東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISODE30:友達だから

 

─現在

 

「そして彼女は今こうして......浅ましい人間どもの手から皆を守るために動いている......私はその手助けをしてあげているの」

 

「............」

 

彼女の口から出たのは、凄惨な過去の話だった。

人間時代、友人は一家もろとも魔女狩りにあったのだ。

彼女が村で小耳に聞きはさんだ薬の作り方は、巷で噂になっていた"魔女の薬"の作り方だったのだ。

自分を庇って怪我をした妹を助けるために起こした行動が、家族を滅ぼす結果となってしまった。

守ってくれる存在もおらず、気づけば吸血鬼となっていた......

けれど......

 

「......聞いて損したわ」

 

私は冷たい声で、彼女にそう言い放つ。

そして自分の胸に秘めた想いを打ち明ける。

 

「人間時代のレミィが酷い目にあった?それがどうしたというの?」

 

「何......?」

 

「たとえ人間時代にいくら虐げられたからといって、今のレミィには関係ない。私にはもっと関係ない」

 

冷酷に、興味のないといった風に次々と言葉を紡ぐ。

何を言われようが、言葉を止めるつもりはない。

 

「私の友人は"吸血鬼レミリア・スカーレット"よ?それ以上それ以下でもない、1番の友人......。貴女の話はつまらなかったわ」

 

「それで......どうするの?邪魔をするつもり......?」ニヤリ

 

嘲笑うような表情で尋ねてくる彼女。

どうしても私を陥れたいようだけれど、そんなものは通用しない。

いや、させはしない。

だからこそ、私は強くはっきりと告げる。

 

「ええ、邪魔をさせてもらうわ......!」

 

「くっ......くくく............」

 

そう告げると、彼女は額に手を添えて笑い出す。

その姿はひどく不快で、見るに耐え難い。

今の私の内心は穏やかではない。

友人の過去を出しにして、私の知識欲を弄んだ。

何より、大切な友人に手を出したことが許せなかった。

 

 

 

「人間は何のために生きるのか考えたことはある?」

 

時間停止を使った彼女はいつの間にか、階段の途中に移動していた。

足を組んで肘をつき、哲学的な質問をしてくる。

それに対して、淡々と答えを返す。

 

「安心を得るため......とでも言えば満足かしら?」

 

「ご名答......けど残念。それだけじゃあないわ」カツ......カツ......

 

静かな図書館に、ヒールの音が響く。

一歩、また一歩と確実に刻まれる足音。

そして両者は対峙する。

 

「人間は美しくあるため(自然の摂理)に生きるの。美しくあるためには出来物(他者)を消す......当然のことでしょう?」スッ

 

そう言いつつ、彼女は左脚に巻いたナイフホルダーに手をかける。

とうとう、交戦の時が来たようだ。

いくら私の魔力が強かろうと、おそらく彼女に勝つことはできない。

ならば私に出来ることは一つ......

 

「やっぱり貴女の話はつまらない......。貴女がどうやって咲夜とレミィの意識を乗っ取ったのかは知らないけれど、全力で邪魔させてもらうわ」ブワッ

 

魔力を用いて、目の前に魔道書を浮かせる。

 

「そんな紙切れじゃこの(ナイフ)の前には無意味よ。ロックンロールが万能じゃないようにね」

 

「そうかしら?......知ってる?魔道書は鈍器にもなるのよ」

 

 

 

ガッッッ......‼︎

 

次の瞬間、分厚い本と鋭い刃がぶつかる。

破れた表紙の断片がヒラヒラと宙を舞う中、必死の抵抗が続けられる。

 

「............」ヒュンッ......

 

「............」ブゥゥゥン......

 

無数のナイフが瞬きをする暇もない速さで飛んでくる。

私も負けじと、次々と魔法の盾で防ぎ、飛ばし返す。

 

「............!」シュタッ......タッタッタ......

 

一旦、間合いをとると咲夜は猫のような身軽な動きでそれらを全て躱す。

そして、すかさず次の攻撃を加えてくる。

私もまた、繰り返し防いで弾き返す。

そんな攻防が続いていると、彼女は一度手を止めた。

 

「お前......まさか......」

 

「今さら気付くなんて......咲夜ならそんな失敗を犯さなかったでしょうね」

 

メキィ......!!バキバキバキ......

 

「こうして派手にやるのも久しぶりね......」フワッ......

 

突如、図書館の床が大きな音とともに壊される。

続けて、ポッカリと空いた穴から浮かんできたのは、紅い服を着た少女......フランドール・スカーレットだった。

彼女は振り返ると、パチュリーに問う。

 

「ねぇパチュリー。こいつ殺っちゃってもいい?咲夜のフリして接してくるのが気にくわなかったの」

 

「殺す必要はないわ。ただ............」

 

ドス黒い笑みを浮かべて、パチュリーは改めて咲夜の方を見る。

 

 

 

「死ぬほど痛めつけてあげる......♡」

 

「......なーんだ。貴女もパチュリーじゃないのね」

 

彼女の様子を見ると、フランも咲夜の方を向く。

半壊した図書館で、三者は睨み合う。

これから起こる生死を賭けた戦いに向けて......

 

 

 

─人間の里 阿求の屋敷

 

「なあ霊夢......」

 

「何よ......」

 

隣で眠る霊夢に、魔理沙は声をかける。

昨日の妖怪との戦いのこともあるが、一番はレミリア達についての心配だった。

吸血鬼異変......紅霧異変と対立してきたが、それらを経てようやく友達になることができた彼女たち......それがこうして、また対立してしまった。

美鈴達にも幻想郷の"敵"として強気な態度をとっていた彼女だが、本心は違った。

せっかく仲良くなることが出来たのに、追放しなくてはならないなど、まだ10代の少女が簡単に呑み込めるだろうか。

背を向けたままの彼女に、魔理沙は続ける。

 

「私は霊夢の友達だ」

 

「それがどうしたのよ......」

 

何の変哲もないことを言う彼女。

しかし、その声には確かな重みがあった。

普段の彼女らしくないセリフに、霊夢はほんの少し聞き入る。

 

「阿求に小鈴、美宵だって友達だ」

 

この部屋にいる皆の名前を挙げる。

そして最後に、端で眠っている彼の方を見る。

 

「それにあいつも......仁太郎も友達だ」

 

まだ友達と呼べるほど親しくなったわけでもない。

それでも、魔理沙は彼を友達だと言う。

疑問を抱く霊夢に、彼女は語る。

 

「昨日、霊夢を助ける前にあいつと口喧嘩したんだ。怪我してるから無理すんなって言ったんだけど、怒らせちまってさ」

 

「............」

 

「けどな霊夢、私もあいつを止めようと全力で動いたんだぜ?......気付いたら一緒に行動してたけど」

 

「はぁ......何よそれ?助言になってないわよ......」ガバッ

 

背を向ける霊夢。

魔理沙からは見えないが、その顔は少し赤くなっていた。

昨日、彼女に言われたことを思い出し、言い返すことにした。

 

「......らしくないわね」

 

「ああ、らしくないぜ」

 

どうやら彼女に言い返しは通用しないらしい。

諦めて寝ることにしたが、魔理沙は最後にこう呟いた。

 

「霊夢がやらなくても......私はやるぜ。『友達だからこそ全力で止める』......それだけだ......」スゥ......スゥ......

 

寝息が聞こえる。

それを皮切りに霊夢は布団を被り直す。

 

 

 

「らしくないのよバカ............でも......ありがと」

 

誰にも聞こえないように、一人呟いた。

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