東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─近くの森
「お姉さま、こっちこっち!」
「はいはい、今行くから待ってなさい♪」
屋敷の近くにある森にやって来た二人。
急かす
草木のたくさん生えている森は、スカートで歩くには少しばかり困難だ。
それでも、ぐんぐんと先に進む妹の姿を見ると元気が湧いてくるのだった。
「よっと......まあ......!」
「どう、素敵でしょ?お姉さま!」
しばらく進むと、開けた場所に躍り出た。
そよ風が吹き、丈の短い草と花々を揺らすそこは夢に出てきそうだ。
小鳥のさえずりも、二人を歓迎しているようだった。
「私が見つけたのよ!」
「素敵な場所ね......ふふっ」
腰に手を当て、えっへんとする妹に、思わず笑みが零れる。
そうしていると、妹は何かを思い出したかのように姉に問う。
「あっそうだ!お姉さまに頼みたいことがあるの......」
「何でも言ってごらんなさい」
「あのお花......」スッ
彼女が指差した方向を見ると、少し急斜面になっている崖上に、一輪の綺麗な紅い花が咲いていた。
どうやら、彼女はあの花をとって欲しいようだ。
「危ないのはわかってるけど......どうしても欲しいの......」
「ええ、わかったわ。お姉様にまかせなさい!」
高さは数メートルほどありそうだが、可愛い妹のためならと足を運ぶ。
出っ張っている箇所に足をかけ、着実に登っていく。
手に伝わる石の感触が少し痛いが、この先にある
「よし、とれた!おーいフラン......?」
「......え!......を付けて!」
十分ほど経過し、ようやく花を手に掴んだ。
そのことを伝えるべく、下を見ると妹の指はさらに上を差していた。
と、思わず上を見ると......
カァー!!
「きゃっ!?」ズルッ
「お姉さま!?」
襲いかかってきたカラスに驚き、足を滑らせてしまった。
このまま落ちればただの怪我では済まないだろうと思い、きゅっと目を閉じる。
しかし、いつまで経っても自分の体に痛みが伝わってくることはなかった。
それもそのはず......
「おねえ......さま......いたい......いたいよぉ......」
「フラン!?フラン大丈夫!?」
自分を庇った妹が、腕に大怪我を負っていたのだ。
大慌てで彼女の腕をとるが、そこには裂傷ができていた。
血がドクドクと流れる光景は、焦りに拍車をかける。
こんなことになるなら、初めから止めておくべきだったと後悔しつつ、彼女を介抱する。
屋敷まで運ぶ力もなく、その場である手当てをすることにした。
それが間違いだとも知らずに......
「どうしようどうしよう......!?そ、そうだ......確かあの時......」
「今日は兎の1匹も獲れやしねぇ......うん?」
一人の猟師が、二人の近くに通りかかった。
何やらコソコソとしている少女が気になった猟師は、こっそりとその様子を覗く。
そして聞こえてきたのは、耳を疑うことだった。
「蝦蟇の油に薬草......それから......」
「あ、あいつらまさか......こりゃ大変だ......」
─数時間後 屋敷
「ごめんね......ごめんねフラン......私がもっとしっかりしていれば......」
「ううん、私が悪いの......本当はあのお花......自分でとってお姉さまにあげたかったのに......」
あの後、夕方になっても帰らない姉妹は探しにきた従者によって連れて帰られた。
こっぴどく叱られた彼女らは、しばらくの間、二人一部屋で過ごし外出禁止ということになってしまった。
けれど、二人一緒にいれるのであれば何も怖いことはなかった。
「お姉さまが怪我しなくて......良かった」ニコッ
「フラン......」
愛する妹の笑顔が、傷ついた心を癒してくれた......
