東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISODE31:力は誰がために

 

─???

 

「......来たか」

 

「何度もすまないな」

 

いつぶりか、謎の暗い空間で目が覚める。

相変わらずそこにいる人物の姿はボヤけていて、誰かはわからない。

ここに呼ばれるのは、大抵何かを説明される時だ。

早速、その人物に昨日の"力"のことを聞く。

 

「それで、あの力は何なんだ......?昨日も、いつだったかの時も、俺に力を与えてくれたようだが......」

 

「まあそう焦るな。せっかくだし、ゆっくり話そう」パチンッ

 

人物が指を鳴らすと椅子が現れた。

彼?の様子からするに、ここでの時間の流れは違うのだろう。

腰を下ろし、彼と対面する。

すると、どこか妙な懐かしさを感じる。

自分が自分でない時から知っているような、そんな感覚がした。

戸惑っていると、彼はようやく話し始めた。

 

「懐かしく感じるのもおかしくない。お前の先祖の血が、私を覚えているのだろう」

 

「はあ......」

 

と、彼......いや彼女?が最初に話したのは先祖のことだった。

正直、先祖がどうのこうのよりも力について聞きたいのだが、彼女は色々と話すつもりらしい。

仕方なく、耳を傾けることにした。

 

「事の始まりは今から......年前、平安の頃だったかな?私はある人間に力の一部を託した」

 

彼女が言うには、その力を託した人間の子孫が俺なのだという。

別に自分でなくとも良い気はするが、彼女は続ける。

 

「なぜ託したのかは忘れてしまったが、今となってはその理由もわかる。それで頼み事なんだが......いや、この話はやめておこう......」

 

しかし、彼女の話は直接関係ないことばかりで中々本題に入らない。

 

「帰らせてもらえるか......?」

 

「ああ悪い悪い......本題に入るよ」

 

少し苛々したので、声のトーンを落として話すと、彼女は本題に入ることにした。

外見のみならず、性格も掴みどころがないというか、とにかく回りくどい人だな......

 

「さて......お前が力を発揮できたのにな様々な要因がある。一つは先ほど話した、私の力の一部がお前の中にあること。二つ目は私がその力をお前の中から引き出したこと。そして何より......お前自身(・・・・)の能力だ」

 

「俺の......能力?」

 

そういえば以前、咲夜の能力で瞬間移動したこともあったな......

ともかく、あの力は俺自身の能力によるものだという。

まさか自分に能力があるとは思いもしなかった。

能力を聞こうとすると、彼女の口からある人物の名前が出た。

 

「......そうか、紫から聞いていなかったのか」

 

「......あいつを知っているのか?」

 

「............まあな」

 

一瞬、間が空いたことが気になるが今は能力のことを聞いている。

彼女のことを回りくどいと思ったが、自分もそうらしい。

話題を戻し、能力について聞く。

 

「悪い......で、能力って?」

 

「お前の能力は......『心を通わせた相手と一心同体になる程度の能力だ』」

 

と、彼女は答える。

その能力は、心を通わせた相手と一心同体になることができるというもので、具体的には、相手の能力の使用、意識の共有ができるそうだ。

ただし、その場に相手がいないと能力は使用できないという。

しかし、同時に疑問が浮かんだ。

確かに力を使うことは出来たが、その時は一人だった。

心を通わせる相手がいないなら、力を使うことは出来ないはずだが......

 

「企業秘密だ......」

 

聞こうとしたが、先手を打たれてしまった。

腑に落ちないが、これ以上聞いても仕方ない。

そろそろ帰らせてももらおうと口を開くが、彼女は何かを思い出したかのように、今度は俺に尋ねてきた。

 

「そういえば昨日......稗田の屋敷であの小娘達を止めたようだが......何をした?」

 

「......っ!」

 

先程までの気さくな雰囲気とは打って変わり、彼女からは威圧感が放たれる。

その様子に、思わずたじろいでいると彼女はこう話し始めた。

 

「お前の中に、私の力でも引き出せない何かがある。それも二つ......あの二柱のものとも違う。()と接触した?」

 

何か?二柱?何のことかさっぱりだ。

昨日、阿求達の動きを止めたのはまた別の力なのか?

ますます訳がわからない。

 

「ええと......」

 

そうこうしているうちに、彼が答えられないことを悟ったのか、彼女は雰囲気を緩めるのだった。

 

「記憶を消されているようだな......ならば仕方あるまい。......脅してすまなかったな。もう帰ってもよいぞ」パチンッ

 

「え......?待っ............」

 

有無を言わさず、彼の視界は闇に呑まれていくのだった......

