、最悪体が真っ二つになる。
「くっ......」ガッガガガ......
「ギィ......!」
「ちっ......」
背中に周りこんで槍を数発叩き込むが、またしても蟹の甲羅で防がれてしまう。
素早さで勝っていてもそう簡単にはいかないようだ。
関節を狙いたいところだが、的が小さく狙いづらい。
当てられたとしてもあまり効果はないだろう。
いったいどうすれば......
「ギギィッ......」
「このぉ......」グググ......
「ギィッ!」ガキンッ
「......っ!」シュッ
槍を鋏で掴まれ、反対の鋏でそのまま挟まれそうになるが間一髪で躱す。
あの腕をどうにかしなければ近づくことさえ難しい。
魚の頭してるくせに上手いこと考えやがる。
「ギイイイ....」ガキツ
「くそっ....」ガキッ カチャカチャ
(いくら力が増しているとは言え向こうのほうがパワーは上か......これ以上接近戦をしても無駄に体力を消耗するだけ......ならば......)
「ほら、こっちに来い!」ダッ
「ギッ......ギィィィ......!!」ズズズ......
路地に向かって走り出すと、妖怪の方は動きが止まり変化を始めた。
幅が広くて重い蟹の体なら、俺を追いかけるには不相応......
狭い場所に誘き出せば、細くて柔らかい姿にならざるを得ない。
走り続けながら、途中で振り返る。
「ギギギギギギ............」ズズズ......
「なっ......冗談だろ......」
妖怪の変化に思わずゾッとする。
それもそのはず、変化したのは魚類でも最速のカジキだったのだ。
時速100km以上であの槍のような口に突かれれば命はない。
それにこの先は行き止まりであり、横につながる通路もない。
相手までの距離はおよそ数百メートルといったところか、どのみち走り出せばすぐに到達する。
一か八か、いや、必ず仕留めなくてはならない。
「............」ヒタヒタ......
「すぅ......はぁ......」
落ち着け......相手は一直線に向かってくる。
槍で突こうにしても的が小さすぎる。
体を突く前に奴の口が到達する......
行き止まり......壁......槍......的......それなら......
頼む、上手くいってくれ......
「............!」ズブッ‼︎
壁に槍を突き刺し、その前に立つ。
「............!!」ダッ
無言のまま、相手は突き進んでくる。
あっという間に距離が縮まり、妖怪と対峙する。
あとはギリギリまで引きつけて飛ぶだけだ......
「............」
100 ......70 ......40 ......一瞬の間だが、妖怪との距離がつかめる。
心臓の鼓動が激しくなるのを感じる。
やがて民家一軒分の距離に差し掛かった時だった。
「ふっ......!」ガッ
「ギ!!?」
槍の柄を踏み台にし妖怪の上を飛び越える。
妖怪が驚いた時には、すでに遅かったようだ。
ズブシュッ!!
「ガッ......ギギ......」ビクビク......
槍が妖怪の頭部を貫き、胴体と分かれさせていた。
まだ動いているが、白目を剥き血が溢れ続けている以上、再起は不可能だろう。
「はぁ......はぁ......ギイギイ気持ち悪いんだよ......」
妖怪が動かなくなったのを確認し、魔理沙の元へ向かうことにした。
─路地
「魔理沙......大丈夫か!?」
「ああ、問題ないぜ......ちょっと霊夢がな......」
魔理沙の元に着くと、彼女の隣には元気のない霊夢の姿があった。
聞いたところ、普段ならあり得ない失敗続きで落ち込んでしまったのだという。
しかし、この場に留まるわけにもいかず、二人で彼女に肩を貸して歩く。
「......悪いわね」
「霊夢らしくないな......な、仁太郎?」
「......そうなのか?」
謝る霊夢に対して、らしくないという魔理沙。
そんな彼女に霊夢は少し顔を背けるのであった。
─阿求の屋敷
「勝手に飛び出して......危機感というものがないのですか!?」
「すみません......ちょっと眠たくて......」
「......っもう!」
「阿求......美宵ちゃんも起きちゃうから......」
帰還した彼は阿求にこっぴどく叱られた後、疲労も重なり眠ってしまった。
霊夢と魔理沙もまた、仕事続きで休まざるを得ないようであった。
もう辺りも暗く、これ以上の行動は支障をきたす。
やがて屋敷の周りに結界の札を貼ると、阿求や小鈴も休息をとるのだった。