しかし、残酷な運命はいつも突然にやって来る。
ガヤガヤ
「外が騒がしいわね......!?」
「どうしたのお姉さま?」
窓の外を見ると、屋敷の方へ歩いてくる村人達の姿があった。
手には農具や武器を持ち、いきり立っているようだ。
その様子に、口に手を当て思わず後ずさる。
身の毛がよだつのを感じ、体を抱え込みながらへたり込む。
そうせざるを得ないほどの恐怖を感じたのだ。
......そこから先は、口に出すのも酷い出来事の連続だった。
武器を持って押し寄せてきた村人達に、門番は恐れをなして逃亡し、侵入を許してしまった。
魔女の手下呼ばわりされた従者達は、
従者達が皆いなくなれば、必然的に狙われるのは私達一家だ。
ガヤガヤ
「ここにいたか......魔女の家族はよ!!」
「ど、どうされたんですか一体!?」
部屋の外から、両親の恐怖に満ちた声と、村人達の怒りに満ちた声が聞こえてくる。
「しらばくれるな!!お前達が魔女の一族ということは皆知ってる!!」バキッ
「ぐっ......!?」
「貴方......!!いや、離して......いやああああああ!!?」
その恐ろしい声は、私たち姉妹の......いや、私の精神を蝕んでいく。
「お、お姉さま......何が起きてるの......」
「嘘よ......嘘嘘嘘嘘嘘嘘......嘘よ......」
そしてとうとう、私達の番が訪れる。
「......っいたぞぉ!!この部屋だ!!」ガチャガチャ
「魔女め......逃がさないぞ......」ドンッ‼︎
バキバキバキッ‼︎
「あ............」
─数時間後 庭園
「............」
「あ......なた............リア............ソワ......」
一家は、木の柱に括り付けられていた。
父は度重なる拷問を受け、すでに意識はなかった。
母も陵辱されたのち暴行を受け、意識がなくなりつつある。
「あ......う............」
「お......さま............」
かくいう私たち姉妹も......純潔を穢された。
目の前に広がる鮮血が視界を塗りつぶし、目に映る世界を紅く染め上げていった......
ガヤガヤ
再び人々が集まる。
その手には布を括り付けた木の棒が握られている。
そして私達の足元には薪が置かれていた。
......これから何が行われるのかは明白だった。
「さあ最期の時だ!悪しき魔女どもに人間の怖さを思い知らせてやれ!」
「そうだそうだ!殺っちまえ!!」
『『『殺せ!!殺せ!!殺せ!!』』』
掛け声と共に、足元に火が移される。
チリチリと音を立て、強まる火と煙は苦痛を与えるのに十分......いや、過剰であった。
「あ......ついよ......ねえ......ま......」
「あ、あぎっ......ぁぁぁぁぁぁ............」
ハハハハハハハハ......
最期に見えたのは、燃え盛る炎に包まれる私達と屋敷だった。
─???後
ザー............
冷たい雨が、黒く焼け焦げた屋敷を濡らす。
いや、もう屋敷とは呼べない。
自分の二つ、三つ隣の黒い塊も濡らしていく。
それが何なのか、人か物であるかもわからない。
ガサッ
ふと、真隣で音がした。
そこにも黒い塊があった。
それが何であったのかは、思い出せない。
だが、無意識のうちに手が伸びる。
......そっと触れてみると、微かに動いているようだった。
「ふ......ら............」
あの時、羽があれば......力があれば......血が怖くなければ......
次々と、そんな考えが頭に浮かんでくる。
これから死ぬというのに、なぜそんなことを思うのか記憶もない。
優秀な門番がいれば......自分を止めてくれる友人がいれば......愛してくれる人がいれば......
なにもわからない......
「......ね」
消えいる声と共に、視界は闇へと堕ちていった......
─???後
『............』
廃墟の頂きに座る二つの影。
一糸まとわぬ姿だが、その背には黒い翼があった。
瞳は虚空を映し、夜の闇よりも深く、紅かった。
月の光のもと、二つの影はどこかへと飛び去るのであった......瞳に映る新しい世界へと向けて......