 

 

 

「そう睨むな......これも幻想郷を守るためだ」

 

ふと、彼女は口にする。

その視線は彼がいた場所の上を向いていた。

当然のことだ、その先にいるのは......

 

 

 

「んんっ......」キッ

 

捕らわれた八雲紫(・・・・・・・・)なのだから。

彼女の全身には真っ黒な触手が幾重にも絡みつき、蠢きながら締め付けていた。

境界を操る力を持ち、幻想郷でも頂点に立つ存在の彼女が、その身を封じられていることは異常事態であった。

 

「んぅ......ん............」

 

「無駄だ......その触手は妖力が強ければ強いほど絡みつく」

 

抵抗も虚しく、強く......強く締め付ける触手に紫は苦悶の声を上げる。

そしてそのまま、彼女の姿は闇に閉ざされる。

そこに残ったのは、仁太郎をこの場へ招いた者一人だけであった。

虚空を見つめるその瞳は、幻想郷(この世界)を憂いているようだった。

 

 

 

─阿求の屋敷

 

「............はっ!?」ガバッ

 

「何ようるさいわね......」

 

勢いよく目が覚める。

あいつに呼びかけていたのに一方的に話を切られ、起きると同時に大きい声を出してしまった。

皆を起こしてしまったかと周囲を見渡すが、そこにいるのは眠そうな霊夢とまだ寝ている魔理沙だけだった。

 

「あれ......?」

 

どこに行ったのかと思っていると、ふと部屋の外から良い香りが漂ってきた。

深く香ばしいソレは鼻腔をくすぐり、足を自然に運ばせてくる。

香りに釣られるまま、部屋を後にした。

 

「......うん?」

 

部屋を出て右手に進んで行くと、小鈴がこちらに向かってきた。

 

「おはようございます天澄さん!こっちこっち!」ニギッ

 

「お、おい......!?」

 

小鈴は俺の手を取ると、足早に香りの出所へと連れて行くのだった。

 

 

 

「じゃ〜ん!私と阿求に美宵さん、それに使用人さん達と作ったんですよ?」

 

「これは......美味そうだな」

 

彼女に連れられてきた部屋の机には、色とりどりのサンドイッチと、湯気の立つコーヒーが用意されていた。

そういえば昨日の夕方から何も食べていない。

目の前の食事を見ていると、途端にお腹が空いてきた。

 

「たくさん食べて元気出してくださいね!」

 

「ああ、ありがとう......!」

 

小鈴に勧められ、早速サンドイッチを頬張ると、パンの柔らかさと野菜の瑞々しさ、卵の甘さが口に広がる。

それをコーヒーで流し込むと、程よい苦味と酸味が加わり目が冴える。

 

「コーヒーは私が入れたんですけど......どうですか?」

 

どうやらコーヒーは美宵が淹れたらしい。

上目遣いに聞いてくる彼女に、思わず照れてしまう。

 

「うん、すごく美味しい。おかげで目が冴えてきたよ」

 

「ふふっ......それなら良かったです!」ニコッ

 

「うぎぎ......」

 

美宵の方を恨めしそうに見ている小鈴はともかく、先程から阿求は黙ったままだ。

やはり昨日、無理に妖怪の元へ向かったことを怒っているのだろう。

 

「あの......昨日はその......」

 

謝罪しようとすると、彼女は唐突に話し始めた。

 

「どうせ止めたって行くのでしょう?だったら腹ごしらえして万全の状態で行ってください。ただし......小鈴を悲しませるような無茶はしないでくださいね」

 

「肝に命じます......」

 

腕の傷も癒えた訳じゃない。

このまま戦いに身を投じればタダでは済まないかもしれない。

けど、俺にはきっと使命がある。

だからこそ、力を与えられたんだ。

 

「............」(少しでも皆の助けになるんだ......!)

 

一人で奮発している彼の傍ら、霊夢と魔理沙もやって来た。

 

「ちぇっ、洋食か。私は和食派なんだけどな〜」

 

「同感、パンよりご飯の方が力が出るわ」

 

二人の発言に、阿求が噴火したのは言うまでもない......

 

 

 

─人間の里 入口

 

「............」

 

人里の門の隣に立つ彼女......紅美鈴。

その瞳の先には、紅魔館のある方角から紅い霧が立ち昇っている。

彼女は真剣な目で、それを見つめていた。

しばらくすると、彼女は腕を組んで門に背をつけた。

とある人物が、ここに訪れることを待って...

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